先生はある時からわたし達生徒に対して情欲を隠さないようになりました。
確かキヴォトスが滅ぶんじゃないかと思うくらいにやばい事件だったアトラ・ハシースの箱舟襲来からちょっとしたくらいから。
いえまあ、もとから先生は風紀委員の足を往来のど真ん中で舐めまわしたりセミナー会計の太ももの表面積を測ろうとしたりする変態性を持っていましたが。それでも直接生徒に手を出すことはありませんでした。
それが何故か一人でキヴォトスの生徒の平均性交回数を引き上げていそうな変貌を遂げたのは、何かあったと見るべきでしょうね。
とは言え、それはわたし達にとって決して悪いことばかりではないでしょう。
温かいシャワーが自分の身体の表面を伝っていく感触に意識を向けてみれば、その軌跡に大した凹凸はありません。サツキ先輩やマコト先輩みたいな重装甲はとてもとても。
ですが先生はこういうのもイケる口のようで、一度挑発的に誘った所思った以上に食いつかれてしまったわけです。
度々今回みたいな変態志向が混じるのはちょっと恥ずかしいですが、少なからず想っている相手に肉体的に喜んでもらえるというのは嬉しいというのもあり。
なんだかんだサボりの時間が先生との逢瀬に変わりつつあります。
これはわたしだけでなく他の生徒も同じようで、なんだか雰囲気が大人びたと言いますか、妙に艶っぽくなった方をちらほら見かけます。
先生が色んな生徒に手を出しているというのは、先生と行為に及んだ生徒間では公然の秘密です。
もとより先生は皆の先生、独占しようだなんて下心を出そうものなら他の学園の生徒が黙っておらず、最悪全学区を巻き込んでの全面戦争となるでしょう。
それは先生も絶対に望まないところ。まあそのことについて考え始めると何故こんなリスキーなことを……と思わずにはいられないのですが。
先生が誰か一人に心を預けたのであれば他の皆は諦めるほかありません。しかしそうでないのならば、独占ではなく現状を持続可能な選択肢を選ぶ。もちろんその果てに自分だけに夢中になってくれればいいとは皆が思っているでしょうけれど、とにかく今はそういった火花は水面下に納めておくことにしたわけです。
「んっ……」
……そういえば、ローターをお腹に入れたままでした。わたしの大事な所の一番奥深くでぶるぶると震え続ける小さなおもちゃ。外すべきか迷いましたが、恐らく先生は自分で取り出すことに楽しみを感じられるでしょうから、結局やめておきました。
髪は洗うのが大変なのでタオルでお団子にまとめ、愛液と汗を流すくらいに留めようと思っていた。思っていたのですが……。
「……先生が放置して眠るのが悪いんですよ」
先生がどれくらいで目覚めるのかわからないこと。昼からじっくり焦らされ続けた身体は昂ぶりをもう抑えきれなくなってしまったこと。
シャワーの水流が皮膚を撫ぜる感触にさえ背筋が震えるほど、身体が敏感になってしまっていること。
いろんな理由を付けて……わたしはそこに手を伸ばしました。
――――――――――
゛ん……あれ……゛
「あ、先生。目が覚めた?」
゛知らない天井だ……゛
「シャーレの休憩室よ。知らないはずがないでしょう」
゛ヒナの髪がふぁさってしてるから見えないよ゛
こちらシャーレの休憩室、ヒナさんが先生の顔を五分近くじーっと正面から眺めていた所で先生が目を覚まされました。
顔面が触れ合いそうな距離で向かい合っているものですから、先生の目に飛び込んでくるのはヒナさんの顔と垂れさがる髪の毛だけ。
あれでは天井など見えるはずもありません。先生は一体何を言っているのでしょうか。
゛ふむ……゛
「先生? ……大丈夫、先生?」
゛ああ、くっ……悪しきゲマトリアの呪いが……!゛
「先生!? ど、どこか悪いの!?」
゛呪いのせいで気力が出ない……! や、やつらめ、私と生徒の邪魔をするなんて……!゛
「ど、どうすれば……今からゲマトリアを潰しに、いいえ、場所がわからない以上時間がかかりすぎる。ほか、他に何か」
