屋外では依然として吹き荒ぶ嵐の最中、その雨粒が宿の窓を叩き、地響きの様な雷の音が大きく辺りへと木霊していた。
「おこっている」
「それは悪魔がという事か?」
「そう」
するとシャーロットはその場で天を仰ぐと、虚空を眺めてやはり抑揚の欠けた声色で呟いた。
何でもシャーロットの言う所ではこの嵐は悪魔の怒りを露わとしたものであるらしい。
「馬鹿な‥。天候を操る魔術など、どれだけの労力が掛かると思っている‥」
「でも、じじつ」
「‥今更君を疑うつもりは無い。だが相手は一体何者だ?俺達は何と戦っている?」
「たたかうひつようはない」
「しかし‥」
「あなたは、かみさまのところにいかなくてはならない」
続けてシャーロットは凡そ正気を疑ってしまう様な言葉を言い放つ。
「教会に行くと言う事か?」
「ちがう」
何らかの比喩表現かと思い、ヘルゲイはそう問うたが、シャーロットは至極真剣な面持ちで否定した。
無論シャーロットがそれ程言葉巧みで無い事を理解しているヘルゲイは、すぐさまその意を悟るに及んだ。
どうやらシャーロットは本気でその神とやらの元に向かおうとしている様だった。
「ここから、いく」
「本気か?」
「ん、そのためのおはらい」
とはいえ虚言を弄してシャーロットに一体何の得があるのだと言うのか。
否、シャーロットがその様な馬鹿馬鹿しい嘘をヘルゲイに吐いたところ意味はない。
それは火を見るよりも明らかだ。
ならば純粋にシャーロットの頭がおかしいのかと言われればそれもまた違うだろう。
なぜならば、その語る言葉の内容こそ突飛もない事であるものの、確かに少女の瞳には理知的な光が宿っていたからだ。
そしてシャーロットには狂人特有の仄暗い感情の発露も無い。
そも彼女が信用に足る人物であると言うのはヘルゲイが、一番その身に染みて心底から理解していた。
故にこそあまりに現実離れしたシャーロットの語る言葉には動揺を隠せない。
思わず怪訝な面持ちを露わとしてしまったのもその為だった。
それもそのはずでヘルゲイという男は当然ながら無神論者であり、敬虔な信徒で神を熱く信仰する輩などとは相容れないタチである。
だからこそ現在ヘルゲイは判断に迫られていた。
果たしてこのままシャーロットの言う神様の所になど本当に行ってしまっても構わないのかと。
無論シャーロットには悪意が全く無いというのは、その様子からして一目瞭然である。
だがしかし、急に神という存在を信じろと言われて素直にそう出来るかと問われればヘルゲイは否と応える事しか出来ない。
「ふふく?」
「いや、そうでは無い。ただ、君の言う様な存在が本当に居る事に些か驚いてしまった」
「‥そう」
可愛らしく小首を傾げるシャーロットに、ヘルゲイは端的に述べた。
「申し訳ないが、今すぐにそれを俺が心の底から信じると言う事は不可能だ」
「かまわない」
だが少女はコクリとひとつ頷くと、特段ヘルゲイを非難する素振りも無かった。
「あなたは、あなたのままでいい」
そして相変わらず情緒の欠落した声色でそう続けた。
しかしそれは大変聞き心地の良いまるで暖かいミルクの様な甘さのある声であり、ヘルゲイも不快には思わなかった。
寧ろシャーロットの声にはヘルゲイを何処か安心させる様な力があった。
それからヘルゲイは再びシャーロットの身体を清める事に集中した。
というのも既に下腹部までヘルゲイの手は及んでおり、ツルツルとした滑らかな肌に布を這わす。
そのまるで吸い付いてくるかの様にみずみずしい、少女の柔らかな剥き出しの肌にヘルゲイは触れていた。
だがそれもあらかた終えられてしまい、後に残るのはシャーロットの下半身であった。
当初からヘルゲイが問題にしていたのは其処で、上半身よりも余程触れるのが憚られる。
「本当に良いのか?」
「ん、いいの」
一応その意味を兼ねた許可をシャーロットへと取ると、平素通りの感情が希薄な声が返ってきた。
とはいえやはり羞恥を覚えているのか、シャーロットの頬には僅かだが紅が差していて、其処には少なからず常時との変化が見られた。
無論それは当然の事で、何せシャーロットが幾ら感情の機微に乏しいといっても、その実彼女が未だ年頃の少女である事実に変わりはない。
