※この作品はR-18です。

彼女は彼女に恋をした。   作:霧里

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羽流ちゃん下着



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真冬ちゃん下着


彼女は彼女とケンカする。(Hシーン

 

 

初めて入った彼女の部屋は、思った通りに片付いていた。

 

脱ぎ散らかしたパジャマも無ければ、狙いを外したティッシュがゴミ箱の周りで転がってもいない。そもそもの私物が少ないのか。こういうの好きなんだなって、猫の意匠が施された小物も、可愛いと言うよりは小綺麗に纏まっている。

 

「やっぱ、結構片付いてるねぇ…」

 

何から喋って良いのやら。「お邪魔します」といった後、どうして? と、聞けないままにお茶を濁す。

 

「そう、かな? 普通だと思うけど…。あ、でも、羽流の部屋はもうちょっと…」

「思い出さないで下さい」

「片付けてあげようか?」

「良いです。自分でできます。一人で出来るもん」

「そ…。じゃあ、次行く時までには片付けててね?」

「…うん」

 

さっきから、ずっとこんな調子だ。

 

ちょっと話しては会話が止まる。私達にしては珍しい。というより、私にしては珍しいのか。真冬はだって、お喋りな方ではないから。私が口ごもればこうもなる。

 

ていうか、来る気あるんだ。

 

そういうとこ迂闊だよね。しっかりしてるようで、どっか抜けてて、隙だらけな彼女の背中に手が出そうだった。

 

「じゃあ。疲れてるならベッド、使ってて良いから。私何か飲むもの持ってくるね?」

「いやいやいやっ。良いってそんな、もう平気だし。明日っ、明日ちゃんとデートしよ? 今日は帰って休むから、また明日、ね? 明日はちゃんと元気になってるからさっ…」

 

がしゃん。

 

鍵の落ちる音がした。

 

「まふゆ、さん?」

 

扉の前で立ち尽くす真冬は、私に背中を向けたまま動かない。

 

「だめ、帰さない。だって、まだ、来たばっかりじゃん…。ね、羽流? 今日ね、お母さん仕事で、居なくて、私一人だから…。お夕飯もさ、一緒に食べよ? 明日だって、休みだし…泊まってってもいいよ? お母さんにもね、友達泊まるかもって、言ってあるから…さ、そうしよ?」

 

いや、いやいやいや…。まって、少し待って欲しい。

 

「…意味、分かってる? 私にも我慢の限界というのがアリましてね? 女子会って、そうだよ…。ただの女子会のつもりならさ、ちょっと…今日はほんとごめん」

 

気にしないようにしていたのに、自分の苛立ちに目がいってしまった。

 

あんまりに無防備な事を言う真冬にも腹立たしければ、性欲に突き動かされそうになってる自分もイヤで。

 

「私だってっ!」

 

部屋を出ようとして、彼女の肩を掴む。押しのけてでもと力を入れた矢先、悲鳴にも似た真冬の声に体が動かなくなった。

 

「分かってるっ。分かってるんだよっ。今だって心臓バクバク言ってるしっ、喉だってカラカラになってるしっ。さっきだってっ! さっき、キスしようとした時からずっと、羽流、黙ったまんまで…怒ってて…。でもっ、あの時は私、あれが精一杯で…。傷つけるつもりじゃなかったの。羽流に辛そうな顔させるつもりじゃ、私っ」

 

「いや、怒っては…まぁ、うん。でもだからって…。全然分かってないでしょうが。じゃあ、何のつもりだったのってなるじゃん。キスする振りして、家にまで連れ込んで。お酒飲んで無いから大丈夫って思ってるんなら、ちょっとさ…。無防備すぎるって言うか…安心しすぎだよ、まふゆんは」

 

少しだけ、溜飲がさがる。

 

真冬に対して抱いた疑念は、いかにも、思い切りが下手な彼女らしいものだった。だからって、納得してるわけでもない。それでまた、勢い余って家にまで連れてきたの? さっきの続きをしてくれるっていうのかい? 鍵まで掛けて、閉じ込めて、私が何もしないだなんて思われてるのもイヤ。

 

「安心してるのは、羽流だって同じじゃない…」

「え、なに?」

 

「いつも ちょっかいは掛けてくるのって、私が断るって思ってるからでしょ? 

