木曜日応接室デート
雲雀恭弥side
天姫はわざとらしい君付けで僕を呼ぶ。
「雲雀君、雲雀君」
「君付けなんて一切してないよ」
天姫は一瞬面喰い、言い直したけど全然駄目だ。
わざとらしい。
「……ヒバリさん、あのですね」
「僕の事ちゃんと呼んでないよ」
「……………恭弥さん、でしたっけ?」
「ワザとらしい」
なんでこんな回りくどい『嘘』つくの?僕で遊ぼうとしてるの?
羽のように軽い君を僕の膝に乗せ、幾ら視線を交えても彼女は真意を隠す。
「じゃあ、『恭弥』君。ソファって座るものでは?向こうにもあるんですし。なんで私の席は君の膝なんですか。なんで君の膝以外は座ってはいけないんでしょうか」
「だから君はいらない。それに君の場所はいつもここだったよ。これが当たり前だったんだから」
「………なんとなく違う気がします…」
「思い出したのかい」
「えっ!?いや、全然ですけど…」
「なんだ。じゃあ、君の身体自身に思い出させるしかないね」
そういって僕はグイっと彼女の体をソファに押し倒して僕は天姫の上に覆いかぶさった。天姫は気に入らない様子で綺麗なアメジストの瞳を吊り上げた。
「……なんで私は君に押し倒されているんですか」
「決まってるよ。僕を思い出させる為さ。忘れたままなんて事、絶対許さないんだから」
「だからって、なんで君に襲われなきゃいけないんですか!?理不尽です。やめっ、顔近づけないでください!」
「ちょっと、大人しくしててよ。こんなに反抗するなんて、やっぱり君、覚えるでしょ」
「そういう問題じゃないでしょう!」
涙目で言われても全然怒ってる風に見えない。逆に煽られる。
どうしよう、からかって反応を楽しもうかと思ったけど、ちょっと、本気になった。
ガブッ
「ひゃっ、あ!?」
君は耳が弱いみたいだから咬んでみた。案の定、いい声で啼く。
それが僕のスイッチを押す。というか最初から押されてたんだよ。
この空間に君と僕。
二人だけになった時からさ。
「僕から、逃げられるなんて思わないほうがいいよ」
得物を追い詰めるのが僕なんだから。
※
でも獲物を求めていたのは僕だけじゃなかった。さっきまでの弱弱しくしていた天姫は綺麗さっぱり消え去った。
彼女が妖しく微笑んで僕は一瞬の隙をつかれた、強制的に。
「私だって、『狩られる』より、『狩る』ほうなのよ」
知ってた?
そう天姫の口が形づく。
「えっ」
視界は一気に入れ替わった。僕の体はソファを下敷きにされていて天姫は僕の上で不敵に笑みを浮かべて獲物を追い詰める獣の目をしている。
さっきは僕が見下ろす体勢だったのに、今は彼女が僕に跨って見下ろしている。
僕の両手首はなぜか手錠がかけられ、動きを封じられていた。
冷たい金属の感触が肌に当たって冷たい。それだけじゃない。僕のかけられた手錠には縄が括り付けられておりその先をたどると天姫がその縄を片手にぐるぐると巻いている。
まるで、ペット。
彼女はぺろり、と赤い舌で唇を軽く舐める仕草を見せた。
いつの間に…形勢逆転された?
