※この作品はR-18です。

神姫清廉オルレアハート!-乱行恥虐のスペクトラム-   作:ホリス_if

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初投稿作品です。
変身ヒロインが様々な化け物や怪人にリョナ&陵辱される事をテーマにした本作。
今回の相手はオーソドックスな触手になります。
お楽しみいただければ幸いです。


第一部
第1話-覚醒!オルレアハート!


 

 ……彼女の目の前には引越し直後、町の探索中に迷い込んだ、あの裏路地が広がっていた。

 

(そこの少女……このペンダントを貴女に授けます……もし困った事があったら、この石に祈りなさい)

 

 ……スマホ片手に迷っていた彼女の目の前に現れた男性は、そう言いながら彼女の手に少し大きめのペンダントを渡した。

 

(このペンダントはきっと、貴女の助けになるから)

 

 ……銀色のチェーンに吊るされた、金色の枠に囲まれたハート型でピンク色の石。

 

「あ、あのっ、貴方、は……? それに、これは……」

 

 彼女が問いかけた時には既に目の前にいたはずの男性は姿を消し、ここに残るのは彼女一人。

 いつしか辺りも暗くなってきた。

 早く帰らなければ……そもそもここから無事に帰れるのだろうか……

 

『……ピピピピピッ!! ピピピピピッ!!』

 

「んぁっ!?」

 

 そんな彼女の心配は、けたたましく鳴り響くスマホのアラームによって吹き飛ばされた。

 

「んっ、んんっ……はぁ……またあの夢かぁ……」

 

 スマホの電源スイッチを押してアラームを止め、ベッドの端に座って思いっきり身体を伸ばす。

 彼女の名前は『春永 雅』。

 私立華栄学園の風紀委員長にして剣道部のエース。

 成績良好、運動神経抜群、容姿端麗、おまけに親元を離れて一人で暮らす事を許されるくらいにはしっかりしており、間違った事を許せないという強い正義感を持つ黒髪ロングの完璧美少女。

 学園内ではその瞳に捉えられたが最後、自習室に連れ込まれ反省文を延々と書かされる、という噂もあるくらいだ。

 ……しかしそれは彼女の、あくまでも表の性格。

 

『……ピピピピピッ!! ピピピピピッ!!』

 

「……あ〜も〜っ、うるさいなぁっ!!」

 

 スヌーズ機能で再び鳴り響いたスマホを手に取ってアラームを止めると、雅は思いっきり枕元へと投げつけた。

 

「……ったく!」

 

 彼女の本来の性格……それは〝ズボラ〟という表現がピッタリとハマる、かなりいい加減な性格なのだ。

 一人暮らしが成り立っているのも、家にある最新家電のおかげ。

 ご飯も基本はコンビニか宅配、それかレトルト。

 床には脱ぎ掛けの服や雑誌が散らばり、ベッドの上には飲みかけのペットボトルのジュースが転がっている。

 それがこの少女、春永雅なのである。

 

「は〜、ダルいなぁ……」

 

 そう独り言をボヤきながら、彼女は勉強机の一番上の引き出しを開ける。

 そこにあるのは、夢の中にも出てきた、ピンク色の石が付いたペンダント。

 

(……なんか最近、あの夢よく見るんだよなぁ)

 

 入手経路が如何にも怪しいこのペンダント。

 しかし、何故か手放す気にもなれない。

 

(困ったことねぇ……何にも無いのが一番なんだけど)

 

 彼女はペンダントを机の上に置くとスマホを一瞥し、寝巻きから制服への着替えを始める。

 柔らかいパジャマをベッドの上に脱ぎ捨てて裸になると、近くのハンガーに掛かった制服を同様にベッドの上へと放り投げた。

 巨乳、とは呼べないもののそこそこあると自負している胸も、少し大きめなお尻も、今はさらけ出してもなんら問題は無い。

 そのまま、これなら万が一透けても文句は言われないからと大量に買い込んだ味気ない白色のブラジャーとパンツを着け、黒色のタイツを履く。

 そして放り投げられた紺色のスカート、白色のカッターシャツに白茶色のブレザーを次々に身に着け、最後に首元に緑色のリボンを着けると……

 

「よしっ、終わりっ!」

 

 ものの数分で、彼女の着替えは完了した。

 そして洗面所へ向かい、寝癖直しとドライヤーで髪を整え、手持ちのカバンに必要な物をひとしきり詰める。

 このルーティンに要する時間は約三十分。

 これも、全てはギリギリまで寝る為に洗練し続けた結果の賜物である。

 

(ペンダント……一応、持ってくか)

 

 最後に例のペンダントとスマホをカバンの奥へと突っ込み、玄関口にある部活用の竹刀ケースを肩に掛ける。

 

「……はぁ」

 

 今日も始まるであろう退屈な日常。

 そんな鬱屈な気持ちを吐き出すように、大きなため息と共に部屋の扉を開けるのだった。

 

……

……

 

 私立華栄学園。

 ここは花園市の中心に位置している男女共学の学園である。

 つい十年ほど前に創立された学園ということもあり、授業に使う機材も最新の設備を揃えられている。

 立地故にアクセスも良く、敷地も広く、更には学食、購買共に品揃え豊富、値段も安いと言うことが無い。

 そんな外部の学生から見たら憧れであろう場所へと赴くために、重い一歩を踏み出した雅。

 

「あ、やっと出てきた!」

 

 そんな彼女へと外出早々、一人の少女が声を掛けてきた。

 

「あ〜……奏、おはよ〜」

「おはよ、雅!」

 

