※この作品はR-18です。

神姫清廉オルレアハート!-乱行恥虐のスペクトラム-   作:ホリス_if

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オルレアハート、第11話。
オロチを倒して束の間の平和を楽しんでいたオルレアハートこと雅。
奏、アルクとの3人でお茶を囲んでいると……突如、知らない声が部屋に鳴り響く。
その来訪者は自らをハウンズの首領〝ニヴル〟と名乗った。
唯一変身した状態であった雅は、ニヴルを2人から引き離そうと試みた、が……

今話も是非、お楽しみください。


第11話-強襲!ハウンズ首領ニヴル!(前編)

 

「……はぁ」

「も〜、そんな顔しないでよ雅〜。可愛かったよ?」

「そういう問題じゃないってば……はぁ……」

 

 部屋の真ん中に置かれた、折りたたみ式の四角いテーブル。

 ケーキが置かれたそれを囲むように配置された椅子に、私と奏、そしてアルクが腰を落としていた。

 ……にしても酷い目にあった。

 ただでさえ身体だけ変身した状態で慣れないってのに、更に慣れないゴスロリ服を無理矢理着せられての撮影会。

 しかもケーキを食べる前に、だ。

 ……いつか同じ状況になったら絶対やり返してやる。

 アニメとかで見るフリッフリの魔法少女コスプレ、どっかで探しとこう。

 

「ほら、とりあえず落ち着きたまえ。 二人とも、コーヒーで良かったかい?」

「……うん、ありがと」

 

 そんな復讐心を抱えつつ、アルクが差し出してきた、見たことの無い柄のティーカップを受け取る。

 そのまま、軽く一口。

 

「……ん」

 

 口に含んだ瞬間、口内に広がる心地よい苦味とほのかに感じる甘みがフワッと広がる。

 少し遅れて舌に伝わる、軽めの酸味。

 飲み込むとその風味が香りとなって、鼻を突き抜けてくる。

 飲んだことない味だけど、このコーヒーの香りも含めて……不思議と落ち着くな。

 

「……美味しい」

「ふ、それは良かった」

 

 ボソッと口をついた私の言葉に、アルクは満足そうな笑みを浮かべる。

 

「ね〜アルク、私苦いの苦手でぇ……」

「奏くんはそう言うと思ってたよ。ほら、ミルクと砂糖だ」

「おっ、さっすがぁ!」

 

 隣ではアルクが何処かから取り出したミルクと砂糖を、同じく隣の奏が嬉々として自分のコーヒーにぶち込んでいた。

 そのままでも美味しいのに……と言いかけた口をグッと閉じ、コーヒーに口を付けてから、私は改めてアルクへと話しかけた。

 

「本当に美味しいね、これ。どこで買ったヤツなの?」

「お、雅くん、興味あるのかい?」

「うん、多分今まで飲んだコーヒーの中で一番美味しいよ、このコーヒー。これなら買い溜めといても良いかなって」

「嬉しい事を言ってくれるな。だが生憎……こいつはこっちじゃ買えない代物でね。気に入ったなら、今度お土産にでも持ってこようか」

「何? 通販で買ったの?」

「いや、まぁ……そんなところだ」

「ふ〜ん……じゃ、折角だしお願いしようかな。いくらするのか、後で教えてよ」

「ん? あぁ、金なら良いよ。レートの計算やら色々、面倒だからな。どうしてもって言うなら、これは戦い続けた君へのご褒美、とでも思ってくれたまえ」

「そうなの? じゃ、お言葉に甘えて」

 

 意外に気前良いじゃない。

 そんな失礼な事を考えながら、今まで一口も食べてなかったガトーショコラへと手を伸ばす。

 フォークで小さく切ってからそれを突き刺し、口に運ぶ。

 ……途端、口の中に広がる、馴染みの味。

 

「……あ、これセレーヌのヤツ?」

「そうそう! 最近一緒に行けてなかったし〜って買ってきたんだ!」

 

 喫茶セレーヌ。

 街中の、コンクリート製の建物の隙間にひっそりと建っている、隠れ家的な喫茶店だ。

 木製の建物がグリーンカーテンに覆われており、その裏側にある小さな庭に面するように、テラス席が備わっている小さな店。

 あそこでコーヒーの美味しさを知ったと言っても過言じゃないくらい、前まではよく奏と一緒に〝お茶〟と称して足繁く通っていた店だ。

 

「ね〜……また行きたいよねぇ……」

「何辛気臭い事言ってるのよ雅! 行ける行ける! なんなら週末にでも行こうよ!」

「……うん、折角だし、行こっか」

「よしっ、決まりね!」

 

 最近忙しくて全然行けてなかったのと、そもそもその事にすら気付いていなかった自分の忙しさに再びガックリとしながらも、私は奏の提案を快諾した。

 こういう時こそ、楽しい事への即断は重要よねって。

 今まで感じたことの無かった平和の有り難さをしみじみ感じながら、私は再びケーキとコーヒーに舌鼓を打ち始める。

 

「……そういえばさ、アルクって行きつけの店とかあったの?」

「ん? どうした奏くん、また藪から棒に」

「別に、ただの雑談よ、雑談」

「ふむ……そうだな」

 

 そんなほのぼのとした時間の中。

 ふと思いついたかのように、奏がアルクに対して声を掛ける。

 それを受けて少しだけ考え込んだ後、アルクはゆっくりと、口を開いた。

 

「……ダリアという名の喫茶店は、よく行っていたな」

「へ〜、一人で?」

「なんだその言い方は……私にも友人くらい居るさ」

「あら意外」

「そうでもないだろう。私みたいな優秀な人間には、必然と人は集まるものなのさ」

「……うっわムカつく」

「ふっ、見苦しい嫉妬として受け取っておこう。で……特に親しかった友人と、昔はよく通ってたものだ」

「ん? 昔はってことは、最近は行けてないの?」

「まぁ……な、色々あったんだ、私にも」

「へ〜……」

 

 ふと一瞬だけ暗くなったアルクの顔を気にしつつ、私は二人の会話を肴にコーヒーとケーキを堪能していた。

 ……二人とも、いつの間にか仲良くなってるし。私の知らない間に何かあったんだろうか……ちょっとだけ、羨ましいかも。

 

「ね〜、今度連れてってよ、そのダリアって店」

「ん〜……そうだな、考えておこう」

「なによぉ、こういう時はスパッと〝ふむ、では今度一緒に行こうか〟とか言ってくれれば良いのよ!」

「あぁ、まぁ、そう言いたいのは山々なんだが……」

 

 珍しく言い渋るアルクに詰め寄る奏。

 ほのぼのしているなぁ……と思いつつ、ラスト一口のコーヒーに口をつける。

 そのまま、飲み干して空になったティーカップをゆっくりとテーブルに置く。

 

「ねぇ、アルク」

 

 おかわりってある?

 そう軽く聞こうとした、その瞬間だった。

 

「……随分と懐かしい話をしているようだな。なぁ、アルクよ」

 

 ……私の背後から、突然知らない低音の女性の声が聞こえた。

 

「っ、誰っ!?」

 

 咄嗟に椅子を蹴っ飛ばし、出口の方へと向かって飛び退く。

 奏も察したのか、ほぼ私と同時に出口の方へと飛び退いていた。

 ……窓も、玄関の鍵だって閉まってる。

 侵入できる場所なんて、どこにも無いはず。

 なのに、何故ここにいるのか。

 この国じゃ中々お目にかかれない銀髪の、アニメのようなドリルツインテをした、私達と同じくらいの年齢に見える女性。

 それに御伽噺の舞踏会にでも出るかのような、フリル満点の赤いドレスに黒いハイヒール。

 そんな奇妙な姿をしたヤツが、急に私の部屋の中に現れたのだ。

 

「最近怪しい動きをしているからと付けてみれば……次の手駒はそこの二人か?」

 

 ……十中八九断言できる……コイツは、ハウンズだ。

 だったらっ、戦うしか……けどっ、武器は向こう、今だっていつもの衣装じゃなくてっ、普通の服だし、取りに行くにも敵の目の前じゃ……どうする……何が正解……っ!?

