北海道開拓異聞~薩摩隼人はアイヌの少年を愛でる~ 作:とけそうだら
「……また“人食い”か」
重々しい声が、開拓使札幌本庁・長官執務室の空気を震わせた。
黒田清隆は太い指で机をトントンと叩きながら、忌々しげに眉をひそめ、手元の報告書に目を通している。
紙面に記された犠牲者の数が増えるたび、その厳つい顔には深い皺が刻まれていった。
これが単なる獣の仕業ではない、異常な“何か”による惨劇であることは、彼もとっくに理解していた。
「……それで、今回の犠牲者は何名だ?」
努めて冷静さを装った声で問うと、控えていた部下が緊張した面持ちで手元の資料に視線を落とした。
「はっ……! 現在確認されております死者は、七名にございます……。いずれも山に入った猟師や開墾の者で、その……発見された遺体は、獣に食い荒らされ、原形を留めておらぬ、惨たらしい状態で……」
言葉を濁す部下に、黒田は苛立たしげな視線を向ける。
「七名、か。……また増えたか」
吐き捨てるような呟きには、被害拡大への焦燥が滲んでいた。
黒田は太い腕を組み、唸る。
「さらに昨年からの累計では、既に二十一名もの犠牲者が出ております。このままでは、開拓民たちの間に動揺が……」
「分かっておる!」
黒田は部下の言葉を遮った。
脳裏には、無惨な骸と化したであろう者たちの姿が浮かぶ。
「冬眠明けの熊の飢えは底なしだ。奴が“人”の味を覚えたのなら、放置すれば被害は倍増する。早急に手を打たねば、開拓どころではなくなるぞ」
「は、しかし閣下……かの“人食い”は恐ろしく狡猾です。昨年の大規模な山狩りでも、影すら掴めませんでした。ねぐらを持たず、山々を移動し続けているものかと……」
部下の弱音に、黒田はしばし目を閉じ、黙考する。
やがて、重々しく口を開いた。
「……
「かわばた……? ああ、あのアイヌどもに妙に肩入れしていると噂の……?」
部下の声には、隠しきれない侮蔑の色が浮かんだ。
「そうだ。奴が赴任してから、オンカミサㇺとかいうコタンとの関係は改善していると聞く。あの男なら、山を知り尽くしたアイヌどもを使い、かの“人食い”を仕留められるやもしれん」
「閣下! アイヌどもは信用できません! 私の部下も何人か負傷させられました。それに、河端という男、西郷と懇意にしていると聞きます。この時世に、そのような者を頼るなど、もし大久保閣下のお耳にでも入れば、我々まで……!」
黒田はその怒りを冷静に受け止めつつ、静かに視線を上げる。
彼の目には、冷徹な計算が光っていた。
「貴様の懸念は理解できる。だが、大局を見ろ。この“人食い騒動”が中央にまで詳しく知れ渡ってみろ。我々の監督不行き届きを詰られ、開拓使そのものの存続すら危うくなるやもしれん。それを避けるためには、使える駒は使うまでよ」
有無を言わせぬ威圧感に、部下はぐっと言葉を詰まらせた。
「中央」――大久保利通を中心とする政府中枢の顔が脳裏をよぎり、背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。明治六年政変以降、薩摩閥は完全に分裂し、大久保と西郷の関係は修復不可能なまでに冷え込んでいるのだ。
「……も、申し訳ございません。感情的になりました。閣下のおっしゃる通りです」
部下は慌てて姿勢を正し、深々と頭を下げた。
「うむ。まあ、骨の折れる仕事だが、抜かりなく頼むぞ」
黒田は口元だけで微かに笑ってみせたが、その目に温かみはない。
部下が退出すると、執務室に一人残った黒田の顔に、歪んだ、薄暗い笑みが広がった。
(河端武……“人斬り河端”か。ふん、好都合よ)
その瞳には、冷徹で狡猾な光が宿る。
(貴様のような血塗られた過去を持つ男は、汚れ仕事に使い潰すに限る。もし失敗すれば、その責は全て貴様に負わせ、厄介払いもできて一石二鳥というわけだ。大久保閣下も、西郷派の残党が消えることを喜ばれよう……)
黒田は、己の描いた筋書きに満足げに頷くと、再び報告書へと視線を落とした。
その横顔には、北の大地を支配下に置こうとする野心家の、冷酷な計算が浮かんでいた。
♦
明治九年(1876年)、四月。
長く厳しい冬の支配から解き放たれたオンカミサㇺのコタン(村)にも、ようやく柔らかな春の光が降り注ぎ始めていた。
雪解け水が勢いを増し、せせらぎは賑やかな歌となって村の静寂を破る。
芽吹いたばかりの緑が風にそよぎ、鳥たちの陽気な歌声が森じゅうに響き渡っていた。
生命の息吹が、そこかしこから満ち溢れている。
子供たちは土の匂いがする広場を駆け回り、歓声を上げて追いかけっこに興じている。
