【R18】 このすばらしからぬ展開にも祝福を! 作:レイトカマー
ロストシーンはここでさらりと。
カズマがテレポートを使ってみせたことには心底驚きました。
魔法陣の敷設もせずに、自分の魔力だけでなんて。
あんなにグータラに暮らしていて、どれだけ陰で努力していたんでしょう?
いえ、むしろ陰で努力していたからこそ、私たちの前ではグータラしてたとか?
いつの間にか使える魔法も増えているし、オリジナル魔法まで編み出してます。
それも魔力の消費を抑える方向でなんて、考えたこともありませんでした。
当面の目標は、私と一緒にヒットアンドアウェイ?
紅魔族の間では、一撃離脱の撃ち逃げと教えられる戦術の基本中の基本。
普通はライトオブセイバーあたりと組み合わせて使うもの。
それを、爆裂魔法と組み合わせて?
かつてそんな大胆な魔法使いは、紅魔族にさえ誰一人としていませんでした。
一発撃ってしまったら、魔力切れで身動き一つとれなくなるから。
敵に生き残りの一人でもいれば、報復に蹂躙されて惨殺されるのは覚悟の上。
そんな魔法だからネタ魔法と揶揄され、極めんとした私は変人扱いされました。
なのにこの人は、受け入れてその生かし方まで考えていてくれたのです。
シルビアとの決着の後、優秀な魔法使いが欲しいですかと聞いてみました。
もう皆の足手纏いになりたくなかったから、爆裂魔法を封印して上級魔法を習得しようと決心したからです。
決心はしたものの、今日までの努力の全てを捨て去る勇気を出せなかった私は、その決断をこの人に委ねることで、自分自身に言い訳をしてしまいました。
なのにこの人は、私が大事に貯めてきた経験値のポイントを、爆裂魔法の威力に全振りしたのです。
それに気づかない私に、撃ち納めに最後に一発みせてくれと言って。
これで最後、さよならと言って放った爆裂魔法は、今までで最高のできでした。
呆気に取られる私に、親指を突き上げて見せたあの笑顔は、一生忘れられないと思います。
だから今回も甘えて頼って縋ってしまいました。
きっとまた、助けてくれるんじゃないかと。
いつものように『しょうがねえなあ』と重い腰を上げて。
愛された後の気怠さと満たされた気持ちで、今は何も考えたくありません。
意外とと言ったら失礼かもしれないけれど、私を包み込む様に抱いている腕は、そこそこ鍛えられた筋肉の力強さを感じさせて、忘れていた幼い頃に父親に抱き上げられた時の様な安心感を思い出させてくれました。
素肌を合わせてお互いの体温で温め合っていると、私が顔を埋めている胸からは温かさと同時にトクトクと命の営みを示す鼓動が聞こえる様な気がして、不思議なくらい落ち着いて、安らぎにも似たなにかで胸が満たされています。
ああ、愛されているとはこんな風に相手を受け入れて、温かさに包まれてみて、初めて実感できるものだったのだと、気づいてしまった気がします。
優しくゆっくりと背中を撫でてくれている手の平の感触も、なんだか嬉しくてずっとこの温かさに包まれていたいと思いました。
その手の平が下りて行き、私の丸いお尻を包んだところで動きが止まりました。
どうしたのだろうと胸に埋めていた顔を離して、見上げる様にカズマの顔に視線を移すと、少しだけ戸惑った様な黒い瞳が見詰めていました。
どうしたのですかと聞きたい気持ちを飲み込み、無言で見詰め返すと、今更だけど、どうしてこんな俺を好きになってくれたのかと聞かれました。
その顔がけっして自信に満ちた表情ではなかったことに、私も少しだけ不安を覚えたのです。
少し答えに困った私は、逆にあなたこそ私で良かったのですかと尋ねました。
返答に困った時は、逆に同じ質問をぶつけて相手の真意を計れというのが紅魔族伝統の切り返しだからです。
「私のどこが好きなんですか?」
「‥‥‥え、‥‥‥ええっと、爆裂魔法だとか‥‥‥?」
「困った時にはとりあえず爆裂魔法を褒めておけとか、適当に思ってませんか?」
どうも図星だったみたいで、バツが悪そうに指先で頬を搔いています。
うふふ、なんて可愛い人なんでしょう。
そんなカズマがとても愛しくて、思わずクスリと笑ってしまいました。
「私はそんなカズマのいい加減なところが好きですよ」
あはは、目が点になってますね、どうです? 予想外の切り返しでしょう?