 彼女は『江崎 奏』。

 雅の幼なじみにして風紀委員の一人、更には彼女の裏の顔を知る数少ない人物である。

 もちろん地元も二人は同じであり、奏は雅が進学先を華栄学園にすると決めた際に彼女を心配して着いてくるほどのお人好し。

 言わずもがな、雅が一人暮らしを許されたのも奏が隣の部屋に住んでくれると決まったからである。

 そんな明るい髪色でショートボブの彼女は、成績はそこそこ、運動神経もそこそこ。

 それでも持ち前の明るい性格とボーイッシュな容姿、そしてそのスレンダーな身体によるスキンシップによって男女問わず人気があった。

 

「も〜! シャキッとしなよ、風紀委員長様!」

「うるさいなぁ……学校着くまでには何とかなるって」

 

 短めに履いたスカートが翻る勢いで背中をバンバンと叩く奏を鬱陶しそうに睨みながらも、雅と奏は学園に向けて歩き始める。

 

「さて風紀委員長様、今日はどんなお仕事がおありで?」

「ん〜と……あ〜、今日は特に無いみたいよ」

「お! じゃ、今日は放課後久しぶりにフリー??」

「いや、今日は久々に部活に顔出そうかな〜って。 次の大会には出る予定だし」

「あらら、そりゃ残念」

 

 そんな他愛の無い雑談を交わしながら並んで歩く、いつも通りの日常。

 そしていつも通り学園に着き、いつも通り授業を受け、いつも通りに帰宅し、いつも通りに明日に備える。

 しかし、彼女らはまだ知らなかった。

 このいつも通りの繰り返しが、唐突に終わりを迎えることを。

 

……

……

 

 そして何事もなく授業も終わり、今の時刻は十九時を過ぎた頃。

 彼女は今、所属している剣道部の練習に参加し、健全な汗を流していた。

 

「は〜い、今日の練習終了! お前ら、片付け始めろ〜!」

 

 体育館横の剣道場にて、部活動の終了を告げる知らせが部長『風谷 葵』の口から発される。

 その知らせを皮切りに、部員たちはそれぞれが掃除や整理整頓などを始めていく。

 他部員と同様に片付けを始めようとする雅、だったが……

 

「あ〜、雅、お前は帰って良いぞ」

 

 突然葵部長に呼び止められ、雅は一人だけ帰宅の許可を出された。

 練習直後の片付けというのは中々に骨が折れる。

 しかも、剣道着の下は基本下着を着けない。

 それ故、汗だくでベトベトなこの状況では一刻も早く汗を拭いて着替えたいというもの。

 そんな中で片付け免除となれば、誰だって内心ウキウキになるのも仕方ない。

 それでも、ここは学園である。

 今まで被ってきた優等生の皮を暴かれないよう、精一杯の申し訳無さと片付けへの虚構のやる気を添えて雅は声を発する。

 

「いえ、そういう訳には……」

「いいのいいの、最近風紀委員も忙しいんだろ? 前も校内のいざこざを治めるのに結構奔走してたらしいじゃん」

「それは風紀委員長として当然の仕事ですから、片付けをサボる理由にはなりません」

「まぁまぁ、良いの良いの! 今日くらいは少し早く帰ってゆっくりしな!」

「……はい、それではお言葉に甘えさせていただきます、お疲れ様でした」

「はい、お疲れ様!」

 

 色々と言葉を並べはしたものの、結局、部長に言われるがままに更衣室へと押し込まれた雅。

 一度説得に応じてしまったのならば、ここは逆らわない方が無難だ。

 そう内心言い訳を考えながら彼女は剣道着を脱ぎ、汗でベトベトになった身体をタオルで拭き取る。

 そのまま誰もいない更衣室にて全裸で何かをする事もなく、素直に制服へと着替え、袋に入れた竹刀を肩に掛けながら帰路に着く。

 

「あ、雅先輩っ、お疲れ様でした!」

「はい、お疲れ様です」

 

 途中ですれ違う女子生徒と軽く挨拶をしながら愛しの我が家へと歩みを進める雅。

 

「……そうだ」

 

 その最中、ふと思いついたように立ち止まると、雅はカバンからスマホを取り出し、奏のスマホへとメッセージを送った。

 

『奏、ご飯食べた? まだなら一緒に食べよ!』

 

 奏は雅が自炊できないのは知っている為、栄養管理も兼ねて週に一、二回ほど二人で一緒に外食をするのが習慣となっていた。

 その日がいつかは決まっておらず、今回のように片方の思いつきで連絡を投げて決めるのが大半だった。

 しかし……今回は少し様子が違っていた。

 

「……既読、付かない?」

 

 奏はトイレにもお風呂にもスマホを持ち込む。

 故に普段ならば唐突にメッセージを送っても一分以内には既読が付き、すぐに返信が来るはずなのだ。

 にも関わらず……今回は既読すら付かない。

 

「ん〜……どうしたんだろ」

 

 もしかして珍しく早めに寝たのだろうか?

