実装おめでとう!
゛セイア、待ってたよセイアぁ!゛
先生、今日は良い晴れの日です。素晴らしい仕事日和ですよ。
゛……あ、もう朝なんだねぇ゛
三時間の睡眠でした。おはようございます。
゛仕事……しごと、しごと、うヴぉああ……゛
わたしたちも二十四時間高負荷状態で手伝っていますから、頑張りましょう。大丈夫です、いずれは終わります。多分、きっと。
゛終わるより積もるペースの方が速い……゛
そこについて考えてしまうと憂鬱になるだけです。忘れましょう。
゛プラナだけ? アロナは?゛
先輩はまだ起きていません。始業時間に起こす予定です。
゛ごめんね、二人にもちゃんとした休みの時間をあまり上げられなくて……゛
問題ありません。わたしは機を見て処理領域をイルカの脳のように半分ずつ休ませてやりくりしていますから。ですが充電は欠かさずしていただけると助かります。
゛わかったよ゛
それでは準備をしていきましょう。今日来られる生徒の方は……あら。
゛どうしたの?゛
先生、とても嬉しいニュースですよ。ずっと先生が待ち望んでいたあの人です。――わたしがそう告げると先生は椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がりました。
゛ガタァッ!゛
……わざわざ自分で効果音を口に出しながら。
シャーレの入館ログには既に彼女がこの建物に入ったと記録されています。時間的には……そろそろでしょうか。
ガチャリと部屋の扉が開かれます。
「おはよう先生、待たせて済まなかったね」
゛セイア!!゛
腋と背中が大きく露出した純白の制服、高くぴんと立った狐耳、ふわふわと揺れる金色の尻尾。トリニティ学園ティーパーティーが一人、百合園セイアさんがそこに居ました。
゛セイアだ、セイアだ!゛
「わわ、と。先生、そんなふうにされては目が回ってしまうよ」
先生は彼女を見るなり駆け寄ると両腋に手を入れ、高く持ち上げてくるくると回ります。彼女の言う通り目が回ってしまいそうな速さなのですが、それ以前にセクハラに当たるのではないでしょうか。
もしやあの大胆な衣装はそれさえ計算づくで……?
「ふふ、ここまで喜んでくれるとはね。治療に専念した甲斐があるというものだ」
セイアさんはエデン条約の一件で体調を崩されて以降、表舞台に立っておられなかったそうですが……どうやら快方に向かっているようですね。こうしてシャーレに来られるくらいには。
゛セイア、ずっと待ってたよセイアァ!゛
「いくら何でも過剰すぎやしないかな。わたしは確かにここにいる。存在の確認はもう十分だろう?」
くるくるくるくると先生は動きを止めません。振り回されているセイアさんのスカートがはためいて大変なことになっていますが、先生からは見えないので問題ないでしょう。……レモン色のおしゃれなレースの下着、ですか。なるほど。
「それにそろそろ降ろしてくれないと、わたしも酔ってしまう……」
゛ごめんねセイア!?゛
「いや、大丈夫だとも。先生のほうこそ大丈夫かい?」
゛問題な……ごめんちょっと水飲んでくる゛
ばたばたと走り去る先生。寝起きかつ睡眠不足の体であんな目が回ることをしていたら当然こうなるというべきでしょうか。
「まったく先生は。だからこそ皆も慕うのだけれど」
もちろん、わたしも。そうセイアさんは独り言ちました。それから辺りを見回して「シャーレとはこういう場所なのだね……いずれわたしもここに馴染むのだろうか」と呟きます。
とてとてと先生の仕事机に小走りに近寄る姿は小動物のようで可愛らしいものでした。
■
「先生は仕事を貯めがちなようだね」
゛ヴッ゛
仕事が始まって十分と経たずして、机に積まれた書類の山を見たセイアさんが先生を言葉で刺しました。鋭いナイフのような切れ味です。先生が机に伏すのもむべなるかなという所でしょうか。
しかしセイアさんは悪意や棘を持って言ったわけではないようで、微かに微笑んでいました。
「悪いとは言わないさ。様々な自治区から陳情が寄せられるというのは君が積み重ねてきた信頼の結果だ。この書類の数だけ先生は期待を背負っている。勿論運営に必要な諸々の手続きもたくさんあるだろうが……」
書類をぱらぱらと見て、それからさっと山の三分の二ほどを抜き取っていきます。
「そういった仕事はわたしに頼ってくれてもいい。これでもティーパーティーの一員として一つの派閥を纏めているのだからね。書類仕事はお手の物だよ」
