※この作品はR-18です。

彼女は彼女に恋をした。   作:霧里

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彼女は彼女に構われたい。(Hシーン

 

きーんこーんかーんこーん♪

 

学業の終わりを告げるチャイムの音。

 

ぐぐっと背を伸ばし、立ち上がった羽流は、軽い足取りで真冬の席へと向かって歩く。

 

「かえろーぜ、まふゆん」

「うん」

 

にかっと笑って、くすっと微笑み返されて、荷物をまとめた真冬が席を立とうとした時だった。

 

「北見さん、ちょっと良いかしら?」

「あ、はい。ごめん羽流。ちょっと待ってて?」

「へーい」

 

教室の入口。担任に呼ばれた真冬は、私に一言断りつつも、呼ばれるままに歩いていく。まぁ、こういうとこだよねぇ。頼みやすいって言えば聞こえは良いけどさ。だからって、なんでもかんでも真冬を手伝わせようとするのは、教師としては怠慢だと思うわ。

 

こんなの、今日に限ったことでもない。

 

真冬と過ごしていれば、よくよく遭遇する光景ではあった。

 

担任と話していた真冬が連れられていくのを見送った私は、彼女に成り代わって席につく。頬杖をつき、ふてぶてしく唇を鳴らして、如何にもつまらなさそうにしていると、友人の一人が声を掛けてきた。

 

「どしたの羽流? 帰らないの?」

「いやぁ、教師に女を盗られましてな?」

「ああ、北見さん? 良くやるよねあの子も。適当に断ればいいのに。ていうか、最近仲いいじゃん。好みだっけ、ああいう子?」

「良い子でしょ? アンタとは正反対でさ?」

「お? なんだ? 当てつけか、このやろう♪」

「野郎じゃありませんー。女郎でございますー♪」

「あはははっ。いいけど、羽流も普通に彼氏作りなよ? そんな冗談ばっか言ってないでさ? あんたモテるんだから」

 

大きく笑った彼女は、私の肩を一つ叩くと、ひらひらと手を振りながら歩いていく。別に、冗談でもなかったんだけどな。けれど、私を振った彼女には、私の告白は冗談に聞こえていて、私もきっと、冗談に聞こえるように言ってしまったんだろう。お陰で友人関係を続けられてはいるけれど…。

 

失恋の苦い記憶を思い出すと、やっぱり胸が痛くなる。

 

それの何が痛いって、この痛みを忘れるには、新しい恋をしなきゃいけないって所。その恋が実る保証は、何処にもないのにさ。

 

「まふゆんのバーカ。早く帰ってこいっての…」

 

一人ついた悪態が、誰に聞かれることもない。ついた頬杖を崩してうつ伏せると、頬を撫でたのは古臭い木の感触だけだった。

 

ああ、でも…。

 

さっきまでこの席に、真冬が座ってたんだよなぁ。

そう思えば、この古臭い木の感触にも何か違った風にも思えてくる。

 

スリスリと、知らず知らずに頬ずりをしていた。

 

やっぱり、私の机とそう変わるものじゃない。変わるものじゃないんだけど。

なんでかな? 心がくすぐられる。何ていうかそう。彼女の温もりだったり、残り香だったり、やましい気持ちが溢れて…。いや、やましくはないのか。

好きな人の事を考えてドキドキするのが、やましくあってたまるものか。

 

真冬が悪いんだ…。

 

好きになってくれるって、私の事考えてくれるって言ったくせに、放ったらかしにしてんなよ…。不満はある。だけど、それを口には出来なかった。

私のワガママで真冬を困らせるのはダメ。恋人だっていうのなら、そんな甘えも許されるんだろうけど、私達はそうじゃない。

 

友達以上で恋人未満。

 

まだ、小指だけが繋がっているような関係だ。どちらかが重荷に感じれば、きっとすぐに途切れてしまう。

 

もっとちゃんとさ…。

 

誰かに頼まれるとすぐにそうやって。あっちにふらふら、こっちにふらふら。

今私と話してるんですけどー、目の前に私がいるんですけどー。

「ごめんね?」じゃないんだよ。「ちょっと待ってて」って、それじゃ寂しいじゃんよ。

 

小指だけじゃ物足りない。

 

指の一本一本を、恋人同士みたいに絡めたりしたい。その細い手首を掴まえて、ぐっとこっちに抱き寄せたい。真冬が断りきれないってなら、私が噛みついてやったって良いのに。

 

あはははっ。ヘラってんなー私。

 

重たいんだ。ほんと可愛くねーの。

 

手慰みに撫でたスマホに、連絡を示すアイコンは無い。「まだかー」と送ったチャットの着信音は すぐそこから、机にぶら下がっていた真冬のカバンから聞こえる始末。

 

「まじかぁ…。もっとけってさぁ…。なんかいもよぉ…。はぁ、もぅ…」

 

