※この作品はR-18です。

北海道開拓異聞~薩摩隼人はアイヌの少年を愛でる~   作:とけそうだら

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第4話 薩摩隼人は開拓民の少年と仲を深める

「むぅ...タケル、ちょっと遅すぎ……」

 

 夕暮れのオレンジ色がじわりと滲む草原で、ヌイは膝を抱え、尖らせた唇から小さなため息をこぼした。

 腕の中では、白い毛玉のようなポロカラがくぅんと喉を鳴らし、心配そうにヌイの顎を見上げる。

 その柔らかな頭を指先で撫でながら、ヌイは再び、夕餉(ゆうげ)の煙が細く立ち上る村の方角へ、焦れた視線を投げた。

 

「もう、待ちくたびれちゃったよ。ね、ポロカラ?」

 

 応えるようにポロカラが「キュ」と鳴き、ヌイの頬にするりと身を寄せる。

 その温もりが、少しだけささくれ立った心を慰撫するようだった。

 

「ったく、あのシサムのガキと何をそんなに長話してるんだよ……コタンに戻ったら、ヌイと稽古をすると約束したくせに…」

 

 その呟きには、ただの焦燥とは異なる、どこか置き去りにされたような響きが滲んでいた。

 武との剣術の稽古は、ヌイにとって単なる鍛錬ではない。

 二人きりの濃密な時間、互いの呼吸がぶつかり合う、かけがえのない瞬間なのだ。

 それが今日は、あの宗太郎とかいう小僧のせいで、いともたやすく…。

 

 爪先で地面をせかせかと引っ掻きながら、手持ち無沙汰に拾い上げた枯れ枝で、乾いた土くれに意味もなく円や線を描き始める。

 最初はただの気まぐれな落書きだったはずが、いつの間にか、まるで父親のような、優しい目つきのどこか見慣れた武の横顔のような形が浮かび上がっていた。

 はっと我に返ったヌイは、慌ててそれを手で乱暴に消し去り、耳朶を微かに赤く染めた。

 

「ちぇっ……仕方ない、迎えに行くか。ポロカラ、あのシサムのガキの匂い、まだ覚えているだろう? 案内しろ」

 

 ポロカラは心得たとばかりに小さな鼻をひくつかせ、ヌイの肩から軽やかに飛び降りると、地面の匂いを確かめるようにクンクンと鼻を鳴らし、迷いなく駆け出した。

 ヌイはその小さな白い背中を、黙って追いかける。

 

 しばらく走ると、なだらかな丘の頂に、ぽつんと一軒の家屋が見えてきた。

 宗太郎の家だ。

 周囲の家々からは少し距離を置いた場所に、まるで夕暮れの空に身を寄せ合うように、寂しげに佇んでいる。

 

 その家屋に近づくにつれ、ヌイの眉間の皺がふっと消え、唇の片端がいたずらっぽく持ち上がった。

 焦燥に曇っていた瞳には好奇の色が浮かび、頬にはかすかな高揚感が差している。

 

「ふふ、ポロカラ。ヌイたちが突然現れたら、タケルはどんな顔をするかな? きっとびっくりするよね。それとも……迎えに来てくれて嬉しいって言ってくれるかな?」

 

 言葉の終わりに、自分でも気づかぬほどの小さな期待と、それを打ち消すかのような微かな不安が揺れた。

 足元でポロカラが「クゥン」と小さく鳴き、まるで励ますように、ヌイの足首にふわりと頬を寄せた。

 

 ヌイは、まるで森の獣のように足音を消し、家の裏手へと回り込む。

 低い窓の下に身を屈め、壁に耳をぴったりと寄せると、中から漏れ聞こえてくる声に全神経を集中させた。

 耳の奥で、自分の心臓の音がやけに大きく響くのを感じる。

 

 途切れ途切れに聞こえるのは、甲高い、子供の声。

 宗太郎だろう。

 そして、時折それに相槌を打つように響く、タケルの落ち着いた、低い声。

 

 二人が何を話しているのか、その具体的な内容までは判然としない。

 しかし、会話の調子は穏やかで、時折、弾むような小さな笑い声が混じっているのが聞き取れた。

 

 ヌイは、乾いた唇をぺろりと舐めた。

 もう少しだけ、近づいてみよう。

 

 猫のようにしなやかな動きで、音もなく裏庭へと足を踏み入れる。

 背の低い窓枠を目指し、息を殺しながら、そっと、そっと身を寄せていく。

 

(ふん、どうせくだらない話をしてるんだろうけど.……タケルがどんな顔をしてるのか、見てやるか)

 