゛セイアぁ……゛
「そう情けない声を出さないでくれ。残っている仕事は全て先生にしかどうにもならない……つまりそれだけ責任の大きいものばかりだ。とはいえ、わたしたちを助けてくれた先生なら……きっと大丈夫だと信じているよ」
そうしてセイアさんは持っていった書類を流れるような仕草で処理し始めました。一瞬も不自然に詰まることなく的確に内容を理解して捌く姿は、確かに彼女がサンクトゥスの長であることを思わせるものです。
「そういえば先生」
゛どうしたの?゛
「ミカとナギサはその……どうだろうか。二人もシャーレによく来ると聞くけれど」
゛ああ……゛
先生は答えに頭を巡らせました。おそらくは一瞬悩んだのでしょう。
ナギサさんはともかく。ミカさんは先生が初めて関係を持った生徒さんですから。
゛二人とも良い子だよ。ナギサがいると自治区の力関係とか私にはわからない情報を教えてくれるし、ミカがいると明るい気分で仕事に取り組めるから゛
「わたしとしてはそれを聞いてミカが先生に迷惑を掛けていないか心配になってしまうけれど……いや、うん。彼女の明るさはとても得難いものだ。わたしには難しいな」
゛難しい?゛
「彼女みたいに率直に物事を言って、楽しそうに過ごすことができたらと思う事はあるんだ。わたしはどうしても持って回った言い回しをしてしまう。それを変えようとは思わないけれど、もしミカのように出来たら少しは違っているかもしれないと。……そうだな、わたしはきっとミカが羨ましいんだ」
゛セイアはセイアのままでいいと思うよ゛
「ありがとう、先生。ミカもナギサも、そういってくれるかけがえのない友人だ。わたしは周りの人にとても恵まれた」
以前のわたしでは気付けなかったことだよ、とセイアさんは間に置きました。
「だからこそ思うんだ。これ以上を望むのは傲慢ではないだろうかと」
゛これ以上を、望む゛
「そう。とはいえこれ以上は今話すことではないだろうね。早く仕事を終わらせて、一緒にお茶でも飲むとしようか」
それからしばらく書類を完了済みのフォルダに移す手つきは止まらず、あっという間に時間は流れていきました。
■
「先生、どうだろうか。この辺で一度ティータイムと言うのは」
゛いいね!゛
「ふふ、何事においても余白と言うのは大事だからね。机に缶詰していては見えるものも見えなくなってしまう。飲み物の希望はあるかい?」
゛セイアの好きな紅茶がいいな゛
「……嬉しいことを言ってくれるね。ならわたしの部屋に招いた時と同じものでいいかい? こんなこともあるだろうかと、持ってきていたんだ」
゛もちろん!゛
「ふふ、では少し待っていてくれ」
そう言うとセイアさんは休憩室に向かい、しばらくの後にナギサさんの持ち込んだティーセットやら、ティーポットやらを手に戻ってきました。
「わたしはナギサ程ではないけれど紅茶を淹れるのが好きでね。一人でいる時はこうして自分で淹れているんだ。もっとも最近は立場上、手ずから淹れて人に振るまう機会もなかったのだけれど……こうして先生にお披露目できるのは、僥倖というべきだろうね」
そうして優雅に指を働かせてティーカップに紅茶を注ぐと、先生の前にそっと置きます。熱い湯気の立ち昇る透き通った茶色の水面。先生は取っ手に手を添えてまず香りを味わいました。
゛いい香りだね。わたしはあまり詳しくないからわからないけれど……゛
自分の分も紅茶を淹れ終えたセイアさんは先生の隣に椅子を持ってきて座ります。ぴくぴくと耳が揺れて先生の方に向いていました。それから、椅子の角度も少しだけ先生に向いています。意外と距離が近いですね。
「問題ないよ。知識の多寡はあくまでも味のないフレーバーに過ぎない。今わたしが淹れたお茶を先生が褒めてくれたこと以上に価値のあるものではないよ」
゛そっか゛
「お菓子も用意して来たんだ。休憩室に良さそうなものがあったからそれも合わせて持ってきたのだけれど、きっとミカが用意したものだろうね。勝手に拝借したから怒られてしまうかもしれない」
゛ミカはそんなことで怒らないよ゛
「……ふふ」
゛セイア?゛
セイアさんは袖で口元をそっと隠しながら笑いました。先生に向ける瞳は優しい親愛を宿したもので。
