今回のお話にはエロ要素がありません。
同日に次のお話を投稿いたしますので、そちらにてエッチシーンを書かせていただいております。
予めご容赦ください。
玄庵さんに案内された部屋ではすでに薫子と桃華ちゃんが座って待機していた。
「お待たせしました」
「おはようございます、先生」
「おはようございます、紘一様」
僕が零奈を連れ添って部屋に入ると、桃華ちゃんと薫子が三つ指をついて頭を下げながら挨拶してきた。二人とも着物姿でいつもの着物と違い特別な時に着るような豪華な仕様となっている。
「おはようございます二人とも。すみません、待たせっちゃいましたか?」
「いいえ。約束のお時間の十分前ですから問題ありませんよ」
「ふふっ...
挨拶を返しながら待たせてしまったことのお詫びを伝えながら、用意されていたテーブルの薫子と桃華ちゃんの向かいに零奈を左にするように並んで座った。
そんな僕に笑顔で答える薫子と桃華ちゃんではあるが、やはり僕の隣の零奈の事を気にしているようである。
「改めて。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます」
そこで僕は、改めて薫子と桃華ちゃんに向かって正座で頭を下げてから今日時間を作ってくれた事に対するお礼を伝えた。
薫子と桃華ちゃんの並びとしては、僕の向かいに薫子が座っており、僕から見て左側に桃華ちゃんが座っている。
「ふふふ...問題ありませんよ。それに対価は確かに頂きましたから...♡さあ、紘一様も足をお崩しになってください」
そう答えた薫子は右手でお腹をさすりながら、左手で頬に添えて微笑みながら答えた。
若干視線は零奈に向かれているが牽制のつもりなのかもしれない。
僕は薫子に促されるまま正座姿勢から胡坐の姿勢に変えた。
そんな薫子の態度に動じず次に零奈が正座のまま頭を下げて時間を作っていただいた事と自己紹介を始めた。
「本日は北条院薫子様の貴重なお時間を頂戴いただきありがとうございます。私が紘一とお付き合いさせていただいております、中野零奈と申します」
「綺麗......」
零奈の自己紹介を聞いた桃華ちゃんは零奈の美しさに惚けており、零奈は頭を上げるとそんな桃華ちゃんに笑みを向けた。
しかし薫子は違う。零奈の名前を聞いた途端、顎に右手を持っていき考え込んでいた。
「中野......零奈......どこかで......っ!まさか貴女。あの総合病院院長の中野マルオの妻ではないですよね?」
「え...?」
零奈の正体に気づいた薫子は少し目つきを鋭くして零奈に問いただした。
それに桃華ちゃんが驚きの表情で零奈を見ている。
「そうです。主人がいつもお世話になっております」
そんな中、零奈はいつもの雰囲気を保ちながらまた薫子に向けて頭を下げた。
そんな零奈に対して驚きの表情で薫子は僕に聞いてきた。
「紘一様は知っていらっしゃったのですか!?」
「ええ。その上で彼女と付き合っています」
「そんな......」
僕の答えに桃華ちゃんは哀しみの表情で顔を下げてしまった。
「それはっ...!」
「でも、薫子さん達も同じじゃないですか。僕に彼女がいると分かっていてなお迫ってきたですから」
「「......っ!」」
何か言いそうだった薫子に対して、自分達も僕に迫ってきたと言って言葉を遮った。
僕の言葉に対して薫子と桃華ちゃんは目を見開き固まってしまった。
しかし薫子はなおも食い下がった。
「しかしっ!これとそれは大きく違います!この方には籍を置いている相手がいるのですよ!彼氏彼女の関係よりも強い繋がりがあるのです!」
「そうですね。下手をすれば紘一の人生そのものが崩れてしまいかねません」
「ならっ...!」
薫子の言葉に零奈は肯定して語ったので、薫子は恐らくこの関係を終わらせるように言いたかったのだろう。だがそれを零奈が遮った。
「しかし貴女も分かるはず。紘一にはそれだけの魅力があり、離れられないと思えてしまうということを。だから貴女も紘一に彼女がいるにも関わらず体を許し、更には避妊もしなかった。違いますか?」
「そ......それは...」