今夜こそ逃がしませんからね? 私の気持ちを、ぜ~んぶ聞いてくださいね。
「自分の力をよく分かっていて、強敵に遭っても変に気取って女性を守ろうとするでもなく、それでいて本格的な悪事に手を染める様な度胸もなければ、正義の見方なわけでもなく、人が見ていないところではたまに悪い事もすれば、機嫌が良ければ善い事だってする」
「そんな中途半端な人で、借金があればせっせと働き、そのくせお金に余裕が出来れば途端に働かなくなり、その日の気分次第で優しかったりすれば、意地悪したりもする」
「仲間思いかと思えば、そのくせ平気で仲間をトレードしたり、機転が利いて凄く賢いのかと思えば、一体なぜそんな事をしたのかと思う様なバカなところも‥‥、そしてなんだかんだ文句を言いながらも皆を助けてくれる。本当は優しいのに素直じゃなく、肝心な時に三枚目になってしまう」
「そんなあなたが好きですよ」
苦笑いを浮かべながら私の告白を聞いていたカズマは、そうなんだよなと小さく呟いて、一人で納得した様な口ぶりで話し始めました。
「とても褒められた気はしなかったが、確かに簡単な答じゃないよな、人を好きになるってことは。うん、最後の言葉だけで俺は十分満足だよ」
「それなら、今度はあなたの、カズマの番ですよ。私のどこが好きなんですか?」
カズマは私を再び抱き締めると、指先でつつっと腰から背中を撫で上げました。
その擽ったい様な甘い痺れに、思わず体がぴくんと反応してしまったのです。
「さっきも答えた通り、抱き心地も肌触りも、こうやって敏感に反応してくれるとこも大好きだけど、それはついさっき知った事だもんな」
「うん、最初はなかなかユニークな娘が来てくれたと思った。紅魔族のことは全然知らなかったからな。美少女だってのは認識したけど、あの頃はまだ年齢的に恋愛の対象として見ることを、意図的に避けていたのは事実だ。俺の育った国じゃ犯罪に近いもんだったからな」
「最初は子ども扱いしてりゃ大丈夫かなって思ってたんだけどさ、ほら、女の子って成長早いじゃん。元が美少女なんだから、あっという間に綺麗になって、ドキッとさせられる表情も見せる様になるとさ、間近で見てれば当然意識しちまうさ」
「だけど、パーティーの皆で一緒に暮らしているとさ、誰とも等間隔の距離を保たなきゃと思い込んで、アクアはあの通り余計な事やらかすポンコツだし、お嬢様はドMの性癖丸出しだし。だからあの二人と同じ距離をめぐみんと保つには、同じ様に接するしかなかったんだよ。俺自身が器用じゃないことは自覚してたし」
「本当にごめんな。めぐみんのことは美少女だと思って、時々ドキリとさせられてそしていつの間にか好きになってた。もちろん見た目だけじゃなくて、一心に何かを追い求める姿も眩しいと思ったし、背伸びして無理してる姿も気にかかった」
「だから、どこが好きかと聞かれたら、全部だって答えしかないんだ。気が付いたら好きになっちまってたんだよ」
ああ‥‥‥、今の話を聞いていて気付いてしまいました。
私もカズマの全部が好きになってしまっていたのです。
そう、いつの間にか。
カズマと初めて会ったのは、アクセルの街のギルドでパーティーメンバー募集の張り紙を見たその足で、入ってあげましょうと申し入れた時でした。
その頃の私は、上級職の魔法使いであるにも関わらず、どこのパーティーからも相手にされずに、所持金も尽きてひもじいおなかを抱えていました。
カズマと一緒にいたのは、上級職のアークプリーストのアクアでした。
ジャージと呼ばれる緑色のヘンテコな装備を纏っていた、最弱職の冒険者のカズマは、はらぺこの私に何でも頼めと言ってくれたのです。
お試しで最初に受けたのはジャイアントトード狩り。
華麗に爆裂魔法で仕留めたものの、追加で現れたヤツに呑まれてぬるぬるに。
私の爆裂道は理解してもらえませんでした。
しかし、知力にも自信があった私は、心理戦を制して居場所を確保しました。
それから色々とありました。
ダクネスも加入して、ドタバタと騒々しく、子供じみた言い合いを繰り返して。
子供扱いのはずなのに性的な目を向けてくるカズマを、気持ち悪いと思った事も一度や二度ではありません。
でも、いざという時は生命まで賭けて、仲間のために『しょうがねえな』と言ってくれるカズマを、心の底で見直していたのは誤魔化しようもない事実です。
それがいつの間にか意識するようになって、『好き』に変わってしまったのは、きっとダクネスとアイリスの存在が大きかったのだと思います。