 窓の下に辿り着いたヌイは、ゆっくりと身を起こし、内側を覗き込もうとした。

 彼の心臓は早鐘のように打ち、頬は期待と緊張で熱くなっていた。

 

 家の窓に忍び寄り、ヌイはそっと中を覗き込んだ。そこで見たのは…………

 

 武とキスをしながら、お尻の穴を突かれている宗太郎の痴態だった―――

 

「……え?」

 

 思わぬ光景に、ヌイは呆然としていた。

 

「はっ!♡ ああん!!♡♡」 

 

 宗太郎の淫靡な嬌声が室内に響き渡る。

 まだ子供の体格には不相応なほど、黒髪の少年の尻穴は極太の魔羅を根元まで咥え込んでいた。

 

 宗太郎は頬を赤らめながら、武と激しく唇を重ね合っている。

 

「んっ……ちゅっ♡ はぁんっ♡ せんせっ……そんな激しいっ……♡」

 

「はっ……はぁ……。宗太郎、悪い子だ。私を誘惑して……初めてなのにこんなに感じるなんて……」

 

「ち、違いますよぉ♡ 俺は……先生と仲良くなりたかっただけなのに……♡ 先生がいきなり接吻してきたんじゃないですかぁ……♡」

 

「ふふ、宗太郎は可愛いな。ほら、もっと気持ちよくしてあげよう……」

 

 武は宗太郎の体を抱きかかえると、そのまま床に押し倒して腰を動かし始めた。

 その動きは、まるで波のように緩やかで、しかし確実に宗太郎の理性を侵食していく。

 

「あっ♡ やんっ!!♡ せんせっ、すごいぃ♡♡♡」

 

 宗太郎の声が高くなる。

 彼の表情は快楽に歪み、目は潤んでいた。

 小さな体は激しい衝撃に揺さぶられ、その度に甘い声を漏らす。

 

「ダメだ...宗太郎...こんなに締め付けられたら...すぐに出てしまうよ……」

 

 武の動きが更に激しくなる。

 宗太郎の小さな尻穴は、卑猥な水音をたてて、肉棒を呑み込み、そして吐き出す。

 その度に、透明な液体が二人の結合部からこぼれ落ちる。

 

「あんっ!!♡♡ せんせぇっ!♡ もっとぉ♡ もっと俺をかわいがってくださいっ!!♡」

 

「はぁ……はぁ……! 宗太郎……! お前の中、気持ちいいよ……!」

 

 ヌイの存在に気づくこともなく、二人の行為は激しさを増していく。

 宗太郎は武に身を任せて快楽を貪っていた。

 口元から涎を垂らしながら、恍惚とした表情を浮かべている。

 

(なんだよこれ……!? なんで……タケルとシサムのガキが……?)

 

 ヌイの頭の中は混乱していた。

 自分が想像していたものとは全く違った展開になっていたからだ。

 目の前で繰り広げられる淫靡な光景に、彼の理性が揺らいでいく。

 宗太郎の艶めかしい姿が、彼の目に焼き付いていた。

 

(なんで……なんでタケルとシサムが……ウコチャヌㇷ゚コㇿ(セックス)してるんだ……!? ヌイとタケルはウトマン(夫婦)なのに...!)

 

 ヌイは必死に現実を否定しようとしたが、目の前の光景は容赦なく彼の心を蝕んでいく。

 武の逞しい腰使いに合わせて、宗太郎が甘い嬌声を上げる度に、ヌイの心臓が激しく鼓動を打つ。

 

「タケルは……ヌイと愛し合っているのに……うう……タケルの裏切りもの……」

 

 悔しそうに呟きながらも、ヌイの手は自然と自身の下半身へと伸びていった。

 ズボンを脱ぎ捨て、硬くなった自身の肉棒を握る。

 そして、もう一方の手の指が自身の秘所へと忍び寄る。

 

「あっ……ぁぁ……!♡♡♡」

 

 アナルに指を挿入した瞬間、ヌイの背筋を電流が走った。

 

「許せない……シサム、弱っちいくせに……タケルを誘惑したな!!」

 

 怒りに震えるヌイは、宗太郎に対して激しい怒りを抱いていた。

 自分の知らないところで勝手に愛する武に手を出したことが許せないのだ。

 

 だが一方で、武の逞しく猛々しい魔羅が、宗太郎の小さな尻穴に挿入されている光景に興奮していた。

 

「んっ...……♡ タケル...ひどいよ……。ヌイがいるのに...他の子に手を出して……んぁっ!♡♡」

 