「君はやはり皆をよく見ているね。そうだね、きっと今のミカなら怒らないだろう。先生と一緒に食べるつもりだったのに、と不満を漏らしはするだろうけれどね。しかしわたしとミカ、それからナギサは意外と些細なことで昔から対立してきたものだよ。紅茶に砂糖を入れるか入れないか、お菓子は甘い方がいいか、どんな人を好きになるか……わたしの知っているミカはそうやって人とぶつかりながら仲良くなっていくわがまま娘なんだ。それが少しでも変わりつつあるというなら、それはきっと……」
セイアさんの尻尾がくるりと先生の腕に絡みつきました。驚く先生を他所にセイアさんは紅茶に口づけ、ほっと息を吐きます。それから先生を上目遣いに見やりました。
「先生、君があのお姫様を変えたんだろうね」
゛そんな、大げさだよ。……うん、すごい美味しい゛
「重畳だ。やはり君の言葉はわたしの心をくすぐってくれるよ」
そのあと十分経って休憩が終わるまで、セイアさんの尻尾は先生から離れないままでした。
■
「お疲れ様、先生。仕事は……どうやら終わりが見えないようだね」
゛働けど働けど……゛
「まさかシャーレの顧問という仕事がここまで多忙だとは思っても見なかったよ。いつもわたしたちのためにこうも身を砕いてくれているのだね」
゛先生って、こういう仕事だからね゛
定時になってなお先生の書類の山は減っていませんでした。いえ、減っていないのではなく処理する端から新しく積まれたというのが正しいのですが……それでも仕事が山と残っていることに変わりはありません。
わたしと先輩も全力でサポートしているのにこれであることに恐怖を隠せません。わたしもいずれ過労死でシロコさんのようにテラーと化してしまうのでしょうか。
『すみません先生、ぷらなちゃん。もう限界れふ……』
『先輩、おやすみなさい』
『おあふみなはい……』
先輩はまた眠りについてしまいました。わたしがこうして動き続けている以上、メインのAIである先輩の休止する時間が増えるのは仕方のないことです。かといって二人とも休めばそれはそれで更に仕事が滞ってしまいます。ですからわたしがこうしてアロナ先輩の分まで頑張ります。そしてちょっとしたご褒美に先生を観察しているのです。
「これ以外にも生徒からの呼び出しに、エデン条約のような大変な事件に対処するなど……考えただけでも恐ろしいよ」
゛……やれば何とかなる!゛
「根性論でどうにかなる範疇を越えているだろうに……」
ふむ、とため息を吐いて思案顔。目線が先生と書類の間を一往復してからセイアさんは頷きました。
「先生はずっと睡眠不足のようだ。きっとこのまま残業するのだろう?」
゛そうだねえ。そうしないと終わらないから゛
「さっき休憩室を見たけれど、ここには仮眠用のベッドがあるようだね。あれはわたしも使っていい物なのかな?」
゛もちろんだよ!゛
「ならば話は簡単だ。わたしはこのまま先生の残業に付き合うことにするよ」
゛え!?゛
「なに、わたしたちは先生に返しきれないほどの恩がある。この助力も微々たるものだがこうでもしなければその重みにわたしたちが気に病んでしまうよ」
゛でも……゛
「きっとこう言ったのはわたしが初めてではないだろう? ……それにわたしも、いつまでも深窓で眠る令嬢ではいられない」
再びセイアさんは先生の机に置かれた書類を選別し始めました。ぱらぱらと繰る指に疲れはなく。今度は二分の一ほど抜き取って、それから先生に悪戯っぽく微笑みかけました。
「時には窓の外に出て、他者の実存を確かめられる場所で眠ってみたいのだとも」
゛……ありがとう。じゃあよろしく頼むよ゛
「任された。……こうして人に頼まれるのも、悪くないものだね」
こうして始まった残業は時計の針が頂点を回って少しするまで続きました。
■
゛これ以上は明日かなあ……゛
「うん。君がそういうのであれば今日はここまでとしよう」
とんとんと書類を整え、完了済みとそうでないもののフォルダに仕分けるお二人。セイアさんはとても今日が初めてのシャーレとは思えないほど馴染んでおられるようでした。
「ずいぶんと長い一日だったような気がするよ」
゛でもセイアのおかげでずいぶんと楽しい日だったよ゛
「……心を読んでいるかのように君は欲しい言葉をくれるね。まったく、君との会話に心惹かれずにはいられない」
゛思ったままを口にしているだけなんだけどねえ゛
先生がぐっと伸びをするとセイアさんは立ち上がり、その手の先まで歩いて行きました。そして宙に放り投げられた手の平に指を乗せ、ゆっくりとまるを描きます。