零奈の言葉に否定出来ず薫子は口を閉ざしてしまった。
「......私は、今の夫と結婚する前から紘一の事を愛していました」
「「え...?」」
語りだした零奈に対して、驚きの表情で薫子と桃華ちゃんは零奈に注目した。
「本来であれば、私は紘一と結ばれたかった......でもそれを現実が許してくれなかったのです」
「どういう事でしょうか?」
零奈の言葉に桃華ちゃんがおずおずと質問をした。
「......薫子様でしたらご存知のはず。私に娘達がいることを」
「え...ええ。五つ子の娘さん達が......っ!そうですか...」
そこで薫子は零奈の選んだ道をある程度理解したようだ。
「私には、私のお腹の中に五つ子がいることが分かるや否や前の夫が逃げ出したという経緯があります」
「そ…そんな……」
零奈の言葉に信じられないといった顔で驚く桃華ちゃんの姿があった。僕も最初に聞いた時は驚いたものだ。
「そして、五人の娘を産んでから一人で十二年頑張ってきたのです。しかし、私の体が限界を迎えていたのです。一度は倒れこのまま死ぬのではないかと思った時期もあります。そんな時に紘一と出会いました」
零奈はそこで笑みを浮かべながら僕を見てきた。
「紘一は赤の他人でもある隣に住む私の事を想い、家事や子どもの面倒などを見てくれたのです。そして、あろうことか、今までどんな人物でも見分ける事が出来なかった娘達を平然と見分けて、時には優しく、時には叱り、娘達を導いてくれました。自分でさえも、大学やバイトで忙しいにも関わらずです。そんな人に惚れない訳がありません。でも......」
そこで零奈は下を向き言葉を止めてしまった。
「ふぅぅ...無理なお話ですね。小学生まででそれほどの限界を迎えているのであれば、中学に進学すればなおの事。無情なものです」
そこに薫子さんが憐みの声で話しかけてきた。
「
「はい......なので、私は自分の気持ちを押し殺し、今の夫からの申し出を受けたのです。これで娘達が幸せになれればと......そして、最後に彼との思い出のために体を重ねました。でも、駄目でした。彼と体を重ねれば重ねる程に、私の中の彼への想いが溢れてきて......ならばいっそう娘達の誰かと紘一を結ばせようと考えた時期もあります。しかし、それも叶う事はありませんでした......」
最後に涙を流しながら零奈は肩を落とした。
「?どういう事です?まさか娘さん達が紘一様を想っていないと?」
そんな零奈の態度に疑問に思った薫子さんは零奈に問いかけるも、零奈は否定するように首を横に勢いよく振った。
「いいえ。娘達は全員が紘一の事を愛しています。なので、私から紘一に娘達の望む事は叶えてあげるようにお願いもしました。それが例え体を重ねることであってもです」
「「!!」」
零奈の告白に薫子と桃華ちゃんは驚きの表情になった。
「で...では、紘一様はもう......」
「ええ。五人との関係を持っています。もちろん避妊するように言い聞かせていますが。この事がもし夫にバレれば、紘一に何をするか分かりませんでしたからね。このまま私が我慢をして、娘達が自身の夢に向かって羽ばたいていければ...その内の誰かが紘一と歩んでくれれば...そう考えていたのですが......夫はそれを許しませんでした......」
「え?どういう事でしょうか?」
零奈の最後の言葉に疑問が生じた桃華ちゃんは思わず口を開いた。
しかし、横の薫子さんは考え込みある事が頭を過ったのか、驚きの表情で零奈に問いかけた。
「ま...まさか!五人全員に縁談を持ちかけたのですか!?」
薫子の言葉に、零奈は下を向いたまま小さく頷いた。
「な......なんと愚かな行為を......っ!」
薫子さんもそういったしがらみから桃華ちゃんを守ってきた身。恐らくマルオさんの考えに怒りを覚えたのだろう。みるみるうちに機嫌が悪くなっていった。
「......私は強く反対をしました。しかし、夫はそれを聞き入れなかった。これが娘達の幸せに繋がるのだからと......」
「そ......そんな...」
