゛サボり魔な悪い戦車長にはお仕置きが必要だよね゛
先生。わたしたちの世界で重傷を負い、意識不明の重体の中で生徒のために起き上がり、色彩の嚮導者として別次元をわたしと共に巡り。
そして最後にはわたしとシロコさんをこちらの先生に託して逝った、先生。
大変です。ひょっとするとこちらの世界は――当シャーレはダメかもしれません。
――――――――――
゛イブキ、ほうらお馬さんだよー、ひひーん゛
「わあ! 先生がおうまさんになってる! 先生ごう、すすめー!」
゛ひひーん!゛
こんにちは、先生。アロナ――いえ、今はプラナと呼んでください。きっと先生には届いていないのでしょうが、それでもちょっとだけわたしの愚痴にお付き合いください。
今シッテムの箱を通じて見えているのは、この世界の先生がゲヘナ万魔殿のお姫様を背にのけて四つん這いでイロハさんの休憩室を闊歩しているところです。
……のどかな光景ですね。あなたが望んだのはこういうものだったのでしょう。見ていたならば、そこを変われ俺がユニコーンだ! くらいのことは言ったのでしょうね。
「先生……んっ、イブキも。まだ仕事が終わってないじゃないですか」
「えー、先生仕事終わらせてないの?」
゛いや、まあ後で本気出すから……゛
「仕事はちゃんとやらないとめっ! だよ」
゛うぐっ゛
これが本当に何も裏のない先生と生徒の一幕だったなら、ですが。
「イブキ、先生の邪魔になっちゃいますからあっちの部屋でマコト先輩のお手伝いをしてあげられますか? 先生はわたしが手伝っておくので」
「えーイブキも先生のお手伝いしたい!」
「今回はお金の絡む話ですから。イブキにはまだ駄目ですよ」
「イブキも計算できるのにー。数学のテストだって満点だよっ!」
「すごいですね。……じゃあはい、千クレジットあげますから、ぁっ、これでマコト先輩と相談して好きなおやつを買ってみてください」
「やったー! ところでイロハ先輩、体調悪いの?」
「なぁっ! ん゛ぅっ……何のこと、でしょう。わたしは元気ですよ」
イブキさんがイロハさんの体調を気遣うのも仕方のないことでしょう。
彼女の髪色と紛れそうなほどに紅潮した頬、とろりと熱に浮かされた瞳は焦点を合わせられずに揺れています。吐き出す息は深く、時に詰まっては切なく漏れていきます。
じーっと見ていれば不意に身体を震わせて、足にきゅうと力を込めています。そして不自然なほどに座ったまま動こうとはしません。
そんなイロハさんの様子を先生はにんまりとほくそ笑みながら、ポケットに突っ込んだ手で何かをかちかち動かしながら見ているのです。
「ほら、早く行かないとお菓子が逃げちゃいますよ」
「わあ! 大変たいへーん! いっそげー!」
何か裏で良からぬことをしているのは多少そういう知識があればイブキさんも気付けたのでしょうが。彼女は万魔殿のみなさんからとても大切に守られているものですから、知っているはずもありません。
怪しまれこそしたものの上手いことイロハさんはイブキさんの関心の対象を逸らしてしまいました。
彼女は部屋の外にいた他の万魔殿の方と共に風のように走り去り、後に残されたのは先生とイロハさん。
そしてどこからか聞こえてくるヴゥン……という低い振動音でした。
その音は別にタブレットの中からこっそり状況を見ているわたしや、涎で教室の机を濡らしながらぐっすりおねむな先輩によるものではありません。
では、どこから聞こえているのか。
少し間をおいてイブキさんが部屋に戻ってこないことを確認してから、イロハさんがちらりと先生に流し目を送ります。とても色っぽい、年不相応の妖しい仕草です。口元を小さく歪めながら、そして自らのお腹にそっと手を添えました。
「せん、せい……急に強くしないでくださいよ。危ない所でしたよ」
゛ごめんごめん、つい゛
「つい、でうっかりイかされかける身にもなってください」
゛でも、ドキドキしたんじゃない?゛
「……それは、まあ。とても業腹ですが」