天姫は白のブラウスのボタンを片手で器用に外していく。
じっと食い入るように見つめる僕の視線を受け止めて恥じらいもせずに堂々と。
天姫の豊満な胸元がはだけ、黒のレースづかいのブラジャーが彼女の白い肌をこれでもかと強調する。
ふと、彼女の心臓の部分に妙な模様があるのがわかった。でもそんなもの今は気になる対象ですらない。僕は彼女に見惚れていたんだ。
総てが完璧だから。
天姫はしだれかかる髪を後ろに払い、目を細めた。
「私、見下ろされるよりも見下ろす方が好きなの。不思議だって思ってる?私がこんなことするわけないとか?うーん、見かけで判断してたとか。だったら……ム・カ・つ・く」
そろりと僕の下半身のある部分を膝で軽く押し弄ぶ。
うまれる刺激に僕は思わず声を漏らす。
「っあ」
それを垣間見た天姫は満足そうに目を細めて、
「可愛い反応、食べたいくらい」
クスクスと女の魅力最大限に天姫は微笑む。
そして、彼女の手がためらいもなくブチブチッと僕のワイシャツのボタンを無理矢理に剥ぎ取り、ボタンが飛んでいく。
寒い空気が僕の肌を撫でた。
「天姫…」
「ああ、そんな潤んだ瞳で私をみないで。私がほしいでしょう?快感に期待しちゃった?でも、あげない。私は意地悪女だから。『君だけ』弄んであげるわ」
そういって、つぅぅと指先で僕の胸をなぞり、その指先が僕の片方の乳首をきゅっとつまむ。
「っぁ」
「じわじわと、攻めてあげるわ」
楽しそうに言う天姫は僕の胸に顔を埋めて舌を器用に這わし始めた。
「んん!」
あちこち舐められ吸われ、生まれる刺激に身を捩り僕の体にはあちこちに赤い花がつけられる。
「こっち向いて」
「……ん」
顎を取られ命令されるままキスをされる。
焦らして焦らして、ようやく満足したのか天姫は薄ら寒い笑みで天姫は僕のズボンのベルトに手をかけた。手慣れた動作でそれを外しズボンを途中まで降ろされ残るは下着だけ。でもそんなの関係ないと天姫は遠慮なしに引きずりおろす。
すると案の定、あらわになる僕の熱い部分。それを見た天姫は
「あらあら!もう勃起してる。そんなに感じてたの?あれだけだったのに?」
と愉快そうにしつつ、彼女の繊細な手つきがやわやわと僕の部分を触る。
それは最初は優しく、だが徐々に激しくなる。
「やぁんっ、あっ!」
「あーあ、女の子みたいに声だしちゃって。情けなーい!」
僕を攻める目、言葉攻め、上と下とで交互に繰り出される彼女からのお仕置き。
散々弄ばれ、僕は喘ぎ声を上げ声は喉がカラカラだ。
両手首は今だ拘束中で快感から逃れようと暴れた時、手首に手錠と擦れから傷がついた。
あれからどのくらいの時間が過ぎたのか、体感時間さえ狂っている。
永遠のようだ。
ぼぉーとした意識のまま、ソファに横たわる僕を横目に天姫は乱れた姿のままミネラルウォーターが入ったペットボトルを手にしていた。
「………水がほしい?喉痛いでしょ」
天姫によって愛撫された箇所はまだ熱を帯びている。
天姫によってつけられたキスマークは数え切れない。
「ほし、い……」
まだ、君がほしい……。
「じゃあ、口移し」
天姫はミネラルウォーターを口に含み、僕に口移しした。
「んっ……はっぁ……」
水だけではなく唾液ごと受け止める。
絡み合う舌、そしてダイレクトに耳に響く甘い音。
「……はぁ、……んちゅ」
「……んぅ、天姫………もっと…」
どこまでも欲しても底がない。貪欲で一途で身体の底から疼く。
「まだ、まだ、足りない…よ」
「どれだけ強欲なわけ」
今の君と楽しんでも、僕を知らない君じゃ全然満たされない。
逆に飢えてしまう。
「天姫、はやく思い出してよ…」
『嘘』つかないで、僕を見て。
君がつく『嘘』はすぐに見抜けるんだ。だって君は『嘘』が嫌いなはずだろう?
真っ直ぐな君で誰よりも孤高な高みにいて下界を見下ろす『王』のように
君は真っ白であるべきだ。
それに、ね。
僕を君でたくさん満たして欲しい。
僕は君が足りない、足りなさすぎる。
「まだ言うの。愚か、愚かすぎ」
まだ、御仕置きが足らないのね。
そういってまた天姫はニヤリと笑う。
「いう、よ……何度でも…」
そして、また僕は御仕置きという名の愛撫を受ける。
僕と君。
どちらにもふさわしい名だと思わないかい。
(オダマキの花言葉は『必ず手に入れる』&『愚か』)
※
僕の天姫への愛は叫ぶだけでは足りません。なんですって?はやく終わらせろと?
神め、貴方、神男だなんて変なあだ名があるようですね。
クハハッハハハ!笑えすぎて顎がはずれそうです。
えっ?天姫が考えたあだ名ですって?
それを早くいいなさい!?天姫?決して貴女のネーミングセンスを疑っているわけではないですからね!信じてくださいね!冗談ですから!
僕の貴女への愛ですか!?もちろん決まっています。
ナズナですよ。
※
金曜日 黒耀センターデート?
