北海道開拓異聞~薩摩隼人はアイヌの少年を愛でる~ 作:とけそうだら
更新頻度がいつも不安定で申し訳ありません。
本当は週一更新とかしたいんですがぼくが実力不足なせいでなかなか難しいです……
空気は澄み、月が中庭の石畳まで白く照らしている。
炭火にあぶられた羊肉が脂をはぜ、湯気をまとった点心が白い息を吐く。
喉を滑る異国の酒の香りが、潮風と混じり、月光の下で笑い声をほどいていく。
劉玄真の計らいで、黒狼会を恐れていた近隣の商人たちも招かれ、祝宴は夜更けまで続いた。
武は賑わいから少し離れ、縁側でひとり杯を傾けていた。
ヌイと宗太郎は見慣れぬ料理に目を輝かせ、皿の上の正体を当てっこしては笑っている。
その何気ない輪に、武はようやく肩の力を抜く。
(過去を背負った身でも、誰かの役に立てる夜がある)
——杯の底が、少しだけ軽くなった気がした。
やがて人波が緩み、いくつか灯が落ちる頃、玄真が歩み寄ってきた。
「タケさん、今夜はここに泊まっていくといい。部屋はもう用意してある」
「いや、これ以上の厚意は受けられん。今夜はご馳走になっただけで充分だ」
「我が息子を救ってくれた人間に、遠慮はいらないアルよ。アナタ、もうこの家の家族同然。家族の申し出、断るのは水臭いネ」
真っ直ぐな瞳に言葉が詰まる。
逡巡する武の脇へ、弟子たちが駆け込んだ。
「先生、お言葉に甘えましょうよ! 清国式のお屋敷に泊まれるなんて、そうそうないですよ!」
「ヌイも泊まる! 明日も、おいしい饅頭が食べたい!」
弟子たちの屈託のない言葉に、武は苦笑を浮かべ観念したように頷いた。
「……では、お言葉に甘えさせてもらうよ」
♦
「タケさん、お弟子さんたちとは別室ネ。一番広い部屋だから、ゆっくり休むといいアルよ」
通された部屋は清国の調度でしつらえられ、円窓の向こうに静まり返った港が額縁の絵のように浮かぶ。
焚かれた香が紫の煙を細く立ちのぼらせ、甘く芳しい香りで室内を満たしていた。
「これは……
床に身を横たえ、目を閉じる。劉玄真の心遣いに、素直に感謝の気持ちが湧いた。
だが瞼の裏には、怜花の毅然とした啖呵、黒狼会の狂気、そして弟子たちの奮闘が、次々と鮮やかに去来する。
守るべきものの重さが、胸の中で静かに形を増していく。
どれほどの時間が経っただろうか。
不意に、部屋の扉が衣擦れの音も立てずに、静かに開いた。
(――誰だ?)
黒狼会の残党か。
武は息を殺し、瞬時に体を起こすと枕元の軍刀に手をかけた。
月明かりを背にした影が、ゆっくりと武の床に近づいてくる。
そして、ごそごそ、という微かな音と共に、その影が武の体にまたがってきた。
「……っ!」
武が相手を組み伏せようと腕を掴んだ——その時。
ふわりと、湯浴みを終えたばかりの甘い石鹸の香りと、纏う花の香りが鼻腔をくすぐった。
「……怜花?」
目の前にいたのは、薄絹の寝間着一枚を纏った怜花だった。
月光がその柔らかな輪郭を浮かび上がらせ、濡れたように潤んだ瞳が、武をじっと見つめている。
「どうした、こんな夜中に……。何かあったのか?」
武が咎めるでもなく、ただ心配して尋ねると、怜花は悲しげに瞳を伏せた。
「……ううん」
か細い声で否定し、しばらく逡巡した後、意を決したように口を開く。
「タケさん……本当に……明日、帰ってしまうアルか?」
「ああ。札幌に戻らねばならない」
「……わかってる。わかってるアル。でも……」
怜花は言いにくそうに言葉を濁す。
その様子がいじらしく、武は思わず微笑んだ。
「寂しいか?」
「……うん」
かすかに頷くと、涙が縁にきらりと浮かんだ。
武は指先でそれを拭い、静かに言葉を置く。
「私も……お前と離れたくはない」
普段は口にしないような素直な言葉が、するりと零れ落ちた。
自分でも少し意外に思い、ぼんやりとした頭でそれを噛みしめる。
