【R18】 このすばらしからぬ展開にも祝福を! 作:レイトカマー
はたして前話の原作引用部分はセーフでしょうか、アウトでしょうか?
「私はもうすぐ15歳、すでに立派な大人ですよ」
めぐみんのこのセリフ、全てはここが出発点でございます。
さあ、どんな風に大人になってもらおうか?
俺は、脳内にストックしているシュミレーション動画のライブラリを、一瞬で検索ローディングして、超速で閲覧した。
検索ワードは『選択肢』『危機回避』『時間稼ぎ』『言い訳』の四つだ。
実はこれ『教えてラファエル先生(仮)』という名のアルティメットスキルだ。
この世界に放り込まれる前から、あったらいいな便利だなと妄想していたものなんだが、いつの間にかスキルカードの取得可能リストに現れてびっくりした。
とは言っても、あの粘性魔獣に転生あそばされた元日本人、サラリーマンの三上悟氏が獲得されたご本家様と違って、あくまでもスタンドアローンのスキルであるために、データベースに登録されているのは本人が得た知識だけなので、森羅万象の全てを網羅しているわけではなく機能も限られる。よって(仮)なのだ。
もちろん『解』とか『告』とか言って応えてくれるわけじゃないし、これでいけとオススメを出してくれるわけでもなく、自動で何かをしてくれることもない。
取得ポイントも大したことなかったので、何かのついでに取ったのだが、少なくとも記憶を浚うことについては非常に有用だったりする。
つまり、見たもの聞いたこと体験したことを知識として蓄えて、いつでも瞬時に思い出すことができる、超高性能物忘れ防止スキルの様なものだ。
もしもこのスキルを前世で持っていたなら、トランプの神経衰弱だって全勝だし教科書丸暗記でテストも楽勝だったのにと悔しくなった。
だけどおかしいんだよな、なんでそんなスキルが突然現れたのか。
普通は実際に使うとこを見せてもらうと、スキルカードのリストに現れて取得に必要なポイントが表示されるんだが、目にしたって憶えが全然ないのよ。
唯一思い当たるのは、アレだ、おっちんでエリス様んとこ行った時ぐらいだろ。
前例がないって事も確かにそん時に聞いたし、エリス様も何かで調べてた風には見えなかった。
女神様だから当り前に森羅万象に通じてるんだろうなとも思ったけど、これってひょっとしたら神様の権能なんじゃないの?
だって、アルティメットスキルなんて書いてあるし。
それに(仮)ってのも変だろ?
だから、お試し版のアプリみてえなもんじゃないのかって想像してる。
つまりレベルの低い奴でも、機能を絞って使えるようにしてあるわけだ。
てえことはさ、貯めたポイントを突っ込んでレベルを上げれば(仮)が取れて、全能じゃないけど全知くらいはいけるってことなのかなあ?
よくわかんないけどせっかく取得したスキルだからさ、色々と試して使い道を考えてたんだよ。
俺ってさ、学校の勉強は苦手だったけど、ゲームなんかのわざと説明が伏せられてる機能を探し当てて、いくつかの仮説を立てながら解明するってのが得意だったし、そいつを使って随分と無双したもんだ。
そんなわけで、このスキルを解明して有用性を探るために、あのお店のサービスを利用してるし、新たなサービスの開発も手伝ってるんだ。
ゴメンナサイ、嘘つきました。
あのお店のサービスを実践で活用するために、スキルが使えると思いました。
夢で見たものだって、立派な知識だかんな。
しかし、唯一点このスキルには弱点がある。
水を出すとか火を点けるとか筋力を強化するだとかの他のスキルと違って、具体的なイメージを構築するのがほぼ無理、だから無詠唱では使えない。
ただし、スキルが及ぶのはあくまでも脳内の処理だけだと気づいて、色々試した結果、脳内で詠唱するという手が使えた。
つまりだ、ベッドの中で美少女を抱き締めている状態で、テンパりそうになった時でも『教えてラファエル先生(仮)』と叫ぶ必要はないのだ。
その代わり、脳内詠唱であっても正確に発音?しないと発動できなかった。
どういうことかと言うと、助けてでも教えてくださいでもだめで、ミカエル先生でもガブリエル先生でもだめ、噛んだりどもったりもNG。
そして忘れちゃいけないのが(仮)。
カッコ・カリが正解、カッコ・カリ・カッコトジじゃ通じない。
だから緊張してたり慌てていたりじゃ、まず発動できない。
とにかく落ち着け、そこからだ。
そして心を落ち着かせるために、ラファエル先生、ラファエル先生と脳内で呪文の様に唱えていれば、落ち着いて正確に脳内呪文を唱えられるし、知識も活用できるという、とある場面では二度美味しいスキルだったりする、
人は知識と経験を蓄積してより高度な判断を下せる生き物であるが、残念ながら体験を伴わない知識の蓄積については、理解力や記憶力の個人差が大きくて、せっかく得た知識も宝の持ち腐れとなるか、人によっては忘却力の方が凌駕して、教訓すら生かせないという不幸を招くことになる。
敢えて実例を挙げるなら、人ではないがトイレの駄女神さまあたりが相応しかろうし、ソードマスターのアララギさんだかカツラギさんあたりが、その被害者であろうと思う。
そんで神様の権能って仮説なんだが、駄女神さまが使ってるとこをじっくり見ていたら、なんといくつか現れたんだな、(仮)が付いてるスキルが。
全然ポイントが足んないから、取得できてんのも少ないんだけど、それでも仮説は正しかったんじゃないかと思ってる。
さて話は本題に戻って、俺は密かに(仮)付きのスキルを使って脳内で得た教訓をもとに、今まさに俺の腕の中で身を委ねているめぐみんに声をかけた。
「なあ、めぐみん」
「‥‥‥なんですか? カズマ」
俺の落ち着いた声に驚いたのか、ワンテンポ遅れてめぐみんが返事をした。
自分と抱き合ってるだけでテンパって、いっぱいいっぱいなのだろうと想像でもしてたのか? ヘタレのはずの俺が、妙に落ち着いている事がそんなに意外か?
