※この作品はR-18です。

神姫清廉オルレアハート!-乱行恥虐のスペクトラム-   作:ホリス_if

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オルレアハート、第14話です。

アルクを打ち倒し、ハウンズの目的を断片ながらも知ることとなったオルレアハートこと春永雅。
彼女は今のままでは攫われた奏を救うこともままならないと、新たに取得した必殺技の鍛錬に励んでいた。
しかし、敵も悠長に待ってくれることは無い。
ある日、現実世界に出現した人型との戦いの後……突如襲来した謎の巨大な鎧が、彼女の前に姿を現したのだ。
街を守る為にも、雅は鎧との戦闘に入る、が……

今回のシチュエーションは触手責め&エナドレです。
今話も是非、お楽しみください。


第14話-襲来!謎の巨大触手鎧!

 

「……私は、な……好きなんだ。ハッピーエンドが、な」

 

 互いに座って向かい合ったまま、アルクが自傷気味に呟いた、その一言。

 その言葉を聞いた私の頭の中は……更なる混乱が引き起こされていた。

 

「えっと、つまり……どういうこと?」

 

 ハッピーエンド……ハッピーエンドってアレよね、物語でよくある、みんな幸せで終わる、アレの事。

 アルクの言っている言葉、それ自体の理解はできる。

 けど私の脳みそは、真意までは咄嗟に理解してくれない。

 ……なんで私達と戦ってる相手が、敵であるはずの私にそんなモノを求めているの?

 

「……そこまで思い悩む事でも無いと思うんだが」

 

 ……よほど酷い顔でもしてたんだろう。

 珍しくアルクが、呆れながらも気を使ってくる。

 

「いや、でも……やっぱり、よく分からないって……」

 

 煮え切らない私の様子を見て、アルクは軽くため息をつく。

 そして少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

 

「……ふむ、では折角だ。一度、一通り説明してあげようか。この戦いの始まりと、目的をな」

「……そんなの、聞いてる暇ないってば。いいから、早く奏の場所を……」

 

 たしかに説明は有り難い、けど、それは今する事じゃない。

 アルクの目的を聞いたのだって、彼女が本当に信用できる相手なのかを改めて確かめたかったからで。

 軽く、出来れば本心を少しでも聞ければ良い、そう思っての言葉だったんだ。

 そんな私に向けられるのは……もはや見慣れた、いつも通りのニヤニヤ顔。

 

「……そういえば、まだ君の首輪は外してなかったな?」

「……っ……ほんっと、良い性格してるわよね、アンタ」

 

 アルクに脅されるがまま、私は渋々足を崩す。

 そんな私の姿を確認して……アルクは腕を組んでから、ゆっくりと話し始めるのだった。

 

……

……

 

 

「まず一つ目。我々ハウンズの目的は〝変身ヒロインの敗北を楽しむ〟事だと、以前にも説明したな?」

「……聞いた事もないんだけど」

「……そうか、教えたのはまだ記憶を消す前だったか。すまんが……とにかくまぁ、そういう事だ。ここには変わりない。オーケー?」

 

 ……なんかすっごい不穏なワードが聞こえてきたんだけど。

 でもいちいち突っかかってたら埒が明かないし……仕方ない、これを問い詰めるのはまた今度だ。

 そんな私の様子を窺いつつ、こほん、と咳払いをしてから、アルクは再び口を開く。

 

「では次、この戦いを始めたきっかけなのだが……まずは前提条件から話させてもらうが、構わないな?」

「……拒否権は無いんでしょ?」

「ご名答。では、早速話していくとしよう。私達の世界は、君達とは異なる次元にある。主な違いは技術レベルと……ある日突然、生まれつき〝スペル〟と呼ばれる特殊能力を持った人間が生まれ始めた事、くらいだろうか」

 

 いきなりぶっ込まれる、現代ファンタジーみたいな話。

 別の次元、ねぇ……異世界とか並行世界とか、そんな感じの話だろうか。

 

「そのスペルを持った者達と、その者達に共感したスペルを持たない者。彼らによって、その世界からは大きな戦いは無くなった。だが、そんな平和な世界を謳歌できないのが偉い人というものでな。自分の世界で満足できない奴らは、次に狙う標的を探し始めた。それが……」

「……別の次元の世界、ってこと?」

「そういう事だ」

「それってさ……もしかしてこの次元以外にも、色んな次元があったりするの?」

「それはそうだろう。次元というのは、何も表裏のような単純なモノじゃない。そもそもの成り立ちから昨日のランチの内容程度まで、数多の変化しうる可能性を秘めた無数の世界。それが次元というものだ……このくらい、聞かずとも理解して欲しいものだがな」

 

 ……ンなこと理解してたら、そもそも質問なんてしてないっての。

 相変わらず一言多いヤツだこと。

 

「……悪かったわよ。で、続きをどうぞ?」

 

 明らかに不機嫌さを前面に出しながらの催促に、アルクは呆れた顔でため息をつく。

 ……さっき殴った場所、もう一回殴ってやろうかしら。

 

「……奴らは〝他次元からの侵略に備えた防衛網、及び反抗時に活用できる仕組みを構築する〟と言い出してな……その結果、幾つかの対異次元部隊が作られた。そしてそれに動員されたのは当然、スペルを持った者達だって例外ではない」

 

「だが、いきなり別の次元に飛び込んで戦争を起こすには、明らかに情報も練度も足りていない。ならば、どうするか……簡単な話だ、訓練して練度を積めばいい」

 

「しかし訓練すると言っても、それに見合った次元を選ぶ必要がある。条件としては……ロクな戦力が無く、小規模な戦闘が発生しても抹消が容易か、いっそエンタメに昇格できるほど平和な世界であること。その候補のうちの一つがここだったという訳でな……これが二つ目、今回私達がこの次元に来た理由だ」

