※この作品はR-18です。

神姫清廉オルレアハート!-乱行恥虐のスペクトラム-   作:ホリス_if

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オルレアハート、もう一つの第18話。
そして最終話、ハッピーエンドルートです。

ニヴルの攻撃、陵辱を前に……それでも折れず、立ち上がろうと奮闘するオルレアハートこと春永雅と、アイリスリーベこと江崎奏。
二人が最後まで諦めず、お互いを守ろうと更に決意を高めた時……二人の事を、暖かい光が包み込むのだった。

今話もどうぞ、お楽しみください。


最終話:B-HAPPYEND 新たな希望、共鳴の力!

 

 ……私と奏。

 オルレアハートとアイリスリーベに変身した私達は、ニヴルと戦い……敗北した。

 敗北した私達に待っていたのは、拷問とも呼べる快楽の暴力。

 何度もイかされ、潮を撒き散らし、情けないイキ顔を晒し続け……全身をガクガクと痙攣させてしまっていた。

 そして、今……

 

「さぁ、覚悟はよろしくて?」

 

 ポニーテールを掴まれ、上半身を持ち上げられた私の目の前で……ニヴルの持つレイピアの光がゆっくりと、顔の前まで持ち上げられていた。

 私……わた、し……は…………

 

「……っ…………」

 

 その刃を前に……グッと歯を食いしばっていた。

 ……もう……嫌だ……

 怖い……怖いし……正直、すぐにでも逃げ出したい……

 だけど、さ……

 こんなところで……こんなヤツらに好き勝手されて、もう二度と奏と会えなくなるなんて……

 ……そっちの方が……何倍も、何十倍も……っ、嫌だっ!!

 

「……ふ……ふふっ……は、は……っ……」

 

 ……あぁ、なんだ……こんな単純だったんだ。

 ……気がつくと食いしばっていた口は緩み、自然と乾いた笑い声が漏れ出ていた。

 

「……あら、壊れてしまいました?」

 

 予想外の反応だったからか、怪訝な顔で私の顔を覗き込んでくる。

 ……けど、それは見当違い。

 むしろ今は……すっごく意識がハッキリしてる。

 ……そうだ。

 私が戦いを始めたのも、これまでずっと戦い続けられたのも……全部奏のため、奏のお陰なんだ。

 少しでも長く奏を守り続けられるのなら……っ……今頑張らなくていつ頑張んのよっ、私はっ!!

 

「まぁ良いですわ。最期に綺麗な顔を残して頂ければ、それで……っ!」

 

 ニヴルのレイピアが、私の首に目掛けて突き出される。

 ……さっきまでなら勝つ事を諦めて、惨めったらしく命乞いすらしてたかもしれない。

 でも……それはもう、今の選択肢には一切無い。

 だから私は……っ、最後まで足掻いてやるっ!!

 

「……っ!!」

 

 ……ポニーテールを掴まれ、上半身が仰け反っていたのが幸いした。

 右手のシールドからクリアグリーンの短刀を生成。

 そのままシールドをぐるっと回転させ……

 

「っ、ぅっ……!!」

 

 ……私は自らのポニーテールを、中程でバッサリと切り落とした。

 

「っ、あぐっ……!」

 

 切り落とされたベージュの髪がハラハラと舞う中、私の上半身はそのまま地面へと崩れ落ちる。

 シールドを回転させ、ポニーテールを切った反動で身体が傾き……そのおかげで、ニヴルの刃は私のおでこの上を掠めるように通過していった。

 

「……あら、醜く足掻くのも好きではありますが……タイミングが違いましてよ?」

 

 地面に顔面を強打した私の頭上で、苛立ちを含んだニヴルの声が聞こえる。

 その手から鳴るのは、レイピアを握り直す硬い音。

 

「っ、ぐっ……ぅっ……!!」

 

 ……っ、ふざっ……けるなっ……!!

 痛みと悔しさで歪む視界の中、力の入らない腕で身体を起こそうとする。

 けど、相変わらず今の私には……自分の上半身を支える力すら、残っていない。

 まだっ……まだっ、私っ、はっ……こんなっ……とこっ、でっ……!!

 地面に這いつくばりながら、動かない身体にムチを打つ……その瞬間だった。

 

 ダダダダダッ!!

 

「……あら、まだ……存外しぶといこと……」

 

 突然、乾いた銃声が連続で鳴り響いた。

 咄嗟に反応したニヴルは氷の盾を展開し、その銃撃から身を守る。

 けど、この状況で銃声を鳴らせる人なんて……一人しか……!?

 倒れたまま、チラッと視線を横にやる。

 そこでは……

 

「……っ、はっ、ぁ゛っ……は……ぁ゛っ……!!」

 

 倒れたままの奏が、腰のマウントラッチから伸ばした銃口から、ニヴルに銃撃を浴びせていたのだ。

 全身をガクガク震わせ、息も絶え絶え。

 なのに奏は地面にしがみつくように、必死に反動に耐えながら連射を浴びせ続ける。

 

「……雅、は……やら、せ、ないっ……!」

 

 銃声に掻き消されてもおかしくないほど、弱々しい声。

 なのにその声は……掠れながらも私の耳に、はっきりと届いていた。

 その姿を前に、私の口は……己の意志を確かめるように、自然と開かれていた。

 そうだ、そうだよ……私は……

 

「奏をっ……」

「雅はっ……」

「「私がっ……守るっ!!」」

 