 

「……生憎、今はうら若き少女達とのティーパーティー中なんだ。そういう話はまたの機会で良いじゃないか」

 

 そうやって必死に頭を回転させている最中、全然動じてないアルクの声が部屋に響く。

 

「それより……今日はどちらの君として接したら良いのかな?」

「ふん……どちらでも変わらんだろう、貴様は」

「そうでもないさ、私だって礼節というモノは持ち合わせているつもりさ」

 

 目の前の女性が見せるのは、どの口が、とでも言いたげな顔。

 そのまま数秒の沈黙が流れた後、彼女は大きなため息をついた。

 そして……

 

「まぁ良い……今日はただの、貴女の友人であるニヴルとして接して頂いて宜しくてよ。元々、そのつもりでしたし」

 

 次に発された言葉では、彼女の声色は明るく高音気味なものとなり、口調もガラッと変わっていた。

 見た目も相まって、本物のお姫様みたいだ。

 

「ほう……ハウンズの首領として、ではなくてかい?」

「だから、そう言っているではありませんか。しつこい乙女は嫌われましてよ」

 

 ……そんな一瞬でも可愛いと思った私の感想は、あっという間に思考の彼方へと吹き飛ばされた。

 アルクがサラッと言い放ったその言葉に、思わず自分の耳を疑う。

 

「こい……つが……?」

「えぇ……あぁ、そういえば自己紹介が遅れましたわね」

 

 辛うじて紡ぎ出した私の声に、目の前のそいつはおどけたような表情を見せる。

 そしてお嬢様みたくドレスの両端を手で掴んで、それを広げながら軽いお辞儀をしてきた。

 

「初めまして。私、ハウンズを創設致し首領を務めております、ニヴルと申します。オルレアハートと……アイリスリーベ、でしたっけ? どうぞお見知り置きを」

 

 ……丁寧な仕草と口調。

 なのに、迂闊に動くなと、本能がビンビンに警告を鳴らしてる。

 奏も同じモノを感じているのだろう……冷や汗をびっしりかいているのが横目でも良く見える。

 だけど何かしなきゃいけないのは事実だし……それに何より、私達の中じゃ一番戦闘力が高いのは私。

 立場上アルクは動かないだろうし……武器が無くても、何かこの状況を乗り切る手立てを考えないと……

 とりあえず奏に目配せで〝今は任せて〟と送ってみる。

 奏も私の方をチラッと見てから、軽く頷いてくれる。

 そんな彼女の姿を確認してから、せめて時間を稼ぐ為にと、〝ニヴル〟と名乗った女性へと質問を投げかけてみた。

 

「……で、その首領様が何の用? 私達、今ティータイムで忙しいんだけど」

「いえ何、懐かしい店の名前が聞こえてきましたので、つい顔を出してしまいましたの」

 

 ビビりながら何とか発した私の言葉に、ニヴルはサラッと返してくる。

 ……全く相手にされてない感がスゴい。

 万全じゃないから、そうあしらわれても仕方ないかもしれないけど……それはそれで、少しムカつく。

 

「ダリア……あの店のお紅茶は、名物のプリンと大層相性が良くてですね。よく食べに行ったものです……ねぇ、アルク?」

「……あぁ、そうだな」

 

 そんな私の心中をよそに、二人は友達のように言葉を交わし始める。

 

「なんですの? 折角、久々に硬っ苦しい話し方から解放されたんですもの、もっと楽しそうにお話してくださいませんか?」

「全くよく言う……わざわざ追いかけてきて、とうとう私を始末しようってかい?」

「そんな事しませんわよ。だって貴女、いつだって活きの良い変身ヒロインを連れてきてくれるんですもの。そんな素敵な方を始末するなんて、冗談じゃありませんわ」

 

 ……どういう事?

 変身ヒロインを〝連れてきてくれる〟って……まるで私達の抵抗を楽しんでるような言い方じゃん。

 とりあえず……言葉を選びながら、浮かんだ疑問を直接ぶつけてみる。

 

「……貴女、他の変身ヒロインと……戦った事、ある、の?」

「戦った事あるも何も、私達ハウンズはそれが目的なのですから……あぁ、もしかしてアルク、この方達にまだ説明していなかったのですか?」

「……何度か説明はした。最も全て記憶操作以前の話だから、覚えていないだろうがな」

「それじゃ意味がありませんわよ、全く……仕方ありませんわね、良くお聞きなさい」

 

 その質問に対しても、まるで他人事のような反応。回答だって、どこかズレている。

 次第に溜まっていく私のイライラをよそに、ニヴルはコホン、とわざとらしい咳払いの後、自慢げに語り始めた。

 

「我々ハウンズは、貴女方〝変身ヒロインの敗北〟、これを堪能するためだけの組織ですの。つまり貴女方は……私を満足させる為の玩具、という訳でしてよ」

 

 ……どこかで聞いた事があるような気がする……けど、それがどこかは思い出せない。

 ……いや、今はそんな事、どうでも良い。

 私達が……玩具……?

 

「……じ、じゃあ、何……奏も、私も……戦ってきたのって……」

「えぇ、全部私の為。ふふふっ、面白かったですわよ? 凛々しく戦って、その度に散っては無惨に犯され、なおも諦めずに勝利を掴む……オルレアハート、貴女の戦いっぷりは特に!」

「……何、それ」

「えぇ、えぇっ! 一度敗北して犯されただけで心を病む変身ヒロインも多いというのに! なのに貴女はっ、何度も何度も犯されても立ち上がってこられて! しかも秘めた力まで解放したと来ましたわ! ですから私はっ、貴女を直々に指名させて頂きましたの! 貴女をこの世界の、最後の守護者として!」

 

 言ってる言葉が納得できずに言葉を詰まらせる私に向かって、興奮しながら捲し立ててくるニヴル。

 その楽しそうな顔が……余計に私の怒りを煽ってくる。

 私も奏も、あんなに痛い思いをして、苦しい思いをして、酷い目にあって……何度も何度も、人ですらない化け物に犯されて。

 それでも奏の為に、みんなを守る為にって頑張ってきた。

 なのに……それが、全部、コイツの自己満足の為だったって、こと?

 

「……アンタ、黙って聞いてたらさっきから好き勝手言ってくれるじゃないの」

 

 今まで黙っていた奏も、流石に我慢ができなくなったみたい。

 声に怒りを滲ませながら、キッとニヴルを睨みつけていた。

 

「アンタのせいでこっちは色々迷惑被ってるのよ? なのにその言い草、偉そうにするのもいい加減にして欲しいんだけど」

 

 怒鳴り散らしそうになるのを懸命に抑えながら話しているのが、見るだけでも分かる。

 

「……ん? あぁ、貴女……言葉を選んでくださいまし?」

 

 けど、そんな奏を見るニヴルの目は……私達と話していた時とは打って変わって、とても冷たかった。

 

「下民は下民らしく、身分を弁える事。でないと、こうやって……!」

 

 そう言いながら、ニヴルはサッと指を縦に動かした、次の瞬間……

 

「……えっ?」

 

 音も無く、縦に切られた奏の服。

 そしてその隙間からはらりと落ちる、谷間の所で切断されたブラジャー。

 一瞬、何が起きたのか分からない、とばかりにキョトンとしていた奏だったが……

 

「えっ、ぁっ……きゃあぁぁぁっ!?」

 

 直後、事を把握した彼女は、露出させられた胸を腕で隠しながら座り込んでしまう。

 

「こっ、のっ……悪趣味が……っ!」

 

 涙目で震えながら、それでも彼女はニヴルを睨み続けていた。

 

「首を飛ばされなかったのは温情と思いなさいな。もし次があれば……お分かりですわね?」

 

 そんな奏を、相変わらずゴミでも見るような目で見下しているニヴル。

 こんなの誰でも分かる、アイツならやりかねない。

 それにさっきの攻撃、何も見えなかったけど……仮に遠距離から斬撃を飛ばせるのなら、そんなのを放置しておく訳にはいかないっ!