 帰っても既読が付いてなかったら……直接部屋のピンポン押してみようか。

 一向に既読の付かないメッセージ画面を凝視しながら、記憶を頼りに帰路を進み続ける雅。

 だったのだが……

 

「…………っ!? なっ、ぁ、えっ、これっ、なにっ!?」

 

 ふと目線を上げた瞬間……彼女の視界は普段の下校路には存在していない、謎の路地裏を映していた。

 

「えっ、いやっ、でもっ、これっ、は……まさか……」

 

 この路地裏は……今朝の夢にも出てきた、この町に引っ越してすぐに迷い込み、そしてあのペンダントを渡された路地裏に非常に酷似していた。

 あの時も同じ。

 気が付いたらこの場所に入ってて、気が付いたらこの場所から出ていた。

 ……何か嫌な予感が、雅の脳を過ぎる。

 

「も、戻らなきゃ……ここは……なんか……ヤバい、気がする……」

 

 もし真っ直ぐこの路地裏に入ってきたのならば、そのまま真っ直ぐ戻れば元の道へと帰れるはずだ。

 こんな場所からはさっさと離れるべき。

 こんな所に奏がいるはずが無い。

 そう、踵を返そうとした、その時だった。

 

『〜〜〜〜っ!! っ、〜〜〜〜っ!!』

「っ、か、奏っ!?」

 

少しだけ遠くから聞こえた、どこか苦しげな叫び声。

だけれども、彼女が聞き間違えるはずも無い声。

 

「……っ、無事でいなさいよっ、奏っ!」

 

 自分に何ができるか分からないが、こんな状況で自分だけが何もせずに逃げ帰るなんてできない。

 雅は咄嗟にカバンの奥底に突っ込んだペンダントを引っ張り出し、乱雑にブレザーのポケットへと捩じ込んだ。

 そして竹刀を袋越しに握り締めると、声の方向へと全力で走り出すのであった。

 

……

……

 

『〜〜っ、っ、〜〜っ!?』

 

 何も知らないはずの場所で、〝私〟はただひたすら、声の聞こえる方向へと走っていた。

 

「奏っ! 返事をしてっ、奏ぇっ!!」

 

 必死に叫んでも、奏の返事は聞こえない。

 けど、次第に声は大きくなっている。

 間違いない、近くにいるはずだ。

 部活で鍛えた体力のおかげか、まだ余裕はある。

 

「奏っ、どこにいるのっ、奏っ!!」

 

 今はただ、声のする方向へ進み続けるだけ。

 

『〜〜っ、ぁっ、〜〜っ!?』

 

 段々、声が近くなる。

 

『んっ、はっ、ぁぎっ、ぃい゛ぃぃぃっ!?』

 

 もう、かなり近い。

 明確に聞こえてしまう親友の悲鳴に、思わず耳を塞ぎたくなってしまう。

 けど、こんな訳の分からない場所でこんな目にあっている奏の方が何倍も辛いはず。

 

「っ、奏ぇっ!!」

 

 必死に脚を動かして声の元へと走る。

 そして、ポツンと現れた曲がり角を疑いもせずに全速力で曲がる。

 

「奏……っ!? かなっ、で……?」

 

 そこには……

 

 グチュグチュッ!! ドチュッ、ドチュッ!!

 

「んぎっ、ひっ、ぎぃぃぃっ!? イグっ、またっ、イグイグイグぅぅぅっ!! ぁっ、ぎぃぃぃっ!?」

 

 ……見たことも無い肉塊の放つ触手状の化け物に絡まれ、下半身の二つの穴から触手を捩じ込まれ、身体をビクビクと痙攣させている……奏の姿があった。

 奏の制服はズタボロに引き裂かれ、上下の口からは白い粘液が溢れだしている。

 

「ひっ!? っ、やっ、はあぁぁぁっ!!」

 

 いくら自分に性行為の経験がなくたって、これが俗に言うレイプってヤツだって事は容易に察しがついた。

 そして、それが既に手遅れに近い状態にまで行為が及んでいたことも。

 そんな、親友に降りかかった目を疑いたくなるような惨状を見た瞬間……私は咄嗟に竹刀を引き抜き、奏を襲う触手の大元へと走り出していた。

 

「私の奏になんてことしてくれてんのよっ、この野郎っ!!」

 

 全速力の助走をつけて、全体重を乗せての突き。

 部活で使ったら色々言われるけど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

 私の最大級の必殺技でコイツをぶち抜いてやるっ! くらえっ!!

 

 ……ドスッ!!

 

「ぉごっ!?」

 

 ……一瞬、何が起きたのか分からなかった。

 私の竹刀が怪物を貫くはずが……いつの間にか一本の触手が、私のお腹にめり込んでいたのだ。

 

「ぅぐっ!? ぁっ、がぁぁぁっ!?」

 

 そのまま私の身体は背中から反対側の壁へと叩きつけられ、顔から地面へと激突した。

 遅れて、今まで味わったことの無いような痛みが一気にやってくる。

 

「がはっ……ぐ……っ……ぁ……!!」

 

 一回殴られただけなのに、お腹にはまるで内臓をグチャグチャにかき混ぜられたみたいな激痛。

 立ち上がることは愚か、息をする事すら上手くできない。

 

 グチュグチュグチュグチュッ!!

 

「ひぁっ、はっ、ぅうぅぅぅっ!? ぁひっ、らめっ、まらっ、んっ、ぎゅぅぅぅっ!?」

 

 ……でも、それでも。

 

「んぐっ……かはっ……げほっ、はぁっ……はぁっ……」

 

 この程度の痛み、あんな化け物に犯されている奏の苦しみに比べたら些細なもの。

 例え勝てるはずの無い無謀な戦いだと分かっていても、それは立ち上がらない理由にはならない。

 

「ぐっ、う゛ぅっ……わたしのっ、奏っ、にぃっ……手ぇっ、出すっ、なぁ……っ!!」

 

 なのに、私の手脚は思うように動かず、私を支えてすらくれない。

 絞り出した叫び声すらも聞こえないのか、化け物は私を無視して奏を犯し続けている。

 

「げほっ、げほっ! っ、はぁっ……はぁっ……ぐっ、う゛っ……!」

 

 このまま私もこの化け物に犯され……いや、その前に殺されちゃうのだろうか。

 せめて奏は、奏だけは救いたい……けれどそれすら叶いそうにない。

 今の私には、何もできない……

 自分の無力さを呪いながら、ブレザーのポケットに入れていたペンダントをギュッと握る。

 ……その時だった。

 

 ……パァァァ……!