零奈の言葉に桃華ちゃんは信じられないといった表情をしながら両手で口を覆った。
「何が娘達の幸せなのですか!!時代遅れも良いところ!何故そんな男と離婚をしないのですか!今の紘一様であれば、来年から社会人です。二人で協力すれば娘五人を養っていくなど何とかなりましょうに!......っ!いえ、しないのではなく
興奮状態であった薫子さんであったが、少し間をおくと冷静になって現状を理解して零奈に問いかけた。それに零奈はまだ下を向いたままコクンと頷いた。
「どういう事でしょうか、お母様。離婚というのはそんなに難しいものなのですか?」
「はぁぁ......そうですね。離婚というのは、夫婦両方の意思があって成り立つもの。しかし、あの御人相手では無理ですね。あの御人は零奈さんの事をかなり気に入っているご様子でしたから。耳にタコが出来る程自慢話をされましたし...」
呆れるような顔で薫子さんが離婚は無理な理由を桃華ちゃんに説明した。
「それに......恐らくその話を零奈さんからされれば理由を探るはず。そうなってくると目が付けられるのは......」
そこで薫子さんの視線がこちらに来た。それに僕も頷き肯定した。
「そ...そんな!先生が危ないとでも!?」
「ええ。恐らく離婚の原因は紘一様であって自分ではない、と勝手に解釈して自身のコネを使って紘一様と零奈さん、それに五つ子とも会えないように画策するでしょうね。言い方が悪いですが、
「怖い事言わないでくださいよ......」
「ふふっ...大丈夫ですよ。今はそんな考え微塵もありませんから」
僕がポケットに入っているスマホを握りながら乾いた笑みを薫子さんに向けると、薫子さんからはもうそんな考えはないと返ってきた。
これなら
「ふむ...なるほど。零奈さんが
薫子さんの言葉にようやく頭を上げた零奈は、涙を流しながらまっすぐ薫子さんを見ながら答えた。
「そうです。結局は自分のために紘一を利用した最低な女である事も自覚しています」
「そ...そん──」
「そんな事ございません!」
零奈の言葉を否定しようとしたところに桃華ちゃんが勢いよく立ち上がりながら、零奈の言葉を否定した。
「自分の愛する者が誰かと体を重ねる事がどれほど辛い事か......
「桃華さん......」
ふんすっと言わんばかりの顔で語る桃華ちゃんに零奈はまた涙を流した。
「ふふふ...見えてきましたね。零奈さん、貴女の望みが......」
自分の娘の考えに満足そうな顔の薫子さんが今回の面会の目的を感づいた。
「すんッ......はい!どうか、主人との離婚の後ろ盾になっていただけないでしょうか!」
そこで零奈は鼻を啜りながらも、しっかりとした言葉で望みを伝えながらまた頭を下げた。更に僕には信じられない言葉も続けた。
「もし!今回の離婚を成功させ、紘一との結婚まで出来るようであれば、薫子さんに紘一の共有を認めたいと思ってます!もちろん、子を授かる事も
「「!?」」
「へ?はあああぁぁぁッ......!?」
零奈の言葉に薫子と桃華ちゃんはもちろん驚きの表情でいるが、当事者の僕が一番驚いて立ち上がってしまった。
「ちょっ...零奈!?自分が何言ってるか分かってる?」
「?はい。私と貴方が結ばれれば、貴方と薫子様との子も作って良いと」
驚きの僕は零奈の両肩に手を置き零奈に問いただした。
しかし、当の零奈はキョトンとした顔で答えている。
あれ?僕だけ考えがおかしいのだろうか。
「だって貴方は薫子様の事もお慕いしているのでしょう?ああ、別に責めている訳ではありませんよ。私は貴方と一緒にいれればそれで良いのですから」
「ぐっ...それは......」
そして僕は薫子の方に目を向けた。薫子は顔を赤くして僕を見つめていた。
「い...いや。でも薫子もまずいだろ。夫でもない男の子どもを産むのは!」
「あら、薫子様を呼び捨てにするほどまでの仲になっていたのですね」
頭が混乱してつい呼び捨てでしかも敬語もなくして話す僕に、零奈はニッコリと笑顔を向けてきていた。
「あぁぁ......はい......」
そんな零奈の言葉にガックシと頭を下げるしかなかった。
「ふっ...ふふふ...