「タケさん……好き……大好きアル……こんなにタケさんのこと好きなのに……ワタシ、胸が苦しいネ」
その言葉に、怜花の頬がふっと赤らむ。
「私も……お前が愛おしい。だが私は役人だ。開拓使本庁で、また務めが始まる」
「わかってるアル……でも、気持ちは、そう簡単に割り切れないネ」
武はそっと怜花を抱き寄せた。
「心配するな。すぐに、また会いに来る」
「……本当、アルか?」
「ああ。約束だ」
言葉より確かなものを渡すように、静かに唇を重ねた。
最初は触れるだけの慰撫。
やがて、怜花の吐息に導かれ、角度を変え、甘さを少しずつ深めていく。
「……ん……タケ、さん……♡」
離れ際、怜花は小さく唇を尖らせ、囁く。
「……もっと、してほしい、アル♡」
「ああ、怜花。舌を出してごらん」
言われるがまま、おずおずと舌を伸ばす怜花。
武はその舌先を絡め取り、強く吸い上げた。
「んっ……ちゅ……んんっ♡」
蕩けるような快感と幸福感に包まれながら、二人は互いの唾液を交換し合う。
「ちゅぶ……んむ……ぷはっ……♡」
やがて、どちらからともなく口を離す。
二人の唇の間を銀色の橋が架かり、月明かりに妖しく煌めいた。
「はぁ……はぁ……♡」
怜花は肩で息をしながら、潤んだ瞳で武を見上げる。
その瞳には、隠しきれない情欲の色が浮かんでいた。
「ね、タケさん。ワタシ。タケさんにお礼がしたいアル」
「お礼?」
「うん。ワタシの体で、いっぱい気持ちよくなって欲しいネ♡」
そう言うと、怜花は武のズボンを下ろし、大きく反り返った一物を取り出した。
武の剛直は、怜花の痴態に当てられてすでに臨戦態勢に入っていた。
「ふふ……こんなに大きくなってるアル♡」
愛おしそうにそれを撫でさすり、ゆっくりと顔を近づけていく。
そして、その先端に軽くキスをした後、ぱっくりとくわえ込んだ。
「くっ……!」
ねっとりとした感触が亀頭全体を包み込む。
同時に、舌全体を使って裏筋を舐め上げられた。
「……っ」
「ふふっ♡ 気持ちいいアルか?」
上目遣いに見上げながら、妖艶な笑みを浮かべる怜花。
その淫蕩さに、武は堪らず腰を浮かせた。
「ああ……最高だ」
怜花は嬉しそうに微笑むと、口を前後に動かし始めた。
唾液まみれの竿を右手で擦りつつ、左手で玉袋を優しく揉みしだく。
「んっ……んむっ……♡」
じゅぽじゅぽという淫らな水音が響き渡り、口内では舌が縦横無尽に動き回った。
まるで別の生き物のように蠢く舌の感触に、武は呻き声を上げた。
「ぐぷっ……んむ……ちゅぷ……れろれろ……じゅぶぶぶ♡」
怜花は、まるで飴玉をしゃぶるように、丹念に亀頭を舐め回した。
鈴口から溢れる先走り汁を舌で掬い取り、そのままカリ首に沿って舌を這わせる。
同時に右手で竿を扱き上げ、左手で陰嚢を撫でさする。
その動作一つ一つが絶妙で、武の性感を的確に刺激していった。
「れ、怜花っ!」
あまりにも巧みな口技に堪らず声を上げると、怜花は妖艶な笑みを浮べながら、ちゅぽんと音を立てて一物から口を離した。
「ぷはっ……どうしたアルか? タケさん♡」
「も、もう限界だ……頼む……」
武は切羽詰まった表情で懇願する。
その姿を見て、怜花はさらに笑みを深めた。
「わかったアル♡ じゃあ……ワタシのここに挿れるネ♡」
そう言って、自分の秘所を指で広げる。
そこはすでに洪水のように濡れそぼっており、湯気が立ちそうなほどだった。
「い、いいのか……お前だってするのは久しぶりだろうし……痛いかもしれんぞ……」
「大丈夫アル……タケさんになら、痛くされてもいいネ♡」
その言葉に、武の最後の理性が吹き飛んだ。
「怜花っ!」
「きゃっ♡」
武は勢いよく怜花を押し倒し、その上に覆い被さる。
そして一気に剛直をねじ込んだ。
ずぶぅうううううう!!