感情が迷子になっちゃってる。さっきまでイライラしてたのに、今度はウダウダやって。そういえば、恋ってこんなだったっけ? そういえば、恋ってこんなだったよな。好きな人の事を考えると、どうにもならなくなって、どうしようもなくなって。

 

指先が唇を撫でる。

 

有り余った感情に堪り兼ねた私は、自然と自分の体に手を伸ばしていた。

そこに意図があった訳じゃない。寂しさを紛らわすために、人肌を求めた結果でしかなかった。

 

放課後の教室。

 

好きな人の席に居座って、自分を慰める。

 

なんだろうねぇ。昔さ、女の子のリコーダーパクってた男子が血祭りにされてるの見たけど。なんか、やってることあんまり変わんないわ…。

 

今なら、あの男子の気持ちも少しは分かる。

 

当時の私は今より子供で、事情も知らずに「キモイ」と吐き捨てた言葉が、今になって身につまされた。うん、気持ち悪い。確かに気持ち悪い。

けど、分かる。欲しいよな、欲しくなちゃうよな。黙ってりゃバレないんじゃないかって、でも、それで好きな子が泣き始めて、話がどんどん大きくなって、自分から言い出せなくなった頃には、とうとうバレちゃって。

 

私は…バレて、無いよね?

 

チラリ…。机に突っ伏した振りをしながら、周囲を見渡した。

放課後のチャイムの後。少し広く感じるようになった教室には、まだチラホラと残っている子達もいた。友達どうしで駄弁っていたり、ノートに向き合って宿題を片付けていたりと様々で、それも時間が経つにつれ、一人、また一人と教室からいなくなる。

 

早く、皆居なくならないかな。

 

なんか、ゲームの悪役みたいな事を考えながらも、しかし、私の頭の中は真冬の事で一杯だった。

 

そっと、撫でた唇が熱い。持て余した欲求が、胸の高鳴りと共に膨らんでいく。

真冬とのエッチが、あんまりにも気持ちよかったから。

一人で慰めていては得られなかった快感に、今日の今日まで、自分を慰めることさえ忘れてたくらいだ。

 

でも、だからこそ堪らない。

 

どうしたって、またしたいと思ってしまうし、一度考え出すと怖いくらいに感情が溢れ出す。でも、だからって、お酒もなしにあんな事。今思えば馬鹿だったと分かるけど、それが出来てしまうのがお酒って奴だった。

 

アレは麻薬だ。

 

若い身の上には特にそう。こうやって、悩む度に思うんだもん。また、お酒飲ませたら、いい感じにならないかなって。一度取ってしまった選択肢が、もう一度と私をそそのかす。結局、おにぃにバレて小突かれたばっかりだっていうのに、懲りないもんだ。

 

はやく、戻ってこないかな。

 

むず痒いだけだった快感が、次第に疼き出す。思えば思うほど、焦がれれば焦がれるほどに、どうしようもなく私を欲情させていった。

 

机の下ならバレないかな?

 

スカートの上から少し触って、ちょっとだけ、ちょっとだけなら、平気かなって、平気な訳無いのに「まぁ、平気でしょ」って、簡単に考えてしまう自分が怖い。

 

ていうかお前ら、駄弁ってるだけならさっさとどっか行ってよ。

そう思うなら、自分がトイレにでもなんでも行けばいいのに、体は特等席(まふゆのせき)にしがみついたまま離れてくれなかった。

 

ホント、気持ち悪いな、今の私。

 

逆の立場だったらどうよ? 真冬が私の席でさ? 私のこと考えながら自分のこと慰めてるの…。

 

ウェルカムである。

 

何一つ、問題はなかった。

 

むしろ愛おしいまである。

 

いやいや違うだろう。もっと真冬の立場で考えよう。

彼女からしたらだって、その辺の男子が自分の席でオナってるんだぜ? 

いや、自分をその辺の男子枠に収めたくはないんだけどさ。むしろ、ちょっと仲が良いだけ、余計に性質が悪くないか?

 

憂鬱だ。

 

実に憂鬱だ。

 

キモイと思う男子の行動10選を、実践している自分が憎い。

むしろ、変に仲良くなった分だけ、感じる罪悪感の重さと言ったらなかった。

辟易する。スケベって、真冬に言われた言葉をどうやって否定しようもんか。

 

今にも自分に触れてしまいそうだった。

 

ぎゅっと握りしめていた手に、巻き込まれていたスカートの端が解けていく。

はらりと、零れるように。指先の隙間から流れた落ちた薄い布地に、そっと肌を撫でられただけ。

 

たったそれだけ。

 

普段なら気にする事すらない刺激にも息を呑む。引き寄せた太ももの内側が もどかしい。じわり、じわり。快感が滲み始め、濡れた下着が肌に張り付いた。

体が熱い。胸のドキドキが止まらない。もう、太ももを擦り合わせてるだけじゃ足りなくなって、とうとうと食指を伸ばそうとした矢先。

 

「羽流は?」

 

心臓が飛び出しそうになった。

 