゛この呪いを解くには生徒からの愛情たっぷりの口づけが必要だと黒服が言っていた……! くっ、だが……!゛
「く、口づけ!!!?」
……先生は一体何をやっているのでしょうか。
先生はお姫様ではありませんし既に眠りから覚めていますし、生徒の口づけで解除される呪いをよりによって先生に掛けるなどあまりにも馬鹿馬鹿しすぎます。
ですからちょっとしたおふざけなのでしょう。起きたらヒナさんの顔が目の前にあったのでキスでもしてもらいたくなった、といったところでしょうか。……一瞬死を覚悟するような殺意が迸ったのは多分気のせいです。
監視カメラを通してお二人を見ているわたしからは、その表情は窺えません。それでもカーテンのように垂れ下がった白髪の向こうで、ヒナさんはきっと顔を真っ赤にしておられることでしょう。
石像になったかのように動きを止め、先生と見つめ合うだけの時間。
「え、えっと、イロハは……」
゛っぐ、なんてことだ。呪いを解けるのは起きてから私が初めに見た生徒だけだなんて!゛
なんという茶番でしょう。見せつけられているこちらまで恥ずかしくなってしまいます。
それほどヒナさんからキスをさせることにこだわりがあるのでしょうか。キスがしたいだけなら有無を言わさずしてしまえばよいでしょうに。
「せ、せんせえ……」
゛さあ! 熱いベーゼで私を起こしておくれ!゛
「ううぅ……」
見るからに泣きが入っています。初めてのキスなのでしょうから、先生からスタイリッシュに奪ってしまえばヒナさんは流されていたと思います。
こんな意地悪を、初体験の生徒にもするのですね。
「い、行くよ、先生……!」
゛ばっちこい!゛
掛け声、先生、その掛け声はムードがありません。プラナ的に採点は虚数次元です。
ですがヒナさんはそれを気にする余裕もないようでした。とてももどかしくなるほどゆっくりとヒナさんの顔が先生に近づいていきます。
長い髪が邪魔になったのか、ちょうどカメラの見ている方向のそれをかき上げ、細いうなじとリンゴのように熟れた頬を露わにしました。
「ん……」
゛ちゅる……゛
二人の唇が触れる音。控えめで、密やかな口づけ。先程までのふざけた雰囲気を、一気に情事の濃密な香りが塗りつぶします。
ヒナさんは口づけたは良いものの、そこからどうしていいかわからないと言った様子でした。ただ先生の唇と自分の唇が触れ合ったことが信じられない。初心な生娘の反応を見せています。
キヴォトス『最強』と言われるゲヘナ風紀委員長。今のヒナさんとその人が同一人物だと信じられる人はそう多くないでしょう。
「あ、あう……」
゛ふふ……あむ゛
「んむっ!?」
恥じらい戸惑う姿に、先生は設定や建前はもうどうでもよくなったようです。
一度触れて動きを止めた唇を自ら迎えに行きました。ヒナさんの桜色の唇が、先生の少しかさついた唇に啄まれては唾液をまぶされていきます。
「んみゅっ……ちゅ、ちゅる、はむ、んっ……! あっ、む、んんぅ……!」
ヒナさんは目をぱちぱち瞬かせて驚くばかり。無抵抗であるのを良いことに、先生はただただ好きなようにその無垢な口を弄びます。
いえ、口ばかりではありません。
ヒナさんの小さな身体を先生は両腕で抱え込みました。上から覗き込んでいたヒナさんは、これまた一切の抵抗なく先生の腕に導かれてお互いの身体を密着させていきます。
誤解の余地などない零距離。お互いの体温も鼓動も全てが肌から伝わるのでしょう。
すっぽりと先生の腕の中に収まるサイズ感、わたしは少し小さいですがちょうどいいくらいでしょうか……。
「んっ、ふぅ……せ、せんせい、いきが、げんかい……」
゛呼吸は鼻でするんだよ。一回練習してみようか゛
「え? んっむうぅ!? んる、んっふぅむっ!?」
一瞬よそ事を考えている間に、先生はヒナさんの口内に舌を深く差し込んでいました。いきなりのディープキスにヒナさんは目を白黒させています。