 

「なっ、なに……?」

 

 突然私の身体が、緑色の光に包まれた。

 よく分からない光、だけどどこか心が休まる、そんな光。

 その光が私の各部へと纏わり付く度に、さっきまでの痛みが引いていく。

 そしてその光が止んだ時……

 

「……はっ、あぁぁぁっ!?」

 

 ……私の姿は寝転がったまま、突拍子も無い姿に変わっていた。

 

「ちょっ、何っ、なんなのよこれっ!?」

 

 さっきまで黒かったはずの髪は明るめのベージュ色に変色。

 髪型もただのロングから、いつの間にか小さめの赤いリボンの着いた高めのポニーテールに。

 

 リボンに付いた飾りを触ってみると、さっきまで握っていたペンダントと同じハート形。

 どうやらさっきのペンダントは、このポニーテールのリボンに変化したようだ。

 

 変わったのは頭だけじゃない。

 正直、服装だって突拍子も無い。

 

 陸上競技で使うようなセパレートの上半身と、真ん中少し下でぶった切りサイドスカートを付けたようなレオタードの下半身。

 これらをちょうどお腹を出すように繋げた、青を基調に所々に白を混ぜている華やかなコスチューム。

 その晒されるはずのお腹も、中に着ているピッチリとした黒いインナーによってうっすらと素肌が見える程度。

 両脚には太ももの真ん中くらいまである真っ黒なニーハイに、足首の少し上までの丈の真っ白なショートブーツ。

 両腕には、二の腕まである黒いロンググローブ。

 そして双方の手首には謎のリングが装着されており、その外側にはゲームとかで見る小型の盾みたいなものが付いていた。

 更に極めつけは、腰の左右両方にぷかぷかと浮かんでいる、トランプのダイヤのような形をした白い物体。

 厚みもあってやたらメカメカしいこれさえ無ければ、まだ小さい時に観た〝魔法少女〟のようなものとして割り切れたけど……もう少し色んなアニメ、観ておくんだったなぁ。

 

「……ん?」

 

 自身の身に起きた変化に気を取られ、いつの間にか右手に握っていた一つの物体に今更気が付く。

 妙に握り慣れたような、その棒の感覚。

 もしかして近接武器……!?

 そう期待して視線を下にズラす

 すると、そこに握られていたのは……刀から見事に刃だけを引き抜いたような、ただの柄だった。

 

「はぁっ、柄だけっ!? これでどう戦えばいいのよっ!!」

 

 ……期待して損したっ!

 思わず立ち上がり、その意味不明な棒をほっぽり投げる。

 いつの間にか痛みだけじゃなく、ダメージと体力まで回復したようだ。

 

 そんな状況確認をしていると……何かが変わった事に気が付いたのだろうか。

 化け物は再び私の方を向き、触手を私に向かって飛ばしてきた。

 

「ひっ……!」

 

 さっき触手に殴られた痛みのトラウマが蘇る、けど。

 

「っ、はっ、あぁぁぁっ!!」

 

 意を決して、敢えて突っ込んでみる。

 だって、さっきは触手を飛ばされたことすら見えなかった。

 なのに、今回は見えた。

 ちょうど私の顔面の高さを、狙って飛んでくる触手が。

 

「ふっ!」

 

 身体を屈ませ、飛んできた触手に左の裏拳を合わせてパリィ。

 裏拳が触れた瞬間、触手が弾け飛ぶ感覚が私の手の甲を伝ってくる。

 そのまま突撃を敢行、続いて迎撃に来た触手は三本。

 それぞれの高さ的に、狙いは顔、胸、お腹。

 

「はっ、やぁぁぁっ!!」

 

 胸に来た触手は右のアッパーで打ち上げる。

 続いて、お腹に来た触手には左の膝を打ち込み爆散させる。

 そして顔に飛んできた触手は……

 

「こっ、のっ!!」

 

 右の拳で、思いっきりぶち抜く!

 私がやってきたのはあくまでも剣道だけ。

 こんな技術を教わった経験は無かったけど、何故か自然と身体が動いていた。

 それにこんな状況でアレだけど……これ、なんかアクションゲームみたいでちょっと楽しいかも!

 

「ふっ、はっ、やぁぁぁっ!!」

 

 普段より軽く動く身体で、正面から襲い来る触手を全ていなし続ける。

 私の相手が忙しくなったのか、いつの間にか化け物は奏を犯していた触手を全て私への攻撃に仕向けてきていた。

 幸いにも奏は意識を失って安らかな寝息を立てており、私のこの姿を見ていない。

 つまり、このままこの化け物を倒せばとりあえずは万事解決!