急に呼びかけられて、ビクッと肩が跳ね上がる。

 

「私らカラオケ行くけど、羽流も行く?。北見さん待ってるなら、後で呼んでもいいしさ?」

 

バレた? 一瞬の不安は、何の事はない。ただの遊びのお誘いだった。

いつもの私なら2もなく加わっただろうに。けれど今は、ダメ。寂しいのはそうだけど、他の誰かじゃダメなんだ。今は真冬と一緒にいたかった。

 

「良いね。でも、まふゆん、皆で騒ぐの苦手そうだしなぁ」

「あーね。ちょっとノリが悪い…」

 

ただの軽口のハズだ。そこに感じる悪意もないけど、やっぱり、好きな人を悪く言われて聞き流せるほど、私は大人しい性格もしていなかった。

「じとっ」とした視線を向ければ、両手を上げた彼女に「どぅどぅ…」と、あやされる。

 

「おーけー。今のは私が悪かった」

「いや、いいけどさ…。言いたいことは、分かるし…」

 

私だって、真冬と付き合い出す前はそんな風に見てたんだ。一方的に彼女を責められない。謝罪にも満たないやり取りは、けれど、それで十分。

ぷすっと、頬を膨らませたのだって、別に彼女に対したものでもなく「でも、あの子。時間かかりそうじゃない?」て、普遍的事実も変わらなかった。

 

「まぁ、でも。今の私はハチ公なので。カラオケはまた誘ってよ? その時は まふゆんも連れてくからさ」

「おけ。じゃ、またね羽流」

「うぃぃ」

 

騒いでいた女子グループが居なくなると、一気に静かになった。

残されたのは私と、男子が一人。そいつも、開いていたノートをパタリと閉じると、さっさと席を立ってしまう。ここで声を掛けられない辺り、あいつモテねーな、とか思ったのは内緒。まぁ、今声かけられても、ちょっと迷惑なんだけど。

 

一人、見回した教室は、なんだか何時もより広かった。

 

部活動に精を出す少年少女達の声が窓を揺らすと、自分が一人きりなんだってイヤでも思い知らされる。遠くに聞こえる吹奏楽の音色はどこかチグハグで、なんだか今の私と真冬の関係みたいだ。

 

とん、とん、とん…。

 

机の上で指を歩かせていた。人差し指と中指を交互に動かして、一人遊びも良い所。現代っ子の私が、スマホもなしに時間を潰せるわけもなく。だからって、今の私がスマホを握ろうものなら、真冬の着信履歴がエライこっちゃになりかねない。

 

つるり…。

 

伸ばした指先が、机の端で滑って転ぶ。

 

後ろの正面には誰もいない。

 

一人、ただ待たされてる事実だけが、心に重く伸し掛かる。

 

 

少しだけ…。

 

机の角を指で撫でた。ツルツルとした感触より他はない。魔が差したと、言ってしまえばそれが全部だ。見咎めるものが誰も居なくなった途端、持て余した性欲を堪えきれなかった。

 

少しだけなら…。

 

悪い私の声がする。机の角に押し付けたら、ちょっと気持ちいいんじゃないかって、好奇心が手伝ったのもあった。自分の指でするよりも、白状すれば彼女と体を重ねた時の快感の少しでも、感じたりは出来ないものかと期待も大きい。

 

ズズ…っ。

 

立ち上がった拍子に、擦れた椅子が音を立てた。その音がやけに響いた気がして、慌てて周囲を見回してしまう。誰もいない。そこはさっきと変わらない。

窓の外からは変わらず、怒号にも、歓声にも聞こえる掛け声と、不揃いな音色が聞こえてくるばっかり。

 

ドキドキ、ドキドキ。

 

胸の内を鼓動が叩く。

 

少し足を開いて、机の角に股間を合わせた後、体を支える様に手をついた。

辺と辺とが太ももの内側に触れる。スカートをたくし上げ、腰を落とすと、三角の先っぽが私を撫でた。

 

固くて、太い。

 

真冬の体の何処にも感じられなかった感触。人の体には無い無機質さは、机の角を強く意識させると、ゾクッとした背徳感が背筋を伝っていく。

 

こんな事で気持ちよくなってさ。

 

私、Mっ気でもあるんだろうか? 個人的には責める方が好きなつもりだったんだけど。ああ、でも…。真冬に責められるなら、そういうのも良いかも知れないとは思う。

 

がたっ…。

 

腰を揺らすと、浮ついた机が音を立てる。同時に心臓が跳ね上がり、慌てて周囲を見渡した。けど、相変わらずだ。教室には私だけ。

恐る恐る、廊下の向こうの気配を探っては見ても、誰かが戻ってくる様子もない。

 

「はぁ…っ」

 

零した溜息は熱かった。心臓の音がやかましい。

ドキドキ、ドキドキ、ドキドキと。それは、窓の向こうの騒がしさにも負けず、私の耳を塞ぐには十分な音量だった。

 

がたっ…。

 