ええ、はっきりと自覚しました。
これからは自分の気持ちに素直になりたいと思いました。
私は大好きなカズマを、取られたくなかったんです。
「‥‥‥嬉しいです。私も‥‥‥、その答えで十分です‥‥‥」
嬉しさで何かが込み上げてきた私は、自分からカズマの唇を求めました。
好きで、大好きで、愛おしくなって。
カズマもそれに応えて、もう一度私を、まるで壊れ物の様に、優しく丁寧に可愛がってくれました。
体中を撫でられて、体中にキスされて、そして私の中に入ってきました。
最初は痛かった、誰かから焼け火箸を突っ込まれたみたいだと聞いた事がありまたが、それほどとも思えませんでしたし、二度目は少しづつ気持ち良くなってもきました。
でも、そんな事よりも、求められて満たされたことの方が嬉しかったのです。
何度も心配して大丈夫かと聞かれたけれど、私はその度に首を横に振りました。
優しくキスして、何度も愛してると囁いてくれました。
そして私の中で、カズマはおもいきり果てたのです。
男の人は、果てた後は賢者になると聞いていましたが、カズマは優しく抱き締めていつまでも私の体を労わる様に撫でてくれましたし、言葉もいつもより優しかったと思います。
私は幸せだと思う気持ちを噛み締めて、ずっとカズマに抱きついていました。
いつまでもこうして抱き合っていたかったけれど、窓の外が明るくなり始めて、お互いにそうしなきゃと目だけで促し合って、起き上がって身繕いをしたのです。
といっても、私はパジャマを着ただけでしたが。
最後に私がパジャマのボタンを嵌め始めると、ちょっとだけ待ってと言ったカズマは、私を背後から抱きすくめて、広げた両の手の平で胸の膨らみを包む様に優しく揉みながら、敏感になっていた乳首を転がす様に愛撫しました。
さっきまでの感覚が蘇って腰から力が抜けそうになってしまった私は、振り向きざまにカズマを抱き締めて、『もうっ、カズマのえっち』と唇を奪いました。
昨夜は途中から完全に主導権を奪われっ放しになっていたので、今度は私から舌を差し込んで、思い切りおとなのおんなの恐さを教えてあげた‥‥、と思います。
朝風呂に行くと言うカズマが先に廊下に出て、人の気配がないことを確かめてから私を手招きで呼びました。
私はカズマの首に両腕を回して、愛しい気持ちを伝えたくて唇を重ねました。
今度は可愛いおとなのおんなの口づけで。
桶を小脇に抱え直したカズマも、空いた手で私の腰を抱いて応えてくれました。
このまま逃げる様に部屋まで走ろうかなとも思ったけど、おなかの下の方に残っている、痛みとまでは言えない違和感で、脚が思う様に動かせませんでした。
うふふ、私もとうとう大人になってしまいました。
大好きだと言ってもらいましたし、愛してると言ってもらえました。
音を立てない様にドアを開けて部屋に入ると、そのままベッドに向かってお布団に潜り込みました。
唇を指でなぞってみると、最後に口づけした時のカズマの唇の感触を思い出してしまって、零れる笑みを抑えきれません。
胸に両手を当ててほうっと大きく息を吐いたら、カズマの大きな手で愛撫された感触が蘇ってきました。
いやんいやんと身を捩りたい衝動を、枕をぎゅっと抱き締めることで、なんとか抑えたのは秘密です。
いつの間にか眠っていました。
ドアをノックする音で目が覚めた、もう窓の外は明るい。
部屋に入って来た三人は、どこに行ってたのか、いつ帰ってきたのか、心配していたぞと、口々に言っています。
頭まで布団を被って小さな声で、ごめんさい、一人にしてくださいと謝ると、三人は溜息を吐いてすぐに部屋を出ていってくれました。
皆に顔を見られたくなかったのは、いくら気を引き締めようとしても、幸福感で胸が一杯で、ついつい綻んで零れてしまいそうな笑顔を、とても抑えていられそうになくて恥ずかしかったからです。
また眠ってしまいました。
再びノックの音で目覚めた、今度はカズマの声です。
急いで起き上がってドアを開けると、小声でおはようと言ったカズマは、そのまま私を部屋に押しこんで椅子に座らせました。
何をするのだろうと思って見ていると、床に置いた桶にクリエイトウォーターで水を張って、聞いたことのない魔法でお湯に変えました。
これで体を拭いて身繕いをしたら、日課をしに行くぞと言っています。
モジモジしながら、とても遠くまでは歩けないのですと話すと、それは俺のせいだし、移動手段は考えているから大丈夫だと答えたのです。
馬車でも借りたのでしょうか?