たまに頷いたらすっごい慌てるもんね。冗談でもなかったんだよ…私だってっ。

 

いつもそうじゃん…。キスしよって言葉だけで、私がダメって言ったらすぐ茶化して誤魔化すし。大事にされてるのは分かるよ。好きって、大好きって、愛してるって、言ってくれるけど、それ以上は全然してくれないの、なんで?

 

分かんないよっ。私からすれば良かったの? 私はっ…ちょっと、強引にでも良かったのに。お酒のせいにばっかりしないでっ。そんな言い訳っ、羽流だって信じちゃいないでしょ? あんなの建前。だって私はっ、羽流に抱かれたの後悔してないもん。されてよかったって…。羽流は、違うの? また、したいって、今じゃ…ないの? 今じゃ、ダメ…ですか?」

 

ぷっつん。

 

涙混じりの告白に、私の中で何かが切れた。

 

どんっ…!

 

それはまるで きらめく花火の様。

 

我慢できずに、衝動的に、気づいた時にはすぐそこに、真冬の顔があった。

 

「あっ…」

 

ビクッと、大きな音に驚いた真冬が、小さく肩を震わせた。

扉の前で佇む彼女の横に手をついて、涙で濡れた瞳に、私の姿が映り込む。

 

「真冬さぁ…なに? 私をイジメて楽しいの? それとも、私にイジメられたいから、そんな誘うような事言ってるのかな? 分かってる? 自分でも言ってんじゃんっ。酒飲ませて、押し倒して、女の子同士でもアウトだよ。

 

キスさせてって言ってもさっ、いつもダメってばっかで。それ以上なんか出来るわけ無いだろっ。冗談だって思ってた? 冗談じゃないんだよっ…こっちだって。断られるたんびにさぁ…引かれたりしてないかなって、上手く笑い話にできたかなって。

 

でも、言わなきゃ伝わんないじゃんっ、だから、ずっと言い続けてて…。

軽くあしらうのも良いよ? それでもよかったよっ、私だって楽しかった。けどさ…」

 

けど何だ? あーもーっ!! 頭の中がこんがらがって。

 

勢いで真冬に壁ドンしたまでは良いけれど、そこから先が続かない。

少し待ってて欲しいと彼女は言った。指切りまでした大切な約束だ。私の好きを、まさかこれ以上押し付ける事も出来なくて、だけど、何もしないでいるのはもっと無理。

 

「嫌いだよ…。そんな気を持たせる様な事ばっかり言って。大好きなのっ、好き過ぎて辛いの、嫌われるのが怖いんだよっ。真冬がハッキリしないからっ、私、何も出来ないじゃんっ!」

 

違う。

 

嫌いだなんて言いたい訳がないし、思ってすらいないのに。まして、真冬を責めるようなこと、追い詰めるような事言って。優しいんじゃないんだ彼女は。人の頼みを断れないだけ。流されやすいのは、そうした方が結果的には楽だからで。こんな風に迫ってしまえば、私と揉めることを嫌った彼女は、きっと頷いてしまう。

 

「すれば…よかったんだよ」

「は?」

 

頷くとは思っていた。ただそれは、私に対する遠慮と、自分を守るためだけの妥協の筈で、一度逸らされた視線が、まさか私に向くなんては思わない。

目が座ってた。再び私を見つめた彼女の視線に、弱気は一切なくなっていて、初めて見た真冬の雰囲気に、息を呑まされる。

 

「キスでも、エッチな事でもさ。なに? 最初はあんな押し倒して、目の前でオナニーまで見せつけてっ、いきなり日和らないでっ、唇奪うくらいしてよっ!

二人で遅刻した時だってそうじゃん…。保健室にでも何でも連れ込めばよかったんだっ。ちょっと逃げたくらいで止めないでっ。意気地なし。羽流がっ、羽流だって、いつも中途半端に逃げるじゃんっ…。そんなの私だって、どこまで信じて良いか分からないでしょうっ!!」

 

意気地なし。

 

その言葉に頭が揺れた。この間くらった頭突きよりも目が回る。

 

言われればそうだ。

 

キスを迫って、行為を匂わせて、結局何もしなかったのは私の方。

私から触れたのは手を繋ぐ程度で、せめて、頬にくらいは するべきだった。

そのくらい、真冬だって許してくれただろう。そのくらい、真冬だって してくれたのに。好意だけを口にして、形にしなかったのは酷い手落ちだと思う。

 

「うるさい…うるさいっ!」

 

しかし、だがしかしだ。

 

ささくれ立った心を煽られれば、もう正気でなんかいられない。

薄皮い一枚の理性はビリっと捲れて、裂くような痛みに苛立ちだけが膨らんでいく。

 