「……ふーん、幾つかあったんだ」

「そりゃそうさ。一つ終わってはいお終い、では安定した練度は作れないからな」

「って事は……ここが一つ目ってワケじゃないわね?」

「そうだな、我々ハウンズとしては……確か五つ目、だったかな」

「……で、その前四つの結果は?」

「無論、最終的には植民地さ。そららの次元の少女らにも変身システムをばら蒔いた。そして私達が〝英雄〟と呼んでいる主力の変身ヒロイン……つまり君みたいな存在も幾つか生まれたりもした……が、最終的には……」

「……みんな敗北しちゃったんだ」

「そういう事だ」

 

 珍しく、少し気まずそうにアルクは話す。

 だが次にはいつものムカつく顔へと元通り、何事も無かったかのように解説を続ける。

 

「しかし、だ。その方針に納得できない者だっていた。まぁ、当然だろう。せっかく勝ち取った平和が、あっという間に崩されそうになっているのだからな」

 

「だから、彼らは考えた。自らが他の次元で戦いを引き起こす災いになるのならば、せめて楽しんでやろうとな」

「……この侵略ゲームを?」

「そうじゃない、そんなもの楽しめる訳ないだろう……敵となる変身ヒロインを陵辱する事を、さ」

「……全っ然、話が繋がってない気がするんだけど」

「ところがどっこい、繋がるんだこれが。しかし……そうだな、その続きはまた今度にしよう」

「何よ、またそうやってはぐらかす気?」

「なに、このまま話し続けてたら日が暮れてしまうだろう? あまり長話をして、君が回復する時間を無駄にするのは私としても都合が悪い。心配せずとも、続きはいつかまた話してあげるさ」

「……ホントでしょうね?」

「あぁ、今まで私が嘘をついた事あるかい?」

 

 敢えて何も突っ込まない、けど……相変わらず勝手に話を始めて、勝手に話を切り上げてくるわね、コイツは。

 ほんと、どうやったらここまでマイペースに生きられるのか教えて欲しい……なんて言ったら、また面倒なことになるのは目に見えてる。

 

「……分かったわよ」

 

 だから、今回は渋々引き下がってやる。

 ……当然、聞かないままでいるつもりは無いけど。

 どうせ私の最後の戦いまで着いてくるつもりだろうし、だったらその時までに聞き出せれば十分。

 変に食らいついて期限を損ねて、そんで奏の場所が聞き出せなくなったらそれこそ本末転倒だし。

 

「ふ、聞き分けの良い娘は好きだぞ」

「はいはい、どーもどーも」

 

 そんな私の不貞腐れた態度を軽く笑いながら、アルクが指を鳴らした。

 と、私の首に嵌められていた首輪が跡形もなくスッと消える。

 

「さ、これで君は自由だ。それで、これからどうする気だい?」

「……意地悪いわね、相変わらず」

 

 本当ならアルクをぶっ倒した後に強引にでも奏の居場所を聞き出して、すぐさま助けに向かうつもりだった。

 けど……今の話を聞いた直後じゃ、流石に自分のやろうとしていた事の無謀さを思い知る。

 基礎の技術レベルも、自分の力の使い方だって、多分向こうの方が数段上。

 対して今の私は、手加減してたであろうアルクにすらギリギリで辛勝したレベル。

 自分の使える技も、力すらもロクに把握すらできていなくて………オマケに消耗させられたこの状態じゃ、どう足掻いたって、ニヴルには勝てない。

 

「ふふっ、ようやく多少の冷静さは身に付いたか」

 

 そんな、首輪を外されても座ったまま動かない私の前で、アルクは笑いながら立ち上がる。

 

「そうだな、今の君に必要なのは……先程使った〝紅刃〟とかいう遠距離技と、瞬間移動、それら必殺技の性能強化ってところだろうか」

 

 目の前で腰に手を当てながらアルクは話し続ける。

 けど……私には一つ、引っかかるところがあった。

 

「……瞬間移動?」

「……まさか、気付いてなかったのかい?」

「……いつ?」

「最後の直前、私のゾーンディバインが展開された直後の事だ。君の眼前に展開したのだから、本来なら直撃していたはずだったんだがね」

 

 ……あぁ、あの時か。

 確かに周りの景色の動き方とかは、この路地裏みたいな場所に飛ばされる時と似ているな〜っては思ったけど……

 あれ、ただ速く動けてただけじゃ無かったんだ……

 

「……相変わらず君はなんというか……驚かせるか呆れさせるか、どっちかにしてくれよ」

 

 アルクはやれやれといった表情で、わざとらしく大きなため息をつく。

 ……そういえばここまで表情をコロコロ変えるアルクを見るの、初めてかも。

 

「……まぁいい。今の君に必要なのは休養と……繰り返しになるが、必殺技の強化だ。無論、ニヴルが何かを仕掛けくるまでがタイムリミット、だがな」

「うん。その為にも、向こう側に出てきたハウンズのヤツらを片っ端からぶっ倒せば良いのよね!」

「うむ、それができるのが理想だが……忘れるなよ、幹部級は大体決まってスペル持ちだ」

「それがなによ、ンなの今まで通りじゃないの」

「だから、それだと行き当たりばったりの対策になって訓練にならんのだって。それに毎回毎回違う能力を相手に、そこまでの応用力を付けるには流石に時間が足りないだろう。そっちの地上侵攻組は他の変身ヒロインに任せて、君はこっちで……そうだな、触手相手にでも頑張っているといいさ」

 

 アルクはそう言うと、おもむろに床に手を当てた。

 すると、既に見慣れてしまった一本のぶっとい触手が、地面から姿を表す。

 

「ぅわっ!? 何すんのよ急にっ!!」

 

 その触手が視界に入った瞬間、私は咄嗟に立ち上がる。

 と同時に左右の盾から剣を生やして振るうと……触手は一瞬のうちに斬り刻まれ、その破片は音も無く粒子となって消滅していった。

 

「こっ、のっ……あいにく、そればっかりはお断りよ。なんで好き好んで、そんな気持ちの悪い触手ばっかり斬ってなきゃいけないのよ」

「ふふっ、なに、ハナから頷くとは思っていないさ」

 

 手を叩きながら笑うアルクに軽く怒りを覚えつつも、私は再び武装を解除する。

 