 自分自身を奮い立たせる言葉が、お互いの言葉が重なる、その瞬間……心が通じあった、繋がった……そんな、気がした。

 その刹那……

 

「きゃっ……!?」

「なっ……なに……っ!?」

 

 私達の身体を、眩い光が包み込む。

 変身する時とはまた違う……熱を持ちながらも、力強さと優しさを同時に感じる、暖かい光。

 

 そして、その光が晴れると……

 

「……っ、あ、あれ……?」

「……身、体……動……く……?」

 

 ……背中から、ついさっき自分で斬ったはずだった、ポニーテールの感覚が伝わってくる。

 それだけじゃない。

 全然力が入らなかった腕にも脚にも、まるで時間が巻き戻ったみたいに力が入る。

 立ち上がりながらも戸惑いのあまり、敵の眼前である事も忘れて自分の身体に視線をやると……

 

「……ちょ、なに、これっ……雅っ、アンタまた何かしたってのっ!?」

「わ、私も知らないってば!!」

 

 私と奏の身体には、さっきまでで失っていた大半の装備が復活していた。

 それどころか……私の脹脛には、ニーソ越しに台形のスラスターがそれぞれ両サイドに一つずつ増えている。

 手首に着いていたシールドも、全体的に角張ったスラスターみたいに形を変えている。

 当然、奏の姿にも変化が起きていた。

 両手に持った銃の形が変わり、一つしか無かった銃口が四つに増えている。

 それに、四角いミサイルポッドみたいなのが、背中から肩越しに顔を出すように生えているのが見える。

 これ……さっきの光で装備が増えてるってこと?

 

「……へへっ、なんか強そうになったね。奏も、私も!」

「うん……これなら、私達……!」

 

 オマケに身体だって、ちゃんと動くようになっている。

 流石に疲れとかダメージが全部回復した感じは無い。

 体感的に回復したのは、良くて半分くらいだろうか?

 ……もう、何が何だかよく分からない……けどっ、これでまた戦えるようになった!

 今はこれだけで……十分過ぎる!

 

「……ふふっ、そろそろよろしいでしょうか?」

 

 そんな逆転の兆しに昂る最中……いつの間に私達から距離を取ったのか、数メートル先に立つニヴルが微笑みながら言葉を投げかけてきた。

 突然の出来事に気を配る余裕無くて気がつかなかったけど、敢えて待っていた理由は……ま、大体の理由は察しがつく。

 

「……なに、わざわざ待っててくれたの? 随分と余裕じゃない」

 

 奏の挑発に、ニヴルは優雅に肩をすくめて答える。

 

「あら、至極当然な……自分の知らない変身ヒロインの強化イベント。目の前で起きているというのに、これを自らぶち壊すバカはハウンズには居ませんでしてよ」

「あっそ、自己満足どうも助かるわ」

「えぇ、そう捉えて頂いて構いませんわ……では、改めまして……」

 

 ニヴルが再び、レイピアを静かに構えた。

 同時に私はスラスターから柄を抜き、刀を下段の脇に構える。

 そして……

 

「行くよっ、奏っ!!」

「オッケー、雅っ!!」

 

 地面を蹴り、全身のスラスターを全開。

 後ろを奏に任せ、全速力でニヴルに突撃を仕掛ける。

 

「くらっ、えぇっ!!」

 

 背中と両手の人差し指に軽い抵抗を感じた、次の瞬間。

 奏の叫びと同時に、私を追い越すように、背後から大量の弾丸が放たれる。

 広く散らばるようにばら撒かれた弾丸は、空中私を避けるようにでカクッと曲がり、二重三重にも弾道を変えてニヴルへと飛んでいく。

 

「あら、結局はいつもと同じ……」

 

 当然ニヴルも氷の盾を構え、私と奏の攻撃を同時に捌こうとする。

 けど……その弾は、今までと違っていて……

 

 バキッ!!

 

「なっ……!?」

 

 奏の弾が一斉に着弾した瞬間、ニヴルの盾は音を立てて砕け散ったのだ。

 初めてニヴルが浮かべた驚きの表情に、私は笑みを浮かべつつ……

 

「っ、らぁぁぁっ!!」

 

 上段に構えた刀を、ひと思いに振り下ろした。

 

 バチバチッ!!

 

「ふふっ、元気になりましたわね。それでこそっ、ですわっ!!」

 

 私が振り下ろした刀とニヴルが目の前に寝かせたレイピアがかち合い、バチバチと激しい火花が飛び散る。

 その最中。

 

「雅っ!!」

 

 奏の声と共に、再び両手の人差し指に軽い抵抗を感じた。

 声に合わせて私が後ろに飛び退く。

 同時に奏の弾丸は弾道を変えながら飛来し、左右から回り込むようにニヴルの両側面に命中。

 

「……はぁ。全く、面倒な攻撃力を手に入れたモノですわね」

 

 しかしニヴルの左手から展開された氷の盾に、銃撃は全て防がれる。

 だが盾の方も銃撃に耐えきれなかったのか、一拍おいて、粉々に崩れ落ちていた。

 

「っ、ふぅ……」

 

 一息ついて、今起こった事を確かめる。

 ……間違いない。

 これ、奏の感覚が私にも共有されているっぽい。

 流石に汗の感覚とかの細かい刺激は感じないし、心の声が聞こえる訳でもない。

 けど指の抵抗とか、撃った時の反動程度の感覚で、声を出さなくても撃つタイミングが分かるって事でしょ? 