「誰が意気地なしだよっ、まふゆん なんか むっつりじゃんかっ。この むっつりスケベっ!!」

「むっつりって…! 私がむっつりならっ、羽流なんか ただのドスケベでしょうがっ。顔が好きでっ、体が目当て? そんなの最低じゃないっ!!」

「はぁ!? 羽流さんを舐めるんじゃないよっ。心まで寄越せって言ってんだっ。まふゆん は私のものなのっ。爪の先から、髪の毛一本まで誰にも上げないのっ。

100万回繰り返したってっ、1秒先の未来までっ、全部全部っ、私が貰うんだっ」

「んっ!?」

 

お望みだって言うならしてやるさ。というよりもう、私はわたしを保てなかった。

扉際に追い詰めたって、出口はすぐそこだ。鍵も、取手も、真冬の手の届く所にある。なのに彼女は動かない。無理矢理に唇を奪ってやった。それでも彼女は逃げようとはしなかった。顎を抑えて、人差指と親指と、挟んだ頬に力を入れると、閉じようとした彼女の口を無理矢理に開かせる。

 

舌を伸ばすと、舌が逃げた。

 

けれど、狭い口の中。逃げる場所なんか何処にもない。

 

舌の根元に、舌先を押し当て、先へ、先へと向かって伸ばす。

逃げるように反り返った真冬の舌に、私の舌を絡ませた。根本から、唇の裏側をくすぐって、いつも手を引いて歩く調子で彼女の舌を引き寄せる。

 

あむっ。

 

唇から顔を出した短い舌先を甘く食んだ。

 

前歯で少し、挟み込むようにした甘噛に、ビクッと、真冬は体を震わせる。

 

「んっ♥ ふぅ…はぁ…ぁっ…」

 

ゆっくりと、唇が離れる。同時に彼女の視線が逸れた。荒くなった吐息。指先は、濡れた唇を撫でたまま、うんともすんとも言いやしない。これじゃ独り相撲じゃないか。その懐から奪い取ってでも、真冬からの愛が欲しいのに。肝心な所で人任せにするのは、彼女の悪い所だと思う。

 

「まふゆん? ねぇ、真冬。こっちを見て? 私を見ろよ…」

 

好きだと言わなくたって良い。頷く必要すらない。私はただ、真冬の瞳の中に映る私を見たいだけ。ただ、そこに映る私が、ちゃんと愛されているのだと、確かめたかったんだ。

 

「…」

 

何かを言いかけた唇。動いた視線が私を掠めるけれど、すぐに部屋の隅へと逃げていく。

 

「そっ…」

 

なら、それでも良い。つまらなそうに呟いた私は、掛けられた鍵へと指を伸ばした。

 

「まって…」

「なに?」

「やだ…」

「なにが?」

 

何もは言わない。ただ、鍵を外そうとした手を彼女に抑えられただけ。

頬が染まる。耳まで赤くなっている。じっと、彼女の顔を見つめてやれば、潤んだ瞳が私の瞳と重なって、ようやく真冬の中に私を見つけた気がした。

 

「ちゃんと出来るじゃん。ちょっとでも抵抗したら止めるからね?」

 

言うことを聞かない子は要らない。彼女への愛情を人質に取った私は、彼女からの愛情を束縛する。

 

「…っ」

 

さっきまでの威勢はどこへやら。期待からなのか、多少の不安はあったのか。

静かに喉を鳴らした真冬は小さく頷くと、不器用にも強張った体から力を抜いていく。

 

スルリ…。

 

肩から外した上着が腕から落ちた。

白いブラウスを飾る赤いリボン。解けたラッピングはヒラリと舞って、赤い蝶が飛んでいく。

 

一つ。ブラウスのボタンに指を掛けた。

 

二つ。首筋から伸びる細い線が、開けた胸元に流れていくのを見送った。

 

三つ。柔らかく膨らんで、谷間を作り、その向こうへと視線が吸い込まれる。

 

四つ。それは、淡い緑色。

 

五つ。それは、私が選んだ下着だった。

 

少し、子供っぽいか。淡いパステルカラーの緑色。

普段の彼女なら絶対に選ばないだろう。白いレースや、ピンクのリボンで飾られたブラジャーは、如何にも女の子らしくって、あの日、告白するかどうか悩んでいた彼女に、私が贈ったものだった。

 

「変、だった? やっぱり…似合わないよね? こんな…」

 