腰を押し付け、机が揺れる。

 

がたっ…。がたっ…。

 

角が擦れて、快感が溢れて、残っていた警戒心さえ薄れていく。

下着越しに感じる無機質な刺激。机の角がアソコを擦る度、ふるりっ、ふるりっ。腰から背筋へと、駆け上がった快感に頭を揺らされた。

 

「んっ…♥ んんっ…♥」

 

口元を手で抑えて、それでも声が漏れてしまう。

諦めて声を出したらどれだけ楽か。快感に唆されるまま「まふゆ…」と、彼女を呼んだのは失敗だった。

 

パチっと、頭の中で何かが切り替わったみたい。

パチパチと、古い映画の様にコマが切り替わっていく。

 

脳裏に浮かんだその光景に、興奮が煽られる。

一枚、二枚、切り替わるコマの一つ一つに、焼き付いて見えた真冬の裸体。

それは、初めてのエッチの時でもあったし、それ以上を望んだ私の欲望の形でもあった。

 

有りもしない思い出を捏造しながら、知りもしない関係に発展させていく。

「はねる、はねる…♥」濡れた声で、真冬が私を呼んでいた。「好きっ、好きっ…」て、抱きついてきて「もっと、もっと…」って、ねだられるの。

 

そしたらさ、私も堪んなくなって、ちょっと乱暴なくらい彼女に体を押し付けた。

勝手な妄想だよね。そんなしたらさ、絶対痛いだろうに。それなのに、何されても怒らないし、何したって喜んでくれるし。いつの間にそんなスケベな誘い方覚えたんだよ。言わせているのは私なのに、真冬が絶対言わなさそうな事を口にする度、背徳感にも似た高揚が肌を焼いていく。

 

割れ目を机の角に押し付ける。

 

くちゅり、聞こえた水音に、ふるり、背筋が震え上がった。

腰を動かす度大きくなる水音に、興奮が煽られていく。

 

固い机の角に割れ目を押し開かれて、下着越しにとは言え、無機質なその刺激は、ゾクゾクとして気持ちがいい。腰を揺らすほど、強く押し付けた分だけ、割れ目の奥から愛液が溢れ出し、濡れた机の角と、私との境がだんだんと曖昧になっていった。

 

放課後の教室で1人きり。好きな人の机の角で自分を慰める。

 

大した変態ぶりだとは思うけど、もうそんな事はどうでも良かった。

 

私が致した後の机で、明日も真冬が席につく。何も知らない顔で、いつものように授業を受けててさ。「まーふゆんっ♪」て、私が呼びかけると、少し恥ずかしそうな顔をして。

 

「ごめんねっ、はね…んっ…!?」

 

その時だった。

 

妄想の中じゃ絶対言わなさそうな声が、妄想の外から聞こえてくる。私の手綱を離れた一声は、普段の真冬のまま、如何にも申し訳なさそうだ。

 

ああ、忘れてたや。

 

誰も戻ってこないってそんなこと、そりゃ、真冬は戻ってくるよねって当然の事実さえ忘れていた。まるで場違いな声音は途中で途切れたまま、扉の向こうの気配は動かない。気の所為だったかな。思う反面、そうではないと私の勘が告げている。

 

見られてる。

 

彼女の視線を意識すれば、余計に熱が入った。

 

「まふっ…ゆっ。あ、はっ、きもちっ♥」

 

聞こえよがしに声音を一つ漏らすと、扉の向こうから伝わってくる動揺に、私の興奮が逆撫でられる。

 

きっと真っ赤になってるんだろう。

 

どうしたら良いか分からないって顔で、オロオロしてさ。可愛い。見えないのに、そんな姿が目に浮かぶ。チラチラとこちらを伺ってくる気配に気がつけば、いっその事、彼女に見せつけたくもなっていた。

 

ー

 

早回しで廊下を歩き、駆け上がるみたいに階段を上がって、真冬は教室の扉に手を掛けた。

 

遅くなっちゃった。

 

先生の頼み事を聞いていたら、あれよあれよと時間は過ぎていく。

羽流、待たせてるのに。しきりに時計を気にしながらも、早く終わらせるためには手を動かすより他はない。

 

友達を待たせてるからって、どうして言えないかな。

 

気は咎めても、それを口には出来なかった。

安請け合いした手前、途中で放り出すのも気が引ける。そもそも、最初から断ればよかったのに。先生からのお願いに、反射的に頷いてしまった時にはもう この有り様だ。

 

せめてスマホを持ってきてれば、先に帰っていてって言えたのに。頻繁に使われる機会のない私のスマホは、基本的にはカバンの中。羽流と仲良くなってからは、驚くほどに使う機会は増えたけど、今までの癖が簡単に抜けるものでもない。

 

「ごめんねっ、はね…んっ…!?」

 

咄嗟だった。咄嗟に口を噤んでいた。そう運動の得意な方ではない私にしては、脱兎の如き反応で、扉の影に体を隠せていた。

 

今のは? 一体?