 ヌイの喘ぎ声が小さく漏れる。

 普段の無邪気な彼からは想像もつかない、淫らな姿だった。

 肉棒を激しく扱きながら、アナルを指で掻き回す。

 その動きに合わせるように、目の前では武と宗太郎の行為がさらに激しさを増していく。

 

「んっ……♡ あっ……♡ せんせぇ……♡ もっとぉ……♡ もっと激しくしてぇ……♡♡♡」

 

 宗太郎の甘い声が響く。

 その声に刺激され、ヌイの指の動きも加速していく。

 

「はぁ...はぁ...! 宗太郎! もっとだ……もっとお尻の穴を締めなさい!」

 

 武の低い声が響く。

 その言葉に応えるように、宗太郎の中がぎゅっと収縮して武のモノを締め付ける。

 その刺激に、武の肉棒がさらに大きさを増す。

 

「あっ!?♡ せんせぇのおちんちん...またおっきくなったぁ……♡♡♡」

 

 宗太郎の表情は蕩けきっており、口の端からはよだれが流れ出していた。

 その淫らな姿に当てられたかのように、武の動きも激しくなる。

 パンパンという肉同士がぶつかり合う音が響き渡る中、二人の喘ぎ声だけが部屋に響いていた。

 

「ふあっ!♡♡ んっ、すごいぃ!♡♡ 奥まで届いてるぅぅ!!♡♡♡」

 

 宗太郎は武に抱きつき、積極的に腰を振っている。

 その姿は、初めてとは思えないほど淫らで、宗太郎に男を悦ばせる才能が有ることを示しているようだった。

 

 それはヌイの想像を超えた光景だった。

 

「タケルの顔……すごく気持ちよさそう……」

 

 悔しそうに呟きながらも、ヌイの手は止まらない。

 アナルに挿入した指はいつの間にか三本になっており、ぐちゅりという音を立てながら激しく動かされている。

 その動きに合わせるように、ヌイのペニスもビクビクと痙攣し、先走り汁が垂れ落ち、地面にシミを作っている。

 

「先生っ!♡♡ 好きっ!♡♡ 大好きですっ!!♡♡♡」

 

 宗太郎の告白が、ヌイの心を更に掻き乱す。

 その言葉に応えるように、武の腰の動きが更に激しくなる。

 

「ぁあっ!!♡♡ 俺、イク……♡♡ 俺、イっちゃうよぉ!!♡♡♡」

 

「私もだ……! 宗太郎! 一緒にイこう!」

 

 二人の声が重なり合う。

 

「はいっ!♡ 俺、せんせぇといっしょがいいですぅ!♡♡♡ あんっ!♡ イクッ!♡♡♡ イッちゃうぅ!♡♡♡♡」

 

 宗太郎の体が痙攣し、絶頂を迎えた。

 同時に、武も限界を迎えたようだった。

 清太郎の中に大量の精液が注ぎ込まれる。

 

「あぁっ♡♡♡ 出てる……先生の精水が……いっぱい……♡♡♡」

 

 恍惚とした表情で、清太郎は呟く。

 その光景を見て、ヌイは自分も興奮を抑えきれなくなっていた。

 

「ううっ……!♡♡ タケルぅうううううう……!♡♡♡」

 

 ヌイの体が大きく震える。

 彼の肉棒から白濁した液体が勢いよく噴き出し、地面に飛び散る。

 その瞬間、ヌイのアナルが激しく痙攣し、中に入れていた指を強く締め付けた。

 快感の波が全身を駆け巡り、ヌイは息を荒げながら、その余韻に身を委ねる。

 

「はぁ...はぁ...♡♡♡」

 

 絶頂の余韻に浸りながら、ヌイは再び二人を見つめた。

 武と宗太郎は抱き合ったまま、激しい呼吸を繰り返している。

 

「先生……大好きです……♡」

「……私もだよ、宗太郎」

 

 二人は見つめ合うと、再びキスを交わした。

 その唇と唇が触れ合う音が、ヌイの耳に鋭く響く。

 

(っ……!? ひどい……! タケルは……ヌイのものなのに……!)