 

「くらえっ、化け物っ!!」

 

 触手を掻い潜りながら、化け物の懐に潜り込む。

 

 そして、渾身の右ストレートを叩き込む……

 

「ぅぐっ!?」

 

 はずだった、のに。

 気が付いたら私の身体は、後方へと唐突に引っ張り上げられたのだ。

 直後に感じる息苦しさ。

 いつの間にか触手が私の首へと巻き付いていた。

 

「ぁぐっ……ぁ……がっ、は……っ!?」

 

 そのまま、私は首吊りのように空中で首を締め上げられる。

 何とか首に巻きついた触手を剥がそうと両手で触手を握って力を込めるが、ビクともしない。

 

「が……っ……ぁ……っ! は……はな……せ……っ……!」

 

 正面から追撃してくる触手を脚で蹴り飛ばし続けても多勢に無勢、対処が追いつかない。

 

「ぁっ、ぐぅっ!?」

 

 遂に攻撃が追いつかなくなり、他の触手の接近を許してしまい……やがて私の四肢は触手に絡め取られ、空中で大の字に拘束されてしまった。

 一撃で触手を粉砕できるパンチも、当たらなければ攻撃にならない。

 とりあえずはこの拘束を解かなければ反撃は始まらない。

 何とか離れようともがき続けるけど、この触手は腕力だけでどうこうできる相手じゃない。

 そんな私の足掻きを嘲笑うように、私の目の前には……大きく振りかぶられた、一本の触手が。

 

「まさ……っ……か……っ……や……やめ……っ……!」

 

 か細く紡がれた私の声は届かないまま……振りかぶられた触手は勢いそのまま、私の鳩尾へと叩きつけられた。

 

 ドスッ!!

 

「が……っ……は……っ!? ぐっ……ぁ……っ!!」

 

 〜〜〜〜っ!?

 変身前に比べたらまだ平気だけど、それでもかなりの激痛が私のお腹を襲ってきた。

 しばらく体勢を立て直せないでいると、四肢を拘束している触手が無理矢理引っ張って、強制的に私の体勢を殴りやすいように整えてくる。

 痛みに耐えながらも、ゆっくりと目を開ける。

 すると目の前には、今まさに私のお腹を殴ろうとしている触手が振りかぶっているところ。

 当然私には逃げる事も許されず、そして……

 

 ドチュッ!!

 

「ぉぐっ!?」

 

 そのまま、ここからが本番だと言わんばかりに、私のお腹には触手による殴打、いや、乱打が開始された。

 

 ドチュッ、ドスッ、ドチュッ、ドチュッ!!

 ギリッ……ギリッ……!

 

「ぁがっ!? ごふっ、ぅぐっ!? がっ……ぉごっ!?」

 

 何故かこの状態である私の身体能力は、通常時に比べてかなり向上しているらしい。

 普段なら骨が折れるどころか粉砕されてしまいそうな触手の殴打。

 これを受けたとしても、ただヨダレを撒き散らし、身体をくの字に曲げられるだけで済んでいるのだ。

 それでもこの服は耐えられないのか、触手の攻撃を受ける度にその衝撃波で段々と破れてしまっていた。

 お腹を隠していたインナーは当然、胸も股も露わになってしまっている。

 

 ドスッ、ドスッ!!

 

「ぐふっ!? ぉっ、ぁぎっ!? ひっ、ぐっ、ぉお゛っ!?」

 

 ダイレクトにお腹に伝わる衝撃に、段々と体力が奪われていく。

 今はまだ耐えられている……けど、いくら耐えたとしても、打開策が見つからなかったら同じこと。

 このままでは仮に肉体の方が耐えれたとしても、先に酸素が足りなくなって落ちてしまう。

 

「ぐっ、う゛っ……こっ……こ……の……っ……ごふっ!?」

 

 四肢に絡みついた触手は、いくら引っ張ってもビクともしない。

 ……苦しさと痛みで、徐々に視界が薄くなり始める。

 

 ドチュッ、ドチュッ!!

 

「ぉごっ、ぎっ、ぁがっ!? がっ、ぁあ゛ぁぁぁっ!?」

 

 だめ……このままじゃ、また負けちゃう……

 負けちゃダメなのに……けど、もう……動け……ない……

 体力が限界に近づき、もう意識を手放しそうになった、その時だった。

 ……何を考えているのか、唐突に触手の腹パンが止んだのだ。

 合わせて、首を絞めていた触手も少しだけ緩む。

 

「がはっ!! げほっ、ごほっ!!」

 

 吸入量が増した酸素によって、私の意識はあっという間に引き戻される。

 しかし、大して大きくもない自分の胸に垂れ流されたヨダレに嫌悪感を抱く暇もなく……

 

「……ひっ!?」

 

 私の目の前に突きつけられたのは……さっきまで奏を犯していたものと同じような触手だった。

 

「やめっ、はっ、離してっ!!」

 

 必死にもがいて逃げようとしても、今の状態で逃げられるはずもなくて……

 

「い……いや……っ……!」

 

 アソコの入り口に、気持ちの悪い触手の先っぽが触れる。

 そして……

 

 ……グチュッ……!

 

「ひっ、あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 無防備な私のアソコは、触手によって貫かれた。

 

「お゛っ……ぐっ、う゛……っ……!?」

 

 当たっちゃいけない場所まで届いているのが分かる。

 下から内臓を突き上げられたような衝撃に、思わず私の身体は仰け反ってしまう。

 大切な人の為に取っておいた私の初めてが……こんな気持ちの悪い化け物に奪われるなんて……

 

 グチュッ、グチュッ!!