その傍らでは、大人たちが黙々と手を動かしていた。
男たちは狩りの準備を、女たちはオヒョウニレやシナノキの樹皮から繊維を取り出し、しなやかなアットゥシ(樹皮衣)を織り上げる。
その手つきには、厳しい自然と共に生きてきた民族の、長年の知恵と誇りが宿っていた。
村には伝統的な茅葺きの住居『チセ』が点在し、ひときわ大きなそれが集落の中心に鎮座している。ソーオッテナ(村長)の家であり、村全体の意思が決せられる聖域でもあるそのチセに、今、異質な空気が流れ込んでいた。
「ソーオッテナ、並びに長老方。本日は、是非とも皆様のお力をお借りしたく、参上いたしました」
チセの中央、厳かな炉端に居並ぶアイヌの長老たちを前に、開拓使の主事、河端武は深々と頭を下げた。
傍らには緊張した面持ちの部下たちが控えている。彼の使命はただ一つ――近隣を恐怖に陥れている“人食い”熊の討伐に、アイヌの狩りの技と知恵を借りること。
居並ぶ長老たちの中心、上座には一人の少年が静かに座していた。
あどけなさの残る顔立ち。
だが、その背筋は真っ直ぐに伸び、射るような鋭い眼差しには、若さに似合わぬ威厳と揺るぎない意志が宿っている。
彼こそが、このオンカミサㇺの若き村長、ヌイだった。
数日前まで見せていた、河端への個人的な感情を剥き出しにする姿はそこにはない。
公の長としての顔だ。
ヌイは冷徹とも言える眼差しで和人たちを見据え、武の言葉を静かに聞いていたが、その表情は微動だにしない。
「……シサム(和人)よ。貴様らの言葉、
やがて、ヌイが静かに口を開いた。
その声は若々しくも、凛とした響きを帯びている。
「我らカムイの民は、これまで幾度、和人の都合の良い言葉に翻弄されてきたことか。貴様らの政府の戯言に、我らが従う義理など、どこにもない」
冷ややかな拒絶。
長老たちもまた、重々しく頷き、無言の圧力をかける。
チセの中の空気が、ずしりと重くなった。
「わしらの同胞は、おぬしらの『開拓』の名の下に、どれほどの理不尽を強いられてきたか……その恨みの歴史、忘れられるものではないぞ」
一人の長老が、低い、地の底から響くような声で呟いた。
それは、この場にいるアイヌ全ての心の叫びだった。
武はその重い空気を正面から受け止め、覚悟を決めて再び口を開いた。
「皆様のお怒り、ごもっともです。これまでの我々の行い、弁解の言葉もございません。しかし、かの“人食い”は、もはや和人もアイヌも区別なく襲う共通の脅威。このままでは、この地に住まう全ての民が危険に晒されます。どうか、過去の遺恨は一旦脇に置き、共にこの脅威に立ち向かってはいただけぬでしょうか」
必死の訴えにも、長老たちの表情は硬いままだった。
武は一度息を吸い込み、続けた。
「無論、ただお願いするばかりではございません。開拓使本庁への協力の対価は、我々の誠意として、十分にご用意させていただきました」
武が合図すると、部下たちが緊張した手つきで持参した品々――上等な木綿の反物、輝くばかりの白米、貴重なタバコや酒樽などを、長老たちの前に次々と恭しく並べていく。
その瞬間、それまで微動だにしなかった長老たちの間に、わずかな動揺が走った。
互いに視線を交わし、品定めをするような視線が贈物に注がれる。
彼らの厳しい表情の奥に、生活に必要な物資への関心が、確かに見て取れた。
「ささやかではございますが、我々の誠意の印として、お納めいただければ幸いです」
武の言葉に、長老たちはしばし黙考した後、再びヌイに向かってアイヌ語で囁き始めた。
彼らの真剣な相談が終わるまで、武たちは息を詰めて、ただ待つしかなかった。
炉の火がパチパチと爆ぜる音だけが、異様に大きく響く。
やがて、ヌイがすっくと立ち上がった。
その小さな身体に、再び全員の視線が集まる。
「……シサムよ」
ヌイの声は、先ほどよりもいくらか和らいでいたが、 依然として威厳を保っている。
「我らカムイの民は、受けた恩義を忘れることはない。貴様らの差し出すその『誠意』とやらが、偽りのないものであるか……この我の目で見極めさせてもらおう」
一呼吸置き、ヌイは真っ直ぐに武を見据えて言い放った。
「よかろう。その話、受けよう。我らオンカミサㇺの力を貸す」
その言葉に、武は張り詰めていた息をようやく吐き出し、安堵の表情を浮かべた。
深く、深く頭を下げる。
「かたじけない、ソーオッテナ……!」
こうして、開拓使とオンカミサㇺのアイヌとの間に、”人食い”熊討伐という共通の目的に向けた協力関係が、ひとまず結ばれた。