 ……いいじゃんこれっ、使えるっ!!

 もし攻撃を受けた時に、痛みが二人に共有されるのかだけが問題だけど……ま、私が変にダメージを受けなきゃ良いだけの話、でしょ!!

 

「っ、よしっ!!」

 

 気を新たに、再び私は突撃を仕掛ける。

 スラスターが増えて手数と速度が上がった私の斬撃に、火力が上がった奏の銃撃。

 いくらアイツでも、即座にこれに対応しきるのは無理なはず。

 慣れられる前にっ、さっさと終わらせるっ!!

 

「せっ、りゃぁぁぁっ!!」

「ふっ、ふふっ! 良いですわっ、良いですわよっ!!」

 

 袈裟斬り、一文字、刺突。

 手首のスラスターをフルに吹かしながら、更に鋭くなった剣撃を浴びせ続ける。

 でもどの一撃も、あと一歩のところでレイピアに阻まれ、届かない。

 

「くっ……余裕っ、ぶってっ!!」

 

 思わず前のめりになって更に斬り込んだ、その時だった。

 

「足元がお留守、ですわよっ!」

 

 ガシッ!!

 

「うわっ!?」

 

 突然、口調に似合わぬ足払いを仕掛けられ、私の体勢が崩れる。

 ちっ、ヤバいっ、一旦姿勢を……!?

 唯一着地している左脚で地面を蹴り飛ばし、バックステップで距離を取ろうとする。

 ……その瞬間……脳裏に流れた、突然の映像。

 それは、私が後ろに飛び退いた直後……私のお腹が、後ろから貫かれる景色。

 

「……っ!?」

 

 咄嗟に全身のスラスターを全開。

 無理やり着地地点を〝見えた〟地点から更に後方へとズラす。

 直後、さっきまで私が着地しようとしていた場所には……

 

「……あら、運が良いですわね」

 

 先端が鋭く尖った、円錐状の巨大な氷柱が生成されていた。

 ……ってことは、あのまま着地していたら、今頃私のお腹には映像通りにデッカい穴が空いてたってことで……

 じゃ、さっき脳裏によぎったあの映像……まさかこれ、奏の未来予知……っ!?

 つまり感覚が共有されているのと同時に、能力まで共有されてるってこと……?

 原理も仕組みも、使った場合の代償だって一切分からない。

 ほんっとっ、なんで私に使えてるのかさっぱり。

 けど……今は使えるものっ、全部使ってやるっ!!

 

「っ、まだっ、まだぁぁぁっ!!」

 

 再度距離を詰めながら、今度は意図的に、未来予知を意識してみる。

 瞬間、脳裏にまた映像が流れ……一秒後、見た景色のままに目の前の光景が流れていく。

 

「こっ、こ……だぁ……っ!!」

「っ、あら……!」

 

 バチバチッ!!

 

 見えた刺突の位置に合わせて刀を寝かせ、刃の腹で受け止める。

 やっぱりこの能力、自分で使おうと思った時か、本当にヤバい時にしか発動しないみたいだ。

 いっつも流れてたら逆に邪魔だし、これならむしろ好都合!!

 

「でっ、りゃぁぁぁっ!!」

 

 力ずくでニヴルをレイピアごと押し返し、先に体勢を整える。

 そして速攻でスラスターを全開。

 再び自分からニヴルとの距離を詰めつつ、今度はこっちが刺突を繰り出す。

 

「相変わらず真っ直ぐ……それでこそっ、変身ヒロインですわ!」

 

 が、私の刺突はレイピアに弾かれ、腕ごと弾き飛ばされる。

 

「っ、減らず口をっ!!」

 

 瞬時に腕のスラスターを噴射。

 再度突き出されたレイピアに向けて、無理矢理腕を振り下ろす。

 

 バチバチッ!!

 

「ぐっ、くっ……ぅっ……!!」

「ほらほらっ、もっと元気に攻めてくださいまし!!」

 

 互いの刃が激突し、弾ける光越しに見えるニヴルの笑みが、酷く私を苛立たせてくる。

 っ、言われるまでもない。

 コイツにつけ込む余地があるとしたら、あの余裕綽々の上から目線。

 つまり、今までやった事のない攻撃で……アイツの笑みを崩してやればいいっ!!

 

「奏っ、行くよっ!!」

「えっ、えっ!? な、何するつもりよ!?」

「良いからっ、私ごと撃って!!」

「っ、分かったっ、信じるっ!!」

 

 私の言葉通りに、奏が私とニヴルに目掛け、弾丸を撃ち込んでくれる。

 

「っ、らぁっ!!」

 

 その射撃の合図とほぼ同時に、ニヴルのレイピアを刀で弾く。

 そして少し間合いに余裕ができた瞬間に、全身のスラスターを逆噴射。

 大きく後ろに引きながら、空いている左手で右側のスラスターから柄を掴む。

 

「ふっ!!」

 

 そのまま柄から刃を出しつつ、目の前で水平に一薙ぎしてやる。

 すると刃の軌跡上に生成される、無数の矢尻のような弾。

 間髪入れず、右手に持った刀を左側の脇に構え……

 

「一式っ、紅刃ぁっ!!」

 

 技名を叫びながら、目の前に浮かぶ軌跡をなぞるように斬り払った。

 瞬間、矢尻のような弾は、弾かれたように一斉に飛翔。

 奏の弾丸を貫通し、私とニヴルの間に大きな爆発の壁を作り出す。

 

「あら、今度は何を……」

 

 そんな爆煙の向こうからでも見えたのは、一際輝く青白い壁。

 あれはおそらく、ヤツの展開している盾……ならっ!!