 

「ぁぐっ、ぁっ、ぎっ、い゛ぃっ!?」

 

 そんな私の絶望すらお構い無く、触手は私のナカで動き始めた。

 

「やめっ、ぐっ!? ぅっ、うごくっ、なぁっ!! ぁっ、んぎぃっ!?」

 

 普段なら触るはずのない場所を、こんな気持ちの悪い触手に執拗に擦られる。

 初めての行為をこんな形で迎えて、しかも相手は触手。

 こんなの気持ち悪いだけ、絶対に感じるはずがない。

 ……なのに。

 

「ぁぐっ、ふっ、ぐっ、うっ、ぐっ、あぁっ!!」

 

 なのに私のアソコは、何故か快楽を感じてしまっていたのだ。

 

 グチュグチュッ!! ドチュドチュッ!!

 

「はっ、ぁっ、ぐぅっ!? やっ、やめっ、抜いっ、てっ、んっ、ひぃっ!?」

 

 こういう行為は、愛し合う二人の男女が行うことで快楽が発生するはず。

 だと言うのに私は……あろうことか、こんな行為で気持ちよさを抱いてしまっている。

 

「ぁっ、くっ、んんぅぅぅっ!? はっ、ぁっ、ぁあぁっ!!」

 

 手脚を拘束されたまま触手相手に滅茶苦茶に犯される。

 こんなの苦しい、痛い、気持ち悪いだけ。

 そう思い込みたい、信じたいのに。

 

「んっ、ぁっ、あっ、くっ、ぁあっ!? はっ、ぅうっ!?」

 

 私の口は勝手に開き、卑猥な声を奏でてしまう。

 

「はぁっ、はぁっ、ぁっ、くぅぅぅっ!? もっ、やめっ、ひっ、あぁぁぁっ!?」

 

 まるで自分の身体じゃなくなったみたい。

 下半身から流し込まれる快楽と、それを受けて快楽を叫び続ける上半身。

 私の身体の全てが、この化け物に支配されたような錯覚すら覚えてしまう。

 

「あひっ、ぎぃぃぃっ!? ひっ、ぁあ゛ぁぁぁっ!!」

 

 頭が滅茶苦茶になる。

 こんな触手にズボズボ犯されて、乱暴にされているのに、それが気持ちいいっ、悔しいのに……気持ちいい……っ!

 

「ぁあっ、はっ、あ゛っ、ひっ、んぁぁぁっ!? はっ、ひぃぃぃっ!?」

 

 足先にまで力が入り、ピンッと伸びてしまっているのが分かる。

 もうこのまま気持ちよさに支配されてしまってもいいかな……そんな甘い考えすら過ぎってしまう。

 けど、この時の私は忘れていた。

 こういう行為の目的は、繁殖だということに。

 

「ひっ、ぎぃぃぃっ!? ぁがっ、あ゙っ、がぁぁぁっ!?」

 

 触手が私のナカで膨らみ始めたことで、私はようやく我に返った。

 これっ、何か、ダメなのが来る……!

 

「やめっ、やめっ、りょおぉぉぉっ!? もっ、や゙めっ、ぁ゙っ、あ゙っ、あぁぁぁっ!?」

 

 嫌な予感がして、思わずアソコにギュッと力を入れた。

 けど、それはむしろ逆効果で……

 

 ズチュズチュズチュズチュッ!!

 ゴリュゴリュッ!!

 

「やっ、む゙りっ、お゙っ、ぉっ、お゙ぉぉぉっ!?」

 

 自分から締めてしまったアソコは、むしろ触手の動きをより感じやすくするだけ。

 愚かにも自らトドメを刺されに行ってしまった事に、今更気がついても遅かった。

 

「お゙っ、ぉぉぉっ!? ごれっ、だめなのっ、くるっ、これっ、お゙っ、ぐぅぅぅっ!?」

 

 容赦なくナカを抉られ続け……呆気なく、私の我慢も限界を迎えてしまう。

 そして……

 

「ふっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ガクガクッ!! ビクビクッ!!

 

 ……私のナカで、快楽が弾け飛んだ。

 その直後、私の絶頂に合わせるように……

 

 ビュルルルルッ!! ビュクッ、ビュルルッ!!

 

「んぎっ、いぃぃぃっ!? ぁっ、あ゛つっ、ひぎっ、ぃっ、あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 私のナカに、大量の粘液が流し込まれる感覚が走った。

 これがこの触手の射精なのだろうか。

 壁を叩きつけながら強引にナカをこじ開けるような勢いで、熱いモノが流れ込んでくる。

 気づけば私の身体は、壊れた人形みたく仰け反り、絶叫にも似た悲鳴を叫んでいた。

 

「あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!? ぁがっ、あ゛っ、あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ゴリゴリとナカの壁を削りながら流し込まれる粘液。

 

「あ゙っ、あ゙ぁぁぁっ!? あ゙っ、がっ、ぐっ、ぁ……っ……ぉ゙……ぐ……っ……!」

 

 永遠にも感じる程の射精を受け続け……ようやく止まったと分かった時には、私のお腹は妊婦さんのように膨らんでしまっていた。

 

「がっ……ぁ……が……っ……は……っ……」

 

 身体の痙攣が止まらない。

 頭がチカチカして、呼吸もマトモにできない。

 

「は……っ……は……っ……ん……っ……ぁ……」

 

 私、もう……ダメなのかな……

 既に抵抗する気を失いつつあった私を嘲笑うように、私のアソコを弄んでいた触手が引き抜かれる。

 その触手を追うように、アソコから触手の精液が溢れ出す。

 この光景で……本当に私は犯されたのだと、こんな化け物に最後までレイプされてしまったのだと、嫌な事実を否が応にも受け容れさせられる。

 ……でも、まだ化け物は満足していなかったみたいで。

 

「ひっ……!? ま……まだ……っ……ヤる……の……?」

 

 先程まで私を犯していた触手と別の触手が、私の目の前に突き付けられる。

 

「お、おねがっ、いっ……もっ、ゆるし……」

 

 ……っ、違うっ!