六道骸編
ギラギラとした目つきで見下ろす骸とソファに押し倒された天姫。
昨日と言い今日といい、厄日だなと内心溜息。しかもいうにことかいて骸はなんとも大胆発言をかますではないか。
「天姫、子作りしましょう」
「……なんでこのパターンなんですか」
自然な流れでお互いに想いあって了承済みならいくらでも子作りでもなんでもすればいい。
だがあくまで天姫と骸は違う。
骸はどうだが知らないが、天姫は骸の対して恋愛感情というものは一切ない。
家族としてなら受け入れるが、パートナー(伴侶)は絶対ない。
それは彼女自身が受け入れようとしないからだ。
彼以外を。
さて、どうやってこの場面を切り抜けようかなと、色々と思案する天姫。
手段などいくらでもある。全てを思い出した天姫にためらいはない。
だが骸が傷つくことはしたくないのだ。
だから穏便にことを進めようと考えていた。つまり話し合いという解決方法で。
自身の弟、もしくは子供のように接してきた分、甘えもある。
あの時、厳しく躾けておけばよかったかもと、過去の行いを一瞬悔んだりなんかしちゃって。あのころに戻れないからこそ余計に強くそう思ってしまうのだ。
骸とて天姫とちっぽけ女を引き止めるために、たどり着いた策だろう。
そこまでして固執するほどの存在ではないというのに。
幾ら伝えたところでこの頑固者が納得するとも思えない。
悲しいかな、そういうところは自分と似てるかもと自覚してる天姫であった。
骸は、一人の男として天姫に優しく諭すように話しかけた。
「貴女が記憶を取り戻さなかった場合、この世界に留まらないのでしょう?ならば、既成事実を作り僕の子供を宿してもらうのが一番貴女を引き止める理由になります。ですので、子作りを。大丈夫、安心してください。優しくしますから」
だが、なんて安易な考え方と天姫は内心で卑しめた。
たとえばの過程であるとしよう。
私が子供好きだから自分の子なら喜んで愛すると骸は考えた。
たとえそれが望まぬ形で出来た子、だとしても私なら愛するに違いない。
これは骸の勝手な思い付き。
私ならこうするだろうと予測した結果での答えなのだろう。
だがもし、私がその答え通りにいかなかったとしたら?
Ifの世界も悪くないかもしれない。けど、物語は淡々と進むとは、限らない。
「あーあー、ショックだわ」
「天姫?」
わざとらしく大声で言う天姫に骸は怪訝そうに名を呼ぶ。
見下ろされるのは嫌いなので自ず天姫の声は低くなった。
「優しくしたのは私のほうだったんですけどね」
「…なんですか、それは?」
天姫の意図する言葉がわからず視線を険しくする骸。
「雲雀君にも襲われました。君にも今襲われています」
「っ!?では、貴女はすでに奴の物に!?」
「勝手に勘違いしないでください。ちょっと遊んだだけです」(一方的にだけど)
「クッ、先に手を出されたとは…しかし、チャンスのようですね」
「……ダメですね、このぱいなぽーは」
どうやら闘争心を煽ってしまったらしい。俄然やる気になっている。
というか、なんでこんな子になってしまったんだろう。
やっぱり育て方間違えてしまったのだ。愛情は分け隔てなく注いだが、それだけではだめだったらしい。
「さぁ、天姫、僕と合体しましょう」
吐息がぶつかるくらい近くなった端正な顔。ギラギラと向けられる熱い視線
餌にかぶりつく獣のようだと天姫は思った。
「…………どうぞ、ご自由に」
天姫はあきれ返った様子でおなざりに返事した。抵抗することもなく、ただあるがままの体制で骸を見返した。
すると先ほどまでの勢いはどこへ行ったのか、骸はへにょりと眉尻を下げた。
寂しい、悲しい、不安、色々とごちゃごちゃになった感情をありありと表情に出して。
こうして自分の前だからこそ、骸はこんな顔を見せる。
天姫はその様を冷静に受け止めた。
馬鹿な子。
そんな気落ちするくらいならこんなことしなければいいのに。
可愛い子、縋り付いて行かないでくれと泣けばいいのに。
喚いて、駄々こねて癇癪起こして。
でも、骸は泣かない。
この子は強い子だから滅多な事じゃ泣かないだろう。私が消えてもきっと泣かない。
つまらないわね、と天姫は思った。
自分の前で素直なこの少年を泣かせたい。
じわっと加虐心が沸く。そう、仕方ない。認めよう、天姫は苛めてみたいのだ。どんな反応するのか見てみたいのだ。自分からの影響を強く受け止めるこの、六道骸の隠された一面を。
この、手で。
「………天姫」
母親に悪戯を叱られた後のしょんぼりとした子供みたいな顔で骸は天姫に縋ろうとする。だが天姫は早口で攻め立てた。
「どうしたのですか?しないの?君は私がほしいのでしょう?私は君を愛さないけど君は私がほしい、繋ぎとめるためにそうするのでしょう?なら、なぜそんな顔をするんですか?」