 

「あぁっ、クソっ!!」

 

 床を蹴って、ニヴルの腰へと飛びかかって、一旦彼女の自由を奪う。

 

「あらっ♪」

 

 勢いのまま彼女の腰にしがみつき、ニヴルを部屋の角に押し倒す。

 絶対わざと押し倒されたんだろうけど、今はそれで好都合!

 万が一にでも、自室で親友の首が落ちる所を見せられるなんてっ、真っ平御免よっ!!

 

「ふふっ、オルレアハート、私と遊びたくなってくださいましたの?」

 

 すっごいイラつく笑顔……こっちがどれだけ怖い思いしてるかも知らないでっ!

 

「アルクっ!! 装備っ、あと転移してっ!! どこでもいいからっ、人のいないとこっ!!」

「無茶を言うな! 急にっ!!」

 

 咄嗟に叫んだ要望は、あっさりと切り捨てられる。

 このっ……こんな状況なんだから出来なさいよっ、そのくらいっ!!

 

「あらあら、もしかして二人っきりがご所望ですの? でしたらピッタリの場所へ、ご招待致しますわ!」

「マズい……! 雅くんっ、これをっ!」

 

 ニヴルが微笑むと同時に、アルクから何かが投げつけられる。

 確認もせずに、それを受け取った直後……

 

「さぁ、参りましょう!」

 

 私はニヴルに連れ去られるように、自室から姿を消したのだった。

 

……

……

 

「さぁ、ここなら問題ありませんでしょう?」

 

 ニヴルに連れ去られた先は、あのいつもの路地裏的な場所。

 体育館の半分くらいの小さな空き地ほどのスペースで、ご丁寧に対角の位置に離れた状態で私達は立っていた。

 

「……そうね」

 

 狙い通り二人から引き剥がす事には成功したけど……問題はここから。

 敵の能力も分からない、そもそも変身し直す余裕があるかも分からない。

 かといってこのまま戦っても絶対勝ち目は無い。

 

「……ねぇ」

「はい、何か?」

 

 考えろっ、少しでも時間延ばしてっ、何かっ、を……!

 

「貴女、さっき私の事を〝世界の守護者〟とか言ってたよね?」

「えぇ、確かに」

「あれは、どういう意味なの?」

「ん〜……まぁそうですわね、貴女には特別に教えて差し上げますわ」

 

 良かった、乗ってくれた。

 後はこのまま情報を取りつつ考えるんだ……何かを……

 

「私達ハウンズの最終目的。それは各世界に変身ヒロインを作りだして、中でも一番見込みのある者を大々的に英雄・守護者としてその世界で祭り上げ……それを一思いに破壊する事、なのですわ」

「……その対象が、今回は私、ってこと?」

「えぇ、その通りですわ」

 

 各世界……?

 それじゃまるで、こことは別の世界があるみたいな言い方じゃん。

 漫画とかじゃあるまいし……相変わらず、コイツらの言ってる事は理解できない。

 ……だけど、能力を使う素振りを見せないのはありがたい。

 話し続けている限り、私の首は皮が繋がっている事が保証されていると考えて良いだろう。

 もし予備動作が必要ないタイプなら……その時はその時、だ。

 

「変身ヒロインに選ばれるのは、正義感が強くある者。そして守護者に選ばれるのは……その中でも、何度も何度も敗北陵辱を受けて、それでも諦めずに立ち上がり続けた者。つまりっ、最高に私を楽しませてくれた方ですわ!」

「っ、そんな、の……狂ってる……!」

「そうかしら? 完全敗北したその他変身ヒロインだって、一度や二度では切り捨てていませんわよ? 何度も記憶処理を施して、その度に再度新鮮な気持ちで戦って頂いていますもの! それに生き残ったものの使い物にならなくなった娘は、触手の苗床やらエナジータンクに使わせて頂いておりますのよ」

 

 ……っ、ふざけてる。

 何も知らないまま勝手に戦わされて、痛い思いもして、負けたら化け物に犯される。

 そんでもって、何かあったら記憶まで弄られ、挙げ句の果てには道具扱い。

 そんなの……許せる訳ないじゃん。

 怒りのあまり両手をギュッと握った、その時……左手の中に、覚えのある感覚が伝わってきた。

 そうだ、確かここに来る前、アルクに投げつけられたヤツだ。

 

「実際、初戦闘の方には、まずここの触手のお相手からして頂いてますのよ? まぁ、その時の記憶が残っている方は極々少数でしょうけど」

 

 ニヴルに悟られないよう、チラッとそれを確認する。

 目に入ってきたのは、ピンク色の光。

 それにハート型、銀色の縁どり。

 ……間違いない、これは変身に必要なペンダントだ。

 でも、なんでアイツがコレを……?

 私のペンダントはまだ髪に付いたままだし、急に新しいヤツを渡してくるにしても、もう少し形なり変えるはず。

 ……もしかしてこれ、奏のペンダント?

 

「……さぁ、このくらい時間を差し上げれば、心の準備くらいはできたかしら?」

 

 ……やっぱり時間稼ぎには気付いてたか。

 しかも何も思い浮かんでない……相変わらず状況が最悪すぎる。自分の回らない頭をぶん殴ってやりたい気分よ。

 だけど、ただされるがままに殺されるのだって御免。

 せめてもの抵抗とばかりに、私はその場でボクシングみたいな構えをとった。

 

「あら? 良いですのよ、変身し直しても」

 

 ……そんな私に投げかけられたのは、予想外な一言。

 

「……随分と余裕ね」

「それはもちろん。だって、万全でない変身ヒロインと戦って勝ったところで、それはただの蹂躙ですもの。私の趣味には合いませんわ」

 

 至極当然な事を言っているまで、とでも言いたげなムカつく笑み。

 コイツ……どこまでも人をバカにしてっ……!

 

「……そう、ならお望み通りっ、やってあげるわ!」

 

 勢いのままに、私は髪飾りと化していたペンダントを引き抜いた。

 ……私の身体を弱々しい光が包み、次第に意識が薄れていく。

 倒れそうになる身体で地面を踏みしめ、強引に意識を踏みとどまらせて……自分のペンダントを、そのまま前方に突き出すように掲げた。

 

「後悔っ、するんじゃないわよっ!!」

 

 そして奏のペンダントも同様に、もう片方の手で前方へと掲げる。

 ぼやけてきた視界と思考の中で、必死に、でもハッキリとイメージする。

 想い願うは……あの時のっ、強い私っ!!

 

「ラウズっ、リリースッ!!」

 

 最後に二つのペンダントをギュッと握り、自分に気合いを入れる言葉を叫んだ。

 ……その瞬間、私の身体を包んでいた光は、眩く強い光へと変貌する。

 フリフリのゴスロリ服は粒子となって消えて、代わりにピッチリと張り付くような、いつもの感覚が徐々に身体の各部へと装着されていく。

 やがて、一秒にも満たない間に光は消え……私は、再びオルレアハートへの変身を遂げた。

 しかも今回は、天使みたいに大きな機械の羽根を背中から生やした……あの時アルクが〝覚醒〟とか言っていた姿。

 

「あら、変身した時の口上とか、そういうのはありませんの?」

「……必要ないでしょ、そんなの」

「いえいえ……正義の変身ヒロインたるもの、そういうお決まりの言葉、というのは必要でしてよ? もっと可愛らしく、『変身!』とか『参上!』とか言ってくださいまし!」

「……どうでも良いわよ。それで強くなる訳でも無いんだし」

「あらら、もしかして貴女、ロマンが分からない方でして?」

「……だから、そういうのは必要無いって言ってるでしょ」

 

 コイツのお喋りに付き合う必要は、もう無い。

 私は横のスラスターからゆっくりと柄を引き抜いて、クリアグリーンの刃を生成する。

 そしてニヴルを正面に捉えながら、刀を身体の右横に寝かせて構えた。

 これでいつでも突っ込んで、一気に叩き斬れる体勢。

 ……にも関わらず、ニヴルは顔色一つ変えない。

 だったら、逆に好都合。

 この姿であれば、普段変身している時よりも遥かに強い力が湧いてくる。

 私だけの力なら勝てないかもしれない、けど……そこに奏の力が加われば、絶対に負けないっ!