指を乗せた、と言ってもセイアさんの袖は長く余っているために本当に指かはわかりません。しかし好奇心の光る瞳とピンと真っ直ぐ伸びた耳を見て、きっと指だと思うのです。
緊張に震える指を隠して、しかし勇気を出して先生の手に触れたのだと思うのです。
゛……くあ、セイア?゛
「どうだろう先生、このまま二人でゆるるかに語らいながら枕を共にするというのは」
゛っセイアァ!?゛
「はしたないとはわかっているが……今は君との時間をもっと望む心に従いたいのだよ」
先生が逆さにセイアさんを仰ぎ見ます。桃の皮と果肉の色がグラデーションとなった不思議な瞳が、それを上から覗き込みました。互いの息がかかるような距離に束の間の沈黙が横たわります。
彼女が何を思っているのかを類推するだけの感情は、わたしにはまだ蓄積されていません。ただその姿は、これまで先生に抱かれた生徒さんたちと重なるところがあるように見えました。
「どう、だろうか……先生」
゛……いいよ。一緒に寝ようか゛
そして二人はオフィスの明かりを落とし、共に休憩室へと姿を消したのです。
■
二人同じベッドで同じ布団を半分被って横になる。先生とセイアさんは今、一体何に思いを馳せているのでしょう。
少なくとも先生はやましい思いを少なからず抱いているでしょう。セイアさんがあの長い靴下を脱ぐ姿を盗み見ていた先生の表情は、完全にそういう色をしていました。
一方で、セイアさんは? 言葉少なな彼女は、一体何を思って先生と共に眠るのでしょう。
彼女は身体を横に倒してじっと先生を見ています。そこに眠る気配はありません。
「……ふふ、まさかこれほど近くに君を感じながら床につく日が来るなんて。思っても見なかったことだよ」
゛私もセイアと一緒に眠るなんて、とても驚いてる゛
「目覚めた時に傍に君がいたことは、あったけれどね。あれは巡り合わせの産物だ。こうして意図的に招いたものでは……いや、傍にいて欲しいと願ったものとは違う」
゛寂しかったの?゛
「……寂しい、というと違うだろうけれど……時折ふと不安に思うのだよ。次に見る夢がまた恐ろしい未来を指し示すのではないかと」
゛……予知夢の力はなくなったんだよね゛
「その通りだよ。そのことに間違いはない。わたしはもう、確固たる未来の夢を見ないだろう。けれど先生、わたしにとって元来夢とはそういうものだったんだ。迷い込んでは運命を見せつけられて、目覚めては今ある現実感を忘れる……それが当たり前だったんだ。すぐには慣れないよ」
ごろりと先生が身体を起こしてセイアさんと向き合うと、彼女は自らの尻尾を前に持ってきて抱きしめました。まるで恥じらうようなその姿に先生の指がぴくりと震え……そっと彼女の頭に伸びました。
大きな手に優しく撫でられることをセイアさんは目を閉じて受け入れています。リラックスしたように軽く伏せた耳を揺らしながら、頭を預けるように首を傾けて。
゛こうしていたらどうかな、大丈夫?゛
「んっ……そうだね、これはとても安心する。きっといい夢を見られるのだろうけれど……今度はまた違うものが怖くなってしまうよ」
゛違うもの?゛
「ミカとのことだよ」
その言葉を聞いた瞬間、先生の手がぎくりと強張りました。そうして離れかけた手をセイアさんは尻尾でぐるりと捕えると、また自らの頭の上に置かせました。
「先生、君は最近ミカと只ならぬ関係になったのではないかな?」
゛な、何のことかな?゛
「最近のミカはだいぶ変わったよ。シャーレに行く度、先生に会う度熱に呆けるような顔をするんだ。それで今度はまたいつ会えるのかなあ、なんて楽しそうにしているよ。あれを乙女というのだろうね」
゛そ、それはいいことだね?゛
「君も知る通りミカの心には未だ不安定な所がある。以前までの彼女なら、先生の迷惑になっていないかな、などと不安に思わずにはいられないだろう。しかしわたしの見ている限りではそんな様子はない。むしろ以前にも増して明るくなったくらいだ。だから何かあったのだろうとカマを掛けてみたのだけれど……どうやら当たりだったようだね」
゛ぐう……゛
「まあ、先生が今色んな生徒に手を出しつつあることはハナコから聞いたのだけれどね」
゛ハナコォ!゛
どうやら
先生の変態っぷりを。
「つまるところ、これは愛憎の問題なんだ」
「破滅に怯え、諦めていた子どもが助けてくれた人に対して抱く想いは並々ならぬものだと相場が決まっているだろう? わたしもその例に漏れない。だが先生を慕うのはわたし一人ではない。過ぎたるを望んでかけがえのないものが壊れるのは……怖い」