どこかいたずらっ子のような顔で薫子は聞いてきた。
「嫌な事ないさ!むしろこんな美女二人の子どもを作れるなんて男冥利に尽きるよ」
なので、僕は正直に自身の気持ちを伝えた。
「ふふふ...♡ありがとうございます。しかし、二人ではありませんよ」
「へ?」
ご機嫌な薫子さんの言葉に思わず聞き返してしまった。
「零奈さん。その条件に一つ加えていただいてもよろしいでしょうか。我が娘の桃華にも紘一様の子種をいただけると」
「お母様!」
薫子の言葉に桃華ちゃんが喜びの表情でいた。
「構いません。しかし、それではうちの娘達の事もご了承いただく必要がありますが...」
「ちょっ...!」
零奈から薫子の条件追加の了承の言葉と共にとんでもない事まで追加されそうになっているので止めようとしたのだが...
「そちらも構いませんよ。ふふふ...娘に良い友が出来るというものです」
なんか二人の間で話が纏まってるんだけど...
「わあぁぁ♪ありがとうございます。お母様、零奈さん!」
凄く嬉しそうな桃華ちゃんの顔を見ると反対する訳にもいかず...
「はぁぁ......分かりましたよ。でも、薫子と桃華ちゃんには悪いけど。僕の妻はあくまでも零奈だからね?」
「ええ。構いません。貴方様の事です。同じくらい愛していただけると信じておりますので♡」
僕の言葉にニッコリと笑顔を返した薫子は、すぐに真面目な顔に戻した。
「では、早速行動に移しましょうか。零奈さん。娘さん達の現在の所在は分かりますか?」
「それだったら僕の家にいるよ。昨日から泊ってたから」
「あらあら、お盛んな事ですわね...♡」
「ぐっ...」
「ぶうぅぅ......
五つ子の所在を伝えると薫子さんからニコニコと笑顔で返され、桃華ちゃんからは頬を膨らませながら文句を言われた。
「ふふふ...では、好都合ですね。紘一様、零奈さん」
「「はい」」
「今日からお二人と五つ子の皆さんにはここに住んでいただきます」
「へ?」
「よろしいのですか!?」
薫子の言葉に僕と零奈は驚きの表情でいた。
「ええ。その方が紘一様からの愛が受けやすいですし。それにここであれば、あの御仁も手を出してこないでしょう。玄庵!」
「はっ!」
零奈の言葉に薫子が肯定すると、すぐに次の行動に移し始める為か玄庵さんを呼ぶと、すぐに襖が開かれ姿を現した。
「聞いていましたね?今から紘一様の家に紘一様と向かいなさい。そして、五つ子の皆さんの保護と紘一様の家財などの移動を速やかに行うように!」
「はっ!すぐに手配いたします!」
指示を受けた玄庵さんは行動を開始した。
「虎太郎いますね?」
『御傍に』
またどこからともなく声が聞こえてきた。
天井裏にでもいるのか?