 

「っ!!」

 

 私はスラスターを再度反転させ、目の前を覆い尽くす爆煙の中に突っ込んだ。

 そして速度が十分に乗った段階で地面を強く蹴り、一気に飛び上がる。

 勢いのままに煙を飛び出した私の身体は……ヤツの盾を飛び越え、ニヴルの頭上へと舞い踊る。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 そのまま右側の脹脛のスラスターから刃を発生させ、かかと落としの要領で叩きつける。

 しかしニヴルもその程度は予想していたのか、瞬時にこちらにレイピアを向け、迎撃の姿勢を取ってくる。

 けど……それも読み通り!

 今の私には、スラスターの推力と、重力による加速が乗っている。

 そして勢いに身を任せ、お互いの刃がかち合う、寸前にっ!!

 

「っ!!」

 

 脳内のイメージをっ、解き放つっ!!

 

「な……っ!?」

 

 ニヴルの声が聞こえた刹那、私の視界が、一瞬闇に包まれる。

 次の瞬間……

 

「……っ、こっちっ!!」

 

 私は、ニヴルの背後に翔んでいた。

 距離は既に、一歩で届く間合い。

 スラスター全開で速度の乗った今では、踏み込む必要も無い。

 振り上げていた脚を振り払って体勢を整えつつ……

 

「だっ、あぁぁぁっ!!」

 

 左の刀を外から振るい、斬り上げるように襲いかかった。

 

「っ、ちょこっ、まかとっ……!!」

 

 目の前では珍しく慌てた表情を浮かべたニヴルが私に対し、振り返りざまにレイピアを振り上げている。

 ……瞬間、脳内にまた映像が流れた。

 それは、私の刀がそのままニヴルを叩き斬り、同時に……アイツのレイピアが、私の胸を貫く映像。

 つまり、このままいけば勝てるってこと。

 ……ただし、相打ちで。

 

「っ……!!」

 

 ……今までなら殆ど勝利が確定しているこの未来を、喜んで受け入れていただろう。

 けど……今はもう、違う。

 私の隣には奏がいる。

 奏がいる限り、絶対、絶対にっ……奏が悲しむような選択肢はっ、絶対に取らないっ!!

 

「っ、らぁぁぁっ!!」

「捨て身っ、良い根性っ、ですわっ!!」

 

 振り上げた刀が、ニヴルのドレスに触れる。

 同時に、ヤツのレイピアが私の衣装の胸に刺さり、小さく穴が開いた。

 

「……っ、今っ!!」

 

 ……大丈夫、ギリギリまで引き付けてこそ……最後がっ、活きるっ!

 チクリと胸に刺さる痛みを堪えつつ……私は再びイメージを解き放つ。

 瞬間、私の姿は消え……同時に、私の視界が闇に呑み込まれる。

 その直後……私は再び、ニヴルの背後へと瞬間移動を終えていた。

 

「……っ、またっ、ですのっ!?」

 

 ニヴルが咄嗟に、私の方へと振り向く。

 ……本来狙っていたのは、ニヴルのすぐ真後ろへの移動。

 しかし流石に連続して使いすぎたのか狙いの位置はズレて、私はその少しだけ後方へと瞬間移動していた。

 ……っ、構わないっ、速度は乗ってるっ、このまま決めるっ!!

 

「ニヴルっ!!」

 

 二振りの刀を翼のように広げ、全速力で距離を詰める。

 

「っ、くっ、ぅっ……!?」

 

 そんな私を前にして、今まで私の剣撃を全てレイピアで受け止めてきたニヴルが、私に対して初めて盾を展開する。

 だけど……

 

「私もっ、忘れんじゃないわよっ!!」

 

 直後に聞こえた銃声と共に、弾道を変えながら迫る奏の弾丸が、展開直後の盾を撃ち抜き、消し飛ばす。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 すかさず自由になった空間に、私の身体を滑り込ませる。

 

「っ、こっ……のっ……調子にっ、乗るんじゃありませんわよっ!!」

「うるっ、さいっ!!」

 

 踏み込みざま、右上から振り下ろされるレイピアを、右の刀を垂直に振り上げ、弾き飛ばす。

 

「ぐっ……ぅっ……!!」

「これっ、でぇぇぇっ!!」

 

 そのまま、ガラ空きになったニヴルの胴体ど真ん中を……

 

「終わりっ、だぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 もう一振の刀で……貫いた。

 

 ザシュッ!!

 

「がっ、あ゛っ!?」

 

 ニヴルの悲鳴が聞こえる……っ、けどまだっ、レイピアから手は離れてないっ!!

 油断はしないっ、徹底的にっ!!

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 身体を捻り、右の刀もニヴルの胴体へと叩き込む。

 そして……

 

「っ、らぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 二振りの刀を同時に外へと、振り抜いた。

 

 ザシュッ!!