 

 ヌイの中で、怒りが燃え上がる。

 それは、まるで彼の体を内側から焼き尽くすかのような激しさだった。

 

 武に対する強い嫉妬と独占欲が、ヌイの中で渦を巻いていく。

 その感情は、彼の理性を少しずつ蝕んでいった。

 

「シサム……! もう……許さないぞ……!」

 

 ヌイの叫び声が、突如として静寂を破った。

 その声には、怒りと悲しみが混ざり合っていた。

 

 彼は小屋の扉を乱暴に開けた。

 その音に、武と宗太郎は驚いて振り向いた。

 

「え……!? ヌイ!?」

 

 武と宗太郎の顔に、驚きの色が浮かぶ。

 宗太郎の尻穴からは、武の魔羅が引き抜かれる。

 

 その瞬間、透明な液体が二人の結合部からこぼれ落ちた。

 

「……シサム! よくもヌイのタケルを……!」

 

 ヌイの叫び声が、再び小屋に響き渡った。

 

「な、なんだよいきなり! お前、勝手に人の家に入ってくんなよ!」

 

 宗太郎は動揺しつつも、ヌイの突然の侵入に抗議する。

 しかし、ヌイの顔には怒りの色が浮かんでおり、彼の言葉を聞く気配は全くなかった。

 

「うるさい! お前なんか……シサムのくせに……!」

 

 ヌイの声は震えていた。

 まるで怒りが体の中から溢れ出し、制御できなくなっているかのようだ。

 その姿を見た宗太郎は、すぐにヌイの感情の正体に気づいたように、にやりと笑みを浮かべた。

 

「なんだよ、俺に嫉妬してんのか? 誇り高いアイヌの戦士のくせにみっともねーな」

 

「っ! そんなんじゃない!」

 

 ヌイは顔を真っ赤にして反論する。しかし、その声は弱々しいものだった。

 宗太郎は意地悪く口元を吊り上げながら、ヌイを見つめた。

 

「はは、武先生が俺のことを気に入ったのが気に食わないんだ? でもお前は別に武先生と付き合ってるわけじゃないんだし、気にする必要ないじゃん」

 

 宗太郎の言葉に、ヌイは目を見開いた。

 その瞬間、彼の顔が真っ赤に染まる。

 

「なっ……!? お前に何が分かる!?」

 

 ヌイの声には、混乱と動揺が混じっていた。

 確かに、彼はまだ武の正式な伴侶ではない。

 だから、誰か他の人が武に近づいても、文句を言う権利はない……そう頭では分かっていた。

 

 しかし、実際に宗太郎と武が親しげにしているのを目の当たりにすると、嫉妬心がどうしようもなく湧き上がってくるのだった。

 

 その表情を見て、宗太郎はさらに追い打ちをかけるように、にやりと笑みを浮かべた。

 その笑みには、勝利を確信したような色が浮かんでいた。

 

「でもさ、武先生、俺のこと好きって言ってくれたし。だったら別に問題ないと思うけど?」

 

 宗太郎の言葉はまるで挑発のようだった。

 

 その言葉が、ヌイの心に深く突き刺さる。

 ヌイの顔が一瞬で怒りに染まった。その目には、激しい炎が燃え上がっていた。

 

「なっ……!? タケル!! お前、このシサムにそんなこと言ったのか!?」

 

 ヌイは怒りと混乱で武に詰め寄った。

 

 その勢いは、まるで嵐のようだった。

 武は一瞬驚きながらも、冷静を保とうとし、困惑した様子で言葉を選んだ。

 

「え? いや、私は……弟子を敬愛しているという意味でだな……」

 

 武の説明を聞いて、ヌイの表情はさらに険しくなる。

 その顔には、怒りと共に深い悲しみが浮かんでいた。

 

「弟子!? いつからこのシサムは、タケルの弟子になったんだよ!?」

 

 ヌイは驚きとショックを隠しきれず、思わず声を上げた。

 その声には、裏切られた悲しみと怒りが混ざっている。

 

「だが……宗太郎は村を守るための力が欲しいと言って……それで剣術の稽古をつけてほしいと頼まれたんだよ。だから私はそれに応じて……」

 

 武の言葉は、ヌイの心をさらに掻き乱した。

「村を守る? 剣術の稽古? そんなの嘘だ! このシサム、絶対に何か企んでる!」

 

 ヌイの言葉に、宗太郎は肩をすくめた。

 

「何を企むって? 俺はただ、強くなりたいだけだよ。それに……」

 

 宗太郎は意地悪く笑みを浮かべた。

 

「武先生と一緒にいるのは楽しいしな」

 

 その言葉に、ヌイの怒りが爆発した。

 彼は宗太郎に向かって飛びかかろうとしたが、武がその間に立ちはだかった。

 

「ヌイ、落ち着け!」

 

 武の声には、厳しさと共に心配の色が混ざっていた。

 彼は深呼吸をし、落ち着いた声で話し始める。

 

「ヌイ、よく聞いてくれ。宗太郎は本当に村のために力を求めているんだ。それを疑うのは間違っている」

 

 武の言葉は静かに、しかし力強く響いた。

 彼の目には、ヌイの理解を求める切実さが宿っていた。

 