 

教室の向こうから廊下に向かって差し込む夕日。そこに照らされた羽流は、私の席で一体何をしているんだろう?

 

がたっ、がたっ…。

 

机が揺れて、床に擦れて、そんな音が廊下にまで響いていた。

机の角に体を預けるようにしていた羽流は、時折体を震わせながら「んっ♥」と、熱っぽい吐息を漏らす。

 

なにして…。ほんと、なにしてるの、あの子。

 

聞き覚えのある声音だ。

 

二人でお酒を飲んだあの日の夜。指切りを交わしてそれっきり、そういう事はしてなかったけど、そんな簡単に忘れられるものでもない。

 

自分で、自分を慰めてる。

 

自惚れじゃなければ、きっと考えてるのは私の事。「まふ…ゆ」って、ほら、名前まで呼んで。がたっ、がたって、机が揺れる音さえも、心なしか大きく聞こえてきた。

 

なに、これ? 私、どうしたら良いの?

 

どんな顔して羽流と会ったら、何事もなかった振りしてさ「おまたせ?」とか「呼んだ?」とか。言える訳無いじゃない。それが言えるメンタルがあれば、先生の頼みなんて最初から断れてる。

 

「まふっ…ゆっ。あ、はっ、きもちっ♥」

 

お願いだから。ほんと、お願いだから、もうちょっと声を抑えて…。

下校時刻も近くなって、他の生徒もいなくなって、静まり返った廊下には、吹奏楽のちぐはぐなメロディーと、遠吠えの様な部活動の歓声が聞こえてくるくらい。

 

そんな中で、艶のある羽流の声は悪目立ちをしていた。

 

非常に不味い。いつ、誰が来るとも知れない。

 

現に私が来てしまっているし、なんだか、彼女の行為を覗き見してるみたいで申し訳がなかった。立ち去ろうとは思う。けど、他の誰かがやってきたら?

 

それを考えると、なんだか もやっとした。

 

私の事を考えながら、羽流がそういう事をしているのは良い。いや、良くはないけど、本人からの申告も受けてるし、今更な部分は大きい。

 

けれど、そんな羽流の姿を他の人に見られるのはイヤだった。

 

いくら羽流でも、こんな所見られたらショックだろう。単に友人として心配する気持ちとは別に、もう一つ。私の事を想ってくれている。あんな羽流の姿を知っているのは、私だけがいい。胸に抱えた小さなわだかまり。嫉妬…でもないのか。多分そう、面白くないんだ、私は。

 

がたっ、がたっ…。

 

艶のある吐息に紛れて、揺れる机の音が激しさを増していく。

もう、何でも良いから早く終わってくれないかな。友人の嬌声を聞かされ続けている身にもなって欲しい。そんな声を聞いてたら、どうしたって、あの日の事を思い出してしまうし。思い返していたら、こっちまで だんだんとエッチな気分にもなってくる。

 

酔っ払って覚えてないって、大人の言い訳。アレ、嘘なんだな…。

 

私は全然覚えてる。

 

ドキドキする胸の音。「はぁ…」と零した吐息に混ざるお酒の香り。

ぎゅっと、自分の体を抱いていた。無意識に寄せた太ももの内側には、くすぐったいのとはまた別の、甘く痺れるような感じもある。

 

いや、ダメでしょ。私まで何考えて…。

 

火照った頬を冷ますように首を振り、ほっと一息吐き出すと、固まっていた体から力が抜けていく。それで? 落ち着ける訳がない。教室からは変わらず羽流の悩ましい声が聞こえてくるし、意識的に反応してしまった時点で、意識してしまった自分を認めざるを得ない。

 

気持ち良くなかったって言えば嘘。

 

早まってしまった感は否めないけど、後悔までしている訳じゃない。

初恋が叶わなくって、内心自棄になっていた所で押し倒される。言い訳なんていくらでも。羽流にだって迷惑を掛けたんだ。これで羽流が満足するなら、もう良いかなって、彼女に責任を押し付けてしまっていた。のぼせたみたいに、ぼぅっとした頭が上手く働かないのも、きっとお酒のせいだ。

 

羽流のせいにして、お酒のせいにして、私は悪くないって。

 

すっごく、楽だった。

 

流されたんだ。失恋の直後に聞く好きの言葉は麻薬に思う。

好きって言われて、求められて、キスされた瞬間には、もうどうにでもなれって。

ちょろいんだ、私。でもね、終わった恋を大事に抱えてられるほど、私は強くなんか無い。

 

初めての失恋に、どう向き合って良いかも分からなかった。痛いばっかりの心が、楽な方に逃げるのを責められるのは、きっと、同じ経験をした人だけだと思う。

 

「まふゆ…っ♥」

 

心做しか、教室の向こうから私を呼ぶ声が大きくなった気がする。

がたっ、がたっ…。机の揺れる間隔も短くなり、そろそろ…その、良い感じなのは伝わってきた。この調子で行けば、まぁ、下校時刻までには帰れそうだ。

 

今、羽流の中で、私はどんな格好をされているんだろう?