「いつまでもこうしてたいけど、その、なんだ、俺って汗臭くないか?」
「確かに言われてみれば、そんな気がしないでもありませんが」
俺の胸に顔を埋めたまま、めぐみんはスンスンと鼻を鳴らしている。
いやいや、だからといって人の匂いを嗅ぐって、若い娘としてどうなのよ?
「言うほど汗臭いとは思いませんよ?」
「でも、風呂にも入ってない男に抱き締められてご褒美だって喜ぶのは、あの変態クルセイダーくらいのもんだろ? さすがに俺だって恥ずかしいから、今から風呂に行ってきていいか?」
うん、噛まずにごくごく自然に言えたぜ。
中身も完璧だろ?
「そう言えばお風呂が空きましたよと伝えに来たんでした。私は‥‥‥、ここで待っていても、いいですか?」
おおっ凄げえ、さっそく選択シーンだよ。
うんうん、これはアレだな、シュミレーションで散々NG食らったとこだ。
「待っててくれれば嬉しいし、気が変わって帰ってしまったとしても、怒ったりなんかしないさ」
もう俺の中の人、ドヤるドヤる。
「今夜は心が広いんですね?」
「そりゃあな、いつもは強気なめぐみんの元気がないとな。これでも心配してるんだぞ?」
これもうサイコーの返しだろ?
前世でもこんな会話ができてたら、俺の人生も変わってたんだろな?
「‥‥‥ありがとうございます、素直にお礼を言います。紅魔族は弱気になってるところを見せたら負けなんです」
あ、なるほど、これは新しい情報だ。
それなら今までのめぐみんの言動って、結構納得できるな。
紅魔族って、そんな価値観を幼い頃から刷り込まれてるんだ。
アレだよ、男の子なんだから泣いちゃいけませんとかに始まって、貴様それでも男かなんてのも常套句だし、男は黙ってサッ〇ロビールなんてヤツまであった。
ダクネスがいつも、王家を守るクルセイダーなんて口にすんのと同じだ。
本人は矜持だなんだとカッコイイこと言ってるけど、要は刷り込みってヤツだ。
社会全体で『○○は、こうあるべきだ』と型に嵌められて育てられるんだ。
んで、はみ出しちまった奴は群れからつま弾きにされちまう。
かくいう俺も自分から落ちこぼれて引きこもったクチだけどな。
つまり、本当のめぐみんはその素っ頓狂な鎧の中にいるんだ。
だからたまに見せる、俺をドキッとさせる笑顔や、今回みたいな弱気なとこが、実は本当の姿なんじゃないかって気づいてしまった。
「ま、空元気も元気って言うからな。それじゃあ、俺は風呂に行ってくる」
俺はめぐみんの背中を抱いていた右手を放して抱擁を解くと、乱暴にならない様にそっとめぐみんの左手を持ち上げてから、体を起こしながら腕枕していた左腕をゆっくりと引き抜いた。
俺が左腕を抜いているとき、めぐみんは俺の動きに合わせて頭を浮かせてくれたから、俺はすんなりと起き上がることができた。
腕の中にあった温かさを手放した寂しさも感じたけど、たぶんこれが今時点では最良の選択だと思う。
再び布団の中に潜り込んで顔を見せないめぐみんをそのままに、静かにベッドから降りると、黒い毛玉が絨毯の上で丸くなっていた。
その毛玉を両手で持ち上げた俺は、頭まで被った布団から乱れた黒髪が僅かに覗いている枕元にそっと下ろした。
「お前のご主人様の元気が出るように、そこで癒してやってくれ」
『にゃあ?』
一人で湯船に浸かって、教えてラファエル先生(仮)と答え合わせをしている。
一時の欲求に流されずに本当に良かった。
少なくともあの時点で突っ走れば、俺の聖剣エクスカリバーは簡単に限界を超えて、とても口に出しては言えない状況になっていたことだろう。
とりあえず今は、洗い場の陰でこそこそと減圧処理を施したので、賢者とまではいかないが結構落ち着いていると思う。
これも実は、あのお店の店長をやってるお姉さんと話し合った結果、シュミレーションに盛り込んだ選択肢の一つだったりする。
『一回減圧処理をして、賢者化しますか? YES or NO』ってな風に。
YESを選択すると、うっふんなサキュバスのお姉さんが出てきて抜いてくれる。