 

「一気に……終わらせるっ!!」

 

 両手で刀を構えたまま、一気に地面を蹴る。

 地面から足が離れ、両側のスラスターを全開にした瞬間、景色が超高速で動き出す。

 流れる周囲に、動かないターゲット。

 一瞬で詰まるニヴルとの距離。

 迎撃の素振りすら見せない。

 これならっ、やれる!

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 懐に潜り込む寸前に、左側のスラスターだけ出力を切る。

 狙うは横腹から逆側の肩へと斬り上げる逆袈裟斬り。

 加速力と回転力をフルに使って、最高速の斬撃をっ、ぶちかますっ!!

 

「……っ、もらったっ!!」

 

 相変わらず何もしてこないニヴル。

 近接武器だって、頑丈そうな鎧だって着ていない。

 ならっ、もう防ぐ手段は無いでしょっ!!

 そう勝利を確信した、その瞬間……

 

「あら、何を頂きましたの?」

「……なっ!?」

 

 入ったと確信していた私の刀は……何か硬い壁のようなモノにぶつかり、呆気なく跳ね返されてしまった。

 マズいっ、直前まで不安定なスラスター操作をしていたからっ、空中じゃ……安定性がっ……!?

 

「オルレアハート、一つ教えて差し上げますわ」

 

 刀を弾かれた反動で両腕は後ろに行っていて、今の私は完全に無防備。

 そんな中で……ニヴルの右手が、何やら青白く光っているのが見えた。

 

「攻撃ってのはですね……こう撃つんですのよっ!!」

 

 その拳はそのまま、ストレートのように私のお腹狙って突き出された。

 っ、ヤバっ、これっ……避けられ、なっ……!?

 

 ドチュッ!!

 

「う゛ぶっ!?」

 

 お腹と背中を強引にくっつけられたと錯覚するほどに、ニヴルの拳が私のお腹に突き刺さった。

 勢いのまま、くの字に折れ曲がる私の身体。

 内臓を抉られるような激痛を前に、反射的に刀を手放してしまう。

 そのまま一気に振り抜かれる拳。

 空中でぶん殴られた私を止めてくれるモノは、何も無い。

 私はヨダレを撒き散らしながら、反対側の壁まで吹き飛ばされて……

 

「がっ、あ゛ぁぁぁっ!?」

 

 やがて背中から、勢いよく壁へと叩きつけられてしまった。

 

「ぁ゛っ、あ゛がっ……がはっ……ぁ゛っ……が……っ!?」

 

 背中から全身へと一気に広がる激痛は、私の動きを鈍らせるには十分すぎた。

 四肢をだらしなく広げ、壁に軽くめり込んだまま呻くしかできない。

 なんでこいつら……揃いも揃ってっ、馬鹿力ばっかり……っ!

 

「ん〜、確かに攻撃力とスピードは上がっていますが、それ以外の進化はあまり分かりませんわ……所詮この程度なのですかね……」

 

 そんな私の醜態を見たからか、目の前からは退屈そうな、ニヴルの声が聞こえてきた。

 ギュッと瞑っていた目を俯きがちに何とか開くと、衣装のお腹のところにポッカリと穴が空いているのが見える。

 

「ぅ゛ぶっ……ぉえ゛っ……ぁ゛っ、ぐぅ゛っ……な、舐めっ、るっ……な……っ!」

 

 確かに、こんな一瞬でダメージを受けてたらそう言われるのも仕方ない……

 けど、ここまで言われて、はいそうですかと敗北を認めるには、あまりにも呆気なさすぎる。

 奏の力だって借りてるんだ……あんなパンチ一発だけで負けたりするもんか……っ!

 お腹と背中の痛みを我慢しながら、壁から這い出て再び攻勢に移ろうとする。

 

「っ……!?」

 

 ……が、何故か身体が動かない。

 いや、正確には四肢が、まるで壁に埋め込まれたみたいにビクともしないのだ。

 咄嗟に自分の手首を見ると……

 

「っ、なっ、なにっ、よ……これ……っ!?」

 

 さっきチラッと見えた、ニヴルの腕を覆っていた青白い光。

 それと同じ色の塊が、壁と一体化して私の手首を盾ごと呑み込んでいたのだ。

 反対側の手首も、両足首も同様。

 ガッチリと固定されて、ビクとも動かせない。

 

「ぐっ……う゛っ、うぅっ……このっ……!」

 

 盾から剣を出そうにも、機構自体が固められているのか何も起こせない。

 かと言って力づくで引き剥がそうにも叶わない。

 正解が分からないけど、何もしない訳にはいかない……

 そうやってもがいていると……ふと、ある事に気がついた。

 さっきまではお腹と背中の痛みで全然気付かなかったのだが……ゆっくりと痛みが和らいでいくと同時に、手首に鋭く刺さるような冷たさを感じたのだ。

 

「これ……氷……?」

「あらっ、ようやく理解してくださいましたのね! あぁ良かった! 本当に何も分からないお馬鹿さんでしたらどうしようかと!」

 

 ボソッと呟いた私の言葉に、ニヴルは大袈裟に手を動かしながら喜び始めた。

 

「そうですの! 私のスペルは氷を自在に操れるスペルですのよ! 空中の水分を固形化して自由自在な形を作れる、とても便利なスペルでしてよ」

 

 ……多分アイツの言っている〝スペル〟ってのは、持ってる能力か何かを指す用語の事だろう。

 流石に詳細までは分からないが……つまりはさっきの私の攻撃も、アイツの氷の力で防がれたって事か。

 しかもこの距離でも能力を使って拘束してきたって事は、どこにでも自由に氷を出せる可能性が高い。

 ……クソっ、なんでこうも毎回毎回、こっちだけ能力解析から始めなきゃなんないのよ。

 

「ふふっ、さぁ、まずは第一段階。これは正解できたご褒美、ですわ!」

 

 そんな私が苛立ちに苛まれている最中、ニヴルが一度、お嬢様が執事を呼ぶ時みたいに手を叩いた。

 すると……

 

「うぁっ!?」

 

 急に四肢の拘束が剥がれ、私の身体はその場に崩れ落ちた。

 

「っ、たっ、ぁっ……このっ……何が、狙いよ……!」

 

 しようと思えば、あの場で私を拘束したまま殴り続けるなりして、そのまま殺す事だって……それこそコイツらが大好きな陵辱に繋げる事だってできたはず。

 なのにそれをする事なく、あっさりと私を解放するなんて……訳が分からない。

 今の私は、怒りと悔しさと痛さと困惑で感情がグチャグチャにされ、多分なんとも言えない顔をしているんだろう。

 そんな私に対し、ニヴルはしれっと言い放った。

 

「ん? 狙い……とは……あぁ、安心なさってくださいな。私、これを勝負とは思っておりませんので」

「……どういうつもりよ」

 

 意図がよく分からない発言に、思わず聞き返してしまう。

 

「そうですわね……これはあくまでも、今の貴女がどこまで成長したかを測るテスト、とでも思ってくださいまし」

「……あぁ、そういう事……ね」

 

 けど、サラッと返ってきた、さも当然と言わんばかりの言葉。

 ……その発言でようやく、コイツの言っている意味が分かった。

 

「この……っ……要はっ、舐めてるって事でしょうがっ!!」

 

 もう片方の柄を右手で引き抜き、同時に両手首の盾から剣を発生させる。

 そのまま壁を蹴り、再びニヴルへと突撃を仕掛けた。

 

「あらあら、相変わらずの近接戦がお好みですの? 良いですわね、そういうの……嫌いじゃありませんわっ!」

 

 笑いながら言い放つニヴルの両手が光り、瞬時に武装らしきモノが生成される。

 右手にはレイピアみたいな細長い剣、左手にはさっき私を殴った時に使用していた、ガントレットのようなもの。

 正面からやり合う気ね……ようやくっ!