これが単なる一時的な利害の一致に終わらず、和人とアイヌ、二つの民族が互いを尊重し、新たな関係を築く未来への、ささやかな一歩となることを、武は胸の内で強く願わずにはいられなかった。
彼の心に、確かな希望の灯が、小さく、しかし力強く灯り始めていた。
♦
「はあ~、疲れたぁ」
開拓使とアイヌとの交渉を終えた武とヌイは、集落のチセの一角に設けられた布の仕切りの内側で、しばしの休息を取っていた。
長い交渉の後、二人きりの時間が訪れ、ようやく緊張から解き放たれる瞬間だった。
制服姿の武の膝の上には、甘えた様子のヌイが座り込み、厚い胸板に向けて頬を擦り付けている。
普段の威厳ある村長としての姿とは打って変わり、今のヌイは年相応の無邪気さを取り戻していた。
「こら、行儀が悪いぞ。誰かがいきなり入ってきたらどうするんだ?」
武は軽く眉をひそめて注意を促す。
「だってぇ、やっと二人きりになれたんだもん。せっかくタケルが来たのに、ずーっと仕事ばっかりで全然かまってくれないじゃん」
ヌイは拗ねたように声を上げ、さらに強く武に抱きついてくる。
その仕草は、先ほどまでの堂々とした村長の姿とは打って変わり、幼い少年の無邪気さを前面に出している。
「今日、私がここに来たのは、開拓使札幌本庁の役人として、村の長と話し合いをするためだ。私情を挟むわけにはいかんだろうが」
武は静かに諭すように言うが、ヌイはまだ納得していない様子で頬を膨らませた。
「ぶー! そんなのわかってるよ! ねぇ、それよりも、ヌイ、ちゃんと村長らしく振る舞えたでしょ? タケルが前に教えてくれた難しい言い回しだって、ちゃんと使いこなしたんだから! 少しくらい褒めてくれたっていいじゃん!」
ぷいっとそっぽを向き、拗ねたように主張する姿は、まるでお駄賃をねだる子供のようだ。
武はそのギャップに思わず苦笑を漏らす。
(まったく……これがあの、先ほどまで凛としていた村長とはな……。だが確かに、今日は大役を見事に果たしてくれた。少しは労いの言葉をかけてやるべきだろう)
武は心の中で一つため息をつくと、優しくヌイの柔らかな髪をくしゃりと撫でた。
「ああ、見事だったぞ、ヌイ。言葉遣いも態度も、実に堂々としていて……立派なソートッテナ(村長)だった。よく頑張ったな」
「っ!? ……えへへ~♪」
途端に機嫌を直し、ヌイは花が咲くような笑顔を見せる。
そして満足そうに、再び武の胸にぐりぐりと甘えるように頭を押し付けた。
その年相応な様子に、武も思わず頰を緩める。
しばしその温もりを楽しんでいた武だったが、ふと懐から時計を取り出して時間を確認すると、名残惜しそうに立ち上がる気配を見せた。
「さて、と……少し休みすぎたか。そろそろ仕事に戻らねば。部下たちを待たせている」
その言葉に、ヌイは慌てたように武の腕を掴んだ。
「えー、もっと一緒に居ようよ~。せっかく二人きりなんだからさ」
ヌイは不満げに唇を尖らせ、武の股間に手を伸ばした。
布地越しにその大きな膨らみを感じ取る。
「こら、ヌイ、やめなさい」
「ちょっとくらい別にいいじゃん。ヌイのだってこんなになっちゃったし、責任取ってよ」
ヌイは甘えるように言い、カンタラ(ズボン)を脱ぎ捨てた。
白い
「お前なぁ、先週したばかりだろ。我慢してくれよ……」
「だってぇ……さっきのタケル、なんかかっこよくて、ドキドキしちゃったんだもん。だからヌイの、ずっとおっきくなったままなんだよ……♡」
そう言って恥ずかしそうに俯く姿はとても愛らしい。
武は少し戸惑いつつも、内心、少しだけ嬉しい気持ちもあった。
普段は無邪気で天真爛漫な性格のヌイだが、二人きりになるとこうしてしおらしく甘えてくる。
そのギャップに、武も思わずドキリとする瞬間があるのも事実だ。
「ったく……仕方のない奴だな。一回だけだぞ」
「やった♪」
ヌイは喜びに満ちた声を上げ、武の膝上に優雅に腰を下ろした。
「ね、タケル、さわって……」
ヌイが恥じらいながらも求めると、武はゆっくりと手を伸ばし、褌越しにその膨らみに触れた。
「んっ……♡」
布越しでもわかるほど熱く硬い感触に、ヌイは思わず声を上げる。
やがて武の手が動き始めると、それに合わせて彼の吐息も徐々に荒くなっていく。
「はぁ……♡ ん……あっ……♡ タケルの手、あったかい……♡」
武は優しく布地をずらすと、小さな陰茎に指を這わせる。
既にそれは固く屹立し、先端からは先走りの汁が溢れ出ていた。
「あっ……そこぉ……♡」
武の指が動くたびにヌチュヌチュと湿った音を立て、小さな竿を上下に扱かれる。