そして落ち着いたところで、本編の夢に戻るという流れだ。
抜くとは? 何を? どんな風に? と、疑問をお持ちになられた諸兄は、駆け出し冒険者の街アクセルの、商店街の裏通りにひっそりと佇むあのお店の、お高い方のサービスをご予約いただいて、ご確認いただければ幸いである。
もちろん今はリアルだから、記憶の中のサキュバスのお姉さんの映像と、俺の右手との共同作業となったが。
おかげですっきりして腰も軽くなり、頭もクリアだ。
落ち着いたところで状況を整理してみよう。
まず、間違いなくめぐみんはおかしい。
ここからは推測になるが、めぐみんに爆裂魔法を教えたのは魔王軍を率いていた幹部のウォルバクで間違いないだろう。
恩人とも言える相手に爆裂魔法を撃ち込んで、その上消滅させたとなれば、あの気落ちぶりも納得できる。
そして心にぽっかりと開いてしまった穴に耐え切れずに、何らかの救いを求めて俺の部屋を訪ねて来たということなら、めぐみんのあの態度も腑に落ちる。
俺はそのことには触れずに、とりあえず明るく振舞ってみせたし、欲望と劣情に流される事もなく抑え込んで、努めて優しく抱き締めてやることもできた。
少なくともこれで好感度は上がってるはずだ。
全くのヘタレではあるが、風呂に逃げるという選択もおそらく最良だ。
砦からここまで移動してきて、汗臭かったのも事実だから不自然さもない。
減圧処理もして余裕も出てきたから、もしもめぐみんが帰らずに俺の部屋に残っていたとしても、明日の朝まで耐えられる自信はある。
世間からはカスマだのクズマだのと謂れのない風評被害を受けているが、相手が弱ってるところに付け込むだなんて、俺はそこまでのクズじゃないからな。
まあ、アレだ、徐々に好感度を上げていけば、その内に本当に好きになってもらえるかもしれないから、一時の劣情に流されてやらかして、決定的に愛想をつかされないように気をつけよう。
ヨッシ、ここまでは完璧だ。
要は相手を思いやるってことだったんだな。
シュミレーションの成果をリアルで実行した俺は、できる男に成長したのだ。
そういや、女の子に腕枕したのだって生まれて初めての経験だよなあ。
う~ん、柔らかな太腿に頬をすりすりする膝枕もいいけど、そのまま包み込む様に抱ける腕枕もまたいいもんだ。
明治時代だかの文豪の作品にも、確かそんなタイトルのがあったよな?
中学の国語で習った様な気がするけど、ほとんど聞いてなかったからラファエル先生(仮)に聞いても出てこないんだよ。
え~と、痴に働けばナンカが勃つとか、嬢に竿挿せばナントカって。
中学生に教える内容かね?
明治時代はR18指定ってなかったのかなあ?
女の子と布団の中で抱き合ったのも初めてだし、男女の体形っていうか骨格の違いなんてのを手触りで実感できたし、見た目がスレンダーでも結構抱き心地がいいんだってのも初めて知った。
そんな実体験を積み重ねて、いちいちドギマギしなくなったらいい男になれるのかもしれない。
つまり大人の余裕ってヤツだ。
まだ童貞だけど。
しかし、落ち着いて考えてみりゃ、好きって言われて、そこから童貞卒業までのプロセスって、結構遠くないか?
俺くらいの歳頃の日本人でいうなら、告られてラインの交換をするってあたりなんだろな、経験ないけど。
そっからたわいのないやりとりで盛り上がって、手を繋いでデートして、キスまで辿り着いても、実際に一線を越えるまで行くのには結構ハードルが高い。
けどそれは、現代日本でならって前提だもんな。
家族や学校や世間の目もあるし、高校生くらいじゃどこでってのが大問題だ。
俺だって向こうじゃ高校生の年齢だけど、とっくに働いてるし、金だって自分でもびっくりするくらい稼いだし、屋敷だって手に入れて今じゃ成功者の一人だ。
なのに、謂れのない風評被害のせいで、女性への人気はいまいち低い。
そんならそれで、好意を持ってくれる相手を大事にした方がいいんじゃないか?