「中野マルオの行動を止めなさい。そうですねぇ...明日までは病院から出さないように。出来ますね?」
『無論』
答えが返ってきたかと思えばすぐに気配が消えていた。凄いとしか思えなかった。
「では貴方様。玄庵と共に向かってください。五つ子の皆さんも貴方様がいれば安心するでしょうから」
「分かったよ。ありがとう薫子」
「ふふふ...言葉よりも行動でお礼が欲しいですわ♡」
うっとりとした目でこちらを見てくる薫子を見て、零奈を見るとコクンと頷かれた。
なので、そのまま薫子の唇を奪った。
「んッ......ちゅっ......ちゅるッ......ちゅっ......はぁ...♡いってらっしゃいませ」
「うん。行ってくるよ。零奈も」
「え!?んんッ......ちゅっ......ちゅっ......ちゅるッ...♡もう、いきなりは反則ですよ♡娘達の事お願いしますね」
「ああ」
薫子の後に零奈にもキスをした僕は急いで正門に向かうのだった。
~零奈・薫子・桃華side~
和彦が出て行った後、薫子は静かに元の場所に座った。それに続くように、零奈と桃華も元の場所に座った。
「ぶうぅぅ...ズルいです!二人だけだなんて!」
「あら、もう少し精進するのね」
自分だけキスをされなかった事に文句を言っている桃華に対して、薫子は用意されていたお茶を口に含みながら桃華の言葉を流した。
「時に零奈さん」
「は、はい」
自分もお茶を飲もうとしたところに声をかけられたので、驚いたように零奈は答えた。
「ふふふ...そこまで緊張なさらずに良いのですよ。今日から家族も同然なのですから。いつも通りにいてください」
そんな零奈の態度に薫子は笑いながら話した。
「は...はい。それで何か聞きたい事でも?」
「えっと......こんな事を聞くのは非常に卑しいとは思うのですが......零奈さんは...その......男女の営みについて詳しいのでしょうか...」
「え?ま...まあ、人並み程度かと。しかし、薫子様も亡くなられているとは言え、その...旦那様と営んでいたのでは?」
突然の質問に零奈は驚くも答えたのだが、質問を返した。
「人前でなければ様呼びはいりませんよ。あの......これは紘一様にも伝えたのですが、我が夫は体も弱かったこともあり、そこまでしておりませんでした。なので、
零奈の質問に恥ずかしそうに薫子は答えた。
「そうでしたか。では、紘一とのセックスは凄かったのではないのですか?」
「ええ!夫には申し訳ないのですが、あんな気持ち良い思いをしたのは初めてでした♡」
零奈の言葉に顔を赤くしながらも、嬉しそうに話す薫子に零奈は微笑みを向けた。
「ですので、
先程までの威勢はどこへやら。今の零奈の目の前にいる薫子は恋する乙女そのもんであった。そんな薫子の様子を見て、零奈はふっと笑みを浮かべて答えた。
「構いませんよ。何でしたら、今宵二人で紘一を気持ち良くさせましょうか?」
「良いのですか!?」
零奈の提案に立ち上がる勢いで薫子は確認すると、零奈は笑顔で頷いた。すると薫子は顔を赤らめて両手で覆い恥ずかしそうにしながらも、夜の営みに頭が行ってしまった
「ぶうぅぅ......
「貴女にも良き先人の方々がいるではないですか。その方達に教われば良いのでは?あ、後。前にも言いましたが、十六になるまで本番行為は禁止ですからね」
「そうか!ふふふ...五人とお会いするのが楽しみです♪お母様の言いつけはちゃんと守りますから安心してください」
文句の言う桃華に向かって薫子は五つ子から聞けば良いと提案した。
それを聞いた桃華は早く五つ子に会いたいと思うのであった。
「あの子達が粗相をしなければ良いのですが…」
心踊ろかせている桃華を見て、零奈は一人五つ子が桃華に悪い影響を与えないか心配するのだった。
玄庵さんの運転する車に乗ってうちのアパートに向かっていた。この車に続くように引っ越し業者のようなトラックがついてきている。
「いやあぁぁ…しかし、うまく纏まって良かったですなぁ…」
「ええ。僕も一応奥の手を用意していたのですが、使わずで良かったですよ」
運転をしながら話しかけてくる玄庵さんに、助手席に座っている僕は奥の手を使わなくて良かったと安心するように伝えた。
「ほおおぉ…奥の手とは。聞いても?」
「……玄庵さんはTAKERUって知ってますか?」
「また意外な名前が出ましたな。勿論知っておりますとも。天才プログラマーにして、天才ハッカーのTAKERU ですよね」
「え?ハッカー?」
あいつそんな事もしてたのか!?