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 まずは殴るように、左の盾の剣を突き出す。

 

「ふふっ、一度の痛みにも怖気付かずに果敢に攻めてくる……それでこそ、ですわ!」

 

 その初撃は、ガントレットの裏拳によって弾かれる。

 けど、それは想定内。

 

「うるっ、さいなぁっ!!」

 

 弾かれた反動のまま身体を捻り、今度は右手に持った刀を片手剣のように扱い、再びの逆袈裟斬りを仕掛ける。

 

「あら、お話は嫌いで?」

 

 その逆袈裟斬りも、ニヴルが軌道を合わせて振りかぶってきたレイピアと激突する。

 

「アンタと話す舌が無いって言ってんのっ!!」

「あらあら、私は沢山お話したいですわよ?」

 

 私の斬り上げる刃とニヴルの振り下ろす刃が交わり、火花と蒸気が接触面から激しく飛び散り続ける。

 力負けしないように左手も加えて、羽根を羽ばたかせながらスラスターも全開に。

 覚醒した力を使ってもギリギリ……正直ちょっと自信を無くしそう。

 そんな私に対し、ニヴルは片手で振り下ろしているまま。余裕を見せつけられているようで心底腹が立つ。

 それにこの距離だと、ニヤニヤと楽しそうなニヴルの顔が嫌でも至近距離で見えてしまう。

 ……この顔、ウザい時のアルクの顔と似ている……ぶん殴りたくて仕方がなくなる顔だ。

 

「オルレアハートの背景とか、どんな気持ちで戦ってきたのか。そういう事を知れば知るほど、最期の処刑が味わい深くなるってモノですのよっ!!」

「いちいちキモいのよっ、アンタってばっ!!」

 

 一瞬だけ刀から力を抜き、相手の力とスラスターを併用して、縦の逆方向へと回転する。

 そして。

 

「いい加減っ、黙ってろっ!!」

 

 遠心力諸々の勢いを右脚に乗せて、頭上目掛けてかかと落としを打ち込む。

 

「あら、つれないですわねぇ」

 

 私のショートブーツが、攻撃を防いだニヴルの左手のガントレットにぶつかり、甲高い音が響き渡る。

 これもっ、届かないか……っ!

 

「ちっ!!」

 

 このままレイピアで攻撃されても面倒だ。

 無理矢理身体を捻り、左脚でニヴルの胴体を蹴っ飛ばしてそのまま後退、一時距離をとる。

 

「っ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

 直撃でお腹を蹴っ飛ばしたはずなのに、脚に伝わってきたのはまるで鉄板でも蹴ったかのような硬い感覚。

 こりゃ十中八九、あのドレスの中にも氷で作った鎧とか何か入っているな。

 ……あのレイピアの細さですら、今の私の全力の斬り上げを簡単に防いでいた。

 そんな硬度のモノが殆ど全身を覆ってると過程すると……私の攻撃が生身に届くまで、一体どのくらいの時間が必要になるだろうか。

 

「あら、どうしましたのオルレアハート? 私はまだまだ満足しておりませんわよ。さぁ、早く貴女の全力を見せてくださいましっ!」

 

 ……っ、相変わらず好き勝手言ってくれる。

 こっちはハナから全力だってのに。

 仕方ない……色々考えても勝機はそう簡単には見えてこないだろう。

 だったらやるしかない……一か八かの、一点集中突破っ!

 

「はぁっ、はぁっ……ふーっ……」

 

 呼吸を落ち着かせ、盾の剣も一度収める。

 そしてゆっくりと刀を両手で持ち、霞の構えを取る。

 やる事はアルクに勝った時と同じ。

 エネルギー効率も装備効率も考えない全力の攻撃を、一点だけを狙って叩き込み続けるだけ。

 

「……一つ、アドバイスをして差し上げるとしたらですね」

 

 後はどこを狙うべきか……と思考を巡らせていると、急にニヴルが口を開き始めた。

 

「貴女、少し距離を置いたからといって、油断し過ぎではありませんこと?」

 

 ニヴルはそのまま、上空に半円を描くように左手を動かす。

 その軌道を追うように、青白い円型の光が五つほど現れる。

 中には幾何学的な模様が彩られ、中央が眩しく光って……これっ、まさかっ!?

 

「戦闘中は常に気を抜かない……これは、鉄則ですわよっ!」

「っ、ちっ!」

 何かヤバい気配を感じて、構えを解いて咄嗟に横にカッ飛んだ。

 遅れてニヴルが指揮官のように手を振り下ろした、その瞬間……小さく鋭い光弾が、銃弾のように私がいた場所へと向かって雨あられと撃ち込まれたのだ。

 

「さぁ、レベルアップですわよ、オルレアハート! 見事この弾幕を潜り抜け、私の元へと到達してご覧なさい!」

 

 チラッと横目で確認すると、私のさっきまでいた場所は穴だらけの惨状が広がっていた。

 多分あの場に留まってたら、今頃肉片と化してこの世からサヨナラしてただろう。

 

「っ、いいじゃないっ、やってやるわよっ!!」

 

 言われるがままに動かされるのは正直癪だけど、今の私にはそれしかないのもまた事実。

 大丈夫、今の能力状態ならば避けられる。

 そう自分に言い聞かせて……

 

「っ、はぁぁぁっ!!」

 

 私は再び地面を蹴り、ニヴルへの接近を試みた。

 

「そうですわっ! その調子ですわよっ、オルレアハート!」

 

 そんな私の動きに合わせて放たれる無数の光弾。

 

「ぐっ、うぅっ! ふっ、ぐぅっ!!」

 

 だけど、今の動体視力ならば弾の軌道も見えるっ!

 地面を蹴って、壁を蹴って、時には空中で回転しながらスラスターを噴いて無理矢理軌道を変化させて。

 追跡してくるように次々と迫ってくる光弾に対し、空中も使っての三次元軌道で大きく避け続ける。

 たまに羽根に掠ってヒヤリとする事もあるけど、それでも致命傷になりそうな弾は一発も貰ってない。

 

「頑張りなさいっ、オルレアハート! ほらっ、私今無防備ですわよ〜!」

 

 声の方を見ると、相変わらず楽しそうにしながら手を振っているニヴルの姿が見えた。

 しかも、いつの間にかガントレットもレイピアも解除して、完全に素手の状態。

 本当に舐めプしてるだけなのか、誘い込む為の罠なのか。

 十中八九後者だろう……けど、だからって攻め込まなければ、いつかは私の身体が穴だらけになってお終いだ。

 

「ぐっ、うぅぅぅっ!! ぅぐっ、こっ、のぉぉぉっ!!」

 

 それに回避の為に無茶なジグザグ軌道や急旋回を何度も何度も繰り返しているせいで、全身に遠心力やら諸々の力がかかって想像以上に体力の消耗が早い。

 ……仕方ない。

 ちょっと焦燥かもしれないけどっ、ここで仕掛けるっ!!

 

「っ、らぁぁぁっ!!」

 

 私は多少の被弾は覚悟の上で、弾の表面積が一番少ない場所を狙って、スラスター全開で一気に突っ込んだ。

 身体に当たりそうな弾は両腕の盾で防ぎ、羽根への被弾はもう全部無視。

 弾幕を抜けて目指したのは、斬りかかるには少し遠い位置。

 その場所から、ミサイルのように右側のスラスターだけ射出する。

 

「あら?」

 

 ニヴルのいた場所少し手前でそれは爆散した。

 恐らく迎撃されたんだろうし、ダメージも無いはず。

 だけど……弾幕は止まったっ!!