セイアさんは先生と行為に及ぶことでミカさんとの関係が悪化することを恐れているようです。それも当然のことでしょう。わたしも、アロナ先輩と似たような状況に陥れば……簡単に答えを出せそうにありません。
゛セイア。君はどうしたい?゛
「わたしが?」
゛そうだよ。私は君がどんな選択をしてもそれが最善な未来に繋がるよう力を尽くす。ミカが納得してくれるまでちゃんと話し合うよ゛
「わたしは……」
セイアさんは言い淀んで、切ないほどに煩悶を抱えているようでした。その煩悶が固く握られた彼女の手の平の内で握りしめられ、やがて潰れて。
それから彼女は先生の胸板にその頭を預けました。
「わたしは、君の存在を確かめたい。わたしにその実存を刻んで欲しい」
セイアさんのふわふわとした耳の毛が先生のあごをくすぐります。それに先生は目を細めて、セイアさんを抱きしめました。
「あっ……」
゛わかったよ゛
「ひぅっ」
背中に回した手でセイアさんの露出した背中をつう、となぞる。その手つきは慣れたもので、セイアさんは尻尾をぴんと立たせて小さく驚きを含んだ悲鳴を上げずにはいられませんでした。
光量を落とした薄暗い部屋の中で二人の影が重なって、ベッドの模様を変えていきます。
゛前から気になっていたことがあるんだ゛
「ひゃ、あうっ、うう、な、なんだい?」
゛どうしてティーパーティーの皆はこんなにエロい服装をしているんだろうと゛
「な、何を言っているんだい!?」
゛だってセイアはこんなに腋と背中を出しててさ、こんなのエッチだよ゛
「はあうっ」
背中に線を描きながらその指先がセイアさんの腋を掠めると、セイアさんは先生により強く抱き着きました。胸の中で悶える彼女に先生は笑みを深め、その尻尾を捕まえます。そして今度は尻尾の先、リボンで軽くまとめられた部分を筆のように使って彼女の背中をくすぐり始めたのです。
゛こんなふうにくすぐられるだけでだめになっちゃうような弱い場所なのに゛
「ふあ、ひっ、は、あ、はあ……! せ、先生、それは、はひ、やめてくれないか……! くすぐったすぎるんだ……!」
゛じゃあなんでこんなに露出してるの?゛
「んう……! わ、わたしは長いこと眠るものだから、背中が空いていた方が楽で、他の人が身体を拭く時にも……ひいぅっ!」
゛そういう趣味なのかと思ってた゛
「そんなはず、ないだろう……! 君はわたしを何だと思ってるんだ……!」
゛意外と子どもっぽくてエッチな女の子。多分むっつりスケベ゛
「本当に何だと思ってるんだい! あ、だめ、やめてくれ、尻尾の感覚と、くすぐったいのが……あっ、うう!」
あんまりな先生の物言いに抗議しても、尻尾と露出した肌という二つの弱点を握られたセイアさんはどうしようもありませんでした。優しくくすぐっているだけなのに、なぜか性行為を連想させるような悲鳴です。
゛それにミカは乳袋がすごい。見せつけているとしか思えない。ナギサもあの腰のラインがたまらないよね。ミカほどでなくとも胸を強調しているし゛
「き、君はわたしたちをそんな目で見ていたのかい……?」
゛もちろん生徒として見ているよ。ただそれとこれとは別で、これは美しいものを見て心が動くようなものなんだ゛
「君の心がわたしたちを見たということか……あ、ふあっ! わ、悪い気はしないのだが……」
゛それからこっちも気になってたんだ゛
「ひああっ!?」
先生が眼前で揺れる三角耳の白い毛だまりの中にふっと息を吹き込みました。今日一番の大きな声を出して驚くセイアさんに、先生は容赦なく責め続けます。
゛セイアって感情がよく耳に出るよね゛
「それは……っそうなのだろうけれど、どうして息を、ひゅうぅ!?」
゛息を掛けたらどんな反応をするのか気になって゛
「そんな、それだけで……んひゃうっ!」
ついで耳の中に指を差し入れました。
「あ、あああ……み、耳の中がぁ……」
゛どんな感じ?゛
「や、やめてくれ……そこは敏感なんだ……あっ、は、はあー……頭の中をいじられているみたいで、落ち着かない……!」
゛ふーん゛
「やめてくれと、言っているのに……!」
゛可愛いからもっと弄ってみたい゛
「君がかくも嗜虐的な人だとは……!」