すっかりと、いつもの調子に戻った彼女の声は、恥じ入るように震えている。

 

「いや、変っていうかさ…」

「あっ、ごめんっ。男の子向けに選んでくれた奴だったのに。こんな時に着けちゃダメだったよね? でも、他に何選んでいいか分からなかったし、全部ユニしま で、同じのばっかりで。羽流が喜んでくれそうな下着とか…私」

「いや、全然いいよ。似合ってる、超似合ってる。私が選んだんだから間違いない。けど…」

「けど?」

「朝からここまで着替える暇なんか無かったよな?」

「…」

 

文字通り、朝からずっと一緒だ。

お花摘みにだって一緒に行ってたんだ。下着を隠せるような荷物なんか持ってはなかったし、彼女が着替えを済ませられるほど、一人になるタイミングなんて、今日に限って言えば絶対にない。

 

つまり真冬は、お早うからお休みまで、この下着をつけていて、勝負下着だと分かっていながら、この下着を選んだ事になる。親は仕事で居なくって? お泊りの許可も取っていて? 私を引き止めるための口実だと思っていた言い訳が、急に現実味を帯びてきた。

 

「やっぱり、むっつりじゃん」

「ちがうもん…」

「ずっと期待してたんだ?」

「だから…」

「いやぁ、まったく気づかなかったね? 大したもんだ。朝から、今まで、授業中もさ? ずっとエッチなこと考えてたの?」

「違うってば…。言おうとはしてて、お家に お泊り…しないって? でも、言えなくて…。期待してなかった訳じゃないけど。授業中、ずっととかじゃ…」

「まあ、そうだよね? 私とお家デートとか、部屋に二人きりでさ、ナニをしないとも限らないもん。それならそれで、早く言えばいいのに。あんなケンカする必要なかったじゃん? どうすんの? 私ちょっと収まりつかないんだけど?」

「どうって、そんなの。ぁっ、ゃぁ…」

 

ブラに触れ、胸に触れ、薄い布地のその中へ指を進ませようとすると、声を漏らした真冬は逃げるように体を引いた。

 

他意はない。

 

きっと、同じ状況なら私だってそうしただろう。

誰かに触れられるっていうのは、分かっていたって恥ずかしいし、反射的にも逃げ出したくなるものだ。

 

けれど、今は私が真冬の飼い主だ。

 

逃げる彼女の首輪を引くのだって、努めの一つだろう。

 

「真冬?」

「ちがっ…。逃げたんじゃなくって、ちょっと…くすぐったくって、だから」

「じゃあ、ホックは自分で外せるよね?」

「うっ…うん」

 

すぅ…はぁ…。

 

震えた吐息が肌を撫でる。

 

扉から背中を浮かせた真冬は、恐る恐ると服の間に手を差し込んだ。

パチっと、軽い音がする。それと同時に、ブラに支えられていた膨らみが重さを取り戻すと、触れていた指先が押し返された。

 

「んっ、はぁ…あっ、はね、るっ。っぁ…はぁ、はぁ…♥」

 

手の平に掛かる重みに指を広げ、ゆっくりと、刺激を加えていく。

ふるり、ふるり、震える素肌。荒くなる吐息に胸の上下が激しくなり、膨らみの向こうから、ドンドンと、胸の内を叩く鼓動さえ伝わってくる。

 

「気持ち良い?」

 

聞かれて、真冬は頷くしか出来なかった。

 

羽流の脅し。ちょっとでも抵抗したら止めるって、そのちょっとの基準が分からない。胸に触れられて、体を逃がしただけで睨まれたんだ。恥ずかしさに負けて、ここで首を振ってしまったら、そこでおしまいなんて十分に考えられる。

 

だから、仕方ない。

 

羽流に言われるまま、頷くのはしょうがない。

 

むっつりか…。

 

一体何を根拠に私は否定したんだろう?