「おや、ご存知でないご様子。まあ、ハッカー部分については裏の世界の者しか知りませんからな。はっはっはっ!」
玄庵さん何気に凄い事を笑いながら話してるんだけど…
「それで?そのTAKERUがどうかしましたかな?」
「あぁぁ……そのTAKERUって僕の親友なんですよねぇ」
「は?今なんと?」
ちょうど赤信号だった為驚きの表情で玄庵さんが僕を見てきた。
「TAKERUは僕の親友です。で、今日の面会でうまくいかなかったら、あいつに北条院家へのサーバーへの介入をお願いしてたんですよ。云わば脅しですね」
僕の話が終わると青になったので、玄庵さんは神妙な顔つきで車を発車させた。
「いやはや……まさかそのようなご冗談を仰られるとは…」
やはり玄庵さんは信じられていないようである。
仕方ないか…
僕はスマホを出して尊に電話した。
『おう!どうした?例のやつならもう準備万端だぜ?』
「いや、そっちは万事問題ないよ。ありがとね」
『なんだよ。結局上手くやれんじゃねえか。で?何か用か?』
上手く事が進んだ事に嬉しそうな声が聞こえてきたので、僕は自然と笑みを溢していた。
「いや、僕と君の表の顔であるTAKERUが知り合いだって証明出来る事ってないかなぁ、と思ってさ」
『そうだなぁ………ちょっと待ってろ』
僕の言葉に何かないか考えていた尊であったが、何か思いついたのか、カチャカチャとキーボードを押す音が聞こえてきた。すると──
『やあやあ、北条院家の諸君!元気にしているかな?』
「!これは、緊急無線!」
車に設置されている無線機から尊の声が聞こえてきた。
~零奈・薫子・桃華side~
『やあやあ、北条院家の諸君!元気にしているかな?』
一方の薫子達がいる部屋に設置されている無線機にも、尊の声が響いていた。
「誰か!」
「はっ!」
それにすぐに薫子が対応に移った。
「これは何事ですか?」
「そ、それが…何者かによって、北条院家のセキュリティに侵入を許され、無線機をジャックされたようです」
「何ですって!?」
状況の確認を薫子がすると、一人の男の使用人がセキュリティの侵入を許し、無線機がジャックされたと報告をし、それに薫子は驚きの表情へと変わった。
『俺の名前はTAKERU。今回は親友の頼みもあってこの無線機を拝借させてもらった』
「あら、尊さんではないですか」
そんな尊の自己紹介に、零奈は平静を取り戻しそう口にした。
「零奈さん!?貴女はTAKERUをご存知なのですか!?」
そんな零奈の言葉に驚きの表情で薫子は聞いてきた。
「え…ええ。紘一の親友ですよ。確か……プログラマーをされてたかと」
薫子の驚きの表情に、零奈が驚きながらも尊の事を話した。
「TAKERUが紘一様の親友!?」
「え…ええ。有名な方なのですか?」
あまりの薫子の驚きように、零奈は聞き返してしまった。
「ふぅぅ……そうですね。表の顔では、プログラマーとして多くの会社に貢献しております。しかし、裏ではハッカーとして名を馳せているのです。我が北条院家も何度か依頼をした事がありましたから」
「そ…そうなのですね……」
(あの人、そんなに凄い人だったのてすね。何度か会ってはいたけれど、そんな風には見えなかったです)
実は零奈も尊と会った事がある。紘一が是非会わせたい親友がいると聞いての事だ。紘一とも仲良く話しており、零奈にはとても好印象を持てる人物でもあったのだ。
『いやー、今回は親友の頼みでここのセキュリティに侵入する準備をして色々とやっちまうつもりだったが、良かったぜぇ。事が上手くいったみたいでな』
尊の言葉に薫子はゾクッと背筋が凍った。
(なんというお方……紘一様はこんなジョーカーを用意していたなんて……)