「まぁ、これで正面から触手と戦ったところで何の訓練にもならない事が証明されたしな。仕方あるまい」

「ねぇ、だったらさ」

「ん?」

「アルクはこっち側に付いて戦ってたら時間も経験値も稼げるし、全部お得に解決するんじゃない?」

「……逆に聞くが、何故私がそうすると思った?」

「まぁ、だよねぇ……聞いてみただけ」

 

 ……そもそも、今回だってたまたま対峙しただけに過ぎない。

 だけど、アルクにその意図があろうがなかろうが、得るものがあった事は事実。

 もしこれが恒常的に続くのなら……なんて、流石に図々しすぎたかな。

 

「……私が求めるハッピーエンドというのはな、変身ヒロインが自分の力で勝ち取ってこそ意味のあると思っている。だからこそ手は貸すが……結末は君達、変身ヒロイン自身に決めて貰わなければならない。それがハッピーエンドだろうと、バッドエンドだろうと、だ」

 

 ……私がしょぼくれているようにでも見えたんだろうか。

 会話を打ち切り先に進めるように、アルクは再び口を開く。

 ……今日に限ってあのアルクが、妙に優しくて……なんか少し、気持ち悪い……なんて感じるのは、流石に失礼だろうか。

 

「だからこそ、特に君のような、私の知らない力を持つ変身ヒロインには特別強い期待を抱いてしまうのかもしれないな」

 

 彼女はそう言うと、私に背を向けて歩き始めた。

 

「雅君、いや……オルレアハート。せいぜい、頑張ってくれたまえよ?」

 

 別れ際に発されたその言葉が耳に届くと同時に……私の視界は、一瞬暗闇の中へと持っていかれる。

 思わず目を閉じ、そして再度開くと……目の前には、私の家の玄関の扉が映っていた。

 

「……アイツ……ほんと……自分勝手なんだから……!」

 

 大して疑問も解決しないままで強制的に終了させられた会話に思わずヤキモキしてしまう。

 

「ったくっ……よしっ」

 

 ……でも、少しだけ、今自分が何をしたら良いのかが分かった。

 それだけでも……大きな収穫だ。

 

「待っててね、奏……」

 

 私が最強になるまで……なんて悠長な事は言ってられない。

 だけど戦う前にアルクは言ってた、奏はまだ生きてるって。

 だったら今の私にできることは……少しでも早く強くなって、少しでも早く奏を助けに行く事だけ。

 でも、今日は色々ありすぎて流石に疲れた。

 ……とにかく、休むことが先決だろう。

 奏のいた隣の部屋に思いを馳せつつ……私は、自分の部屋の扉を開けるのだった。

 

……

……

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 そして数日後……今日も私はオルレアハートへと変身して、街中に現れたハウンズの人型の、戦闘員みたいなヤツらと戦っていた。

 

「ふっ、やぁぁぁっ!!」

 

 場所はよく知っている街の、大きな道路上のど真ん中。

 そんなはた迷惑な場所に現れたもんだから、周囲にはギャラリーと化した街の人たちが大勢、私を取り囲んでいた。

 それもこれも……既に私が何度も街で戦っていて、毎回毎回、見えている場所では勝利を収めていた故の信頼、といったところだろう。

 

『いいぞ〜!!』

『頑張れっ、オルレアハートっ!!』

 

 ……ある種のエンタメとして消費されているようにも感じるけど……それはもう、諦めるしかない。

 そんなこんなで人々の視線と感性を一身に浴びながらも、私は人型相手に高速戦闘を繰り広げていた。

 

「このっ、いい加減っ、諦めなさいよっ!!」

 

 私の速度を乗せたクリアグリーンの刃の刀を振るえば、人型は瞬時に真っ二つ。

 血も悲鳴も流さないまま、粒子みたいになって消滅していく。

 そのまま続けて二体目、三体目と斬り続け、次第に人型は数を減らしていく。

 人型だって必死に応戦はしてくる……にも関わらず、私には一切の攻撃は当たらない。

 けど、それも当然。

 この数日の試行錯誤で、私はかなり自分の力の事を知ることができた。

 どれだけスピードを上げてもいいのか、どのくらいの連続戦闘に耐えられるのか。

 そして、必殺技は想像以上に消耗が激しく、そう簡単に連発することができない、ということも。

 だけどそのおかげで……今じゃこんな人型みたいな雑魚程度、よっぽど油断でもしていない限り、負けることなんて無いって、今なら断言できる。

 

「これでっ、ラストっ!! だぁぁぁっ!!」

 

 あっという間に残り一体となった人型を、躊躇うことなく叩き斬る。

 途端、私を取り囲む人達から一斉に歓声が沸き上がる。

 

『うぉぉぉっ!!』

『今日もカッコよかったよっ、ありがと〜っ!!』

「は、ははっ……ありがとね、みんな」

 

 ……やっぱり何度やっても、コイツにだけは慣れないな。

 早いこと、いつも通り飛び上がって逃げ帰ろうと思った……その時だった。

 

「……っ……っ!? な、なに、よ……アレ、は……っ!?」

 

 少しだけ視線を上げた私の目の前には……今までの常識では考えられない事象……突然空中に、まるで空間に穴でも開けたような裂け目が出現したのだ。

 そしてその中から現れたのは……全身を鈍い銀色で包まれた、西洋の鎧みたいなヤツ。

 そいつはゆっくりと裂け目から身を乗り出すと、驚愕したままの私をよそに、全身を私の目の前に降り立つ。

 ……大きさは多分、ゆうに私の五倍以上はあるだろう。

 その見た目に思わず気圧され、固まったまま軽く後ずさりしてしまう。

 だけど……全身を裂け目から出し終わり、徐々に裂け目が消えていく様を見せつけられると……私の思考回路は、再び現実へと引き戻された。

 ……ダメっ、気圧されてる場合じゃないっ!!

 私だけなら何とかなる、けどっ……こんなの相手にしてたらっ、周りの人はっ、簡単に殺されるのが目に見えてる……っ!!