 

やっぱり、この間の事を思い返したりしちゃっているのだろうか?

もしくはそれ以上に…なにか、そう、なんだろう? 考えては見ても、顔が熱くなるばっかりで想像にまでは至らない。

 

逆ならどう?

 

私は、羽流をどうにかしたい?

 

目に焼き付いた彼女の下着姿を思い出しながら、それを押し倒す自分の姿と重ねてみてもさっぱりだ。彼女の上にまたがって、裸体を前に赤面しているのが精々に思う。

 

「はねる…」

 

すぅっと息を吸って、はぁっと大きく吐き出した。

女の子同士の恋愛。そこに、否定的な感情はない。物語の中にも見かける光景は、時に美しく、たまにコミカルで、熱量の差こそあれ悪いイメージを覚える事はなかった。

 

でも、それは、お話の中だからこそ成立する愛情なんじゃないの?

 

現実に、同性愛のカップルなんて見かけた事もない。物語の中では綺麗に描かれていたことも、きっと現実だとそうはいかないんだろう。

 

偏見の目。いってしまえば差別か。

 

ううん、それはいい。

 

問題は、私が羽流の事を好きだと言えるかどうか。

 

友人としてではなく、羽流と同じ熱量で、彼女に好きを返せるのかどうか。

 

「んっ、はぁ…もぅ…。羽流のバカ…早く終わってって…」

 

気づけば体は熱くなっていた。羽流の嬌声に当てられたんだろう。

一度体の異変に気づいてしまえばもう、後は流されるまま。さっきまでゴチャゴチャ悩んでいたのも忘れて、思い出すのは羽流と肌を重ねた時の事ばかり。

 

発情してる。

 

なんか、動物みたいで嫌だけど。今は、それ以外の表現も思いつかない。

少なくても、羽流の声を聞いて私が興奮してるのはそう。もし、今彼女に見つかったら。それで、押し倒されちゃったりしたら。

 

拒める自信はなかった。

 

嫌だけど、嫌ではなくて。

 

また、きっと、あんな風に…私…。

 

期待にも似た胸の鼓動が早鐘を打つ。

 

乾いていた肌は、いつしか汗ばみ始めていた。不意に寄せた太ももの隙間、擦れ合った肌がくすぐったい。背中を撫でる制服の刺激だけでも快感は増していき、その場に立っているだけでも焦らされているみたいで、熱を上げる自分の体を意識しないではいられなかった。

 

せめて、人気のない所で。

 

でも、今の羽流を放っておくわけにも。

 

右を見て、左を見て、長い廊下の中に一人きり。誰もいないことに安堵しながらも、その向こうから、今にも誰かが来るんじゃないかって、不安が覗き込んでくる。

 

なのに、少しくらいって囁いたのは誰なんだろう?

 

羽流の声にも聞こえた囁きは、でもやっぱり、私を覗き込む自分の弱さがそう聞かせたのかもしれない。

 

寄せ合った太ももの内側がもどかしい。

 

それは、トイレを我慢してる時の様な切なさにもよく似ていた。触れたら、きっと、気持ちがいいんだろうな。期待はある。でもダメだ。けど、考えれば考えるほど、思考は堂々巡りに陥っていった。その内に、部活動の歓声も、吹奏楽の不協和音も、あれだけ聞こえていた羽流の声も聞こえなくなっていて。

 

「あら、北見さん?」

「ひゃっ!?」

 

その声に、私は堪らず肩を跳ね上げた。小さくはない悲鳴と共に、背中に扉が打つかる良い音が、廊下の向こうにまで響き渡る。

 

「ああ、ごめんなさい驚かせて」

 

下校時刻前の見回りにでも行くつもりだったんだろう。階段を昇ってきた先生が私の事を見つけると、少し困ったような顔をしていた。

 

「まだいたの? 早く帰らないと。て、ごめんなさいね? 手伝わせたの先生の方なのに」

「あっ! いえ、大丈夫です。荷物…取りに来てて、すぐに帰りますっ」

「はい、気を付けて。今日は手伝ってくれてありがとう」

 

あーびっくりした。

 

それと同時に、堪りかねていた性欲も、とりあえずは向こうに行ってしまったみたいだ。あ、でもそっか。先生、上に行っちゃったけど、多分見回りながら降りてくるだろうし、いい加減、羽流の事呼ばないと…。

 

そう思い、振り返ろうとした瞬間。

 

ー

 

「みーたーなぁー…」

「ひゃぁぁっ!?」

 

まるで、地獄の底から聞こえてくるような声だった。

 

そう聞こえたのはきっと、友人の行為を覗いてしまった罪悪感からか。

 

扉の隙間から顔を覗かせた羽流は、如何にも恨めしそうな目つきで真冬を睨みつけると同時に「わっ♪」と吠える。それに驚いた真冬は、本日2度目の声を上げて飛び跳ねた。

 

「は、はねるっ!? いや、みたって、なにっ!? 私、全然、いま来たばっかでっ…だから、羽流が私の席でなんかしてたとか…そんなっ、あ…ぁぁ、もう…やだぁ…」

 

誘導尋問ですら無い。カマをかけられたと言われてもどうだろう?