「あぁっ!?♡ ……た、タケさん♡ いきなりそんな奥まで……♡」
突然の衝撃に、怜花の体が弓なりに反り返る。
だが、その表情には苦痛の色はなく、むしろ歓喜の色が浮かんでいた。
「動くぞ……」
武はゆっくりと抽挿を開始する。
「あっ……はぁっ♡ あんっ♡」
怜花は甘い吐息を漏らし、快楽に体を震わせた。
中は熱く蕩けていて、それでいて痛いくらいに締め付けてくる。
そんな名器との交わりに、武はすぐにでも果ててしまいそうになったが、歯を食いしばって耐えた。
やがてピストン運動が激しくなり、パンッ!パァン!!という肉同士がぶつかり合う音が響き渡る。
「んっ♡ あはっ♡ すごいアルっ♡♡ ワタシ、犬の交尾のように犯されてるネ♡」
「ぐっ……出すぞっ」
武が限界を迎えた瞬間、腸内が激しく痙攣し、熱い液体が大量に放出された。
奥に直接叩きつけられる大量の精液に、怜花は歓喜の声を上げる。
「ああんっ♡ 出てる♡♡ タケさんのたくさん出てるアルよぉ♡♡♡」
ビクビクと体を痙攣させ、絶頂を迎える怜花。
武がペニスを抜くと怜花の秘所から溢れ出した白濁液は布団を汚し、二人の結合部からも逆流してシーツに大きな染みを作った。
(はぁ、はぁ……こんなに出したのに……また怜花を抱きたくてたまらない……)
武は息を荒げながら、再び怜花のなかに挿れようとする。
だが――なかなかうまく挿れることができない。
「……? おかしい……なぜこんな……視点がぶれるのだ……」
「もぅ、じれったいね……♡ ワタシがシてあげるから、タケさんはじっとしてるネ♡」
怜花は妖艶な笑みを浮かべると、武をそっと押し倒した。
「れ、怜花……?」
「ふふ……タケさん♡ 今度はワタシが気持ちよくしてあげるネ♡」
そう言って、武に跨り、その剛直を自らの秘所にあてがい、一気に腰を落とす。
ぐちゅぅううううう!!!
「ぐぉっ!?」
「うふふ♡ まだまだ本番はこれからネ♡ ワタシの秘技で、天国まで連れてってあげるアル♡」
そう言うなり、怜花は激しく上下運動を始めた。
ぐちゅっ! ずぶっ! ぬぷっ!! ずぶっ! ぬぷっ!!
結合部から愛液が飛び散り、二人の体の間で怜花の小さな竿がぶるんぶるんと揺れる。
「ぐぁっ……!! な、なんだこれはっ……!? 私のイチモツが……まるで蕩けて無くなりそうだっ……!!」
怜花は腰をただ上下を繰り返すだけではなく、前後にグラインドさせたり、円を描くように動かしたりする。
先程とは比べ物にならないほどの快楽が押し寄せる。
まるで別の生き物のような肉壁が、きゅうっと締め付けてきたかと思うと、今度は柔らかく包み込むように絡みついてくる。
その緩急をつけた刺激に、武は堪らず呻き声を上げた。
「すごいでしょ?♡ 大陸の、三皇五帝の時代から発展してきた房中術が生み出した絶技『龍陽針』ネ♡ ワタシのおまんこでタケさんをもっと気持ちよくさせてあげるアル♡」
怜花は得意げに語りながら、腰を動かすのをやめない。
「ぐぅうう……す、すごすぎるっ……もう出そうだっ!!」
武が限界を迎えようとする寸前で、突然動きが止まった。
「……お、おい! なぜ止めるのだ!?」
思わず不満が口に出てしまう。
だが、怜花の顔には悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。
「ふふ♡ タケさん、ワタシに『中出ししたい』ってお願いしてみて♡」
「はぁ!? なぜ私が! そんな恥ずかしいこと言えるかっ!!」
顔を真っ赤にして抗議する武。
しかし、怜花は余裕の笑みを浮かべたままだ。
「ふーん?♡ じゃあ……ワタシはこのまま動かないアル♡」
「なにをっ!? 貴様、調子に乗るなよ!」
武は顔を真っ赤にして怒鳴り散らすが、怜花は動じない。
むしろ一層笑みを深くし、挑発するように武の肉棒の根本をぎゅっと握り込む。
「ほら♡ 早くしないとぉ♡ いつまでたってもイケないネ♡」
(う、ぐっ……!! これでは……出せないではないか!!)
自分よりも二回りも年下の少年にいいようにされて、武は歯を食いしばって悔しそうにする。
だが、怜花の締め付けによって与えられる刺激に限界をとっくに迎えていて、そろそろ頭がおかしくなりそうだった。
「くっ……ぐぅぅう!!」
「早くしないとぉ♡ タケさんのおちんぽ抜いちゃうネ♡」
怜花は巧みな玉袋をやわやわと揉みしだく。
その手技に武は抗いきれなくなった。
(だめだ! もう耐えられん!!)