ヌイは切なげな声を漏らしながら、快感に耐えるようにぎゅっと目を瞑る。
やがて限界が訪れたのか、大きく身体を震わせて達してしまった。
「ああぁっ!♡ イくッ!♡」
勢いよく飛び出した白濁液が、武の手と着物を汚していく。
「はぁ……はぁぁ……♡」
ヌイは大きく肩で息をしながら、ぐったりと武にしなだれかかった。
「大丈夫か?」
「うん……タケル、大好き……♡」
ヌイは蕩けた顔で微笑むと、その柔らかな唇をそっと重ねる。
小鳥のようなキスを繰り返すうちに再び下腹部に血が集まっていくのを感じた。
「おいおい。さっき出したばかりなのに、お前のさらに大きくなってるぞ」
「だってぇ、タケルがかわいいから悪いんだよ♡」
ヌイは頬をほんのり赤く染め、少し照れたような笑顔で甘えるようにそう言った。
その大きな瞳には、隠しきれない真っ直ぐな好意がキラキラと溢れている。
「かわいいって……私はお前より、ずいぶんと年上なんだぞ?」
「関係ないよ。だってタケルはね、いっつも優しくて、誰よりも強くてカッコよくて……それに、やっぱり、かわいいんだもん! ヌイ、そんなタケルのこと、だーーーい好き!!」
最後の「大好き!」は、満面の、太陽みたいな笑顔で。
そのあまりにもストレートで、一点の曇りもない好意の爆撃に、歴戦の剣士であるはずの武も、ただただ戸惑い、視線を逸らすことしかできないのだった。
そんな武を見て、ヌイはクスクスと悪戯っぽく笑う。
そしてヌイは武の耳元に口を近づけると、囁くように続ける。
「ね、ヌイとウコオモイヌ(セックス)シよ♡」
その言葉に、武の体が小さく震えた。
彼は一瞬言葉を失い、ただヌイを見つめるしかなかった。
「まったく……」
武は苦笑しつつも、その誘いを拒めない自分に気づいている。
彼の目には、ヌイへの深い愛情と、抑えきれない欲望が浮かんでいた。
「準備はいいか?」
その言葉に、ヌイは小さく頷く。
彼の目には期待と少しの緊張が浮かんでいた。
ゆっくりとヌイの体を後ろ向かせ、優しくお尻を突き出させた。
そして、自らの指を口に含み、唾液を絡め取る。
人差し指と中指をゆっくりとヌイの尻穴へと挿入していく。
既にそこは柔らかく解れており、指二本程度であれば簡単に受け入れることが出来た。
「んっ……♡ ふぅ……♡」
挿入された瞬間、ヌイの口から甘い吐息が漏れた。
敏感な部分を弄られる快感に身をくねらせ、切なく喘ぐその姿はとても淫らだ。
武の指が中で動き回る度、小さな喘ぎ声が上がる。
「よし、そろそろいいか……」
頃合いを見計らい、武はゆっくりと指を引き抜く。
「あぁん……♡」
その際に生じるわずかな刺激すらも、今のヌイにとっては強烈な快感となり得る。
彼はぶるっと身震いし、思わず甘い声を漏らしてしまった。
武は背後から覆い被さるようにして抱き着き、耳元で囁く。
「入れるぞ」
「うん……きて♡」
ヌイは振り向き、小さく微笑んだ。
次の瞬間、ヌイの後孔に肉棒の先端が押し当てられる。
先端は既に先走り汁が滲み、ヌルッとした感触が伝わり、同時に、粘膜同士が擦れ合う淫らな音も聞こえた。
これから行われる行為に対する期待感からか、ヌイの鼓動が高鳴る。
武はゆっくりと腰を押し進める。
ずぶぶっという音を立て、太く長い肉棒がヌイの体内に侵入していった。
「ああん!♡ 入ってくるぅ!♡」
ヌイは嬉しそうな声を上げると、背中を仰け反らせた。
その声には、快感と喜びが混ざり合っていた。
武は慎重に、しかし確実に自身をヌイの中に挿入していく。
(やばい……こいつの中、締め付けが尋常じゃない)
ヌイのアナルの締め付けは、武に言葉では表現できないほどの快感をもたらした。
しかも中は柔らかく包み込むような感触で、それでいてその程よい熱さが子供の体温を感じさせる。
さらに腸内のヒダ一つ一つに意思があるかのように動いて刺激を与えてきており、それがたまらない快感を生み出していた。
「うっ……お前のなか、相変わらずすごいな」
武は歯を食いしばり、射精を堪える。
ヌイの腸内は、まるで別の生き物のようにうねっており、その締め付けは強烈だった。
「えへへ……タケルに喜んでもらえて嬉しい♡」
ヌイは嬉しそうに笑い、武のモノをさらに奥へと迎え入れるかのように腰を押し付けた。
その動きに合わせ、彼の小さな体がぶるっと震える。
「ね、動いていいよ……♡」
その言葉を合図にするかのように、武はゆっくりと抽送を開始した。
最初は優しくゆっくりとした動作だったが、徐々にペースを上げていく。
ずちゅっ! ずちゅっ! ぱんっ! ぱちゅんっ!