部屋で待ってるからとドアを閉めてカズマは帰りました。
身を清めたらまた愛してくれるのかなと、少しだけ勘違いしていた自分が恥ずかしくなって、両手で熱くなった頬を抑えながらいやんいやんと身悶えました。
裸になって、カズマが温めてくれたお湯に浸したタオルで体を拭いていると、昨夜カズマが、唇で触れて手の平で撫でてくれた肌の記憶が鮮明に蘇ってきます。
いつのまにかおなかの下の方がじゅんとしてきて、恐る恐る指を伸ばしてみるとそこはしっとりと濡れていました。
ここにカズマのが入ってきたんだと思い出すと、ますますじゅんとしてきます。
私が名付けた聖剣エクスカリバーで、私は貫かれて止めを刺された、挿された?
いけないいけないと首を振りながら、妄想を追い出して、手で掬ったお湯で洗い流しました。
お風呂に行きたいと思ったけれど、食事を終えた皆が入っているらしい。
皆の前で裸になるのが、今朝はとても恥ずかしいと思えるのはどうしてだろう?
肌には何の痕跡も残っているはずはないけれど、それでもカズマに抱かれた体を同性とはいえ、人に見られるのがなんだか恥ずかしかったのだと思います。
落ち込んでいたはずなのに、そんなに表情が緩みっ放しなのはどうしてだと追及されでもしたら、つい口が滑ってしまいそうで怖い。
だからお湯を用意してくれたんだな、やっぱりカズマは優しい。
最初からそんな態度を見せてくれてたら、もっと早く恋人になってあげたのに。
まあ、それはありませんよね、私も子供でしたから。
そう、過去の話なんですよと独り言を言いながら、体を拭き終えました。
洗いたての新しいパンツを手に取って、ふと考えてしまいました。
レースで縁取りされた腰が浅い黒いパンツに足を通しながら、もう名実ともに大人になれたのですから、いかにも子供が背伸びした様な黒い下着というのも、どうしたものかと思いました。
やっぱりこういうのが似合う妖艶な雰囲気を持ち合わせていないと、イタいかもしれないと思えてきたのは、大人になった自覚と余裕があるからなのでしょうね。
アクセルの街に帰ったら、もっと自分の雰囲気に合ったものを買いましょう。
これからは無理に背伸びするよりも、若さや可愛さをアピールしようかな。
杖を持っていつもの魔法使いの装いで、辺りを気にしながら廊下に出たけれど、アクアたちの声は聞こえないし気配も感じないから、きっとまだお風呂に入っているのだろうと思います。
ひょこひょこと小さな歩幅で、カズマの部屋まで歩いてドアをノックすると、開いてるぞとすぐに声がしました。
ドアを開けて部屋に入ると、笑顔で迎えてくれたカズマは、一旦ドアを閉めてからローブの背中に手を回して私を抱き寄せました。
つばの広い帽子は、恋人同士が抱き合うのには適していませんでしたが、カズマはつばの端をひょいと持ち上げて、私の顔を覗き込む様にキスしてくれました。
この辺りの臨機応変さは私も見習いたいと思いながら、開いてる左手をカズマの腰に回して唇を吸い返しました。
恋人同士の自然な挨拶って最高です。
ひとしきりお互いの唇を堪能し合ったところで、さあ行こうとカズマは私の手を取って廊下に出ました。
手を引かれるままについて行くと、歩き難いと言った私に合わせてゆっくり歩いてくれましたし、階段も一段ずつ昇ってバルコニーに出ました。
バルコニーの端まで来たところで、カズマは右手の指で作った輪っかを覗いて、聞いたこともない呪文を唱えると、遠くを見回しています。
テレスコープ? そんな魔法があったんだ。
遠いところを視る魔法といえば千里眼だけど、視界全体が極端に狭くなるので、普通はじっとして首をゆっくり振らないと目が回ってしまうものなのに、カズマは指の輪っかを覗きながら、ひょいひょいと動き回っています。
そして、あそこがいいだろうと指差したのは、結構遠くの岩山の山頂でした。
爆裂魔法は遠距離攻撃の最たるものだけど、さすがにあれは遠すぎます。
ここから撃つのですかと訝る様な目を向けると、ニヤリと笑ったカズマは、私の肩を抱くと私もよく知る魔法の呪文を、わざとらしいくらい高らかに唱えました。
私のために手の平でお湯を温めて、指の輪っかで遠くを見て、魔法陣も使わずにテレポートする、私たちの常識の斜め上を行く私の恋人は、きっとそう遠くはない未来に、ちゅんちゅん丸でライトオブセイバーを見せてくれるのかもしれません。
そんな姿を想像したら、つい頬が緩んでしまいました。
「そんなあなたが好きですよ」
このセリフに至るめぐみんの言葉は、まんま引用させていただいております。
原作では未遂となった後のシーンですが、本作では事後のピロートークとして入れました。
どうしても外せないし、他の事を書くとわざとらしいし、そんなら腹を括ってぱっくりと。
はい、規定に引っ掛かったら書き換えます。