 私はそのまま急上昇をかけ、ニヴルの上空斜め前方へと到達すると、すぐさま左側のスラスターも撃ち込む。

 そしてその撃ち出したスラスターに紛れて、私自身も急降下。

 私の加速力と重力を乗せた、空中からの唐竹割りを叩き込むっ!!

 まずは一撃どこかに当ててっ、そんで少しでも傷ついた場所へ集中的に連撃を撃ち込む!

 

「ふっ!!」

 

 目の前でスラスターが爆発したのと同時に、私も爆風の中へと潜り込む。

 アイツなら絶対動かないはずっ、ならっ、そこにいるはずっ!!

 

「くらっ、えぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 狙った位置をぶった斬るよう、一気に刀を振り下ろす。

 どこか傷が入れば御の字っ、理想は真っ二つ!

 そう、思っていた……のに。

 

「……狙いは良かったですわ。ただ少し、勝負を焦り過ぎましたわね」

 

 気が付くと私の両腕は……刀を振りかぶったまま、突如空中に出現した手枷によって固定されていた。

 マズいっ、これじゃ振り下ろせなっ……!?

 

「なっ、あ゛ぐっ!?」

 

 腕が空中に固定されたまま、身体だけ勢いのままに打ち下ろされたせいで、腕に急激な痛みが走る。

 同時に背中の方で、ドスッと金属の塊が落ちる音がした。

 

「さぁ、これで二度目の敗北……今度はもう、逃がしてあげませんわよ?」

 

 氷の手枷を嵌められ、ちょうどつま先立ちしてもギリギリ地面に届かないくらいの高さで、空中で吊り下げられた私。

 そんな私の目の前でニヴルの手が光り、先程のレイピアが再び姿を現す。

 ヤバいっ、これっ、本当に……死……っ!?

 

「ぐっ、離っ、せぇっ!!」

 

 せめてもの抵抗とばかりに、ニヴルの身体に右脚で蹴りを入れようと試みた。

 

「あら、諦めの悪い娘は嫌いじゃありませんわよ」

 

 けど、そんな片脚が地面についていない、力の入っていない蹴りでは威力もお察しの通り。

 私が放った渾身の蹴りも、ガントレットすら付けていないニヴルの左腕で足首を簡単に掴まれ、受け止められてしまう。

 

「でも……自分から脚をおっぴろげるのは、少しはしたなくありませんこと?」

 

 それどころか、ニヴルは私の脚を掴んだまま、右手のレイピアを私の胸の中心へと突き付けてきた。

 

「折角ですもの、もう少しはしたない格好にして差し上げましょう」

「ひっ……!? やっ、やめっ、ろ、ぉっ……!」

 

 そのままレイピアの先端を、今日に私の胸の谷間に軽く突き刺した。

 そして勢いよく、下へと振り下ろして……

 

 ビリッ……!

 

「っ、ぁっ、っっっ……!!」

 

 私の衣装の胸の中心に、綺麗な一本線を描かれた。

 幸い痛みは無い……けど、恥ずかしくて頭がおかしくなりそうだ。

 顔を逸らして目をギュッと瞑って、少しでも自身の醜態から目を遠ざけようとする。

 

「あらぁ、そんな乙女みたいな顔もできますのね? 私、ますます貴女の事が好きになってまいりましたわぁ!」

 

 そんな私の目の前で、ニヴルはレイピアを消すと……私の衣装にできた切断面へと、おもむろに右手を突っ込んできた。

 

「さぁ、ご開帳ですわよ!」

 

 そのまま私の衣装を逆手でギュッと掴むと……ニヴルは力任せに、私の衣装を音を立てて引き裂いた。

 ポロッと私の左胸が、何にも隠されていない状態で晒け出される。

 

「っ、うっ、っ、んっ、ふっ、ぐっ……!」

 

 本当は泣き叫びたい、けど、それをしたらコイツの思うツボ。

 そう思って、今にも飛び出そうな悲鳴を、歯を食いしばって必死に堪える。

 

「そう、そうですわ……変身ヒロインたるもの、幾ら勝てない相手がいるからって、そう簡単に屈してはいけませんのよ。頑張って頑張って……それが報われずに散っていく姿が、一番美しいのですから!」

 

 私の羞恥する姿を楽しむように……ニヴルは足首を掴んだままの右脚の、その太ももをゆっくり、ゆっくりと右手で撫で回し始めた。

 

「ひぃっ!? やっ、やだっ……イヤっ……離っ、してぇっ……!」

 

 黒いニーハイの入口に手を出し入れされ、流石に嫌悪の声が漏れ出てしまう。

 

「ふふっ、良い脚ですわ。これに蹴られた戦闘員達は、さぞかし幸せでしたでしょうね」

 

 中身がオッサンなんじゃないかと思うくらいに気持ちの悪い発言に、否が応でも顔が引き攣る。

 

「んんっ、ひっ、ぐっ……ま、満足っ、したっ、ならっ……そろそろっ、解放してっ、くれないかしら……」

「あら何を仰いますの? まだまだ宴は始まったばっかりでしてよ」

 

 必死の強がりも、コイツの前には無意味らしい。

 直後、ニヴルは私の太ももを数回、続けてお尻を何度か揉んだ後……

 

「しかし、脚とお尻だけでは貴女も待ちきれないでしょうから……次はこっち、遊んでみましょうか」

 

 唐突に、私の露出させられた左胸へと右手を伸ばしてきた。

 

「んっ、んんっ……!!」

 

 ニヴルの手のひらに乳首が当たり、反射的に恥ずかしい声が出てしまう。

 にも関わらず、ニヴルは私の胸をねちっこく、何度も何度もムギュムギュと揉み続けていた。

 

「おっぱいはこの位の、そう、ちょうど手に収まるくらいのサイズが良いのですわよね。あぁ、本当に良い身体していらっしゃる。貴女、私の奴隷になりませんこと?」

「ひっ、んぅっ!? ふっ、ぅうっ、あっ、んぁっ!? だっ、だれっ、がぁっ!? ぁっ、あぁっ!!」

 

 胸を揉みながら、手のひらでゆっくりじっくりと乳首を刺激され……乳首が勝手に勃起してしまうのが嫌でも分かってしまう。

 そしてそれは当然……ニヴルだって、気が付いていた。

 

「あら生意気。そんな我儘を言う変身ヒロインには……お仕置、ですわ!」

 

 ニヴルはそう言うと、私の乳首を人差し指と親指で摘んだ。

 そして……

 

「それっ!」

 

 ギュッ!!

 

 軽快な掛け声と共に、私の乳首が軽く摘み上げられた。

 そんな簡単な攻撃ですら、今の私には為す術は無く……

 

「んぎっいぃぃぃっ!?」

 

 与えられた激しい快楽を前に、私はされるがままに身体を仰け反らせ、無様な鳴き声を響かせてしまうのだった。

 

「ぃぎっ、ひっ、ぃぎぃっ!? ひっ、ぁっ、ひぃっ……!」

「あら……もしかして痛かったですか? それは失礼しましたわ。お詫びに、こちらを……」

 

 乳首を摘む力が弱まっても、そう簡単に余韻は消えない。

 必死に快楽を振りほどこうと深呼吸をした、けど……まだまだ乳首への責めは終わらないみたいだ。

 お詫びとは名ばかり、ニヴルは言い終わった後にわざとらしく舌をチロチロと左右に動かして見せてきた。

 その行為の察するところ、嫌でも分かってしまう。

 ……大丈夫、たかが乳首を舐められるだけ。

 あんなの気持ち悪いだけ、全然気持ちよく無いに決まってる。

 それに相手は今日会ったばかりの相手、私の気持ち良いポイントなんて、知っているはずが無い。

 そう必死に自分に言い聞かせ、大丈夫だと刻み込む。

 するとやがてニヴルの顔が、ゆっくりと私の左胸へと迫ってきた。

 そして……

 

「……れ〜ろっ」

「んっ、あっ、ぁあっ!? ぁひっ、いっ、あぁぁぁっ!?」

 

 ニヴルの舌が私の乳首に触れた瞬間……私の全身を、甘い電流みたいな快楽が貫いた。

 

「あ〜っ、レロレロレロレロっ……ん〜っ、ぁっ、れ〜っ……」

「ひっ、いぃぃぃっ!?」

 

 当然逃げる暇なんて貰えないまま、続けて舌で乳首を転がされ、再び私の身体は甘い快楽に晒される。

 ヤバいっ、こんなの知っちゃったらっ、私っ、またっ、壊れっ、ちゃっ……!?