 

慌てた真冬が勝手に否定の言葉を並べ立て、ポロリポロリと、白状した現状を聞かされただけ。赤くなった頬を両手で覆い、今にもしゃがみ込んでしまいそうな真冬を前に、羽流は思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

「見てんじゃん…バッチリ」

 

分かってはいたけれど、実際に見られてたって事実を確認すると、やっぱり恥ずかしい。ただ、少しだけ冷静になってみれば、ここにいたのが真冬じゃなかったらと思うと、ちょっとだけ怖くなったくらい。

 

「いや、だって、でも…。羽流だって、何やってんの…こんなとこで。誰か来たらって、私…気が気じゃなくって」

 

そこに嘘はないんだろう。結果として覗いてしまった事に気は咎めても、チラチラと伺ってくる視線は、ただ私を心配してくれているものだった。

 

「いやぁ、そこは…ね? うん、一生の不覚って奴でして。あんまりにも まふゆんに放ったらかしに されたからさぁ。ついというか、色々持て余してしまいまして、ねぇ?」

「ねぇって…。同意を求めないで。はぁ…多そうだよね、羽流の一生って」

「そんな事無いもん。ここぞって時だけでさ?」

「一回こっきりなの、普通は…」

 

盛大な溜息だ。気が抜けたというか、ほっとしたというか、如何にもそっけない態度。すっかり気を取り直した真冬は、少し神妙な面持ちで口を開いた。

 

「ねぇ、羽流?」

「大好きだよ、まふゆん★ミ」

「…真面目な話」

「あ、はい。続けてください…」

 

可愛いなぁ。こんなやり取りを何回しただろうか。ぱっちりとウィンクをする私に、じとっと睨んでくる視線が堪らない。呼びかける彼女に返す「好き」の言葉。いい加減慣れればいいのに、いちいち頬を染めるんだ。

 

「放ったらかしになんか…私。そんな、しちゃってた?」

 

その問は、意外と言えば意外だった。なんていうか、そう…。

 

「…自覚ないのヤバくね? 昨日と、おとといと、先週だってそう。私、ずっと待たされてたのに」

「うっ…そんなに、待たしてた?」

「ええ、ええ、そりゃあもう。先生だってそうだけど。他の子にだってさ、この私がいるっていうのにもう浮気かい?」

 

頼られてるって言えば、聞こえは良いのかも知れない。イジメとまでは言わないけどさ。普段対して絡まないくせに、真冬が断らないからって、こんな時だけ頼みにされているのを見ると、友人としては面白くないし、恋人候補(フィアンセ)としては尚更だ。

 

「浮気だなんて…。それに、まだ付き合ってる訳じゃ、私達」

「まだ?」

「まだ…。うん、まだ」

 

今日の真冬は失言が多いな。もう普段通りに見えて、内心は動揺を抑えきれていないのか。「へぇ…」と、私が顔がニヤけさせると、真冬の頬が見る見る内に染まっていった。

 

「勘違いしないでよっ! 前向きにって言ったでしょっ。好きになる努力はするって約束だからっ…それだけっ!!」

 

珍しく声を上げた真冬は、ふいっと顔を背けるように背中を向けてしまう。

その手を引いて、そっと背中を抱き寄せる。照れる彼女の耳元で囁いた言葉は、今まで言えなかったワガママだった。

 

「だったら。もうちょっと、私のこと大事にしてくれてみても良いんじゃないって思うのは、ワガママ?」

「ワガママ…だとは思う。けど、うん、はい…。羽流が、そう言うなら…うん」

 

少し、ホッとした。

 

不意に漏れてしまった本音に、ドキリとしたのは私の方。

「困らせないで」って言われたらどうしよう。「ワガママ…だと思う」なんて、そこは否定して欲しかった。

 

もしかしたら、真冬は意外に意地悪な所があるのかも知れない。

たとえ本人に自覚がなくっても、彼女の言葉に一喜一憂させられている私が言うんだから、きっとそう。

 

背中越しにも良く分かる。

 

胸に手を当て、ぎゅっと握って、恥ずかしさを噛みしめるみたいに、ぽつり、ぽつり、呟く真冬。揺れた三つ編みの隙間から覗く白い項(うなじ)。「うん」と小さく頷いて、耳の先まで真っ赤に染める。そんな彼女を見ていると、なんていうか、顔がニヤけるのを抑えられなかった。

 