 

「っ、みんなっ、逃げてっ、早く!!」

 

 私が叫んだ咄嗟の呼び掛けに何かを察してくれたんだろう。

 さっきまで私を囲んでいた人達は、蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げ出してくれた。

 こういう所は聞き分けが良くて、助かるっちゃ助かるんだけど……後は普段、もう少し離れててくれたら言うことないんだよなぁ……

 

「……さて、どうやって倒せばいいのかな……?」

 

 ……それはそうと、今は目の前の敵に集中。

 なんせ、どうせコイツもハウンズの何か。

 いつも通り、何をしてくるか分からない相手だ。

 どう動かれても良いように刀を正面に構え、ゆっくりと相手の出方を伺う。

 

 ジリジリとした静かな攻防の中……先に動いたのは、鎧の方だった。

 

「っ……!?」

 

 鎧が開いた左手が、ガッシリと私に向けてかざされる。

 その掌のど真ん中に見えたのは……ぽっかりと空いている、大きめの穴。

 まさかっ、これっ、やば……っ!?

 

「っ、ぅわっ!?」

 

 直感で大きく横に飛んだ直後……私の顔面があった場所を、高速で白い塊が過ぎ去る。

 ポニーテールの先が軽く掠った程度だけど、特に私にダメージは無い。

 

「っ、ぶないわねぇっ!!」

 

 ……だけどこれで、アイツに飛び道具があるのは把握した。

 さぁ今度はこっちの番、そう思って刀を構え直した……その直後だった。

 

 ドゴォォォッ!!

 

「な、にっ!?」

 

 突如聞こえた爆発音に、思わず着弾点らしき場所に振り向く……と。

 

「……っ……は……?」

 

 ……信じ難い光景を見た時、人はロクに言葉を発せないんだなって実感する。

 見慣れた場所だったその場所は……コンクリートが大きく抉れた、何も無いクレーターと化していたのだ。

 建物が跡形もなくなってる、人が巻き込まれたのか、それすらも分からない。

 目の前にあるのは……まるで終末戦争でも起きたような、何も無くなったただのクレーター。

 ……少しだけ呆然、遅れてようやく、頭が現実を理解し始める。

 

「……あぁ、そういうこと」

 

 さっきの白い塊、あれは爆弾とかミサイルとか、そんなところなんだ。

 そして飛び道具とその威力を一度見せてくるって事は、つまり……これ以上街に被害を出したくなけりゃ、これを避けるなよって事だろう。

 

「……っ、相変わらずっ、悪趣味ねぇアンタらはっ!!」

 

 でも、そんなの関係ない。

 要は、さっさとぶっ倒しちゃえば良いんでしょうよっ!!

 

「っ、はぁぁぁっ!!」

 

 刀を下段の脇に構えたまま、私は地面を蹴った。

 スラスターも全開、トップスピードで一直線に突っ込む。

 そんな私に対し、再びかざされるのは鎧の左手。

 直後、掌から吐き出された白い塊は、予想通り私に向かって一直線に飛来してくる。

 斬ったら爆発するかもしれないし……何よりあんな爆発、間近で受けたら絶対タダじゃ済まない……ならっ!!

 一か八か、刀から左手を離し、裏拳のように振り上げる。

 そのまま……

 

「っ、らぁぁぁっ!!」

 

 左の盾を下から叩きつけてっ、上空目掛けて軌道を逸らすっ!!

 直後、硬い衝撃が手首に伝わると同時に、白い塊は遥か上空へと打ち上げられる。

 よしっ、上手くいった!!

 心の中で小さくガッツポーズをする私の真上で、そのまま白い塊は大爆発。

 地上にいる私にも、衝撃波がビリビリと伝わってくる。

 だけどっ、私の加速はまだっ、終わってないっ!!

 

「っ、せっ、やぁぁぁっ!!」

 

 左腕を上げたまま、刀を持った身体の右側を少しだけ引いてタイミングを調整。

 鎧も迎撃の為に右腕を振りかざして、私を強引にでも払おうとしてくるのが見える。

 けどそんな速度じゃっ、遅すぎるでしょっ!!

 

「そこぉっ!!」

 

 一切速度を緩めないまま空中へと飛び上がり、斜め上に上昇しながら鎧の左半身に肉薄。

 その勢いのまま刀を思いっきり振り上げ、肩の付け根を一気に叩き斬る。

 金属っぽい見た目とは裏腹に、手に感じるのは既に斬り慣れてしまった、ブニッとした柔らかい感触。

 ……やっぱりコイツら、何にでも触手使ってるんだ……ほんっと気持ち悪い連中で……!!

 ……だからこそっ、さっさと倒してっ、とっとと終わらせるっ!!

 

「ふっ!」

 

 鎧を斬り抜けて背後を取ったまま、振り上げた刀を空中で振り下ろし、反動で急速半回転。

 スラスターの加速力を殺さないまま、私は再びの突撃を仕掛ける。

 だけどもまだ焦らない、本体の前に狙うは、残っている右腕。

 あれを切り落とせば攻撃力はかなり削げてっ、余裕もできるっ、はずっ!!

 

「だっ、あぁぁぁっ!!」

 

 高速で動く私へと、鎧は残った右の掌を再び構えてくる。

 

「それはっ、効かないってばっ!!」

 

 予想通り鎧が放ってきた白い塊を、さっきと同じように左腕の盾で薙ぎ払うべく、塊目掛けて裏拳を放つ。

 

 べしゃっ……!

 

「なっ……!?」

 

 けど、腕に伝わってきたのは……さっきと違う、液体を叩いたような柔らかい感覚。

 

「ぅぶっ!?」

 

 直後、私が振り払いきれなかった液体が、勢いそのままに私の顔や身体にぶちまけられる。

 

「こっ、のっ……」

 

 こんなのただのこけおどし、気にせず一気に攻めれば良い。

 そう思い、刀を振り払ったその瞬間……

 

「……ぁ……な、に……こ、れ……っ!?」

 

 私の頭の先から足先までを駆け抜ける違和感。

 ヤバいと思う暇もなく、その直後……

 

「っ、ぁっ、ひっ、〜〜〜〜〜〜〜〜ぁっ!?」

 

 ガクガクッ!!