「ああっ♡ 凄いっ……タケルのが奥まで届いてるぅっ♡」
ヌイの声が部屋に響き渡る。
その声には、快感と喜びが溢れていた。
武はヌイのアナルの奥深くまで突き入れると、そこで小刻みに腰を動かす。
その動きは、まるで二人の心臓の鼓動のように、リズミカルで力強いものだった。
「あっ♡ はぁんっ!♡ ああぁぁっ!!♡♡♡」
ヌイは背中を大きく仰け反らせ、ビクビクと体を震わせた。
どうやら軽く達してしまったようだ。
その口元からは、わずかに涎が垂れ、瞳には深い喜びと官能の色が宿っており、その姿は、まるで天使のような無垢さと、同時に悪魔のような官能性を併せ持っているかのようだった。
武はその姿に心を奪われながらも、現実の状況を忘れてはいなかった。
彼は眉をひそめ、注意を促すように低い声で言った。
「しっ! 声が大きいぞ、ヌイ。誰かに聞かれたらどうする」
武が慌てて人差し指を口に当てるが、ヌイはきょとんと目を瞬かせただけ。
すぐにいつもの、太陽みたいな笑顔に戻って、あっけらかんと言い放った。
「え? 平気だよ? 村のみんなは『ウトマン(夫婦)の営み』のこと知ってるし。この前だってタケルとシたこと教えてあげたら、みんな喜んでたよ」」
その悪びれない返答に、武のこめかみに青筋がピクリと浮かぶ。
「お前というやつは……! あれほど、私たちのことは内緒にしておけと念を押しているだろうが! お前のそのお喋りのせいで、私が村でどんな目で見られていると思ってるんだ!」
思わず語気が強くなる。
武の脳裏には、村人たちの好奇と生温かい視線、そして意味深なニヤニヤ笑いがフラッシュバックしていた。
「いいじゃん。別に悪いことしてるわけじゃないんだし。タケルのチポ(ちんちん)の話するとみんな興味津々だし。ヌイもみんなに自慢できて嬉しいもん♪ えへへへ~♡」
何の悪気もなく、むしろ誇らしげに笑うヌイに、武はぐらりと眩暈を覚えた。
(こ、こいつ……! 私が村でどれだけ肩身の狭い思いをして、変な誤解を解くのに苦労しているか、全く分かってない……!)
深呼吸一つ。
武が、呆れ果てて何か言い返そうとした、まさにその時だった。
「あのー、失礼いたします! 河端さんはこちらにいらっしゃいますか?」
仕切りの布の外から、聞き慣れた部下の声が響いた。
「―――ッ!?」
武の心臓が、文字通り喉から飛び出しそうになった。
背中に滝のような嫌な汗がどっと噴き出し、視線が不自然に左右に泳ぐ。
(な、なぜ今!? よりにもよって、このタイミングで!?)