そうして先生が取り出したのはピンク色の卵型の機械――えっちな用途で使われるおもちゃのリモコンでした。
何故わかるのか? わたし達が高性能なオーパーツのOSであることをお忘れでしょうか。これくらい調べればちょちょいのちょい、という奴です。
もっとも、こういう知識はこちらの世界に来てからついたものですが。
……初めて目にした時はオーバーヒートで故障するかと思いました。
かち、かち、と先生がリモコンを操作します。そしてその音を合図にイロハさんがビクンと身体を跳ねさせます。
「んっ、ぉ……、せ、せんせい。ちょっと、そんな動かさないでくださいよ……」
゛んー? 何のことかわからないなあ。まさかサボり好きの戦車長がイブキの目の前でお腹に大人のおもちゃを入れてるなんて、そんなわけがないしなあ゛
「全部言ってるじゃないですか……! それに罰ゲームだとか言って自分で入れさせたくせに……!」
゛でも肝心の入れてるところは見てないからね。もしかしたらイロハの演技かもしれない゛
「うう……先生がこんな人だとは。少し見落としていたかもしれません」
何故このような事態になっているのかは、別にそう難しいことではありません。
いつもと同じようにイロハさんの休憩スペースに遊びに来た先生が、ふとこう口に出したのです。
゛よくサボってるイロハにちょっとした罰ゲームを用意してきたんだけど、どう?゛
対する返答がどうであったかは、この光景を見れば言うまでもないでしょう。
先生に見られない位置で女性の大事なところにローターを入れたイロハさんが、休憩中だというのに遠隔で不規則に与えられる振動に弄ばれているところにイブキさんが来て……事の経緯はそれだけです。
ですがそれだけのことで、イロハさんは先生のおもちゃになってしまいました。
彼女がローターを膣に入れてから一時間と二分四十五秒……『発情』という状態になるには十分でしょう。
゛私はもともとこういう人間だよ゛
「……そうですね。いついかなる時もわたし達を最優先にする先生で……それはそれとして躊躇いなく風紀委員の足を地に這いつくばって舐めまわす変態でしたね」
゛ぐへへ……゛
イロハさんの言う通りです。この先生はとんでもない変態です。あなたも割と変態ではありましたが、生徒に対してはある程度隠そうと努力していましたね。
ですがこちらの先生は隠すどころかフルオープンで。思いついたら生徒に提案せずにはいられない性質のようです。
言うなれば性的好奇心のブレーキが故障しているといった所でしょうか。何故か生徒の皆さんもそれを受け入れておられるので、関係が良好である点はこのシッテムの箱の力を以てしても解明できない神秘です。
あるいはこの謎が解けていれば、あなたも……。
゛その変態を懐柔しようとしたり、サボるためにこんな快適空間を作ってる悪い子は誰かな?゛
「……はあ。んっ、っく、わたしですねえ」
゛全く、悪い子にはお仕置きが必要だね゛
「ええ、もう……悪い子ですからね。先生にお仕置きされるのも仕方のないことです」
建前をたっぷり用意するやりとりの間に先生は部屋に誰も入ってこないよう鍵を掛けていました。
イロハさんも仮眠用の布団を整えて、枕元にゴムなんかも用意していて。
私はアロナ先輩がもう少し目覚めないよう耳栓と掛け毛布を掛けてあげました。これは教室内でのことで、箱の内部では先生を観察することで発生する高負荷の影響を計算しながら、先輩のブート時間を遅らせています。
流石に先輩にはちょっと見せられません。
ですがわたしまで目を離してしまうと先生は突然爆発に巻き込まれたり銃弾で撃たれたり、あるいは……とにかくわたし達なしではとても命の危険が危ない方なので。
ですからわたしがこっそり見守るのも仕方のないことなのです。ええ。
記憶領域の奥底深くに録画した動画を保存してあるのも、念のため。
何はともあれ。
また一つ、大切な思い出が増えるようです。
当作品のイロハは某同人誌の影響を多大に受けていることをここに告白いたします。