 

「あ゛っ、がっ……ふ、ふふっ……まさ、か……わたく、し……が……」

 

 斬り裂かれたニヴルの手からはレイピアが離れ……やがて、ヤツの身体も、ゆっくりと背中から地面に崩れ落ちた。

 

「ふふっ……ふ、ふふっ……えぇ、えぇ……素晴らしい……戦いっぷり、でした、わよ……オルレア、ハート……」

「はぁっ……はぁっ……なに、よ……まだ、話す余裕……ある、の……?」

 

 追うように私の身体も、膝からガクッと崩れ落ちる。

 ……正直、さっきまでの一連の攻撃で体力の殆どを使い切ったと言っても過言じゃない。

 慣れないアドリブの連続に、初見の力の乱発。

 最後の方には、瞬間移動の精度すらブレていた。

 もしここから立ち上がられたら……後はもう、奏に全部任せるしか……

 

「……えぇ、ご心配……なく……貴女の、勝ち……です、わ……」

「……私、じゃ、ない……私達、の……勝ち……よ……」

「……ふふ、そう、ですわ、ね……えぇ、えぇ……」

 

 だけど、そんな考えは杞憂だとばかりに、ニヴルは満足そうに笑う。

 

「楽しかった、です、わよ……また、会いま……しょう……オルレア……ハート……」

「……二度とゴメンよ」

「……あら……ふふっ……そう、ですか……それ、は……残念……です、わ……」

 

 そしてそれだけ言い残すと……ニヴルの身体は、粒子となって消え去った。

 同時に私達を取り囲んでいた氷の壁も消え失せて……いつの間にか、その外側にいたハウンズの戦闘員達も姿を消している。

 

「……終わっ……た……?」

 

 ……いけない、急に力が抜けてきちゃった。

 倒れそうになる身体を、刀を地面に刺して支え……

 

「っうわぁっ!?」

 

 ……ようとしたけど、刀はそのまま地面に沈み込むだけ。

 慌てて受け身を取りつつ、私はゴロっとその場に倒れ込んだ。

 

「……っ……ふ、ぅ……っ……」

 

 コイツの刀身、ビームだったの忘れてたや。

 なんて事をボケっと考えつつ、我ながら器用に腰のスラスターを避けながら、仰向けに体勢を切り替える。

 ……その直後だった。

 

「みやっ、びぃぃぃっ!!」

 

 ……寝転んだ頭上から、奏の身体が降ってきた。

 

「うわっ、ちょっ、奏ぇっ!?」

 

 まさか避ける訳にもいかず、全身で受け止める。

 

「んっ……ぅっ……!?」

「ひぅっ!?」

 

 その瞬間、奏の身体が私の身体に触れて……全身に、ビリビリと痺れるような感覚が流れる。

 どうやら奏もこの感覚を感じたらしく、思わず変な声を出してしまって……咄嗟に離れ、お互いに照れた顔を隠すように背けた。

 

「ご、ごめん雅……私、変な声……」

「あ、ははっ……だ、大丈夫……私も……出してた、から……」

 

 ……ヤバい、今更ながらすっごいドキドキしてきた。

 これが、戦いの熱に当てられて……ってヤツなのかな?

 加えて奏のドキドキも伝わってきて、それが更に私をドキドキさせてきて……

 ……あ、ダメだ……なんかすっごい……いつも以上に……奏が可愛く見えてきた……

 ……で、でも……もし奏が相手でも、私は……

 

「……勝利おめでとう、二人とも」

「「うわぁっ!?」」

 

 そんな甘い空気を掻き消すように、アルクがひょこっと姿を表した。

 

「あ、アンタ一体どこいたのよっ!? 私も雅も、すっごい大変だったのよっ!?」

「そんな事は百も承知さ。こういうのは、自分達の力で掴み取ってこその変身ヒロインってモノだろう?」

「アンタ……ねぇ……っ!!」

「まぁまぁ……」

 

 再び銃を構えんとする奏を宥めつつ、私はアルクへと視線を送る。

 ……まぁいい、と軽く咳払いをして、アルクは再び口を開いた。

 

「喜びたまえ。この戦いに勝利したことで、上の連中はこの世界の支配を中止したそうだ。無論、我々ハウンズも同様、もうしばらくは君達が戦う必要も無くなるだろう」

 

 ……アルクから出たその言葉に、私と奏は思わずポカンとしてしまう。

 何……ってことは、もう私達……戦う必要……無いって事……?

 

「あぁ、それと……」

 

 そんな蓬ける私達を尻目に、アルクは上機嫌そうに言葉を並べ続ける。

 

「先程の戦いで、君達の身体はかなりのダメージを負っている。少しの間は変身状態を解除せずに過ごすと良い」

「ってことは、寝る時もこのままってこと?」

「ま、寝る時間にもよるがね。なんならタイマーでも掛けておこうか?」

「できるの? そんな事」

「雅君と奏君の変身システムを今弄らせてくれたらな」

「じゃ、無理ね」

「決断早いね奏……」

「ま、言っても日が変わる頃には変身を解いても大丈夫だろう。なんせ、私が作ったシステムは優秀だからな!」

「はいはい、そうね」

「……つれないな、奏君は……まぁいい、それじゃ、明日の夜にでもまた様子を見に来るよ」

「なによ、アンタもハウンズでしょ。アイツらと一緒に帰りなさいよ」

「そういうなよ奏君。私はこう見えて気に入っているんだ。この世界と……それに、君達の事を、な」

「ふ〜ん、似合わなっ!」

「もう……奏ってば……」

 

 先程とはうって変わって明るい会話に、思わず笑みがこぼれ落ちる。

 そんな私達を尻目に、アルクはフッと笑う。

 そして……

 