嫌なら突き放せば良い。それを羽流は良しとしてる反面、その瞬間に関係を終わらせると脅された気がする。

 

ああ、日和ってるのは私も一緒だ。

 

羽流を試すような事ばっかり言って、自分では勇気を出したつもりなのに、結局彼女に甘えていただけ。怒らせちゃうのも仕方がない。顔も、体も、心まで、全部欲しいって言われちゃった。強引に迫られて、安心しきってる自分は、そうとうに嫌な女の子だ。

 

じっとりと、円を描くように胸を揉まれて、揉まれ続けて、体が熱くなる。

一つ、二つ、背中に汗が浮かび、擦れるブラウスの刺激さえ肌が欲し始めると、少しだけ、扉に背中を預けてしまう。

 

もっと、触って欲しい。

 

身を捩り、知らずと寄せた太ももに気づいても、止める事はしなかった。

足を閉じて、膝を重ねて、太ももの内側を擦り合う。それでも、足の付根、お股の前に出来た僅かな隙間は埋められないまま、その寂しさを埋めようと、愛液が滲み始めてくるのに気づく。

 

期待していた。

 

そう言われればそう。

 

私も羽流の事が好きで、求められる事を望んでいる。

少し待っていて欲しい。なら、待たせた私から言うべきなのに、彼女と二人、戯れ合う時間が楽しくて、ついと、先延ばしにし続けた結果が今。

 

まぁ、期待通りといえばそうなのか。

 

今日はお家デートしよう? その一言が言えないまま、気づけば放課後になっていた。部屋も片付けたし。お母さんの許可もとったし。後は羽流を誘うだけ。お泊まりなら彼女にだって準備はあるだろうけど、ちょっとびっくりさせたいなって、顔を赤くして、慌てる羽流が見たかった。

 

喜んでくれるかな? ちょっとしたサプライズは言えないまま。

どうしてこんなケンカみたいなっちゃたんだろ。おかげで、言いたい事も言い合えて、結果としては良かったのかも知れないけれど。それでも、なんだか余計な怪我をしてしまった感は否めない。

 

「んっ♥」

 

羽流の指が、乳首に触れる。

 

ピリッと伝わる甘い痺れに、思わず喉が鳴ってしまった。

 

じわじわと、高鳴る鼓動に合わせて広がる快感の熱。

期待が、実感へと変わり、お腹の奥、下腹に、ぽっと快感の火が灯るのは同時だった。

 

「足、モジモジさせて、トイレ行きたいとか?」

「んっ…それ、は…ちがっ、あっ…♥」

 

分かってる。言わせたいだけ。羽流は知ってて私をからかってる。

意地悪だ。まあ、そこは私も違いは無いのか。

もっと直接的に、触って欲しいとか、気持ちよくして欲しいだとか言えば、彼女は満足するんだろう。けれど、喉に詰まった羞恥心は、出かかった言葉を喘ぎ声へと変えてしまう。

 

「違うんだ? 私にはして欲しくないって意味?」

 

ぶんぶんぶんっ。

 

纏めた三つ編みを振り回す勢いで、訳もないまま首を振る。

胸に触れていた手が離れていく、それを怖いと思うほどに私は必死だった。

 

「ちが、くて…ね?」

「何が違うの? 本当は、私から逃げたいんじゃない? だって、こんなのレイプだよね? 真冬が逃げたいって言うのも仕方ないと思うよ?」

「っぁ…」

 

わざと強い言葉を使っているのは分かる。

 

そんな事を言われた私は、もう首を振るしか出来なくなった。

羽流は悪くない。これはレイプなんかじゃなくって、じゃあ、何なんだって言われれば…。

 

羞恥心が拳を握らせた。

 

いつもの私なら、ここで逃げてしまって、羽流もそれ以上はしてこないはずで。

まぁ、今日に限っては、どうあっても襲われちゃうんだろう。そこだけ切り取れば、レイプにも見えたかも知れない。でも、いつも通りじゃイヤだった。

彼女と同じ、私だって羽流に触れて欲しいと望んでいる。

 

スカートの端を握り込み、恐る恐ると持ち上げていく。

 

晒されていく太ももと、お股の隙間。

濡れた下着がヒヤリと冷えて、今の自分の状態を、意識しないでいられない。

 

「へぇ…。朝からずっとそんなだったり?」

「そんな訳無いっ! 無いけど…。羽流に触られて、こんなに…なってるのは、そうだから」

「責任取れって?」

「違うっ。ちがくて…。ただ、こっちも、触って欲しい…って、それだけ…」

 

ゆっくりと、ヴェールを脱ぐように。

 

捲くられたスカートの中から出てきたのは、ブラとお揃いのショーツ。

パステルカラーのエメラルドが魅せる彼女の下着。可愛さ全開で選んだ筈の下着は、だけど、頬を染め、涙を浮かべて、スカートを捲る真冬の姿と合わせた途端、羽流に得も知れない興奮を呼び起こしていた。

 