『今回は無線だけ拝借させてもらったが、俺の親友に何かあったらこれじゃあ済まないぜ。じゃあな!』
そんな言葉を残して尊の声は途絶えた。
「申し訳ありません!所在を追うことは出来ませんでした!」
そこに先ほどまで控えていた使用人の男に連絡が来たのだろう。薫子に対して謝罪の言葉を伝えた。
「構いません。むしろ、紘一様がいればTAKERUとも上手くやっていけるという事。虎の尾を踏まないように十分に注意するように全体に周知しておきなさい」
「はっ!」
薫子の指示を聞いた使用人の男はすぐに行動に移した。
「ふふふ…本当にお持ちの方ですわね紘一様は♡」
部屋の引き戸を閉めた後、薫子は嬉しそうに話した。
「まさか紘一がこんなものを用意していたなんて……驚きました」
「ふふっ…それだけ愛されているのでしょうね。羨ましい限りです」
零奈の言葉に薫子は羨ましそうな声で話しかけた。
「大丈夫ですよ。これからは、薫子さんも愛されるのですから」
「……そうですわね♡」
そんな薫子に零奈が言葉を伝えると、とびっきりの笑顔を薫子は返すのだった。
「はぁぁ……まさか本当に紘一様がTAKERUと繋がっていたとは…」
「あはは…今のには僕も驚きましたけどね…」
『よう。こんな感じで良かったかよ?』
無線が切れたと同時に玄庵さんは冷や汗をかきながら話しかけてきたが、僕も流石に尊の行動に驚いている。
そんなところに、スピーカーモードにしていた僕のスマホから、先程無線に流れていた声と同じ声が聞こえてきた。
「いや、まあ良いんだけどさあ…やり過ぎじゃない?」
『いやいや。ただ無線を拝借しただけだって。後は何も弄ってないぜ』
「その言葉、信用しても?」
無邪気に話す尊に玄庵さんが質問をした。
『ん?誰だ、あんた?』
「私は北条院家に支える成田玄庵。今は紘一様と一緒に紘一様のアパートに向かっております」
『へえぇぇ~…あんたがあの成田玄庵か……さっきの話は本当だぜ。俺は親友が嫌がる事はしない主義なんだよ』
「尊……」
尊の言葉にうるッと来るものがあった。
「ふっ…貴方様も紘一様に惚れ込んでるのですね。ならば、私達は良きパートナーになるでしょうな」
『あんたも紘一に惚れてるクチかよ!?はははっ…!良いねぇ……なあ?今度俺もあんたの当主とやらに会わせてくれよ?』
「「なっ…!?」」
尊の言葉に僕と玄庵さんは驚きの声をあげた。
「良いのかよ尊!?」
『ああ。お前はこれから北条院家に住むんだろ?なら、俺も便乗させてくれよ』
「そ、それはありがたい申し出ですが、私の一存では……」
『じゃ、後日紘一を通して連絡してくれ。じゃあな紘一。また飯作りに来てくれ』
「ああ。今日はありがとな」
そこで電話が切れた。
「えっと……問題ないですか?」
「問題ないなどとんでもない!あのTAKERUを我が北条院家に招く事が出来るのですよ!いやあぁぁ、やはり紘一様は持っていらっしゃる!はっはっはっ!」
上機嫌となった玄庵さんの運転する車はそのまま僕のアパートに向かうのだった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回は、零奈と薫子の面会のお話を書かせていただきました。
もう少し拗れるように書こうかと思ったのですが、円満に終えた事にしました。
そして、紘一の用意していた物は尊の協力による北条院家へのサーバー攻撃でした。
それで脅して円滑に進めようとしていたようですね。
薫子も冷や汗をかくほどに、今の時代ならではの脅しになっていたかと。
では、前書きでも書かせていただきましたが、本日は二話連続で投稿しております。
そちらも読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。