その時、武の理性は完全に吹き飛んだ。
「……くっ わ、わかった……言うぞ……」
だがいざ口に出そうとすると、なかなか言葉が出てこない。
「どうしたネ?♡ 言えないのカナ?」
「……だ」
「ん~?♡」
「だ、出したいんだ……お前のなかに……私の子種を注ぎ込みたい……」
武は耳まで真っ赤にして絞り出すように言った。
それを聞いた途端、怜花の体がぶるっと震えた。
(あぁ……タケさん♡ 本当に
「よく言えまちたね♡ えらいアルよ♡」
そう言って頭を撫でると、武は恥ずかしそうにそっぽを向いた。
そんな仕草も可愛くて、つい笑みがこぼれる。
「ふふっ……♡ いい子アル♡ ご褒美にたっぷりと種付けするネ♡」
再び激しいピストン運動が始まる。
ぐちゅん! ぐちゅん! ぐちゅん! ぐちゅん!
「ぐっ……うおっ!!?」
再び始まったすさまじい刺激に快感によだれが溢れそうになる。
「ほら♡ もっと奥まで突いてあげるアルよ♡」
そう言って、怜花はさらに深く腰を落とした。
腸の最奥にまで亀頭が突き刺さる感覚がする。
その状態で腰をぐりぐりと動かすものだからたまらない。
結合部からは愛液が飛び散り、二人の下半身をぐしょぐしょに濡らす。
(すごすぎるっ……!!)
武はもはや何も考えられなくなっていた。
ただ快楽に身を任せることしかできない。
そんな武の様子を見て、怜花は勝ち誇ったように妖艶な笑みを浮かべたまま囁いた。
「どうアルか?♡ タケさん♡ワタシのおまんこは気持ち良いアルか?♡」
「ぐっ……あ、ああ……」
もうまともな言葉を喋ることすらままならない武を見て、怜花は妖艶に微笑んだ。
その淫靡な姿に、武の興奮はさらに高まっていく。
「くっ……! これはもう我慢ならん……!」
「え、タケさん? きゃんっ♡♡♡」
武は怜花の体を抱き上げると、そのまま駅弁の体勢になった。
そして怜花を壁に押し付けて、下から思い切り突き上げる。
ずぶっ!!!
「あああっ♡♡♡♡♡♡」
怜花の口から甲高い嬌声が漏れる。
しかし武は構わずピストンを続けた。
パンッ! パァン!! グチュッ! ジュポッ!! ヌプッ!
肉同士がぶつかり合う音が響き渡る。
怜花は武の首に手を回し、両脚も腰に巻きつけて全身でしがみついた。
「あっ♡ ああん♡♡♡ タケさんっ♡♡ タケさぁんっ♡♡♡」
絶頂に次ぐ絶頂に、怜花は舌を突き出して喘いでいる。
そんな淫らな美少年の姿に興奮を覚えたのか、武はより激しく腰を打ち付けた。
「ああっ♡♡♡ タケさぁん♡♡♡」
「出すぞ! 怜花っ!!」
「来てぇっ!♡♡♡ いっぱい中に出してぇえええっ!♡♡♡」
次の瞬間、大量の精子が怜花の中に放たれた。
びゅるるるるっ!!! どぴゅーっ!!! どくんどくん……ごぷっ……
同時に、怜花も大きく体を仰け反らせながら絶頂を迎える。
「あはぁあああっ!!♡♡♡ 出てるぅっ♡♡♡ タケさんの熱いのがぁあぁあぁっ!!♡♡♡♡♡」
怜花は歓喜の声を上げながら、武の精液を一滴残らず搾り取ろうとするかのように、きゅううっと腸内を締め付けた。
「ぐっ……!」
武はその刺激に堪らず呻き声を上げ、最後の一滴まで怜花の胎内に注ぎ込んだ。
長い射精が終わり、二人は繋がったまま布団の上に倒れ込む。
「はぁ……はぁ……」
「あ……あぁ……♡」
熱を帯びた吐息が、部屋の静寂に溶けていく。
どちらからともなく、汗ばんだ額を寄せ合い、確かめるように再び唇を重ねた。
それは激しさの続きではなく、ただ、この腕の中にいる存在が夢ではないと、互いの魂に刻みつけるための、静かで深い口づけだった。
(ああ……満たされている……)
武は、自分の胸に顔をうずめる怜花の柔らかな髪を撫でながら、ぼんやりと考えていた。
黒く滑らかな髪、白い項、そして自分とは違う甘い香り。異国から来たこの美しい少年と、こうして肌を寄せ合っていることが、まだ現実とは思えない。
(私は、この子を愛しているのか……)
その想いが胸をよぎった瞬間、脳裏にふと、別の顔が浮かんだ。
まっすぐな瞳で自分を見つめる、ヌイの顔が。