 思わず命乞いのような言葉が口から出たのを、言い切る寸前でグッと留める。

 そもそも私も奏も、何の理由があってこんな目に合っているのか。

 そんな相手になんで私が謝り、許しを乞わなきゃいけないのか。

 

「……っ、ヤって……みな……さいよ……っ! 私っ、はっ、どんなことっ、されたってぇ……絶対……負けないんだからぁっ!」

 

 止まりかけていた思考を気合いで立て直す。

 後はせめて何か武器があれば……この状況を打破できる、剣とかがあれば……!

 ……その時だった。

 

「……っ!?」

 

 突然なんの前触れも無く、私の両手が自由になった。

 びっくりして視界を横に向けると、手首を拘束していた触手が真っ二つに切断されていた。

 そしてその原因と思われるのは……双方の手首のリングに付いている小型の盾。

 その先端から生えていたクリアグリーンの色をした、巨大な剣のようなモノ。

 もしかしてと思い、咄嗟に右手を上に、左手を下に回す。

 すると今までビクともしなかった触手が、この剣に触れた瞬間、いとも簡単に切断されていく。

 

「な、なに、これ……!?」

 

 拘束から解放されて久々に感じる地面。

 フラフラになりつつも、一旦距離を取ってから両方の剣を化け物に向かって構える。

 ……今日は訳の分からないことが多すぎる。

 けど……今はとりあえず、この化け物を倒す!

 

「っ、よくもっ、好き勝手っ、してくれたわねぇっ!!」

 

 もうさっきみたいな策を打たせない。最後の力を振り絞り、最速で化け物に向かって突っ込む。

 

「ふっ、はっ、やぁっ!!」

 

 突っ込んでくる触手を、両方の剣を使ってバラバラに切り裂く。

 後ろから襲ってくる触手も、身体を捻って同様に切り伏せる。

 そして再び潜り込む、化け物の懐。

 今度は先程よりも更に低い位置から仕掛ける。

 もう二度と、反撃のチャンスは与えない!

 

「奏と私の苦しみっ、思い知れぇぇぇっ!!」

 

 左側の剣を、ストレートで殴る勢いのまま化け物の中心に突き刺す。

 そしてそれをすぐさま引き抜き、抜いた勢いのまま反動をつけて回転しつつ……

 

「はっ、あぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 右側の剣で、化け物の身体を袈裟斬りにする。

 手応えあり。だけど、油断はしない。

 一旦バックステップで化け物と距離を取り、剣を構えたまま化け物を睨みつけ続ける。

 化け物が倒れ伏してもう反撃が来ないと確信できるまで、残心を欠かさない。

 ……けど、その化け物は分裂も爆発もすること無く、倒れたらそのままサラサラと砂になって消えていった。

 それでもなお、何かあるかもと構え続けること数十秒。

 

「…………っ、はぁ〜〜〜〜っ!!」

 

 ようやくこれ以上は何も無いと確信した瞬間、私の脚は自分を支える力を失い、私はお尻からペタンと地べたに座りこんでしまった。

 

「勝て……た……よかったぁぁぁ……!」

 

 そのまま背中から地面に倒れ込む。

 

「何だったんだろ……アレ……」

 

 気がつくと両手の盾から出てた剣はいつの間にか消えていた。

 奏の方に目をやると、彼女はまだ寝たまま。

 とりあえずは奏の無事と、自分がレイプされていた姿を見られていない事に安堵。

 

「そういえばこの格好、どうやって……?」

 

 こうやって安心を覚えた瞬間、今まで考える余裕も無かった疑問が次から次へと湧いてくる。

 あの化け物は何なのか。

 どうしてこんな姿になったのか、あのペンダントのせいなのか。

 何故急に盾から剣が出てきたのか。

 そもそもここは何処なのか。

 分からないことが多すぎて、最早何から考えたら良いのか混乱するくらいだ。

 

「……よしっ!」

 

 こういう時は一度全部忘れて、時間を置いて考え直すに限る。

 一旦この変身を解いて、この怪しげな場所から奏と一緒に立ち去るのが良いだろう。

 

「……で、だ」

 

 ……どうやって戻るんだろう。

 くっそ、こういうのって大体は案内役のマスコットがいるもんじゃないの!?

 妙にメカメカしい装備品を一通り確認しても、それらしきスイッチはどこにも見当たらない。

 いくら身体能力が強くなって、外見もパッと見では私と分からないようになっていても……流石にこの格好で街中を歩き回る勇気は無い。

 何はともあれ、とりあえず変身を解除したい。

 そう願った瞬間……私の身体を、見覚えのある光が包み込んだ。

 

「……あ、戻れ……」

 

 そして光が晴れ、私の姿が元の制服姿に戻った。

 ……同時に襲い来る、強烈な疲労感と眠気。

 

「ぁ……や……ば……っ……」

 

 このまま倒れた日には、またいつあの化け物に襲われるか分かったもんじゃない。

 私一人ならまだしも、ここには無防備に倒れた奏がいる。

 倒れ込む寸前、咄嗟に変身を望む。

 と、本日三度目の光が私の身体を包み込んだ。

 

「っ、とっとっ!」

 