 

 私の全身が……突然、甘い快楽で包まれたのだ。

 今まで何ともなかったはずの風が、衣装に触れている胸が、アソコが、堪らなく気持ちいい。

 まるで身体全部が、無理矢理発情させられた乳首みたいに敏感になって……こんなのっ……なんでっ、急っ、にぃっ……!?

 

「ぁっ、くっ、ぅっ、〜〜〜〜〜〜っ!?」

 

 ダメっ……これっ……我慢っ、できっ、ないっ……!

 空中でバランスを崩し、私はあっという間に鎧の真正面へと墜落してしまう。

 

「ぁがっ、あっ、くっ、ふっ、ぅぅぅぅっ!?」

 

 墜落し、地面に身体が叩きつけられ、勢いそのままに激しく身体を引きずられる。

 だけどそれすらも私の身体は快楽に変換してしまい……

 

 ドゴォッ!!

 

「がはっ!? ぁっ、ぐっ、ぅっ!? ぅあっ、はっ、ぁ、〜〜〜〜っ!?」

 

 瓦礫に叩きつけられてようやく止まった私の身体、そのアソコの真下には……あっという間に、レオタードの隙間から溢れ出した、愛液による水溜まりが形成されてしまう。

 

「ふぐっ、ぅっ、ぐっ、うっ……!?」

 

 呼吸するだけで、内臓が痺れて内側からイかされそうと錯覚するほど……だけど、アルクにされた快楽電流に比べたらっ……まだっ、立てない程じゃっ、ないっ……!

 自分を励まし、脚に力を込めようとした……その時だった。

 

「ぇっ……や、ば……っ……!?」

 

 私の視界に映ったのは、真上から押し潰さんと迫る、鎧の広げられた右の掌。

 慌てて両腰のスラスターに火を入れて脱出を試みる、けど……脚を使ってないこの状態じゃ、満足のいく加速なんて得られるはずもなく……

 

 グシャッ……!!

 

「ぅぐっ! ぁっ、がぁっ!?」

 

 為す術なく私の身体は、鎧の掌によって押し潰されてしまう。

 

「ぐっ、う゛ぅっ……こっ、のっ……」

 

 幸か不幸か、潰された衝撃で叩きつけられた後頭部の痛みが、何とか私の正気を保たせてくれる。

 でも、本当の苦しみは……ここからだった。

 

 ……ベチョッ……!!

 

「っ、っっっっ!? っ、っぁひっ、いぃっ!?」

 

 突然、私を押し潰している鎧の掌から……あまりにも知り過ぎた、もう一時も感じたくない感覚が走る。

 まさかこれっ、鎧の掌が……触手のっ、イボイボにっ、なって……!?

 

「やっ、くっ、ぅうっ……!? ゃっ、離せっ、はなっ、んぅぅぅっ!?」

 

 必死にもがいて脱出しようとしても、顔も、身体も、脚も、全部を包み込む触手が私を捕らえて離さない。

 こんなのっ……絶対ヤバいっ、ヤバいってこれっ!?

 こんなっ、ただでさえ敏感にされちゃってる状態でっ、びっちりっ、絡みつかれっ、たらっ……!?

 

 ……ズリュッ……!!

 

「ひっ、あ゛ぁぁぁあぁぁぁっ!?」

 

 私の身体を撫でるように触手を擦りつけられ……思わず私は、情けなく嬌声を奏でてしまう。

 

 ズリュッ……ズリュッ……!

 

「あ゛ぁぁぁっ!? はなっ、れっ、んぎゅぅぅぅっ!? ぅあ゛っ、はっ、あ゛ぁぁぁっ!?」

 

 顔が、首が。

 グローブに包まれた腕が、ニーソを履いているはずの脚が。

 ピッチリとした衣装に守られたお腹が、乳首が、アソコが。

 身体のありとあらゆる部位が、その全てを、卑猥な音と共に撫でられる。

 舌で強めに愛撫されているみたいに、柔らかくも弾力のある触手がゆっくり上下に往復して、私に強制的な快楽を叩き込んでくる。

 

 ズリュッ……ズリュッ……!!

 

「んひっ、いっ、いぃぃぃっ!? ゃっ、はなっ、んぅぅぅっ!? ぅあっ、はっ、あぁぁぁっ!?」

 

 気分はまるで、衣装が全部触手製に挿げ替えられ、犯されているみたい。

 普段ならこの程度、酷くてもくすぐったい程度の感覚だろう。

 だけど、今は……身体が敏感になってるっ、今は……っ!?

 

 ズリュッ……ズリュッ……!!

 

「ぁっ、はっ、うぅぅぅっ!? ぅあっ、はぁぁぁっ!? ゃっ、あぁぁぁっ!? ぁあっ、あぁぁぁっ!?」

 

 こんなっ、全身ズリズリっ、なんてっ……今っ、こんなのっ、無理にっ、決まって……っ!?

 

 ズリュッ……ズリュッ……!

 

「ひぃぃぃぃぃぃっ!? ぃぎっ、い゛っ、ぎぃぃぃぃぃぃっ!?!?」

 

 腰も脚も、勝手にガクガクと痙攣してしまう……のに、それすらも無理矢理抑えつけられてしまう。

 我慢しなきゃ、しなきゃと分かっている、のに……

 

「だめっ、もっ、ひうぅぅぅっ!? ぅあっ、やっ、あぁぁぁっ!?」

 

 襲いかかる触手の重圧と、喘ぎ叫ぶしか許さない完全な被支配。

 その中で淡々と流し込まれる、狂いそうなほどの快楽を前に……私が打ち勝つ事なんて、できるはずもなかった。

 

「だめっ、だめぇぇぇっ!? もっ、イっ、クぅぅぅっ!? ぅ、あっ、ふぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ビクビクッ!! ぷしゃぁぁぁっ!!