唇が、口角が、持ち上がるのを抑えられない。

ニヤリ…。笑った私は、相当に気持ち悪い顔をしていた事だろう。

 

「触って欲しいって? 何処を?」

「何処って…だから、お股…」

「お股ねぇ…」

 

随分とお可愛い事で。分かってはいても、まだまだ直接的な表現は避けているようだ。そんな理性、さっさと捨てちゃえば楽になれるのに。

 

「んっ…ぁはっ…♥」

 

いじらしく、擦り合わさっていた太ももに手を差し込んだ。

柔らかな肉の感触に挟まれながら、上へ、上へと、滑らせていくと、次第に熱気と水気が大きくなっていく。

 

太股の付け根に、指が触れる。

 

彼女の言う所の お股のすぐそこで、私は手を止めていた。

 

きゅっと、足が閉じる。すでに下着は濡れていて、押し付けられた手の甲に愛液が伝うほどだ。

 

むにゅり、むにゅり…。

 

太ももの付け根に指を這わせ、肌の内側を優しく揉んでいく。

誰にも見られない所、触れさせた事もない様な場所といえば、ココだってそうだ。

刺激になれない敏感な肌は、私が触れる度に もぞりと動く。彼女の興奮も手伝って、滲んだ愛液が、手の平の中にまで流れ込んできた。

 

ぬる、ぬる…。

 

愛液を塗り拡げるように、太ももの内側を撫でていく。「はぁっ…はぁっ…♥」か細い彼女の嬌声に耳をくすぐられた。興奮しているのは私も一緒。もっと彼女の乱れる姿が見たいだとか、自分の全部を押し付けたいだとか、当然の欲求はいつまでも我慢できるものじゃない。

 

「われ…め」

「なぁに?」

 

聞こえていて、もう一度聞き返す。

 

よくあるラブコメの主人公じゃないんだ。耳元でまで囁かれて、聞こえませんでしたなんてありえない。

 

「だから…割れ目に…」

「へぇ、まふゆんが 割れ目とか言ってる。やらしーんだー♪」

「っっっっ!?」

 

軽い言葉責めにも反応した彼女の肌は、一段と熱くなり、珠の汗が浮かび上がる。

しかし、それだけでは物足りない。また、中途半端な所で我慢される位なら、ここらでもう ひと越え、彼女の羞恥心を取り去っておきたかった。

 

「でも、それじゃ触ってあげない。もっとエッチな言い方思いつくよね?」

「エッチって…。ほと…とか?」

「あ、ごめん。ジェネレーションギャップだわ、それ。そうじゃなくって、もっとこう、モダンに行こう、ね? エロ同人見たいにさ?」

 

言われれば、そんな言い方も合ったかな。ただ、あんまりにも古風すぎてピンとも来なければ、逆に面白くなって笑ってしまいそうにもなる。

 

「…エロ同人って」

「読んだこと無いとか言わせねーぞ? まふゆんは むっつりだからな」

「むっつりって…また。わたし、そんなんじゃ、ないもん…」

 

羽流の意図に気づいた真冬は、ぎゅっと、スカートを巻き込む指に力を入れた。

 

頭には浮かんでいる筈の言葉は、なかなか口から出てこない。なんとか羽流の興味を他に逸らせないかと考えたけど、私を見つめる彼女の視線は真剣そのもので、唇の動き一つも見逃す気がないようだった。

 

にゅるっとした。

 

羽流の指が、挟んだ太ももの内側で蠢いている。

もぞもぞと肌をくすぐる様に、けれど決して、割れ目には触れてくれない。

くすぶった快感が、どんどんと熱くなる。ゴクリ…。喉に引っかかった生唾を押し込んだ。乾き始めた唇を無意識に舐めると、粘ついた水音が頭に響く。

 

おまんこ…。

 

言ったつもりで、だけど声にはなっていない。熱い吐息が溢れてそれだけだ。

私が躊躇う その間にも、羽流の指は 太ももの内側くすぐり続けていた。

くすぶった快感の火の粉は更に舞い上がり、焦れた体がもどかしくって堪らない。

 

ペロリ…。

 

不意に首筋を舐められて、ゾクッと、体が震えがる。

反射的に足を閉じ、窮屈だった太ももの内側の、更に奥へと、愛液で滑った羽流の手が押し込まれる。

 

快感に、理性が溶けていく。

 

早く、もっと、触って欲しい。

 

自分で自分を慰めることも出来ないまま過ごした夜を数えれば、もう耐えられない。望んでいた快感がそこにあるのに、このまま放ったらかしにされたら、私はきっと、彼女の前ででも、私に触れようとさえしただろう。