武の頭の中が真っ白になり、思考回路がショート寸前になる。
背中には滝のような冷や汗が流れ、心臓が暴れ馬のように跳ねていた。
しかし、仕切りの陰で完全にフリーズしている武とは対照的に、ヌイは驚くほど冷静だった。
まるで仮面をつけ替えるように、さっきまでの甘えた表情がすっと消える。
彼は慌てるそぶりも見せず、仕切りの布の隙間からゆっくりと顔だけを覗かせた。
「何奴だ? ここはソーオッテナの私室ぞ。無断で立ち入るでない」
その声と態度は、まさしく村の長たる者の威厳に満ちている。
「も、申し訳ございません、ソーオッテナ様! 河端主事がこちらにいらっしゃると伺いまして、至急お目通りを願いたく参上いたしました!」
部下の切羽詰まった声にも、ヌイは眉一つ動かさない。
「カワバタなら今、取り込み中だ。手が離せん。用向きならば後で聞くゆえ、外にて待て」
有無を言わさぬ口調でそう言うと、部下を追い払うかのようにシッシッと手を振る。
武は内心、(おいおい、何が取り込み中だ!)とツッコミを入れるが、口には出せない。
しかし、武の部下たちは意外としぶとかった。
「左様でございますか。しかし、ソーオッテナ様、誠に申し訳ございませんが、急を要するご報告もございまして……ほんの一言だけでも、河端主事にお伝えするわけにはまいりませんでしょうか?」
なおも食い下がる部下に、ヌイの細い眉がぴくりと不機嫌そうに吊り上がる。
明らかに苛立ちが顔に滲み始めていた。
「しつこいぞ、シサム(和人)! 外で待てと言っているのが聞こえぬか!」
「は、はい! 大変申し訳ございません! ですが我々も、どうしても河端主事と直接お話ししなくてはならぬ儀がありまして……!」
めったにないタケルとの逢瀬を邪魔され、明らかに苛立つヌイ。
「くどいぞ! さっさと帰れ!!」
その剣幕に、部下たちも怯んだように一瞬口ごもる。
だが、すぐに一人が意を決したように声を張り上げた。
「し、しかし、今すぐお伝えしないわけには……」
「~~~~っ!!」
ついに堪忍袋の緒が切れたのだろう。ヌイは顔を真っ赤にして、普段の彼らしい、子供っぽい癇癪を爆発させた。
「うっさいなぁ! だから邪魔だって言ってるでしょ! もういい! おい、タケル! 邪魔だからさっさとこいつらを追っ払えよな!」
完全に私的な口調に戻り、甘えと苛立ちの混じった声で、仕切りの内側の武に向かって叫ぶ。
師である武を顎で使うその態度。
その瞬間、武の中で、辛うじて繋ぎ止められていた理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた。
こめかみに血管が浮き出るのが自分でもわかる。
(……こ、こいつ……ッ! とうとう呼び捨てにしやがったな! しかも師匠である私をアゴで使うだと!? ……上等だ。そのふてぶてしい態度、今この場で、根こそぎ叩き直してくれるわ……!!)
沸点を超えた怒りを、しかし武は完璧なポーカーフェイスの下に隠した。
すっと表情を消し、まるで何事もなかったかのように冷静な声音で、仕切りの外の部下たちに告げる。
「いや、構わん。お前たち、中へ」
「え、主事? あ、は、はい! ありがとうございます!」
「……すまないが、そこで少し待っていてくれ」
安堵したようにチセの中に入り、遠慮がちに腰を下ろす部下たち。
その予想外すぎる展開に、今度はヌイが凍りついた。
「(タケル! なに考えてるんだよ!?)」
顔面蒼白になったヌイが、心の声で絶叫しているのが、その表情からありありと見て取れる。
武は、ふんと鼻で笑った。
「なぁに……ただ私とお前との関係を部下たちに見せつけてやろうと思ってな。こんなふうに……な!」
そして次の瞬間、武は思いっきり、ヌイの中に自身のモノを叩き込んだ。
ずぶぅううううううう!!
「あぐぅっっ!?♡♡♡」
ヌイは目を大きく見開き、口をぱくぱくさせる。
その衝撃で、彼のアナルからは腸液と先走り汁が入り混じった液体が噴き出した。
武の肉棒が根元まで挿入され、二人の下腹部が激しく密着する。
「かはっ……!♡♡♡ あ……ああ……♡♡♡♡」
あまりの衝撃に、ヌイは呼吸もままならない。
しかし、武の腰の動きはすぐに再開され、再び激しいピストンが始まった。
ずちゅっ! ぬぷっ! ぱちゅんっ!!♡♡♡
「あっ♡ ああんっ♡ やぁっ♡ ち、ちょっとタケル!? な、なにしてるのぉっ!?♡♡♡」
ヌイは慌てて振り返り、非難めいた視線を向ける。
突然の展開に頭が追いつかない。
そんなヌイの混乱を無視するかのように、武は腰を振り続けた。
その激しい抽送運動によって、二人の結合部からは泡立った腸液が漏れ出している。
パンッ、パンッという音が、リズミカルに鳴り続ける。
その激しい動きにヌイの体は揺さぶられ、快感が全身を襲う。
「(んっ!♡ やめろって!♡ こんな所で……
「うるさいな。そもそもお前が私を誘ったから悪いんだろ? しっかり責任取れよ」
「(そ、それは……そうだけど……)」