 

 触手目掛けて潮を噴き散らしながら、呆気なく絶頂へと達してしまう私。

 触手と地面に挟まれながら、脚と腰がガクガクと震えてしまう。

 

「ふぎっ、ぃっ、ぎっ、ぃ……っ、あっ、がっ、ぁっ……!」

 

 それでも一つだけ良かったのは……一度絶頂へと達したからか、身体の感度が少しだけ元通りに近づいていること。

 今ならこの触手の掌を無理矢理引き剥がして、まだ何とか戦えるかもしれない。

 僅かな希望を胸に、押し潰されて手放せなかった右手の刀を再度握りしめる。

 ……その瞬間だった。

 

「ぃっ、ひぃぃぃっ!? ひぁっ、はっ、あぁぁぁっ!?」

 

 突然、急激に力が抜けていく脱力感と……その代わりとばかりに流し込まれる強烈な快楽が、私の身体に流れ込んできたのだ。

 

「ぁがっ、はぁっ、あっ、がっ、あぁぁぁっ!?」

 

 掌の触手は一切動いていない。

 なのにこの、身体の中からごっそりと大事なモノを吸い取られて……その欠けた場所へと、無理矢理快楽を捩じ込まれているような感覚。

 これっ、まさかっ、吸われてるのっ……私のっ、オルレアハートの力っ、が……っ……!?

 

「なっ、んでっ、こっ、れっ、んぅぅぅっ!? んぁっ、ひっ、あぁぁぁっ!?」

 

 まるで、快楽を魂に刻みつけられているみたい。

 どれだけ抗おうとしても、どれだけ我慢しようとも……絶対に抗えない、女の子の力を根こそぎ搾り取るような快楽。

 

「ひぃぃぃっ!? すわっ、なっ、ぁぁぁっ!? ぁぎっ、ひっ、あぁぁぁっ!?」

 

 ぷしゅっ、ぷしゅっ……!!

 

 そんなのが続けば当然、私の身体は常に甘イキを繰り返してしまい……短いスパンで何度も何度も潮を噴き出してしまう。

 

「ぅあっ、はぁっ、ぁっ、うぅぅぅっ!? ぅっ、ひっ、ぅぅぅっ!?」

 

 前に味わった、ただキツいだけの触手陵辱とは違う。

 女の子の気持ちいい神経だけを遠隔で刺激して、指一本触らずに絶頂へと導かれてしまうこの陵辱。

 

「ぁっ、はっ、あぁぁぁっ!? ぁっ、やっ、とめっ、んひっ、ぃぃぃっ!? ぃあっ、あっ、ぅぅぅっ!?」

 

 ぷしゅっ、ぷしゅっ……!!

 

 キツい方の触手陵辱なら、まだ気の持ちようはあって……少なくとも心まで堕ちなければ、何とかなる希望はあった。

 

「ぅぅぅっ!? ぅぐっ、もっ、うぅぅぅっ!? やだっ、これっ、ゃっ、あぁぁぁっ!?」

 

 けど、これは……勝手に絶頂させられてっ、力を吸われるこれは……どうしたらっ、何とかなるのよっ……!

 

「あぁぁぁっ!? ぁあっ、はっ、あぁぁぁっ!? このっ、ままっ、あぁぁぁっ!? ゃっ、やめっ、もっ、ぉぉぉっ!?」

 

 ほんとっ、これっ、ヤバいっ……直感で分かる……このままこれを続けられたらっ、変身っ、保て、ない……っ!?

 分かってる、我慢しなくちゃっ、このままじゃ負けちゃう。

 分かってる、分かってるっ、のにっ……!!

 

「こんなっ、のっ、でっ、ぁっ、はぁぁぁっ!? ぁひっ、ぃっ、いぃぃぃっ!? ぃっ、ぁっ、あぁぁぁっ!?」

 

 ダメっ……耐えられないっ……気持ちよっ、すぎっ、るっ……!?

 吸われながらっ、なんてっ……ダメなのにっ……ダメっ、なのにぃっ……!!

 

「ぁっ、ぃっ、イクっ、もっ、やっ、あぁぁぁっ!? やだっ、イクっ、イクぅぅぅっ!? ぅあっ、ぁっ、ふぁぁぁっ!?」

 

 ガクガクッ!! ぷしゃぁぁぁっ!!

 

 ダメだと分かっているはず、なのに……私は為す術なく、特別深い絶頂へと達してしまった。

 

「っ、うぅぅぅっ!? ぅあっ、やっ、またっ、吸われっ、んきゅっ、うぅぅぅっ!?」

 

 ガクガクっ!!

 

 同時に、身体の力をごっそりと持っていかれる感覚が来て……情けない声をあげながら、再びの絶頂を晒してしまう。

 ……このまま吸われ続けたら、あっという間に変身が解けてしまう。

 そうなったら生身でこの快楽に立ち向かわないといけなくなって……そんな状態になったら最後、イキ死んでしまうのは目に見えている。

 なんとかしないと、もう奏に会う事すらままならなくなってしまう。

 快楽に染った思考回路の隙間で、明確な危機感を覚えた……その時だった。

 

 ズ……リュッ……

 

「ふっ……ぎっ……っ、ぃっ、くっ、ぁっ……!?」

 

 何を思ったのか……鎧は私から、触手びっしりの掌を引き剥がしたのだ。

 ダラダラと触手の粘液を垂らしながら腕を引き上げる鎧を相手に、私は図らずも安堵を覚えてしまう。

 けど、なんでここで止めたのだろう。

 もしこのまま私の力を吸い続けていたら……考えたくもないが、私は負けていただろう。

 一体何のために、こんな弄ぶようなことを……?