それに構わず先生の舌はヒナさんの舌を絡めとり、歯の一つ一つを丁寧に舐めるようにして蹂躙しているのです。
突然の暴虐から逃れようと両手で先生の胸を弱弱しく押しているのはあくまでポーズだけなのか、拘束が解ける気配はなし。
目に涙が浮かんでいるというのに、それでもどこか幸せそうに頬が緩んでいるあたりヒナさんはもうぐちゃぐちゃにされつつあるのでしょう。
……きす、どんな感覚なのでしょうか。
゛じゅる……、える、ちゅる、れろ、っむ゛
「んふっ! はっんむっ、れ、れる、ちゅぅ……じゅる、ちゅぷ、っふむぅ!? あむ、んひゅっ!? んぢゅ、っきゅ、あっ、ふぇんふぇえ……!」
゛んぢゅ、ヒナ……゛
「や、あたま、ふわふわして……」
゛うん。もっとふわふわしていいんだよ。ちゅるっ゛
「ひゃあ……んちゅ、んむっうう、ふうぅ……」
汗の匂いが混ざり合うような濃密な絡み合い。先生はその中でもヒナさんがもっと気持ちよくなれるようえっちな動きをしていました。
深いキスを交わしながらヒナさんの服に手を差し込んでブラジャーのホックを外し。
快感を逃そうと悶えているヒナさんの股の間に膝を差し込み、動けばより気持ちよくなるようにする。
生徒に手を出してきた経験が透けて見えるような動きです。……ですが決してヒナさんも負けているわけではないようです。
外されたブラジャー。それごと先生を強く抱きしめて小さなふくらみを押しつぶし、小刻みに揺らして自ら刺激するのもそう。
股座に差し込まれ、女の子の気持ちいい所を押し上げる骨ばった膝にむしろ股を擦りつけていくのもそう。
初心なはずなのに、貪欲に自ら快感を求めて動く様はとてもえっちです。
……意外とむっつりということなのでしょうか。ノースリーブの服から覗く黒いブラジャーの肩紐も、捲れあがってお尻が、黒いショーツの下半分が、そしてクロッチの部分に出来たシミが先生のズボンに移っていく様子も。
とてもキスの一つで真っ赤になっていた人のそれとは思えません。
……わたしもいつかあんな風にえっちになる時がくるのでしょうか。
「んむっ、はふっ、ちゅる、んぢゅ、あむっ、はっ、んっ、ぢゅる、れる、せんせぇ……!」
゛れる、はふ、んぢゅる……ヒナ、気持ちよくなりたい?゛
「わ、わからない、あったかいのが、あたまのなかいっぱいで、からだもしびれるみたいな……」
゛そっか。じゃあ一回イっちゃおうね゛
「イっちゃう……? んひ、っきゅ、ううう゛……!?」
先生はどうやら鬼畜の類であるようです。
何が何やら翻弄されるばかりのヒナさんの蕩けた表情を見るなり、ぎゅっと抱きしめて片手を彼女の秘所へと伸ばしました。
また深く口を蹂躙しながら。
これまで服越しだとか、キスだとかの迂遠な快楽しか与えられてこなかったヒナさん。そこで突然敏感な場所を直接刺激されればどうなるか。
「んぢゅ、んむっきゅううううぅ……!?」
゛んむ、っる、んぢゅう……!゛
ショーツの上からクリトリスと陰唇を擦られ、ヒナさんの身体がびくびくと震えました。絶頂したのだとわかるその痙攣を、先生はぎゅうと抱きしめて抑え込んでいます。
あれは中々苦しいのではないでしょうか。気持ちいいのをどうにかしようとしているのに、それすら許されない。さらに言えば口の中で舌が暴れているせいで、満足に呼吸もできないのですから。
十秒ほどそんなふうにして先生とヒナさんは抱き合っていました。
「はー……、はぁ……んっ、っひ……はあー……あぁ……」
゛気持ちよかった?゛
「わか、らないわ……でも……しあわせなきぶん……」
゛よかった゛
「よかった、じゃありませんよ先生。こっちは不満越えて憤懣やるかたないところまで行きそうなんですが」
さて、茶番が終わったあたりから帰ってこられていたイロハさんはバスタオル一枚に身を包んでいい笑顔を浮かべておられるわけですが……先生は無事で済むのでしょうか?