 

「ぁああっ!? はっ、あっ、はっ、ぁあぁぁぁっ!? これっ、ダメっ、んんぅぅぅっ!?」

 

 乳首を舐められ、吸われ、甘噛みされる。

 その程度の些細な責め……なのに、声が我慢できない。

 

「あぁっ、はぁっ、あっ、あぁぁぁっ!? やっ、いやっ、これっ、だっ、めっ、ぁっ、んぅぅぅっ!?」

「んぁっ……あら、オルレアハートは乳首責めが大好きな変態ヒロインでしたのね……ぁ〜、んっ……」

「んぎゅっ!? ぁあっ、あっ、んんっ!? こんなのっ、好きっ、じゃっ、あぁぁぁっ!?」

「いいんですのよ? もっと自分に素直になりなさいな。自分は乳首で感じちゃう変態なんですって、ほらっ、ほらぁっ!」

 

 レロレロっ、ジュルルルッ!!

 

「あ゛ぅっ!? うっ、あ゛っ、はぁぁぁっ!?」

 

 私の乳首が舌で激しく転がされ、情けない嬌声が溢れ出てしまう。

 腰が勝手に動いちゃって、身体が自然と仰け反ってしまう。

 

「ひぃっ、いっ、ひぃぃぃっ!? これっ、だめっ、ほんとっ、にぃぃぃっ!? ゃあっ、あっ、はっ、ぁっ、あぁぁぁっ!?」

 

 負けたくないっ、負けたくないっ、のにっ……気持ち良いのにっ、抗えっ、ないっ……!

 

「やらっ、ぁっ、あっ、んぅぅぅっ!? やらっ、イキたくないっ、イキたくなっ、いぃぃぃっ!? こんなっ、のっ、おっ、ぅうぅぅぅっ!?」

 

 つま先がピンってなるくらい身体に力を入れている、のに、快楽は容赦なく襲ってくる。

 うそっ、やだっ……負けたくないっ、のに……私っ、片方の乳首っ、舐められただけでっ……負け、ちゃっ……!?

 

「ん゛ぎっ、ぃっ、あぁっ!? やらっ、イっちゃっ、ひっ、あぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ビクビクっ!! ぷしゃぁぁぁっ!!

 

 結果、私の身体は快楽に抗いきれず……絶頂、させられてしまった。

 しかも絶頂させられると同時に、アソコから潮が噴き出すところを見られるオマケ付き。

 イカされたっ……こんなっ、簡単っ、にっ……!

 

「ぅふっ、ふぐっ、うっ、うぅっ……!」

「あらら、隠しちゃ嫌ですわよ。イキ顔、もっとよく見せてくださいまし」

 

 上に吊られている腕に隠すように顔を逸らし、せめてこの顔だけは見られないようにした。

 けど、ニヴルに頬を掴まれて、私の顔は無理矢理正面を向かされる。

 

「あらっ、無様なトロッ顔ですわね」

「ぅぐっ……見るっ、な゛っ、ぁっ……」

 

 快楽に蕩け、涙とヨダレでグシャグシャになった顔を見られる……屈辱に次ぐ屈辱に、私の我慢はもう限界に達しようとしていた。

 

「こんな姿、街の下民共が見たらどう思いますかね? 今まで自分を守ってくれてたオルレアハートが、実は乳首をイジめられるだけで潮噴き絶頂してしまう変態、なんて知ってしまったら……」

「っっ……! やめっ、ろっ……こっ、のぉ……っ!」

 

 こんな事を続けられては、本当にぶっ壊されてしまう。

 残された左脚を全力で振りかぶり、ニヴルの横腹を蹴っ飛ばそうと試みた。

 けど……

 

「ふふっ、まだ元気なのは喜ばしい事ですわね」

 

 ……もはやガードすらされないまま、私の蹴りはニヴルの横腹に当たっても、ポスッと音を立てるだけ。

 体勢を崩す事すら、ままならない。

 

「はぁっ、はぁっ、っ、ぁっ、はぁっ……!」

「変身ヒロインは最期まで諦めないのが必須事項。さぁっ、もっと楽しませてくださいまし!」

 

 私だって強くなってるはずなのに、今だって、自分だけの力で戦ってる訳じゃないのに。

 なのになんで……コイツに勝てないの……っ!

 そんな私を嘲笑いながら、ニヴルは右腕を振りかぶった。

 そして……

 

 ドチュッ!!

 

「う゛ぶっ!? あ゛っ、ぅ゛えっ……!」

 

 振り抜かれたニヴルの拳が、剥き出しのお腹に突き刺さった。

 途端、威力に呑まれて身体がくの字に折り曲げられる。

 威力がピンポイントで叩き込まれている分、前戦ったオーガに殴られた時よりも痛く感じてしまう。

 しかも右脚を掴まれたままだから、威力を逃がす事もできない。

 お腹に押し付けられたままの拳が、圧迫感で痛みを忘れる事を許してくれない。

 

「う゛ぶっ……ぁっ、ぐっ……ぅあ゛っ……!」

「良い痛みでしょう? 更に、こんなのは如何でしょう!」

 

 痛みに悶え、口からヨダレを垂らす私。

 でも、まだサンドバッグの役割は終わらない。

 なおも笑い続けるニヴルは、そんな私のお腹に拳をめり込ませたまま……ゆっくりと、拳を回転させ始めたのだ。

 

 グチュッ……グチュッ……!

 

「っぎぁ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!? がっあ゛ぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 痛いっ、痛い痛い痛い痛いぃぃぃっ!?

 まるで内臓を直接掻き混ぜられているような激痛が、ゆっくり、ゆっくりと、練り込むように加えられ続ける。

 

「あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!? ぁ゛があ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 こんなのっ、こんなの……いくら変身しているからってっ、人にして良い攻撃のはずがないっ、のにっ……!

 

「ふふっ、貴女のお腹、と〜っても柔らかいですわねぇ。そ〜れっ、そ〜れっ♪」

「があ゛ぁぁぁぁぁぁっ!? あ゛っ、ぶふっ!? ぅ゛っぎぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 吐瀉物を吐き出すみたいに、何度も何度もヨダレを地面にぶちまける。

 でも、だからって私のお腹を捻じる手は止まらない。

 何よコイツっ、そんなに私の苦しむ姿見るのが楽しいっての……っ!?

 こんなの続けられたら……もた……ない……っ!