先生を見上げて頬を膨らませるセイアさんの目尻には涙が滲んでいました。先生の指が動く度にぞくぞくと白い背中を震わせて、足をあてどなく振る。そうしているうちにいつの間にか二人を覆っていた布団は床に落ちていました。情事を隠すものはもう何も残っていません。
゛ああそうだ、これもやってみたかったんだ゛
「はあ、はあー……あ……次は一体何を、しようというんだい?」
゛セイアの胸、横から手を突っ込んでみたくて゛
「は……は、あっ!?」
先生は彼女の小さな体をぐるんと回して反対を向かせると、その背中を強く抱きしめました。それから両腋に通した手をそのままセイアさんの胸へ……服と肌の隙間を縫って入れたのです。
゛ふむ、やっぱりニップレスを使っているんだね゛
「これでないと……弊害が生じてしまうからね、ぇえっ……! そこ、弱いからぁ……!」
゛そこ、じゃなくて乳首と言って欲しいな゛
純白の服の下で無骨な十指が蠢いて影模様を描いています。セイアさんの顎に頭を乗せ、絶対に逃げられないよう四肢で絡めとった姿は捕食という言葉が似合うようでした。そしてそんなわたしの感想が聞こえているかのように、先生はしなだれていたセイアさんの耳を口で食み始めてしまいました。
「ひっ……いぃっ……!? せん、せい……! そ、それは、やめてくれぇ……」
゛ふぁんふぇ?゛
「みみのなか、くちゅくちゅ音がして……あ、あたまが、おかしくなる……!」
゛こっちでも音が聞こえるんふぁふぇ゛
「そっちは、より高い音を聞くための……っ!? あ、ふうっ……! ち、乳首もいっしょにいじられたら……!」
゛いじられたら?゛
「……ふ、ふふ、わたしはどうにかなってしまうかも、しれないぃぃ……っ!」
耳と乳首を同時に責められ、セイアさんは涎をたらしながら視線を宙に彷徨わせていました。両手で乳首をこねくり回す先生の腕を抑えようとしていますが、快感で力の抜けた状態ではどうにもできません。
゛ふむ、セイアの胸は意外とあって心地いい゛
「あってないような、物だけれどね……っ。ミカとナギサが羨ましいよ」
゛今は他の女の子の話はだーめ゛
「ひぃうっ……は、は、それは普通女性が言うセリフでは、ないかな……? あっ」
゛ベッドマナーの話だよ。男女差なんてない。それに、わたしはセイアの胸も好きだよ゛
「……ふ、っふふ。こんな小さなものが、好きなのかい?」
゛小さいからこその良さがある。手のひらで全てを味わえるし、とても敏感だ゛
「……もう、そんなに力説されては何を言う気にも、なれないね……っ。君に、委ねるよ。わたしをもっと、確かめて欲しい……」
セイアさんは自ら上半身の服をはだけ始めました。小さく華奢な体つきが露わになり、胸の先端にあるベージュのニップレスさえ見えています。それから先生の腕を両手と尻尾でそっと抱いて、下へと誘いました。
自らのスカートの、その内側へ。
誘われるがままに先生の手が彼女の肌を伝い、やがて秘所へ行きつきました。くちゅりと言う水音を聞くに、セイアさんは既に濡れてしまっているようでした。あのレモン色のショーツは一体どれほど情欲を吸ったのでしょうか。
「どうぞ意のままに……わたしを、味わっておくれ」
そのたった一言で、先生は理性を失った獣へと堕ちました。
■
「ひっ……いい゛! あっ、みみのなかに、せんせいのしたが……! んっ、くふぅ……っ!」
「だ、だめだめ、だめだっ。そんな乳首を弄ぶのは、あ、ああ……!」
「んああっ! や、クリトリス、指で磨かれて……っ! あ、ああ゛っぜんぶされたら、おかしくなってしまう! やめ、せんせい……いああ゛……!」
「うっ、んくぅっ! せ、せんせい……! イく、イってしまう! せんせい、せんせい! あ、イっ、くうぅ……っ!」
「まってくれせんせい! もう、イってるんだ! まだきもちいいままなのに、また、ほうえつがっ! あ、っぐ、ううううぅ……あああああ゛!」
……。
「は……あっ……ひぃ……あっ、お゛……」
およそ三十分の後。セイアさんは息も絶え絶えでベッドに打ち捨てられていました。意識がまともに残っているかも怪しいような、そんな状態です。しどけなくベッドに広がった黄金色の髪の毛が、無惨さを引き立てています。
そうなるのも無理のないことでしょう。先生は同時に耳をしゃぶり、乳首をこねくり回し、秘裂を散々に責め続けていたのですから。いわゆる三点責めの亜種。どれほどセイアさんが嬌声を漏らそうとも一切の手をゆるめませんでした。