 そんな疑問を持ったのも束の間……その答えは、すぐに目の前で示された。

 

「ぅ、わっ……」

 

 ズチュズチュと気持ち悪い音を立てながら……私か斬り落とした左腕が、胴体から生えてきたのだ。

 同時に触手がビッシリ詰まっていた掌は、まるで何事もなかったかのように元の鎧みたいな普通の掌へと形を戻す。

 ……力を吸ってからすぐに直後に私を解放した。

 そして動けない私を前にしたまま、斬り落とされた腕を、見せつけるように再生させた。

 ……そんなの見せられたら、自ずと答えは示されているようなものだ。

 

「ぐっ……ほんっ、と、にっ……悪趣味、な……ヤツっ……」

 

 ……私を痛めつけ、喘がせ、イかせて、弄ぶ。それだけの為の行為。

 全く……アイツらの考えそうな事だ。

 こんなヤツらに……私の奏を、奪われてたまるものか。

 

「ぅぐっ、ふっ、ぐっ……こ、後悔っ、するんじゃっ、ないっ、わよっ……!」

 

 幸いさっき滅茶苦茶にイかされたお陰で、身体の感度は幾分か静まってきた。

 あの媚薬みたいなヤツの効果がどれほどのモノかは分からないけど……少なくとも動ける。

 今はそれで十分。

 吸われた力も、勉強代として諦めてやる。

 ……今更この程度の陵辱で、私の心が折れると思ったら大間違いだ。

 怒りに燃えながら両手で身体を支え、私は再び立ち上がり、刀を正面に構える。

 一時ダメージを与えても、少しでも隙を見せたらまたさっきの二の舞。

 媚薬をぶっかけられ、動けなくなったところを押し潰され、力を吸われながら散々イかされ……その挙句、回復されて振り出しに戻る。

 つまり、今の最善手は……さっさと突っ込んで、速攻で片付ける事っ!!

 息を深く吐き、集中力を研ぎ澄まして……私は再び、鎧への突撃を仕掛ける準備を整える。

 

「ふっ、ぅっ……っ、はぁぁぁっ!!」

 

 そして一気に地面を蹴って初速をつけてからスラスター全開、一気にトップスピードに達したまま、鎧の真正面へと突撃を仕掛けた。

 やる事はいつも通り、私の速度で撹乱しつつ、隙を見つけて斬撃を浴びせるだけ。

 狙うポイントはっ、さっきと同じっ!!

 だけど当然というか、鎧だってまだ抵抗する。

 

「っ、ちっ!!」

 

 地面スレスレから上昇しつつ迫る私へと再びかざされる、ヤツの左の掌。

 ……多分同じ銃口から、あの爆弾も媚薬も撃てるんだろう。

 本当は撃たれる前に紅刃を銃口にぶち込んで強引に止めてやればいい、けど、それをするには距離と時間が足りない。

 次撃たれるのがもし爆弾なら盾で打ち返さないと、更なる被害が街に出てしまう。

 だけどもし撃たれたのが媚薬なら、打ち返せないから避けないと、またあの絶頂地獄へと叩き込まれてしまうだろう。

 

「っ、くっ、ぅっ……!」

 

 なんて思考を巡らせるのも束の間……鎧は白い塊を、私目掛けて放ってきた。

 ……っ、長考している暇はないっ!

 直感で感じろっ……こいつ、はっ……!

 

「っ、ふっ!!」

 

 私は自身に迫る白い塊を、回り込むように身体の軌道を逸らして空中で回避する。

 後方からは、何かがベチャッと叩きつけられる音。

 爆発は……しない!

 

「よしっ、今っ!!」

 

 僅かに落ちた速度を立て直し、さっきの再現みたいに鎧の正面へと突っ込む。

 そして。

 

「だぁぁぁっ!!」

 

 加速力を存分に乗せた一撃を、鎧の左腕の根元へと叩き込んだ。

 手に伝わる柔らかい感触と同時に、私の左右で鎧の本体と左腕が斬り離される。

 だけどまだっ、終わりじゃないっ!

 

「っ、らぁっ!」

 

 さっきよりも鎧から距離を取った高度まで上昇してから、刀を振った反動で身体の向きを反転させる。

 そんな私に突き出されるのは、まだ残っている鎧の右の掌。

 けどっ、それはもう見たっ!!

 

「っ、すーっ……はぁっ……!」

 

 深い深呼吸の後……これを初めて使った時のイメージを、鮮明に頭に思い浮かべる。

 大丈夫、今回も使えるはず。

 そう自分に言い聞かせ、私は……右手に握った刀からクリアグリーンの刃を消滅させ、左側のスラスターの、柄を収納する場所へと先端だけ挿入する。

 そして……

 

「っ、行けっ、紅刃っ!!」

 

 勢いよく柄を引き抜くと同時。

 その軌跡上に現れるのは、矢尻のように尖った幾つかの真っ赤な弾。

 

「はっ、あぁぁぁっ!!」

 

 直後、柄に刃を発生させ、それを撃ち出すように刀を再度逆方向へと振り抜く。

 するとその矢尻のような弾は一斉に、鎧の持っている掌の銃口、右腕の付け根、脚、胴体……ヤツの全身目掛けて飛翔を開始する。

 目にも止まらない速度で解き放たれた私の弾はそのまま何にも止められる事なく、無事に全弾命中。

 特に掌の銃口に撃ち込まれた弾は、おそらく発射直前の爆弾諸共腕を貫いたのだろう、その軌道上で大爆発を引き起こしていた。

 

「っ、よしっ、このま、ま……っ!?」

 

 動きの止まった千載一遇のチャンス……なのに、チラッと見えたその光景に、思わず私は脚を止めてしまっていた。

 それは……胴体へと直撃し、表面にパックリと開いた裂け目から、微かに見えた中身。

 鈍い銀色をした鎧の色とはあまりにもかけ離れた……明るい緑色の髪の毛と、赤と白の布地。

 間違いない、いや、見間違えるもんか。

 あれは……

 

「……っ、かな、で……っ!?」

 

 間違いない……アイリスリーベに変身した時のっ、奏っ、だ……!!

 だけど……ずっと探していた相手が、なんであんな所にいるのか。

 奏があんなのに自分から乗るはずが、使うはずがない。

 だったら無理矢理乗せられて、いや、組み込まれたと考えるのが自然、か。

 でも誰に、どうやって、何をされて……

 

「っ、くそっ!!」

 

 ……いやっ、考えるのは後っ!!