「僕は、貴女を愛しています。でも貴女の身体目当てでこうしているのではありません!!僕を」
天姫は興味ないと骸の言葉を半分聞き流した。骸が自分に対して何かを一生懸命伝えようとしているも、それすら興味にない。
愛している?愛は単純じゃないんだよ。
もっとおどろおどろしくてドロドロしていて根深いもの。
愛が入れ替わって憎いとも思う事だってある。
それを彼はまだ知らない。知らないから毒づく。
「甘い」
ぐっと互い視界は暗転する。突如動きを変えた天姫に手によって。
見下ろしていたはずがいつのまにか見下ろされている体型に入れ替わったことに骸は戸惑いながら叫ぶ。
「っ、天姫!?」
骸は天姫の腕を抑えようと手を伸ばすが、先に天姫が骸の両手首を抑えた。
抵抗しようとすればできた。だが骸にはできなかった。
自身を見下ろす天姫の瞳があまりに底冷えしていて、尚且つ、自分以上に熱を帯びていたから。頬は紅く興奮状態にあって、口元に歪な笑みを浮かべて、爛々と目を妖しく光らせて躯を見つめる。
ああ、そんな大きな瞳で見上げて。
そう、お前にはその怯えた顔がよく似合う。
おのずと口角が上がった。無意識にだ。
弱者をいたぶる快感が蘇ってくるのだ。もともと天姫の中に隠されていた性癖。
攻めて、相手をいたぶって、じわじわと追い詰めて、でも時折飴を与えてながらえさせる。
精神的に肉体的にほんの指先一つくらいの余裕を与えて、すぐにまた攻める。
それを感覚的に短くして繰り返す。調教ともいう。
そうして相手が人格に支障をきたすまで、行うのだ。
どちらが優位であるかを、どちらが上であるかをわからせるまで。
たとて口先だけであっても、中身は真に理解していないのだ。
だから、とことんわからせる。
骨の、隋まで隅々にいきわたるように。
「甘すぎよ、六道骸。どんな相手にも隙を見せてはいけないもの。ましてや、得体のしれない女の前で浅はかね」
本来の六道骸は容赦なしに敵を追い詰める。
生きるために、そうしてきた。
だが今はどうだ!たった一人の女に骨抜きにされて甘さが染み付いてしまったんだ。
どうでもいい女に人生を捧げることすら厭わないとも思わせる。
これはしっかり『再教育』せねばいけない。
愛がいかに愚かで
「無秩序で」
「天姫?」
どろどろで
「天姫!」
「人を壊す要因で」
「本能すら麻痺させる、毒」
そう、
愛とは偽り言であると。
「遊んでほしいのでしょう?その身に私を刻みつけたいのでしょう?だったらそうしてあげます。私という快感を君にあげましょう。でも繋がる気はさらさらありませんよ。だって私が君で遊んであげるのだから」
嫌な気持ちを植えつけてあげる。
普段の私がしない事を教えてあげる。
そして、存分に嫌いになるといいわ。
抵抗の意志を無くした骸に天姫は首筋に顔を寄せ荒々しくキスをし、時に咬みついた。
「くっ」
痛みからうめき声をあげる骸。天姫は咬みついた後を丁寧に舐め上げてちゅっと吸い込む。抵抗の意志は感じられないと天姫は骸の首筋を舐め上げつつ、拘束していた手首から手を離し、学ランの下に着られているTシャツの下からそろりと手を忍ばせる。
冷たいひんやりとした手に骸は体をビクン!させた。蛇のように絡みつくようなしぐさで侵入していき、胸の突起を軽くいじった。
途端、
「んぁっ!」
と骸の反応のイイ声がした。
「いい声で啼くこと。もっとも、その可愛い声がもてばいいですけど」
天姫は骸のTシャツを捲し上げ、じかに骸の乳首に吸い付いた。
「ァあ」
もう片方は指先でいいように弄ぶ。
つまみ、
「んん」
ひっぱり、
「っひ!」
ぐりぐりとねじこむ。
それだけでなく、彼の大事な大事な下半身の部分を膝でくいくいっと強く押した。
「ヒッ!……んんっ!」
彼のソレは正直に反応し窮屈そうにズボンから盛り上がっている。
早く戒めから解放してほしいようだ。
私に欲情してたみたい。
この、私に。この私の躰に?それとも私自身に?
聞いてあげる気はないわ。
「凄い反応してる、……気持ちいいの?発情しちゃって……はしたない子」
「天姫…」
これだけ苛められてもまだ足りないと骸はそう訴える。
「しかも固い…随分と、たまってるのね。夜遊びは習わなかったのかしら。意外と純情仕様。だったらその点は花丸あげちゃう。でも」
いっそのこと満たされない快感を与えつづけそして壊れてしまえばいい。
そして、知りなさい。
私という愚かな女におぼれてしまった己の無知さを。
「すぐには満たしてあげない。だって調教だもの」
私の前でたくさんたくさん披露なさい。
さぁ、私と骸との愉しい調教の時間が、始まった。
(ナズナの花言葉は『すべてを捧げます』)