先生は鬼畜です。一切の容赦なくセイアさんを責め続けて……都合五度も彼女は絶頂に至りました。まだ前戯の段階であるにもかかわらず。
彼女の体力が持つのかどうか、わたしにはわかりません。ただ先生はそれを危惧してか、二人分のコップを手にベッドに戻ってきました。
゛セイア、水だよ゛
「あ゛……ありがとう、先生……」
セイアさんはコップを受け取るために体を起こそうとしますが……全く力が入らないようで、ぽふんとベッドに体を沈めてしまいます。
「あー……すまない先生、この貧弱な身体は自らを支えることさえできないようだ」
゛大丈夫だよ゛
「先、生? んっ……」
何が大丈夫なのか全くわかりません。先生は水を口に含み、セイアさんに口づけました。それを彼女も目を閉じて受け入れ……口移しで水を飲み始めたのです。
「んく、んく、ん……ぷは。先生……」
゛もう一口行っておこうか゛
「ふふ、他者と口づけを交わすなんて、初めてのことだよ……んっ、んく……」
セイアさんに覆いかぶさった先生の姿。その手が口移しの間にも彼女のスカートの中に潜り込んでいきます。やがて奥まで行きつくと今度はセイアさんが腰を俄かに浮かせて……再び出てきた先生の手には、彼女のショーツが掴まれていました。華やかなレモン色のショーツは、もうほとんど愛液に濡れて役割を放棄しているような有様となっていました。
「……いよいよ、なのだね」
゛そうだよ。ほら゛
「きゃっ、わ、わあ……」
先生はセイアさんのショーツをサイドテーブルに恭しく置くと、次に自らのズボンをパンツごと下ろしてしまいました。
ぼろんと現れた怪物を見てセイアさんが目を丸くします。
「これが君の欲望の形……」
はくはくと口を動かしてから、引きつらせて。
「わたしはちゃんとうけとめられるのだろうか……」
と怯えたように言いました。
゛大丈夫だよ、慎重にやるから゛
「……事ここに至っては、信じる他ない。なにより委ねると決めたからには泣き言などいうまいよ」
先生が膣口にその欲望を宛がうと、セイアさんは先生の手を握りました。互いの五指が組み合って、それから先生はにじゅり、と腰を沈め始めます。
「ん……ぐう……!」
にじゅり、にじゅう……。膣内が窮屈なのか進む速度は遅々としたもので、奥まで行きつくにはずいぶんと時間がかかりました。セイアさんも小柄な人ですから、先生の怪物は根元まで埋まっていません。それでも確かに、セイアさんは先生の欲望を受け入れられたのです。
「は、は……君がわたしの奥にまで届いているよ……」
゛大丈夫?゛
「大丈夫だとも。こんなに熱くて、固い……わたしの中に君がいる。その存在を確かに感じられている」
下腹部を撫でながら、熱い息を零す。満たされているのだと先生に伝えるようでした。
「さあ、先生。今度は君がわたしを確かめてくれ。わたしの中の、奥の奥まで……」
゛じゃあ、お言葉に甘えて゛
「んうぅっ!? は、あっ、んっ……!」
先生はセイアさんの身体をいたわるようにゆっくりと抽送を開始しました。力なく開かれたセイアさんの足、その先端の指が快感のあまり丸まります。
「あっ、ふ、ん、ひっ、いぃ……あ、ああ……!」
先生の手にしわが寄るほど強く握りしめ、頼りない小舟のように先生のリズムに揺られ。
耳は先生が一突きする度にぴくぴくと震えてその衝撃を表現しているようでした。
「あっ、んくっ、ふっ、ふうっ! あ、ああ、ふ、ふふ、わたしはきみに、よろこんでもらえているだろうか……あっ」
゛とても嬉しいよ。このまま朝まで貪りつくしたいくらいだ゛
「ふ、ふふ……それは、わたしの体力が、先に尽きてしまうだろうね……んっ、ふ、んうっ!」
゛だから丁寧に味わわないとね!゛
「んっ!? ふうっ、うあっ、あっ! ふ、君が夢中になってくれているなら、嬉しいよ。貧弱なのに、セクシーで済まない……おうっ!?」
徐々に先生がペースを上げます。セイアさんの言葉に含まれる、先生を挑発するような響き。それがいっそう先生を燃え上がらせているようです。
゛挑発するなんて、悪い狐だ……!゛
「ん、く、ふうあっ……! ひ、い、う、ふふ、手が届かないと思っていたブドウの、甘味を味わっているんだ。浮かれるのも、しょうがないことだともっ!」
゛ならもっと、味わわせてあげる!゛
「んっおお゛っ!?」
破裂音に似た音。先生がぎりぎりまで引いた腰を一気に奥へ打ち付けたのです。飛び散った愛液は彼女のスカートさえも汚し、おもらしをしたような有様となっています。