「それじゃ、また明日、だ。二人共!」

 

 それだけ言い残して、アルクは瞬間移動のように姿を消した。

 後に残された私と奏の間に……再び、甘い空気が流れ始める。

 

「かな、で……」

「……な、なに……?」

「……帰、ろ……っ、か……」

「う……うん……」

 

 このまま流されちゃマズい、と帰宅を切り出すと、奏もそれに乗ってくれた。

 そのまま奏の事をお姫様抱っこしたまま、スラスター全開。

 加速の流れに身を任せ……私は、自室の前へと瞬間移動するのだった……

 

……

……

 

「じ、じゃあ……また明日……」

「う、うん……また明日……おやすみ、雅」

「……うん、おやすみ、奏」

 

 最後の力を使って奏と共にマンションへと瞬間移動した私達は、お互いの部屋の前で別れを告げ……そして、各々の部屋へと帰った。

 玄関で武器やスラスターをパージ。

 勝手に浮いているそれらを尻目に、ショートブーツを脱ぎ捨て、私は一目散に自分のベッドへと倒れ込んだ。

 

「……はぁ」

 

 ……アルクが言う事が本当なら……もう、戦わなくても良いんだよね。

 学園とか街が襲われる事も……疲れて倒れて学園に行けない事も……もう、ないんだよね。

 そっか……勝った……勝ったんだ……私達……

 

「……っ……や……っ……た……ぁ……」

 

 うつ伏せのままギュッと抱きついた枕に顔を埋め、喜びを噛み締める。

 戦いの痛み、苦しみ……そして、数々の陵辱。

 あんな事を味わうのだって……もう、ない。

 でも……何度も何度も犯されて、その度にイキ狂わされちゃったのも、また事実なんだよね。

 

「……っ、ふっ……ぅっ……」

 

 ……ダメだ、思い出しちゃいけない。

 いくら気持ち良かったのが事実だとしても、それは決して良い思い出じゃない。

 子宮をガンガン突かれ、乳首を刺激されて潮を撒き散らしたのだって……絶対、思い出しちゃ……

 ……っ、ダメっ、我慢っ、我慢だっ……!!

 いくら昂っちゃってたとしても、今は奏と感覚が共有されているんだ。

 だから、私の勝手で気持ちよくなっちゃ……絶対にダメ、なんだから……

 

「っ、んっ、ぅっ……ふっ……ぅっ……!」

 

 ……っ、うつ伏せだと乳首がベッドで擦れて、余計変な気分になっちゃう。

 ……ダメだ、ダメだダメだダメだ!

 慌てて寝返りをうって、仰向けに体勢を変える。

 今はこのまま目を閉じて、ぐっすり眠ろう。

 明日になれば今までの戦いを全部忘れて、そしてまた、いつもみたいな平和な日々を送れる。

 そうやって、強引に気持ちを切り替えようとした……その、直後だった。

 

「っ、ぁっ、んんっ……!?」

 

 突然、両方の乳首をサワっと撫でられたみたいな感覚が走る。

 ……いけない、変なこと考えてたからか、身体まで変になったのかも。

 煩悩退散、煩悩退散……

 目を閉じて、腕を頭の上に置いて、頭の中を空っぽにして……

 

「んぃっ!? ひっ、ぃっ、あぁっ!?」

 

 またっ……乳首っ、にぃっ……!?

 咄嗟の快楽に備えもできず、ビクッと身体が震えてしまう。

 

「ぁっ、あっ、ぅうっ!? ふっ、ぁっ、あっ、んっ、ふっ、ぅうっ!?」

 

 ……っ、やっぱこれっ、偶然じゃっ……ない……っ!?

 衣装越しにっ、乳首っ、クリクリってっ、触られてるみたいっ、にぃっ……!?

 

「ぁっ、ぁ〜〜っ……!! ひっ、ぁっ、あっ、ぁっ、んっ、ぁっ、はぁっ……!?」

 

 なんっ、でっ、乳首っ、こんなっ、こんなっ、にぃっ……!?

 身体っ、跳ねるのっ、止まんないっ……!!

 私っ、触ってすらっ、いないのっ、にぃっ……!!

 

「ひっ、ぃうっ!?」

 

 なっ、なにっ!?

 今度はっ、クリトリスっ、にっ、ナニかっ、ビリビリってっ、ぇ……っ!?

 

「んぁっ、んっ……んんっ……はぁっ!?」

 

 頭を枕に押し付け、シーツを逆手に握ってこの快楽に耐えようと頑張ってみる。

 けど、文字通り身体の内側から流し込まれるような快楽。

 こんっ、なのっ……結局っ、時間の問題……じゃっ……!?

 

「あっ、はぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 なにっ、なになになにっ!?

 なんにもっ、してないっ、のにっ……ナカがっ、震えてっ、ナニかっ、挿入ってるみたいっ、にぃっ!?

 

「ふぅぅぅっ!? っ、ふっ、うぅぅぅっ!?」

 

 ベッドシーツを爪が立つくらいに更に強く掴み、脚をピンッと伸ばし、謎の快楽に耐える。

 アソコには何も挿入ってないはずなのに、私の内側を無理矢理こじ開けられている。

 

「あっ、あぁぁぁっ!? ぁひっ、いっ、うぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

 ビクッ、ビクビクッ!!