「じゃあさ、ワガママついでに一緒に帰ろうぜ?」

「うん。いいよ…」

「手、繋いでも良い?」

「うん。いいよ…」

「あと、待たせたお詫びにアイス奢って?」

「うん。いいよ…」

「…キスしよ?」

「調子に乗らないで…」

「ぶぅぅっ。そこは「うん」って言うとこじゃん」

「言わない所でしょ?」

 

あからさまに頬を膨らませた私に、つんっと頬を背ける彼女。

そこに正解なんて無い。言ってしまえばただの気分。好きなラブコメ作品の違いでしかなかった。

 

「ほら、膨れてないで? 帰ろ、羽流?」

「つーん」

「拗ねちゃって?」

「すねてませんー、いじけてるんですぅ」

「同じじゃないの…」

 

同じなものかよ。

 

と、言いたい所だったが、その違いは私にも分からない。

「うん」と言う場面じゃないって言うなら、私は「つーん」とするだけだ。

困っているな、困らせてるな。分かってはいても止められない。さんざん私を待たせた分だけ、私に構ってくれなきゃ不公平だ。

 

その時。

 

正しく不貞腐れていた私の頬に、ちゅっと、触れたのは何だったんだろう?

 

膨らんでいた頬から空気が抜けた。柔らかくて、温かくて。初めて奪った彼女の唇の感触を思い出させる。何が何だか分からない。呆然と真冬を方を見てみれば、さっと視線を逸らされてしまう始末。

 

「これで、良いんでしょ…?」

「…うん」

 

頷いていた。頷くしか出来なかった。

そっぽを向きながらの照れ隠しは少し投げやりで、真冬にしてはぶっきらぼうな物言いが、ドキリと胸に突き刺さる。

 

どうしよう?

 

なんだかとっても気恥ずかしい。

 

女の子に抱きついて、手を繋いで、ただ一緒に帰るだけ。今までだって何回もやってきた事は、こんな難しい事だっけ? 早く何か言わないと。私がリードして上げないと、真冬だって困ってしまう。

 

思えば思うほど胸が詰まり、なんとか動いた口から出た言葉はカタコトだった。

 

「じゃあ、その…真冬、さん? かえりましょう、か?」

「ぷふっ…」

 

笑われた。

 

「羽流って、結構照れ屋だよね?」

「そんなことっ…。真冬さんは、意地悪でいらっしゃる…」

「ぁ…いや、だった?」

 

しかもズルいんだ。

 

そう言われて「イヤだった」と言えるわけがない。

過ぎた言葉を遮るように口元を手で抑える。こっちを伺うような視線は、いったりきたりと定まらず、不安げに瞳は揺れたまま。

 

「別に、イヤとかじゃさ、ないけどさ…」

 

イヤどころか実際には正反対。普段、誰に対しても一歩引いている彼女が、ついと戯れついてしまった事を恥じている。それが、あんまりにも嬉しくって、体中の穴という穴から何かが吹き出しそうなくらいだった。

 

「そっか…。よかった」

 

ほっと、胸を撫で下ろす。柔らかく、甘えてくるような彼女の笑顔に、心臓が破裂しそうになった。可愛い。あんまりにも可愛い。もう、このまま教室に引きずり込んでしまいたい。

 

妖怪か私は。

 

なんて、内心おどけていないと、今の私なら本当にやりかねなかった。

 

「それで? いつまで拗ねてるの?」

「拗ねてなんか…」

「うん、そうだったね。イジケてるんだっけ?」

「ですけど…」

 

自分でそう言ったはずなのに、改めて指摘されるとくすぐったい。

頭を乗せていた小さな肩が、楽しげに揺れ始める。クスクスと、私に向けられる悪戯な笑顔。それに気づくと、嬉しい反面、そのはずなのに、何だか悔しくって、また、頬が膨らんでしまいそうだった。

 

彼女の指が、私の指に触れる。

 

抵抗なんかしない。

 

手に手を重ね、受け入れるように指を開く。まるで、恋人同士がするように、そっと指が絡んだ瞬間。「うっ」と、ドン引きするような声と同時に、繋いだ手が振り解かれてしまった。

 

「ど、どしたの真冬?」

 

予想もしなかった反応にショックを受けながらも、覗き込んだ彼女の横顔は、なんとも苦々しい。

 

「先に手、洗ってきて…。なんか、その、ヌルヌルしてるから…」

「あ…ごめっ。まじで、はい、ごめんなさい」

 

私が悪い。言い訳を挟む余地も有りませんでした。





羽「あたっ!? なにすんのさ、おにぃっ!? いきなり人の頭をっ」
兄「やかましい。自分の胸に聞いてみろ」
羽「はい、セクハラですぅ。いい年こいて、おっぱいとか、中学生かよっ」
兄「…チューハイ」
羽「誠に申し訳ございませんでした」(正座)

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ここまでご覧いただきありがとうございました。
良ければ、いいね、高評価も、頂けると嬉しいです。

教室でオナってる所を男子に見られて、うんぬんかんぬん。エロ本ばっかり書いてるとすぐにそういう方向に流れそうになるねぇ。
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