 

「ぐっい゛ぁぁぁぁぁぁっ!? ゃっ、め゛っ、い゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!? ぁ゛がぁぁぁっ!? ぁ゛ぐっ、う゛あ゛っ、が、ぁ゛……!」

 

 ……ヤバいっ……意識、が、薄、れ、て……

 負けたくないっ、負けたくないっ、のにっ……負けちゃうっ……このままっ、じゃっ……私……また……負け……ちゃ……

 

「……おっと、まだ気絶なんてしちゃダメですわよ」

 

 敗北の予感を悟り、意識を手放そうとした瞬間……ニヴルの拳が、私のお腹からゆっくりと引き抜かれた。

 

「あ゛ぶっ、う゛ぶっ……え゛っ、ぁ゛っ、お゛ぇ゛っ……」

 

 その瞬間、胃の中にあるモノを全部ぶちまけるようにありったけのヨダレを口から吐き出す。

 しかし、それだけでは終わらず……

 

「ふ゛っ……う゛……ぇ゛……っ……」

 

 ……じょわぁぁぁ。

 

「……あらっ♪」

 

 あろう事に、私は右脚を持ち上げられた、犬みたいな体勢のまま……失禁してしまっていた。

 

「あらあら、そんなに痛かったですの?」

 

 そんな私の失態を、ニヴルは嬉しそうにニコニコしながら、全身を舐め回すように見てくる。

 痛いのと恥ずかしいのが混ざりあって、もうどうにかなってしまいそうだ。

 

「でしたら一つだけ、助かる条件を与えて差し上げましょう」

「う゛ぇ゛っ……ごっ、ふっ……ぉ゛えっ……じ、条……件……?」

「えぇ」

 

 そんな私の気持ちなんてお構い無し。

 ニヴルはそう言うと、掴んでいた私の右脚をスライドするように膝を抱き抱え直し、私の顔の目の前から言い放ってきた。

 

「なに、簡単な事ですわ。今から私の顔を見ながら『私はニヴル様に楯突いて完全敗北した、愚かな変身ヒロインです。今後は心身共に従属させて頂きます』、と誓ってくださいまし」

「……な、に……そ、れ……は」

「あぁ、一言一句そのまま言えとは言っておりませんわよ。要は自らの敗北をしっかり、噛み締めながら宣言して頂くだけでよろしいのですわ」

「敗北……宣……言……?」

「そう、敗北宣言。これを言って頂ければ、もう貴女に酷い事するのは止めてあげますわ。悪い条件ではないでしょう?」

 

 ……そっか、それさえ言えば全部許して貰えるんだ。

 お腹はもう痛すぎてよく分からないし、さっきも乳首だけで激しくイかされちゃった。

 この手首の拘束も、抱えられている脚だって振りほどけない。

 こんなの……勝てるはずが無いんだ。

 

「……わ、私、は……っ」

「はい、続けてくださいまし」

 

 ゆっくりと、震える口を小さく開く。

 怖い、痛い、苦しい。もういっそ、楽になりたい。

 

「わた、し……は……」

 

 ……だけど……コイツの思い通りになるのは、もっと嫌だっ!

 

「……っ、まだっ、負けてっ、ないっ……!」

 

 震える身体を押えつけながら、キッと目の前のニヴルを睨みつける。

 こんなヤツにこのまま従属させられるくらいなら、いっそここで殺された方がマシよ!

 

「……ふふっ」

 

 不気味に笑うニヴルから、絶対目を逸らさない。

 死ぬ間際までっ、絶対抗い続けて……

 

「やっぱり貴女は素晴らしいわっ、オルレアハートっ!」

 

 けど、その直後……ニヴルの顔が、私の顔へとぶつかりそうな程に急接近してきた。

 そしてそのまま……

 

「んむ゛っ!?」

 

 私の口が、ニヴルの口によって塞がれた。

 

「んん゛っ!? ん゛ぶっ、んっ、ん゛んぅぅぅっ!?」

 

 突然の出来事に、頭が追いつかない。

 なにっ、これっ、なんで私っ、キスっ、されてっ……!?

 

「んんっ、んぁっ、ん〜っ、んんっ……んぁっ、それでこそですわっ、オルレアハートぉっ……んんっ、んむっ、れ〜っ……ろぉっ……んぁっ……!」

「んぐっ、はな゛じっ、んぶっ!? ん゛んっ、ん゛ぁっ、む゛ぅぅぅっ!?」

 

 舌っ、奥まで来てっ、息っ、できなっ……!?

 それにっ、なんかっ……ヤバっ……なんでっ、これっ……気持ちっ、良っ、く、なっ……!?

 

「んぇっ、んっ、ろぉっ……んぁっ……ほらぁ、もっと舌、らしてっ……んんっ……ぁ〜っ……」

「んう゛っ、ゃめ゛っ、い゛ぁっ、んむ゛っ!? んっ、んむ゛ぅぅぅっ!?」

 

 やだっ、やだやだっ……!!

 こんなっ、ロマンチックの欠けらも無いキスでっ、こんなっ、気持ち良くっ、なっちゃうなんてっ……!

 こんな……負けるのがっ、気持ち良いってっ……刻み込まれてるみたいでっ……私っ、まだ負けてっ、ないっ、のにぃっ……!

 

「ぁ〜〜、んんっ、ぁっ、れろぉっ……んぁっ、んんっ……そろそろっ、良いっ、ですか、ねぇっ……んぁあっ……」

 

 目をギュッと閉じて耐え続けた、永遠にも思えた数十秒。

 ようやく、ニヴルの唇が私の口を解放してくれた。

 

「っっ、っ〜〜っ!! んぐっ、ひっ、ぁっ……はぁっ、はぁっ……!」

 

 やっと自由になった口から、必死に新鮮な酸素を吸い込む。

 否が応でも入ってくる、目の前のヤツの鼻につくような甘い匂いが、まるで余裕の差を見せつけてられているみたいに感じる。

 こっちは自分の体液で全身酷い状況だってのに……

 

「ふふっ、良い顔になりましたわぁっ……」

 

 そんな私を見るニヴルの表情は……まさに愉悦そのものって感じ。

 

「顔をこんなにトロトロに蕩けさせて……そんなに私とのキスが気持ちよかったのですね。悦んでもらえて私も嬉しいですわぁ!」

 

 ニヤニヤと笑いながら、身体中を舐め回すように見られている。

 あまりに屈辱的な振る舞いを前に、思わず泣き出しそうになってしまうのを、歯を食いしばってグッと堪える。

 

「あらっ、そのお顔も素敵です、が……まだ、歓喜の涙を流すには早すぎましてよ?」

 

 だけど、泣き顔すらもヤツにとっては好物らしい。

 ニヴルは上機嫌そうな声で話しながら、未だ抱えている私の右脚の、膝の辺りをサッと撫でてきた。

 その瞬間……手首と同じような冷たさが、撫でられた部分を覆い包んだ。

 

「……っ!?」

 

 さっきまで感じていた、少しヒヤッとしていたニヴルの体温すら感じなくなった私の脚には……代わりに、氷のリングのようなモノが付けられている。

 片足立ちのまま、バレエみたいに一直線に脚を上げる直前の、太ももだけ上げている状態。

 その体勢のまま、私は、拘束されていた。

 

「さぁ、これで最後のお楽しみ……オルレアハートのおマンコを堪能する準備ができましたわ! しかし、残念な事に私にはおチンポは生えておりませんので……」

 

 ……当たり前だ、ンなモノ生えててたまるか。

 そんな私の心の中でのツッコミを知ってか知らずか、辺りをキョロキョロと見回すニヴル。

 

「……あぁ、ちょうどあるではありませんか。触手なんかよりもっと面白い代用品♪」

 

 やがて何かに気が付いたのか、ニヴルは私の羽根を避けながら、スキップ混じりで私の後ろへと歩き始めた。

 振り向いて確認したいが……生憎、首を捻る元気すら、もう残っていない。

 何をされるのか……いや、何をされたって絶対に屈しない。最期の最期まで、抗い続けてやる。

 そう決意を新たに、グッと歯を食いしばる。

 

「お待たせ致しましたわ!」

 

 そんな私の元に来たニヴルの手には……見覚えのある、二本の棒。

 

「……そ、それ、で……なに……する気……なの……?」

 

 最初は見間違えかと思った、いや、思いたかった。

 けど、間違いない……あれは……私の、刀。

 

「何って……捕らえた変身ヒロイン、そしてその目の前には変身ヒロインの使っていた武器! となればもう……決まっているではありませんか!」

 

 怯えた私の視線を気持ちよさそうに浴びながら……ニヴルは嬉々として言い放ってきた。

 

「今からこれをおチンポ代わりにして、貴女を鳴かせて差し上げますわ! さぁっ、覚悟してくださいなっ、オルレアハート♪」

 

--To be Continued--




奮闘虚しくニヴルに捕らわれ、玩具のように身体を弄ばれる雅。
しかし、ニヴルはまだ満足していない。
オルレアハートの刀を手にしたニヴルを前に、更なる苦難が彼女を襲うのだった……

次話も引き続き、楽しんで頂ければ幸いです。
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