実際に好きだって言ってくれたし、日本でならアイドルになれそうなくらい可愛いし、そりゃあ言動は素っ頓狂だけど紅魔族の伝統的なお作法みたいだから。
TVに出てる芸能人みたいなもんだとでも思っときゃ、それほど抵抗もないし。
そもそもこっちの世界の貞操観念って、よく分かんないんだけど、どうなの?
夫婦以外でしちゃじゃダメとか、結婚するまではしちゃダメだとか、信仰してる神様や種族によっても変わるんだろうか?。
つっても聞ける相手がなあ‥‥‥
ラファエル先生(仮)はデータがありませんって言うし、冒険者連中じゃ話にもなんないし、ダクネスは変態だけどエリス教徒の貴族だから参考にならないだろうし、何より勘違いされたりなんかしたら、いろんな意味で後が怖いし。
だからと言って、駄女神のアクアだけは絶対に有り得ないからな。
アクシズ教の常識なんて、冗談でも聞きたくない。
めぐみん家に泊まったときは、お母さんが既成事実を作りたがってたから、結婚前提ってのは間違いないんだろうけど、しちゃったら必ず結婚するんだろうか?
そんな事、本人に聞くわけにもいかないしなあ‥‥‥
好意に応える行為の方はどうなんだって?
うん、そっちの方は大体目途が立ってる。
知識だけはさ、ネットで得た膨大なストックがあるし、用法用量についてはあのお店の上級者用サービスのシュミレーションで培った判断力があるし、いざとなったら、教えてラファエル先生(仮)と脳内で唱えるさ、落ち着いてりゃだけどな。
なんせ失敗した疑似体験なら、掃いて捨てるほど知識として積み上がってる。
失敗後の反省会で、メガネかけたお姉さんからレクチャーを受けながら、なんでそこでそっちを選択したのかなって、自分でも不思議だったぜ。
避けなきゃいけないのは、自分だけが気持ちよくなろうとすることだ。
足りなかったのはクンフーじゃなくて、相手への思いやりだったんだ。
大事なのは、一緒に気持ちよくなることを目指そうって気持ちだ。
うん、すっごく勉強なったぜ。
ゲーム以外であんなに真剣に取り組んだのも、こっち来て初めてだったな。
やりきった後の爽快感もすんごくよかった。
そうそう、映画のエンディングロールみたいに、一緒に余韻に浸るのも大事。
出しちゃったら即賢者化すんじゃなくて、あくまでもポジティブな感想を伝えながら撫で撫でしてあげるってことが、特に重要なんだと。
ほら、お店のサービスだって同じじゃん。
終わったら追い出される様にサイナラじゃなくて、ありがとうございました、またのご利用をお待ちしてますなんて、笑顔で見送られた日にゃあ、そりゃあ次もこようって気になるじゃんか。
優しく胸に抱かれて、気持ち良かったよ、素敵だったよ、可愛かったよと褒められながら、撫で撫でされてちゅっちゅされたら、相手も次を期待するだろって。
してよかったって思うだろって。
こっちだって、気持ちよかったわとか、逞しかったわとか、気絶しそうだったわなんて、恥ずかしそうに胸に指先でのの字を書きながら言われたら、そしたらもうお代わりモードに入ろうかってもんだもの。
そして今の俺は歴戦の勇者、できる男なのさ。
あくまでもシュミレーション上では、って但し書き付きなんだけどさ。
それでもカチンコチンコの一触即発ひっさげて、欲望まっしぐらってのよりは、はるかにマシになれてるはずだと思ってるんだ。
そして勇者(仮)な俺は、湯船で立ち上がり聖剣エクスカリバーを天に翳した。
桶の湯でホカホカに温まったちょむすけを抱いて、できる男の余裕の足取りで部屋に戻る俺は、シュミレーションにはなかった予想外の展開を、この時はまだ知る由もなかった。
ところでなぜにちょむすけを抱いているかというと、減圧処理後に湯船に浸かっていたところで、やって来たちょむすけが湯船に入りたがったのだ。
ちょむすけが風呂場に来たということは、おそらくめぐみんは自分の部屋に帰ったのだろうと内心では少しほっとして、それが油断に繋がってしまったのだ。
如何でしょうか?
前話の前半が利用規約の
「大方のセリフがそのままだった場合は利用規約の禁止事項「原作の大幅コピー」で対処します。」に抵触するんじゃないかと、おっかなびっくりです。
お目溢しいただけることを前提に、次話はめぐみん視点でお送りいたします。