 

期待していた。

 

その通りだよ。

 

家で二人きり。そうともなれば、羽流だってもう我慢しないんじゃないか。

なんとなく、そんな雰囲気になったら大人しく流されようって 思ってたんだけどな。そのまま、なし崩し的に抱かれてさ。終わった後か、途中にでも「好き」って言えれば良い。きっと羽流に抱かれている時が、私が一番素直になれる時だと思うから。

 

なのに。

 

思っていたのとは大分違う。

 

イヤとは言えない私に、羽流の要求は どんどんと過大になるばかり。

 

「っぁ…」

 

もう、無理。

 

おまんこの 外側に指が這う度ドキドキと、胸が痛いくらいに高まる期待の音。

その音色に押し出されるようにして。

 

「おまんこ…触って。羽流…」

 

お願い。

 

とうとう私は、生まれて初めて、卑猥なだけの言葉を口にしてしまっていた。

 

「んっ、ぁぁぁっ…はぁっ♥」

 

歓喜の声。

 

下着の上から私を撫でる指先。彼女が与えてくれる快感に全身が震えて、涙と嬌声が止められない。「はぁっ、あぁぁっ、んふっ…ひゃぁぁっ♥」声を出せば出すほど気持ちが良くなって、ただ、撫でられているだけなのに、自分でするのとは全く別の快感にさえ感じていた。

 

「なに? すっごい声出すじゃん?」

「…」

 

答えない。けど、答えないのが答えだろう。自慰のお供に羽流を使ってしまった事を思い出し、じわり、体温が上がる気がした。触れられた肌に浮かんだ汗も、きっと羽流に気づかれてしまってる。

 

行ったり、来たり。

 

決して激しくはならない指の動き。

 

あるいは、もどかしいと感じたのかも知れない。物足りないと、もっととねだったかも知れない。私の割れ目を撫でる指。禁欲してたんじゃない。やることはやっていた。それでただ、上手にできなかった、それだけで。ようやくと、思い描いていた快感は、どんな少しの刺激でも、飢えていた私の欲を満たすには十二分に過ぎた。

 

「あぁぁぁっ♥ あっ、あ、やだっ、はねるっ…つよ、そんな、しちゃ…ひぅ♥」

「いや…そんなって、撫でてるだけなんだけどな。え、なに? ちゃんとオナニーしてた? まさか、やり方が分からない、なんて…」

「…」

「…」

 

呆れられたんだろうか?

 

何も答えず、ただ視線を逸らした私に、羽流がそれ以上追求することはなかった。ただ、おヘソの下にまで伸びてきていた指先が、下着とお腹の隙間にまで入り込んでくる。お腹を撫でられながら、太ももへと逸れた手の平に引っ張られた私の下着は、ズルっと、あっけなく脱がされてしまった。

 

晒された私自身はどうなっていたのか。

 

捲り上げたスカートが邪魔をして、その向こう側は良く見えない。

 

「逃げんなよ?」

「ぁっ…」

 

釘を刺された。

 

まるで、首根っこを掴まれた子猫みたいに体が動かなくなる。

私の耳元で囁いた羽流は、そっと体を離すと、膝を折り、ちょうど私の目の前で膝立ちになった。

 

見られてる。

 

意識するだけで、また、体温が上がってしまう。溢れた愛液は、太ももの内側を伝い落ち、その 一雫を追えてしまえるほど、快感を求めた肌は敏感になっていた。

 

何をするつもりなんだろう?

 

考える余裕もない内に、羽流の手が太ももに触れ、足を開かされてしまう。

捲られたスカートをくぐり、近づいてくる羽流の顔。「はぁっ」と、私に掛かる吐息に肌が震えて、抱えた快感が煮えたぎりそうになった。

 

ちゅっ。

 

ちゅぅっ。

 

キスをされて、軽く吸い込まれる。

 

ガクガクした。

 

体から力が抜けていく。

 

握ったスカートが指から離れ、羽流の頭を覆い隠してしまう。

お股が、割れ目が、おまんこが、私…羽流にキスされて、絶頂と見間違えるほどの快感に、体が崩れそうになった。ガタッと、扉に背中を預け、震える足で立ってられるのが不思議なくらい。

 