 

 膣奥を何度も何度もガンガン突かれて、その衝撃が脳天を揺らして止まらない。

 

「んぅぅぅっ!? ぅっ、あっ、ひっ、あぁぁぁっ!? ぁっ、だめっ、だめだめだめぇぇぇっ!?」

 

 ヤバいっ、こんなのっ、無理っ……もっ、我慢……できっ、なっ……!?

 

「ぁっ、イクっ、もっ、イクイクイクぅっ!? イっ、クぅぅぅぅぅぅっ!? ふっ、あぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ガクガクッ!!プシャァァァッ!!

 

 仰け反るように腰を突き出し、絶頂と共に衣装越しにベッドへと潮を撒き散らす。

 

「お゛っ、うっ、ふっ……ぅっ……!!」

 

 脚がカクカク痙攣して、余韻がちっとも治まらない。

 私の身体っ……普通に犯されてた時より……なんかっ、身体……敏感にっ、なってない……っ!?

 ホントにっ、本気でヤバいって……!!

 こんなっ、いつ終わるかも分からない快楽地獄っ……

 アルクが何かしてなきゃっ……今の状況で、私にこんな事ができるのは……っ、奏だけっ……!!

 まさか奏のヤツっ……今の状況っ、忘れてっ……!?

 

「ひっ、いぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 今度っ、はっ、なにっ、なにっ、よぉっ!?

 ナニかっ、にぃっ!?

 クリっ、吸われてっ、るぅぅぅっ!?

 

「やっ、ひぅぅぅっ!? クリっ、これっ、すごっ、おっ、うぅぅぅっ!? ぁっ、だめぇぇぇっ!? イクっ、もっ、イクぅぅぅっ!?」

 

 ガクガクガクッ!!ブシャァァァっ!!

 

 クリが吸われる感覚が走って僅か数秒で、私は呆気なく絶頂へと達してしまう。

 先の絶頂から数分と経ってないのに潮の勢いは相変わらずで、衣装越しにも関わらずベッドのシミは更に拡大されてしまった。

 だけど……

 

「ひっ、いぃぃぃっ!? ぃやっ、止まっ、うぅぅぅっ!? ふぅっ、くっ、ぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 気持ち良いのがっ、全然っ、止まってくれないっ……!?

 今まで犯されたのっ、いつもナカを突かれて無理矢理イかされてるだけだったからっ……これっ、耐え方っ……わからっ、なぁっ!?

 

「ひっ、いぃぃぃっ!? イクっ、これっ、すっ、ぐっ、うぅぅぅっ!?」

 

 ダメっ、ほんとっ……ダメっ……!!

 

「イクっ、イクイクイクっ、イクぅぅぅぅぅぅっ!? ふぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ガクガクガクッ!!ぶしゃぁぁぁっ!!

 

 絶頂と共に腰を浮かし、情けない声をあげながらベッドに潮を撒き散らす。

 

「ひ〜っ、ぃっ、ぁっ、は、ぁっ……はっ、ぁっ……!」

 

 何度かの連続絶頂の後、ようやく快楽が止まってくれる。

 

「ふっ、ぅっ……っ、あっ、ひっ……ぃっ、ぁっ……」

 

 全身がビクビク痙攣して、上手く言う事を聞いてくれない。

 っ、寝てる場合じゃないっ!!

 と、とりあえずっ……壁ドンしてでも止めないとっ……これっ、手遅れになったらっ……私っ、こんな所でっ、壊されかねなっ……

 

「っ、ひっ、う゛ぅぅぅっ!?」

 

 ビクビクっ!!

 

 まっ、たっ……始まっ……たぁっ……!?

 

「ふっ、う゛っ、ぁっ、う゛ぅぅぅっ!?」

 

 ヤバいっ、早くっ、早く止めないっ、とぉっ……!!

 小鹿のように震える脚腰にムチを打ちながら、なんとかベッドから身体を踊り出す。

 つま先を地面に付け、痙攣する身体を何とかベッドから離して……

 

「っ、ぎっ、ひぃっ!? イ゛っ、ぎっ、ふっ、う゛っ、あ゛ぁっ……!!」

 

 だっ、めっ……こっ、れっ……またっ……ま、たぁっ……!!

 

「イっ、う゛ぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

 ガクガクっ!!ぶしゃぁぁぁっ!!

 

 床に潮を噴きながら、呆気なく、またもや私は絶頂へと達してしまう。

 ……っ、諦めるっ、もんか……っ!!

 ガクガク痙攣し続ける身体を必死に動かし、虫のように地面を這いながら、何とか壁際まで到達する。

 そして……

 

「っっっ……いいっ、加減にしろっ、奏ぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 ドンッ!!

 

 渾身の力で壁を殴った。

 その瞬間……アソコを襲っていた快楽が、嘘のようにピタッと止む。

 

「……やっ、と……はぁっ、はぁっ……はぁっ、はぁっ……!」

 

 ようやく快楽から解放され、私はその場に座り込んだ。

 目の前の壁は大きく凹み……部屋の中は、私の潮でビッシャビシャ。

 

「はぁっ……はぁっ……あ〜……も〜……さいっ、あくっ……」

 

 速攻で通販で買った安いペーパータオルを大量に手に取り、自分の撒き散らした潮を大雑把に拭き取っていく。

 ……なんで私、変身したまま自分の潮を掃除してるのよ。

 なんか……これが最後だと思うと……無性に悲しくなってきた……

 クソっ……こんな事になるなら、私も我慢しなきゃよかった……!

