※この作品はR-18です。

犬と狐   作:ニコール

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この作品は同時並行で投稿している作品と世界が同じです。 登場するキャラの説明がない場合がありますので『鬼神と鬼人は今日も駆け引きをする』と『馬は今日も狐を追う』を読むことをオススメします。


犬は狐を拾う

今でも鮮明に思い出す、彼女に出会ったあの日のこと。

あれは、私がまだ佐野で何処にも仕えておらず、諸葛亮殿に仕えるために荊州へ向けて旅をしていた頃だった。

 

そんな道中で、一匹の小さな狐に出会った。

 

『キューキュー』

 

狐は罠に掛かり、必死にもがいていた。

小さな身体が震え、怯えた目で俺を見上げている。

 

「可哀想に……まだ小さいじゃないか」

 

私は狐が掛かった罠を外し、そっと抱き上げた。

温もりを感じるその小さな身体は、まるで何かに怯えているかのように震えていた。

 

『キューキュー』

 

狐は脚を怪我しており、鮮やかな赤い血が流れていた。

 

「よし、ちょっと待ってくれよ。今、包帯と薬草で止血してやるから」

 

私は慎重に狐を地面に寝かせ、清らかな水で脚を洗った。

すり潰した薬草を丁寧に塗り、優しく包帯を巻いた。

 

「流石に、このままだと危ないから、脚が治るまで俺が見てるからな」

 

狐を抱き上げると、薬草のおかげで痛みが和らいだのか、腕の中で静かに眠り始めた。

 

「ふっ、可愛いやつだな」

 

私は狐の頭を優しく撫でる。

すると、狐は心地よさそうに寝息を立て、その小さな身体が微かに震えた。

この狐は、珍しく黒色の毛並みで、月明かりに照らされたその姿は、まるで夜の精霊のようだった。

 

「暫くの間だが、よろしく頼むぞ」

 

両手で持ったままだと、何かあった時に対処できないため、大きめの手ぬぐいを斜めがけにして縛り、抱っこ紐のようにし、その中に狐を入れた。

 

「さて、荊州に向かうか」

 

新しい仲間と共に荊州へ向かった。

本当は馬を持てば良いのだが、私自身は歩いて旅するのが好きだ。

胸の中で眠る狐を見ながら歩くのは、心が和む瞬間だった。

狐は時折、顔を出しては私の方をみて、何か嬉しいのか耳を垂らしては俺に甘える。

 

「なんだ?お腹が空いたのか?干し肉食べるか?」

 

鞄から干し肉を取り出し、少しちぎり、狐にあげれば、狐は嬉しそうに食べ始めた。

 

そんな狐と旅をしてから3日。

丁度半分を越え、あと2日で荊州に着くところまで来た。

狐の脚は何とか治り、逃がそうとするが、中々離れず、仕方なくこのまま一緒に居ることにした。

 

そんな夜、夕飯を食べ終え、眠りにつこうとした時だった。

 

『キューキュー』

 

狐が何かに反応し、上を向いて鳴き始めた。

狐は満月を見つめ、まるでその光に導かれているかのようだった。

 

「どうした?月が見たいのか?」

 

私はその瞬間、狐を優しく抱き上げた。

すると、信じられない出来事が起こった。

 

「なっ!?」

 

狐から煙が立ち上り、私は咄嗟に狐から手を離した。

煙の中から現れたのは、まるで夢の中から抜け出てきたかのような人影だった。

 

「何奴!!」

 

私は武器を取り、直ぐに身構えた。

 

「武器を構えるなんて酷いなぁ、ここ数日共に過ごした仲じゃないか」

 

女の声がし、煙がゆっくりと引けば、現れたのは裸の女だった。

 

「ちょ、お、女!?へっ!?」

 

状況が読めず、両手に持った武器を地面に落としてしまった。

 

「何をそんなに驚く?」

 

女は夜空の様に美しい長髪の黒髪、瞳は月の様に輝く黄色い瞳。

そしてなにより、肌が陶磁器の様に白く、異様な雰囲気を醸し出していた。

女は驚く私にゆっくりと近づいてくるため、私は慌てて手で目を隠し、もう片方で咄嗟に鞄に入っていた平服を女に突き出した。

 

「そそそ、その前に!こ、これを着てください!」

「……別に今はいらないだろ?私が君にお礼をしようと言うのに」

 

差し出した腕をどかし、近づいてくる。

 

「うわっ!?ちょ、まっ、」

「この脚のお礼だ」

 

女は顔を隠してた手を無理やり剥がし、私に見せてきた。

あの脚の傷の位置からして、あの狐が怪我した位置と同じだ。

 

いや!いや!そういう場合ではない!!

今非常まずい!!女の大事な部分が見えそうになっている。

そんな慌てている私を無視し、女が私を押し倒し、防具をはずそうとした瞬間!

 

「だ、駄目だ!!」

「ちょ、うわぁ!?」

 

私は咄嗟に彼女に平服を投げつけてしまった。

 

「だ、駄目ですよ!!じょ、女性が、そ、そんな簡単に!!」

 

慌てふためく俺を見た彼女は、一瞬唖然としたが、何かツボにハマったのか、急に笑い出した。

 

「あはははは!!!まさか、男がそんなこと言うなんて!数日間一緒に居たけど、やはり君は面白い」

 

彼女は私から離れ、投げつけられた平服を着ながら続けた。

 

「私は、君が助けた狐だよ」

「狐……?まさか貴方は」

「私の名前は黒琉。そう、君が思っている通り!私は妖だ。まぁ、色々あってこの世界に来たのだが、私自身、変化が得意ではなくて、案の定罠に引っ掛かってしまった……そして、君に助けられた」

 

黒琉殿は着替え終え、優しく微笑みながら俺に手を差し伸べてきた。

 

「私は…楽進…字は文謙と言います」

 

私は彼女の手を優しく取ると、彼女は私の手を柔らかく握り返した。

 

「文謙…改めてお礼を言わせてくれ、私を罠から助けてくれてありがとう」

 

月明かりのせいか、その時の黒琉の笑顔や雰囲気に心を奪われてしまった。

 

「そして、私の変化を確実にしたのも、君なんだ」

「へ?それはどういう」

「残念だが、それはまだ言えない。だが、君がこれから私と共にいるなら、私は時が来たら話そう」

 

黒琉殿は少し申し訳なさそうな表情で答えた。

その瞳には、何か深い秘密が隠されているように感じられた。

確かに一人旅よりかは、誰かが居たら嬉しいのだが、こんな美女と旅するなんて…。

私自身、女性と話すなんて露店位で、これから先、どう黒琉殿と接すればいいのかと、内心思ってしまったのだった。

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