「こら、まふゆん。ちゃんと握ってなきゃダメでしょう?」

「そんな、そんなの…。立ってるのだって、やっとなのに…せめて、せめて座らせてよ…」

「なに? 触って欲しいんじゃないの? 私にばっかさせる気?」

「っ、ぁ…。分かった、分かったから…」

 

震える指先で、なんとかスカートの端を掴まえ直すと、見せつけるように捲り直す。イヤだなんて言えるわけがない。むしろもっとしてくれない方がイヤ。

今やめられちゃったら、みっともなく泣き喚いてでも、彼女に縋りついてしまいそうな自分が見える。

 

ちゅっ。

 

ちゅぅっ。

 

キスをされて、軽く吸い込まれる。

 

ゾクゾクとして、ガクガクとして、今にも崩れ落ちそうな体を支えるのにも精一杯。「ひゃっ♥ あっ♥ ふぁぁぁっ♥」自分の嬌声が頭に響く。口元を抑えようにも、スカートを掴んだままの両手は動かせない。声を出せば出すほど気持ち良くって、気づけばもう、喘ぎ声を上げる自分にさえ興奮してたと思う。

 

がたっ、がたっ…。

 

私に唇が触れる度、震えた背中が扉に打つかる音がする。

強すぎる快感を少しでも遠ざけようとして、だけど、お尻を羽流に掴まれた。

細い指先が、ぐにゅっと、お尻の形を変えながら、彼女の顔の前へと私が引き寄せられてしまう。

 

ちゅっ。

 

ちゅぅっ。

 

キスをされて、軽く吸い込まれる。

 

ゾクゾクとして、ガクガクとして、今度はブルっと、体が震え上がった。

伸びた舌が私を開く。陰唇に彼女の唇が押し付けられる。柔い肉の入口の中へと羽流の舌が入り込み、艶めかしい肉の感触が私の中で動き始める。

 

「ひぅっ♥」

 

漏れるような快感の吐息を飲みこんだ。

 

とうとう、私の中にまで羽流が挿ってきた。開かれて、押し付けられて、中で動いていて。指とは違う、もっと、太くて、柔らかい感触。ペロペロと、膣の浅い所を好き勝手に動く舌の感触に、未知の快感と興奮とが混ざりあい、びくっとして、びくびくっとして、一瞬、力が抜けたかと思うと、次の瞬間には、強い快感が一気に全身を駆け巡っていた。

 

「あっ♥ ふぁぁぁぁぁぁぁっ!? っぁ、ひゃっ、あっ、あぁぁ…♥」

 

声を上げ、体を震わせ、力が抜ける。

 

自分でも、どうやって立っているのか分からない。

 

ぼぅっとする意識の外側で、ぴちゃっと、ぴちゃぴちゃっと、水が跳ねる様な音に意識が向いてしまっていた。愛液が溢れたにしては、あんまりにも水々しい音だ。強い快感に、力の抜けてしまった体。もしかしてと、よぎった最悪の想像は、顔を上げた羽流の様子を見るにも違っているようだ。

 

「こんな潮吹いて。なに? そんな気持ちよかった? 羽流さんの舌は?」

「し、お? あぁぁ、そう…そっか? それ、そう…なんだ」

 

ほっと、胸を撫で下ろす。

 

そういう事がある、そういう物があると、知識としては知っていても、体感するのとはまた印象も違ってくる。気持ちよかったな。呆然と思ってしまうほどだ。

トイレを我慢した後の何倍か、何十倍か、それは言い過ぎにしても、心を手放すには十分過ぎる快感だった。

 

ぐしぐし…。

 

掴んでいたスカートが引っ張られ、力の抜けた指先から逃げていく。

何かと思って視線を下げれば、私のスカートがハンカチ代わりにされていた。

 

「ちょっ…」

 

ペロリ。残っていた潮を拭き取るように、羽流は唇に舌を這わす。

抗議の一つも上げたい所だけど、粗相をした手前、何を怒って良いかも分からない。手元にタオルも無いし、ハンカチは鞄の中、ティッシュで拭くには、あんまりにも量が多い。羽流の顔を紙だらけにしないためには、これも多少は仕方が無かったかも知れないが。

 

ベタッっと…。

 

重さを増したスカートが太ももに張り付く感触は、さっきまでの快感とは違い、多少の不快感を感じずにはいられなかった。

 

「汚しちゃった私も悪いけどさ…。彼女のスカートで顔拭く? 普通?」

 

その普通の基準も分からない。私に出来たのは唇を尖らせるくらいで、精々がこの位の小言でしかなかった。

 

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