 

「……あ……?」

 

 なんて後悔にふけっていると……唐突に私の身体が、再び暖かい光に包まれる。

 そして次の瞬間……私の変身は解除され、病院で寝ていた時の寝巻きへと格好が戻っていた。

 途端、強烈に襲い来るダルさと眠さ。

 ヤバいヤバいと思いながら、急いでベッドへと身体を放り投げる。

 仕方ない、ベッドのシミは……明日でいっか。

 にしても奏のヤツ……ほんっと……好き勝手してくれちゃって……さぁ……

 

「明日……覚えて、ろよ……かな、でぇ……」

 

 遠のいていく意識の中で、ボソッと恨みを呟きながら……私の視界は、あっという間に闇に落ちていった……

 

……

……

 

『……ピピピピピッ!! ピピピピピッ!!』

 

「ん……ぁ……」

 

 ……少し離れたところから、聞きなれたスマホのアラームが聞こえる。

 なにも、こんな日にまで律儀に……

 昨日の今日で疲れてんだから……もう少しだけ……眠らせて……

 

『……ピピピピピッ!! ピピピピピッ!!』

 

「……あ〜っ、も〜っ!! うるっ、さいっ!!」

 

 ……欲しかったのに、こんな騒音の中じゃ寝るに寝れないじゃないのよっ!!

 脚で反動をつけて飛び起き、部屋の隅に置いて置いたカバンからスマホを取り出してアラームを止める。

 

「……ったく!」

 

 腹いせのように枕へとスマホを投げ込んでから、私はその場にペタンと座り込んだ。

 

「は〜……」

 

 そして大きくため息をつきながら、再びベッドの方へと視線を移す。

 そこにあるのはシミだらけのシーツに……ピンク色の石が埋め込まれた、ハート型のペンダント。

 ……そういえばこのカバン、持ってきた記憶無いんだけど。

 もしかしてアルクが運んどいてくれたのかな?

 全く、色々な事もされたけど……こういうところがあるから、イマイチ憎みきれないんだよね、アイツも。

 なんて思いながら、私はそそくさと寝巻きから制服への着替えを始める。

 今まで着ていた服を全てベッドの上に脱ぎ捨てて裸になると、近くのハンガーに掛かった制服を同様にベッドの上へと放り投げた。

 そのまま、いつもの味気ない白色のブラジャーとパンツを着け、黒色のタイツを履く。

 そして放り投げられた紺色のスカート、白色のカッターシャツに白茶色のブレザーを次々に身に着け、最後に首元に緑色のリボンを着けて……

 

「……よしっ!」

 

 着替え、完了!

 よかったよかった、前よりは少し遅くなってるけど、まだ身体は動きを覚えててくれたみたいだ。

 これからまた毎日必要になるんだから、早く元の速度に戻さないと……睡眠時間を確保する為にも……!

 そして洗面所へ向かい、寝癖直しとドライヤーで髪を整え、手持ちのカバンに必要な物をひとしきり詰める。

 

「……これも、一応、ね」

 

 最後にお守り代わりにペンダントとスマホをカバンの奥へと突っ込み、玄関口にある部活用の竹刀ケースを肩に掛ける。

 

「……じゃ、行ってきます」

 

 そして誰もいない部屋へと声をかけ……私は、部屋の扉を開けるのだった。

 

……

……

 

 ガチャッ……

 

「……あ」

「やっ、ばっ……」

 

 部屋の扉を開けた直後……隣の部屋から出てきた奏と目が合う。

 

「……かな、で? ヤバって……何?」

「あ、いやっ……そ、のっ……」

 

 ジッと奏の目を見ながらにじり寄る。

 それに対し、気まずそうな笑みを浮かべながらジリジリと後ずさる奏。

 本当はそこまで怒ってないけど……いや、実の所はちょっと怒ってるけど……面白いからこのまま詰めてみよっと。

 

「……ねぇ、奏……昨日の夜の事……忘れたとは……言わせないよ……?」

「あ、ははっ……雅、さん……あれ、は……です、ね……」

「あれは……何……? 私……あの後……すっごい大変だったんだから……ねぇ……?」

「ご、ごめんってば雅! でも、雅も……」

「私も……何……?」

「いえ、何でもありません!!」

 

 はぁ……と、格好だけため息をついて、奏の方に再び向き直す。

 

「……ケーキ」

「……へ?」

「……ケーキ、セレーヌの。あれ奢ってくれたら許してあげる」

「……っ、うん! じゃ、今日の帰り行こっ!!」

「……じゃ、約束だよ、奏!」

 

 ……よし、これで昨日の事はおしまい!

 自然とこぼれた笑みを隠す事なく、私は奏の手を取った。

 そして……

 

「さっ、早くいこっ、奏! 急がないと遅刻しちゃうよ!」

「うわっ!? ちょっ、待ってよ雅〜っ!!」

 

 そのまま奏の手を引っ張って、マンションの階段を駆け下りる。

 このまま、この先もずっと……私は奏と一緒に、過ごしていく。

 なんせ、あんな大変な事件を二人で乗り越えたんだ。

 だからこれからも、きっと大丈夫。

 これからも、ずっと二人で……ずっと一緒に、生きてくんだ。

 私と奏……二人で、一緒に!

 

 

--HAPPY END--




ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

本編はこれで完結しますが、あと一話、エピローグを追加する予定です。
最後までどうぞ、よろしくお願いします。
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