 あれだけ大規模な変身をしているのに、要する時間は一瞬。

 しかも先の戦闘で破損していた箇所は綺麗さっぱりと修復され、更にはダメージ回復のおまけ付き。

 おかげで私は、何とか踏ん張れて倒れ込まずに済んだ。

 ……もしかしてこの変身のトリガーは、叶えたい事象を〝想う〟ことなのだろうか。

 となれば他の行動も、それに準じていると考えても良いだろう。

 

「……よーし」

 

 説を実証すべく、さっき使った剣をイメージしてみる。

 すると予想通り、盾の先端からクリアグリーンの剣が生えてくる。

 

「なるほどなるほど、んじゃ、もしかしてあの柄も……」

 

 一旦盾からの剣をしまい、最初に投げ捨てた柄の様な棒を探す。

 

「……あれ、こっちの方に投げたはずなんだけど」

 

 しかし、いくら探してもそれらしき棒は落ちていない。

 どっかに入り込むような物じゃないと思うんだけどなぁ……

 そうやって色々探し回ること数分。

 

「……あ」

 

 結局、投げ捨てたはずの柄のような棒は、私の腰の両サイドに浮いている白い物体の横に付いていた。

 いくら投げ捨てても戻ってくる、これは有用な発見……だと思う。

 

「想えば形になる、なら……!」

 

 そのまま棒の一本を取り外すと、両手で構えて日本刀をイメージする。

 すると……

 

「っ、やっぱり……!」

 

 想像通り、クリアグリーンの刃が、私の持つ柄からパッと生えてきた。

 

「……はぁ……こんな仕様……説明されなきゃ分からんって……」

 

 素人を戦わせるにはあまりに不親切な仕様に、思わず悪態をつきたくなってしまう。

 けど、逆に言えば仕様さえ分かれば何とかなりそう。

 複雑な操作が必要無いのなら、それだけ反射で動きやすいということ。

 私のような戦いの素人でも何とか戦えそうなシステムなのは有難い。

 そう自分を無理矢理納得させながら、柄を元あった場所へと納刀のように収納する。

 それに、変身を解除してから再度変身することによって一瞬で装備をリロードして回復までできるのは、使い方さえ間違えなければ非常に有用な戦法として使えるだろう。

 ……変身解除した時にはかなりの疲労感が来てしまうから、戦場での乱発は厳禁だけど。

 

「とりあえず……奏が無事で良かった」

 

 基本仕様さえ理解できれば、もし次に化け物が出てきたとしても、今度こそ奏を守ることができる。

 

「ごめんね奏……もう、こんな目に合わせないから……今度は私が、奏を守るから、ね」

 

 ここまで奏がボロボロになっちゃったのは、自分が上手く奏を守れなかったからだ。

 ボロボロの奏をお姫様抱っこで持ち上げると、そのまま顔と顔を近づけてギュッと抱きしめた。

 すると……これも私の力だろうか。徐々に奏の制服は修復され始め、彼女に注ぎ込まれた精液も次第に消えだしたのだ。

 あっという間に彼女の姿は、登校時に見た可愛いままの奏の姿に巻き戻ってくれた。

 

「この力……人にも使えるんだ……」

 

 これで少なくとも、外的な要因による傷は無くせたはず。

 後はあの時の記憶を忘れていてくれたら完璧だけど……

 

「……さ、奏、帰ろっか」

 

 今はとりあえず、二人で無事に帰れる事を喜ぼう。

 

……

……

 

 奏を抱えたまま、来た時の道を歩き始めた雅。

 一度は変身した姿のまま街中を歩く事も覚悟していたが……その心配は杞憂に終わった。

 何故なら……

 

「……相変わらず原理、よくわかんないな」

 

 二人がその場所を出た先は、彼女ら二人が住むマンション。

 しかも自分らが住んでいる部屋の、扉の目の前だったのだ。

 

「勝手にだけど……ごめんね〜奏」

 

 大勢の人に自分の姿を見られなかった事に安堵しつつ、雅は未だ眠っている奏のカバンの中を漁る。

 そして部屋の鍵を開けて奏を彼女のベッドまで運び、そっと横にしてあげる。

 

「……よしっ、じゃ、私も帰りますか」

 

 女の子一人運んでも一切の疲労の色を見せないまま、寝ている奏を起こさないようにそっと退散する雅。

 そのまま奏の部屋の扉を閉めると、すぐ隣にある自分の部屋の扉を開けた。

 

「ただいま〜っと」

 

 変身を解いたら無くなるのは理解しつつ、雅は習慣として白いショートブーツを玄関で脱ぐ。

 そしてベッドの隣にカバンを置き、ベッドの上に座る。

 

「……っ、よしっ」

 

 意を決し、雅は心の中で〝変身解除〟と唱える。

 その瞬間……雅の意識は、瞬時に闇の中へと消えていった。

 

……

……

 

 --某所--

 

『……また、新たな変身ヒロインが誕生したか』

『これで何人目かしら、この町に生まれた変身ヒロインは』

『そんな事はどうでも良いだろう』

『そうだ、求める要素は今、この変身ヒロインが楽しめる存在か否か、それだけよ』

『それで、初戦闘の具合は如何だったのかな?』

『そうねぇ、初戦は上手いこと潜り抜けたみたいよ。ほら、これが映像』

『無論だ、そうでなければ楽しめない』

『この映像は各幹部に配布しろ、それを参考に各種思考を凝らすように、以上。ハウンズに栄光あれ』

 

--To be Continued--




ここまでの閲覧、ありがとうございました。
これからも様々な化け物や怪人に色々されてしまう雅、もといオルレアハートの姿を是非楽しみにして頂けると嬉しいです。
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