(……まずいな)
熱に浮かされたせいか、思考がまとまらない。
愛おしさと罪悪感が、心地よい気だるさの中で混じり合っていく。
その時、腕の中の怜花が、くすぐるように顔を上げた。
「ねぇ、タケさん……ワタシ、今日、すごく幸せアル」
その言葉は、ささやきだったが、何よりも確かな響きを持っていた。
「ああ……私もだよ」
「……うん……嬉しいネ……」
怜花は幸せそうに目を細めると、意を決したように武の瞳をまっすぐに見つめた。
「タケさん……ワタシね、ずっとアナタのそばにいたい。だから、お願いがあるアル」
その真剣な眼差しに、武は思わず息を呑む。
「タケさん、ここで……この函館で、この店で、ワタシと一緒に暮らさないアルか?」
「え……?」
思わぬ申し出に、武は言葉を失った。怜花はそんな武の腕を掴み、必死に続ける。
「ワタシ、この店の跡取りネ。商売も得意だから、タケさんのこと、ちゃんと養ってあげられる。だから、もう役人の仕事なんてしなくていいアル。ワタシが、アナタを守るから」
それは、ただの甘い戯言ではなかった。
怜花の瞳には、武の未来ごと引き受けるという、強い覚悟の光が宿っていた。
「そうアル! いいこと思いついたネ! 函館に剣の道場を開くネ! ワタシがお金を出すヨ! そしたら、もうタケさんの力を危ないことに使わなくていいネ。子供たちに、人を守るための剣を教えてあげてほしいアル!」
熱に浮かされたように、次々と言葉を重ねる。
「アナタの好きな春巻きだって毎日作るし、欲しいものがあれば何でも買ってあげる。そして……夜は、アナタが望むままにシてあげるアル……♡」
その言葉は、
「毎日、ワタシとイイコトして暮らすネ! タケさんには、ただ笑っていてほしいアル……アナタ、
武は、たまらず怜花の体を強く抱きしめた。
その温もり、鼓動、香り。全てがどうしようもなく愛おしい。この腕の中にある幸せだけを選んでしまえたら、どれほど楽だろうか。
だが、できなかった。
「……ありがとう、怜花。お前の気持ちは、本当に嬉しい」
その言葉を聞いた瞬間、怜花の顔がぱっと輝く。
しかし、武はゆっくりと首を横に振った。
「だが……私は行かなければならない。私には俺の役目と……責任がある」
武は一瞬の間を置き、はっきりと告げた。
「そして何より……私には、ヌイがいるんだ」
その名が出た瞬間、怜花の瞳から光がすっと消えた。
悲しみと、諦めと、そして理解の色が、その美しい顔をよぎる。
「……そう、アルか」
怜花は寂しそうに微笑み、武の胸に顔をうずめた。
しかし、彼はすぐに顔を上げ、精一杯の笑顔を武に向けた。
「……もぉー、タケさんったら。本気にしちゃって! おかしいアル!」
「れ、怜花?」
「冗談! 冗談に決まってるアルよ! ワタシ、お酒飲み過ぎたみたいネ。いまの話、ぜーんぶ忘れて!」
怜花はからからと、不自然なほど明るい笑い声を立てて、するりと武の腕から抜け出した。
「さぁ! もう寝ましょ! 清国人の朝、早いネ! 明日もワタシばりばり働くアル! 」
そして、一度も振り返ることなく、逃げるように部屋から出て行った。
ぱたん、と閉まった扉の音が、やけに大きく部屋に響く。
一人残された武は、しばらく呆然としていた。
シーツにはまだ怜花の温もりと、甘い麝香の香りが残っている。
やがて、彼は全てを吐き出すように、深く長いため息をついた。
「……まったく、心臓に悪い冗談だ」
そう呟きつつも、どこかほっとしている自分に気づく。
彼はまだ若い。
これからもっと多くの出会いがあり、様々な経験をするはずだ。
その中で相応しい相手を見つけることができるかもしれない。
窓の外では、函館の港が静かに波音を立てていた。
武は、その光に誘われるように布団から這い出し、窓際に立つ。
そして、眼下に広がる夜景を眺めながら函館の未来に思いを馳せた。
「この美しい街が、いつまでも平和であればいいのだがな」
そして彼は、そっと目を閉じる。
その瞳には、怜花の真っ直ぐで情熱的な姿が映っていた。
「
小さく呟いた言葉は夜の静寂に溶けて消え去った。