「それに、お前のここも喜んでいるじゃないか?」
そう言って、武はヌイのペニスに手を伸ばした。
その先端からは透明な先走り汁が流れ出ている。
それを指先ですくい取り、亀頭全体に塗り込むようにして愛撫する。
「やっ!♡ ああんっ!♡♡」
敏感な部分を責められて、思わず甘い声を上げてしまうヌイ。
「(タ、タケル……もう、やめてよぉ……♡ そんなにされたらヌイ、声出ちゃうよぉ……♡)」
「ん、どうした? 我慢せずに、もっと声出せよ。皆にお前の可愛い声を聞かせてやれって」
そう言って、武はさらに腰の動きを加速させる。
「あうっ!♡ ああんっ!!♡♡♡」
ヌイは堪らず、大きな声で喘いでしまう。
すると武の部下たちが興味津々といった表情でこちらを見てきた。
幕の内側で起こっている痴態を知らない武の部下たちは、顔を赤くして声を荒げるヌイの様子に不審を抱いていた。
彼らの目には、明らかに普通ではない状況が映っていた。
一人の部下が、意を決して声をかける。
「あの……ソーオッテナ様、どうかなさいましたか?」
「……ッ!♡♡」
その声に、ヌイの体が小さく震える。
彼は必死に声を抑えようとするが、快感の波が押し寄せてくる。
「……何か、具合でも悪いのですか?」
別の部下が、心配そうに付け加える。
彼らの目には、明らかな困惑の色が浮かんでいた。
和人の男たちの視線を感じながら、ヌイは威厳を保とうと必死に態度を整える。
しかし、その努力も武の激しい動きの前には無力だった。
「な、何も問題はない! 本当に……何もないのだ! わ、我はただ……んぁっ♡ ……少し疲れているだけだ! 気にせず、そこで待て! んんっ!♡……」
ヌイは快感に身を震わせながらも、必死に返事をする。
「そ、そうなのですか……それならば良いのですが……」
ヌイの言葉に、部下たちは安心したように再び腰を下ろした。
そんな彼らの反応に、武はさらに嗜虐心を煽られる。
彼はさらに激しく腰を打ち付けながら言った。
「どうだ? 皆の前で辱めを受けている自分を見られる気分は」
「ば、ばかっ!♡ そんなこと、聞くな!♡ あっ♡ ああんっ!!♡♡♡」
ヌイの反論を封じるかのように、武はさらに激しく腰を動かした。
その動きに合わせて、ヌイは嬌声を上げる。
「(ああっ!♡♡ ダ、ダメだってばぁ!♡♡ そんなに強くされたら……んん♡♡♡)」
武の責めに対して、もはや抵抗の術はなかった。
彼の心は限界を迎えようとしていた。
その様子を見た武は、嗜虐的な笑みを浮かべ、より一層深く突き刺した。
ヌイの心の中で叫ぶ声。武は亀頭で腸壁を擦り上げつつ、竿全体で腸内全体をかき混ぜるように動かした。
その刺激によってヌイのアナルが収縮し、肉棒を強く締め付ける。
「うっ……なか、すごいうねりだ。まるで荒波にでも揉まれてるようだ」
武は快感に思わず顔を歪める。
彼はヌイのアナルに刺激を与えるように、何度も何度も肉棒を出し入れした。
その動きに合わせるように、部下の一人が口を開いた。
「……あの、ソーオッテナ様。なにか我々にお手伝いできることがあればおっしゃってください。力仕事でも何でもやりますので」
「ああもう!♡ うるさいな!♡ お前らは黙って見てろよっ!♡ 仕事なら……タケルがやって……くれてるから……♡ んあああっ!!♡♡♡」
ヌイは怒りと快楽で顔を真っ赤にしながら、必死に言葉を返す。
「主事が……ですか? しかし、主事にそのような雑用をさせるわけには……」
「いいから!♡ もうほっといてよ!♡ はぁっ……♡ お前たちのっ……♡ タケルは……本当に……♡ すごいんだから♡」
ヌイは怒りと快感で我を忘れ、思わず声を荒らげてしまう。
そんな彼の姿を見て、武はさらに興奮し、腰の動きを加速させた。
パンッ!♡ パチュンっ!♡♡♡ ヌプッ!♡♡ グポッ!♡♡
「(ちょ、ちょっとぉ……タケルぅ♡ 音、出てる……♡ 聞こえちゃうよぉ……♡)」
ヌイは抗議の視線を送るが、武は全く意に介さない様子だった。
それどころか、さらに激しく打ち付けてくる始末だ。
もはや言葉を発する余裕すらなかった。
「村長様もそう思いますか? そうなんですよ、河端主事は本当に凄いんです!」
まだ二十歳にも満たなそうな、年若い部下が目を輝かせて言う。
「はあ……んふっ♡ そう……なのか?♡ タケ……ルは……お前たちにも……んくっ♡ 好かれてるの……か……? あふっ♡」
「はい、それはもう! 頭が良くて、腕も立つし、部下思いな人で尊敬しています!」
「そうか……♡ んっ……♡ そうだよな……♡ やつは、ヌイの……♡ ウトマン(夫婦)……♡ だからな♡」
「ウトマ……? どういう意味ですか?」
「ふふふっ……♡ 知りたいか……♡ 実はヌイとタケルはな……♡♡」
パァンッ!!
「うあぁっ!?♡♡♡」
突如、ヌイの尻に痛みが走り、彼は悲鳴を上げた。
武が思い切り平手打ちをしたのだった。
「余計なことを言わなくていい!」
パァン!! パァン!!