杭打ちにも似た抽送が続く中、セイアさんは懇願するような目で先生を見上げ続けます。情欲に濡れた、桃色の瞳で。
「あ゛っ、っぐうっ! はっ、あ、はあ……っ! あ、これ、おくが、おしこまれて……っ!」
゛セイアは奥が好きなんだねっ!!゛
「んっくうぅ……! は、あ、あ、ああ! そう、だね、えっ……! きみの、よくぼうでおくをおしつぶされるのが、たまらないっ……!」
゛よく言えました゛
「あっ、んううっ! もう、こどもあつかいはやめてくれ……っ! だって、そうだろう? せんせいと、いまこうしておとなのまぐわいをしているというのにぃ……!」
゛そうだね。大人として、セイアをちゃんと気持ちよくしてあげるよ゛
「は、あ、あ、あああっ! だめ、だめだめ! おく、ぐりぐりされたら、あたまがまっしろになってえ……っ! あ、だめ、イク、イってしまう……!」
先生が打ち付けた腰を力強くセイアさんに押し当てるようにすると、彼女はそのままイってしまいました。足がみっともなく震え、尻尾が真っ直ぐ伸びています。
それでも先生の動きは止まりませんでした。
「あっ、ぐうっ、ううっ! せ、せんせい!? あ、まだ、おく、いじめるというのかい……っ! もうわたしは、なんどもイっているというのに……!」
゛セイアがイクところをもっと見たい゛
「あ、ああ゛……っ! ど、どうやらわたしは、きみというそんざいのかいしゃくを、まちがえていたらしい……! あっ、くう……!」
゛どう間違えてたの?゛
「んひぃ゛っ! おもいのほか、ようしゃなく……わたしをたしかめるどころか、くいあらしてしまうケダモノのようで……うああっ!」
゛見損なった?゛
「は、っぐ、うう……! そんなはずが、あるまいよ……。わたしは、いま、せんせいのことをよりふかく、んうっ! しっているということに、ほかならないのだからっ。こうして、よくぼうをうけいれることで、ぇえっ!」
゛……挑発していないのに、誘ってくるとは゛
「これは、まぎれもないほんしんだよっ、あっ! ひいっ、うう、っぐ、んえ、あが、あああ……っ! また、イクっ、……っ!!」
いつしか先生の腰はどちゅんどちゅんと凄まじい音で打ち付けられるようになっていました。セイアさんの身体はその度に荒れた海を漂うように揺れて、取り繕う余裕のない嬌声を上げるのです。
時刻は既に丑三つ時を回っています。きっと明日、二人は睡眠不足に悩まされることでしょう。セイアさんなどはそもそも筋肉痛で動けないかもしれません。それでもそんなことは知らないとばかりに二人は互いの身体を味わうのです。
その悦びに、歓喜を歌いながら。
「ひいっ、んっ、っく、ぐううっ! ああ、だめ、だめ、だめっ! またイってしまうからぁ……!」
゛わたしも、もうすぐだ!゛
「あっ、んっ! っ、そのまま、だしてくれていい……! おくに、きみをきざんでくれ……!」
゛っ! 射精すよ!゛
「ああ! きてくれ! おくに、おく、がっ、はっ……ああ゛~……っ!」
ずん、と一切の容赦なく最後の一撃が打たれました。ベッドが揺れて、ぎしぃと危うさを覚えるような悲鳴を上げます。それほどの衝撃が、セイアさんの人形のように儚げな身体を貫いたのです。
「なか、に、あついのがっ……!」
セイアさんは目一杯に腰を反らして、深く絶頂したまま。真っ直ぐ伸びたおとがいに丸く見開かれた目が元に戻ったのは、その余韻が長い時間の後に過ぎ去ってからでした。
それに合わせて先生が肉棒を引き抜きます。白濁と、泡立った愛液に塗れた先生の欲望。抜き去ってなお纏わりついていた液体がねっとりとした線を引きながら、スカートに零れ落ちてその白を穢しました。
「……はあ、はあー……ん゛っ! まだ、よいんが……せんせいのはきだしたよくぼうが、あつくてたまらない……」
゛……ふうー……゛
「ふ、ふふ……こんなにされては、わたしのかたちはもうきみをわすれずにはいられないね。……せんめいに、きざみこまれてしまった」
途切れ途切れの息を整えながら、艶のある蕩けた声でセイアさんは語ります。先生と睦んだことの喜びを。
「こんなしあわせなきもちはひさしぶりで……いい、ゆめがみられそうだ」
そして幸せそうに頬をほころばせたまま、眠りについてしまいました。
遅れてしまったのでもう一つ隠密中に捕まっちゃったセイアちゃんを書く予定あり。