「彼は村を守るための力が欲しいと言って来たんだ。そして、私に剣術の稽古をつけてほしいと頼んできた。私はその真摯な思いに応えただけなんだ」

 

 武は一瞬言葉を切り、ヌイの反応を見た。

 ヌイの表情には、まだ納得しきれない様子が浮かんでいる。

 宗太郎が武の弟子になるという事実が、ヌイの心に深い混乱をもたらしていることは明らかだった。

 

 ヌイは目を伏せ、小さな声で呟く。

 その声には、不安と戸惑い、そして深い悲しみが混ざっていた。

 

「じゃあ、ヌイはどうなるんだよ……」

 

 その言葉に、武の心が痛んだ。

 彼はヌイに近づき、優しく肩に手を置いた。

 

「……ヌイ、一つだけ言っておく」

 

武の声は柔らかく、しかし芯の通ったものだった。

ヌイは顔を上げ、武の目を見つめた。

 

「私にとってお前は、ただの弟子じゃない。お前は……私にとって特別な存在だ」

 

 その言葉に、ヌイの目が大きく開いた。武の瞳には真剣な光が宿っており、その言葉に嘘偽りはなかった。

 ヌイの心臓が激しく鼓動を打ち始める。

 

「…………本当?」

 

ヌイの声は震えていた。

その瞳には、まだわずかな不安が残っていたが、同時に武の言葉を信じたいという強い思いが浮かび上がっていた。

 

「本当だよ。私はお前のことを……家族のように思っている」

 

 武は優しく微笑みながら、ヌイの頭に手を置いた。

 その指先から伝わる温もりは、まるで春の陽だまりのように心地よい。

 その瞬間、ヌイの表情が見る見るうちに和らいでいく。

 彼の瞳に宿っていた怒りの炎が静まり、先ほどまで宗太郎を鋭く睨んでいた視線も、少しずつ柔らかさを取り戻していく。

 まるで凍てついた湖の氷が春の訪れと共に溶けていくように、彼の心の氷も徐々に溶け始めていた。

 

「まあ、俺は先生の弟子ってことで十分だからさ」

 

 宗太郎の声には、意外な落ち着きがあった。

 彼は両手を頭の後ろで組みながら、率直に言葉を続ける。

 

「ヌイ、お前は安心していいよ。武先生はお前にとって特別な人なんだろ? それは俺にも分かるよ」

 

 宗太郎の言葉に、ヌイは少しだけ照れ臭そうに頷いた。

 彼の頬が夕陽に照らされて薄紅色に染まる。

 その表情には、素直な喜びと、同時に自分の感情を認めることへの恥じらいが混ざり合っていた。

 

 ヌイはゆっくりと武の手を握りしめる。

 その握り方には、幼さの中にも強い信頼と深い愛情が込められていた。

 小さな指が武の大きな手に絡まり、その温もりを確かめるように、少し力を込める。

 

「……わかったよ、タケル。お前を信じる」

 

 ヌイの声は、まだ少し震えていたが、そこには新たな決意と希望の光が宿っている。

 それは単なる和解の言葉ではなく、これからも共に歩んでいくという誓いでもあった。

 

 武はその手をしっかりと握り返した。

 彼の目には、ヌイへの深い愛情と、この少年の成長を見守る喜びが浮かんでいた。

 二人の間に流れる静かな理解は、言葉を超えた絆の証だった。

 

 ヌイの目には、依然として小さな嫉妬の炎が時折燃え上がり、宗太郎の態度にも、かすかなライバル意識が見え隠れしていた。

 だが、それは三人の関係が単純ではなく、これからも様々な試練を乗り越えていかなければならないことを示唆している。

 

 武は二人を見つめ、静かに深いため息をついた。

 彼の心の中には、この複雑な状況をどう収めるべきか、様々な思いが渦巻いていた。

 しかし同時に、この二人の少年たちの成長を見守ることへの喜びも感じていた。

 

 ヌイと宗太郎の関係は、これからどのように変化していくのだろうか。

 それは誰にも予測できない。ただ、この日を境に、彼らの関係に新たな局面が訪れたことは確かだった。

 

 春の夕暮れの陽光が窓から差し込み、三人の姿を優しく包み込んでいる。

 その温かな光の中に、彼らの未来への希望と不安が、静かに溶け込んでいった。

 

 やがて来る夜を前に、部屋の中は穏やかな静けさに包まれる。

 それは嵐の後の静寂のように、心を落ち着かせる特別な時間だった。

 

 

 




 本作の更新を一時休止とさせていただきます。
 いつも応援いただき、本当にありがとうございます。

 具体的な再開時期は未定ですが、いずれ続きを書きたいと思っておりますので、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
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