 私は再び前傾姿勢を取り、満身創痍な鎧に向かって突撃していく。

 

「っ、はぁぁぁっ!!」

 

 正面に構えた刀を大きく振りかぶり、右腕の爆発を受けてもギリギリ残っていた部分を、すれ違い様に一気に斬り落とす。

 

「ぐっ、ぅっ、らぁぁぁっ!!」

 

 斬り抜けると同時に、片方のスラスターだけ向きを変えての急ターン。

 身体にかかる負荷も気にせず、そのまま再び鎧へと、今度は真横からの突撃。

 

「せっ、やぁぁぁっ!!」

 

 軸を合わせ、逆袈裟の向きで右脚と左脚を一気に斬り落とす。

 

「っ、つっ……!! はぁっ、はぁっ!!」

 

 あっという間にダルマのようにされた鎧は、斬り抜けた私の背後でズシンッ! と重たい音を立てて地面へと落下した。

 その音と同時に私は振り返り、不意打ちに備えて正面に刀を構える。

 

「……っ、ふーっ……なに、も……ない……?」

 

 ……が、触手が伸びてくる気配も、これ以上再生する気配も感じられない。

 おそらくだけど、もう無力化できたと思っていいだろう。

 っ、ならっ……!

 

「っ、奏っ!!」

 

 私は刀の柄をスラスターに収納し、一目散に鎧の残骸へと駆け寄った。

 

「くっ、こっ、のぉっ!!」

 

 大きな鎧の胴体へとよじ登り、紅刃で開けた穴に盾から発生させた刃を突き刺し、強引に穴を拡げる。

 金属の鎧に見えても所詮は触手。

 鎧の表面は簡単に斬り裂けて、人が入れるくらいに大きくなったその穴からは……

 

「っ……やっぱ、り……っ!」

 

 ……手脚を触手に呑み込まれたまま意識を失っている、奏の姿があった。

 

「っ、奏っ……奏っ……!!」

 

 私は触手が詰まった穴の中に腕を突っ込み、奏の身体に手を回す。

 恐る恐る引っ張ると……鎧が機能を停止したからか、奏の身体は簡単に引き抜けた。

 ……パッと見だけど、少し不安だった紅刃での傷も、拷問とかをされたような傷もない。

 

「っ……よかった……無事、で……っ!!」

 

 私はそのまま、奏の身体をギュッと力強く抱きしめた。

 意識を失っているけど、体温は感じる。

 ずっと私の傍にあると思ってて、刹那に奪われた私の奏が……ここにいるんだ。

 

「ごめんっ、ごめんねっ……私のっ、せいで……っ!!」

 

 ……そもそも私がもっと強ければ、奏をこんな目に合わせる必要は無かった。

 奏が目を覚ましたら、今度はちゃんと謝ろう。

 謝って、それで……そうだ、今度は私も一緒にケーキ食べに行こう。

 今回くらいは……奢ってあげようかな。

 ……そんな考えを巡らせていると。

 

「…………っ…………み、や……び……?」

 

 聞こえてきたのは……まるで寝起きのような、いつも通りの聞きなれた奏の声。

 

「っ、奏っ! そうだよっ、私だよっ!! 目、覚めたんだっ……よかった……よかった、よぉっ……!!」

 

 そんなに日数は経ってないはずなのに、あまりにも懐かしすぎるその声。

 思わず私は、更に強く奏を抱きしめた。

 

「……ははっ、ごめん、ね」

「ほんっ、とっ……ごめんっ、じゃないっ、わよっ……!! 会いたかった……ずっと会いたかったんだからぁっ……!!」

 

 申し訳なさそうな声と共に、奏も私の身体に手を回して、ギュッと抱きしめてくれる。

 よかった、嫌われてなかった……叶うならば、本当はずっとこうしていたい、そう願うくらいに……本当に、本当に会えて嬉しかった。

 

「……うん……私も、会いたかった……でも……ありがと、雅……」

「もうっ、何がありがとうよっ……バカっ……バカっ……!!」

「うん……だから、ね……」

 

 奏が突然低いトーンで呟いた……その時だった。

 

 ドスッ……!!

 

「ぁ、がっ……ぁ……!?」

 

 ……突然私の背中に、何かを突き刺されたような鋭い痛みが走る。

 

「ぁっ、あ゛っ、ぐっ、う゛ぅっ……!?」

 

 マズった……背中を誰かに刺された……

 けどっ、周りには誰もいないはず……一体っ、誰がっ……!?

 痛みに耐えるように奏の身体を更に強く抱きしめる……と、奏も嬉しそうに私を抱き返してくれる。

 歯を食いしばりながら奏の顔を見ると……

 

「……ほんっと、いい顔してくれるよね、雅ってさ」

 

 ……奏の顔は、笑っていた。

 まさかと思い、咄嗟に奏の身体を突き放す。

 

「……っ……な、なん……で……」

 

 その瞬間、私の目には信じられないモノが映った。

 ……彼女の右手に握られていたのは……片手サイズの、禍々しい色をした短剣だったのだ。

 

「ぅぐっ……ぁ゛っ、ぐっ……っ……か、かな、で……なん、で……なんで……こ、こんなっ、こと……!?」

「……なんで? まだ分からないの雅?」

 

 状況が分からず混乱している私を、数歩離れた位置からクスクスと笑いながら見ている奏。

 

「それは、ね……」

 

 そして彼女がゆっくりと呟くと……奏の身体が黒い光に包まれる。

 その光は一瞬で弾け飛んで……直後、奏の姿は、先程の煌びやかな衣装とは似ても似つかない……黒くピッチリとした衣装へと変異していた。

 

「雅にも教えてあげるため、だよ。ニヴル様に教えてもらった……本当の愛の伝え方を、ね」

 

 そう告げた奏の顔は……今まで見たことのない程の、ドス黒い色に包まれていた……

 

--To be Continued--




倒した鎧の中から現れたのは、攫われたはずの奏だった。
だが目を覚ましても明らかにおかしい彼女の様子に、雅は戸惑いを隠せない。
それにいくら一度経験があるといっても、親友を相手に戦うなんてそう何度も体験したい出来事ではない。
果たしてオルレアハートこと春永雅は、無事に奏を無力化し、彼女を助け出す事ができるのか……
次話も引き続き、楽しんで頂ければ幸いです。
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