平手打ちの連撃によって、アナルは強く窄まり、同時に腸壁全体が痙攣したように脈動した。
その動きはまるで武の肉棒を搾り取るかのようだった。
「(痛いぃ♡ お尻叩かないでぇ……♡)」
ヌイは小さく呻きながら叫ぶ。
しかし、その痛みさえも快感に変わっていく。
武はヌイの尻を撫でつつ、さらに強く腰を打ち付けた。
「ほら、もっと締め付けろ! お前の好きなところを突いてやるから!」
「うあぁんっ♡ わかったぁ……♡」
もう完全に快楽に堕ちたヌイは、言われるがまま腸内に力を入れて武のモノを締め付けていく。
そして同時に腰の動きに合わせて自らも前後に動かし始めた。
その動きはまるで、男根を貪る娼婦のようだった。
顔を上気させ、目は虚ろになり、口元からは涎が垂れている。
もはや完全に理性を失っていた。
そんな彼の痴態を見て、武の部下たちも、なんとなくヌイが何をしているのかを察したようだ。
彼らは顔を赤らめつつ、食い入るようにヌイの痴態を見つめていた。
「ああっ!♡♡ もう無理っ……♡♡ イっちゃう!♡ イクッ……ヌイ、イッちゃうよぉッッ!!♡」
「私も……もう限界だ。中に出すぞ!」
「うんっ♡ 出してぇ♡♡♡ タケルの、トペ(精液)全部ちょうだいぃいいいっっ!!♡♡♡」
次の瞬間、武はヌイのアナルに大量の精液を放出した。
どぴゅっ! びゅるるっ! ぶぴゅっ! どくんっ! どぷっ……ごぽぉお……。
「ああんっ!♡♡♡ やぁっ!♡ あああっ!!♡♡♡」
腸内を満たす熱い液体の感触に、ヌイは体を痙攣させるように震わせた。
「ああぁ……出てるぅ……♡ タケルのトペが……ヌイの中にいっぱい出てるよぉ……♡」
武が肉棒を引き抜くと、ぽっかりと開いたアナルから大量の白濁液が流れ出てきた。
それはまるでお漏らしをしているかのように、床を白く染めていく。
「はぁ……ん♡ お腹から溢れてくるぅ……♡」
ヌイは恍惚とした表情で呟いた。
その表情は完全に蕩けきっており、先ほどの会談で見せていた威厳のある態度は消え失せ、淫靡な雰囲気を漂わせていた。
一方、部下たちは皆一様に顔を真っ赤に染めて、静かに退出の準備を始めた。
「あ、あの、ソーオッテナ様、ご気分が優れないご様子……いえ、何やらお取り込み中のようですので、我々はこれにて失礼いたします! どうぞ、河端主事と……ごゆっくりお過ごしください!」
部下たちが足早にチセから去っていくと、ヌイは緊張の糸が切れたのか、力なくその場に倒れ込んだ。
「はあ……はあっ……♡」
その顔は赤く上気し、意識を失ったのか、目を閉じて深い呼吸を繰り返している。
武は額に滲んだ汗を手の甲でぬぐい、大きく息を吐き出した。
「ふぅ……。ったく、肝が冷えたぞ。まあ、あいつらも流石に気づいてはいまいが……お前のせいで、とんだ赤っ恥をかくところだった」
改めて、床に敷かれた毛皮の上で無防備に眠りこけているヌイを見つめる。
その寝顔は、さっきまでの淫靡さが嘘のように、まるで幼子のようにあどけない。
本当に、この振れ幅の大きさは何なんだ、と武は半ば呆れる。
さきほどまでの怒りは、その無垢な寝顔を見ているうちに、いつの間にか霧散していた。
「やれやれ……」
小さく呟き、武は自分の羽織っていた上着を脱ぐと、眠るヌイの小さな身体にそっとかけてやった。
「さて……と」
いつまでもこうしてはいられない。武は気持ちを切り替え、背筋を伸ばす。
「そろそろ本庁に戻るか。“人食い”退治の準備が山積みだ」
ヌイを起こさないよう、静かに立ち上がろうとした、その時だった。
「ん……たけるぅ……ばか……」
ふと、背後から拗ねたような小さな寝言が聞こえてきた。
振り返ると、そこには穏やかに眠る少年の姿。しかし、その口元はまだ少しだけ尖っている。
(……やれやれ、寝言でまで悪態をつくか)
苦笑が漏れる。
だが、その寝顔を見つめる武の目には、確かな温かさが宿っていた。
(……この小さな村長に、これから大きな戦いを頼むことになるのか……)
武は心の中で呟く。
(頼りにしてるぞ、相棒)
小さく微笑むと、武は一度だけその寝顔に視線を送り、そして迷いなくチセを後にした。
本当の戦いは、これから始まるのだ。
“人食い”という巨大な脅威、そして、和人とアイヌの間に横たわる深い溝……乗り越えるべき壁は高く、険しい。
だが――武の瞳には、既に次の戦場を見据える、鋭く、そして揺るぎない光が宿っていた。