故に自らの女性器を他人、それも異性であるヘルゲイに見せるなど本来ならもっと羞恥を感じて然るべきなのだ。
にも関わらず一体何故シャーロットは己にここまで自らの身を許すのかヘルゲイには甚だ検討も付かなかった。
「これは、ひつようなことだから」
「そうか」
すると少女はヘルゲイのそんな心中をまるで見透かした様に、外気へとその股間を露わに一言口とした。
これに門外漢のヘルゲイはただ頷くのみにとどめて、改めて腰を落とすとシャーロットの下半身に向かいあった。
そして其処には、真っ白でシミひとつ見当たらないまるで人形の様な誂えの純白の裸体が外気へと晒されていた。
更にくびれのある腰付きは、少女のその年齢に反して酷く艶かしい。
それを支える少しばかり大きな太ももは、華奢な肩と比べても程良く脂肪が乗っていて、シャーロットの栄養状態が大変良好な事を示していた。
だがこれらよりも余程目立つのは、シャーロットの僅かばかり浮き上がる膣口であった。
その土手状になっている恥丘は、しっとりと湿り気を帯びていて、それが布地越しにでもヘルゲイへと伝わってきた。
当然それは生理現象であろうが、流石のこれにはシャーロットの女性器を清めるに際して、ヘルゲイも多少の躊躇いを覚えてしまった。
故にぴっちりと閉じたその剥き出しの縦筋に対してヘルゲイは慎重に布地を当てがい、必要以上の刺激を与えない様に努めていた。
「んっ‥あっ‥んんっ」
「すまない‥。痛かっただろうか?」
「ん、へいき」
ただどうしても微弱な感覚はシャーロットに否応にも送られてしまう様で、彼女は自らの手のひらでヘルゲイの五指ごと割れ目に押し付けてピクリとその身を震わせた。
と、そんな一幕を経た後、張りのある太ももを拭くと、長く艶かしい脚のその付け根から丹念に爪先まで布地を肌に伝わせた。
するとこの折に都合ヘルゲイは、シャーロットという少女の若々しい肉体が如何にして柔らかで、そして女性的魅力に満ち溢れているのかを否応にも思い知らされる羽目になった。
「これで終いだ」
「‥ん、ありがとう」
ただこれでシャーロットの裸体を全て拭き終えた事になり、漸く葛藤から解放されるとヘルゲイは思った。
だがそんな風に一息付けると油断していたのも束の間、間髪置かずシャーロットは再びヘルゲイに言葉をもたらした。
「ぎしきをする」
「成程。具体的にそれはどういった事をすれば良いんだ?」
すぐさま与えられたシャーロットの求めに応じて、ヘルゲイは休まらない二転三転する事態に気圧されながらも如何にか対応した。
「わたしをだいて」
「は」
「こっち」
するとシャーロットはその場でしゃがみ込むと同時に、床に落としていたワンピースのポケットから十字架のロザリオを取り出した。
次いでそれを手にしたまま、同所に備え付けられているベッドに腰を落ち着けると、自らの太腿の上を手でポンポンと叩いた。
「きて」
「だが‥」
「わたしは、いや?」
「そんな事は無い。ただ、あまりに唐突過ぎる」
「‥そう」
そしてヘルゲイの躊躇いを感じ取ったのかシャーロットは何処か寂しげにその美貌へと翳りを見せた。
「ひつようなことだから」
「‥ああ。分かった」
けれどシャーロットにもこの場を譲る気配は無く、至極真剣な面持ちでヘルゲイを見据えていた。
これにはヘルゲイも迷いを振り切り、シャーロットの言葉に応じて承諾し、首を縦に振って了承の意を示す。
「ん。ここ」
それから少女は自らの腰掛ける寝台の真ん中を指差して、その要求をヘルゲイへと伝えた。
「其処で横になればいいのか?」
「そう」
相変わらず拙いシャーロットの言葉と身振りの意図を汲み、ヘルゲイは言われた通りベッドの上で仰向けになった。
と、次の瞬間には驚くべき事だが、そのヘルゲイに続き、シャーロットも異性の男がいるベッドの中に躊躇いなく入ってきた。
「あなたも、ぬぐ」
次いでシャーロットは腹の上に馬乗りになったと思いきや、ヘルゲイの衣服をその言葉通り脱がし始めた。
「待ってくれ、それは本当に必要な事なのか?」
「ん、ひつようなこと」
そんな予期しないシャーロットの行動に否応にも声を挙げてしまったヘルゲイだった。
ただ、少女はヘルゲイの言葉にも気にした素振りが無く、淡々とした抑揚の欠けた調子で頷いた。
そして少女は真摯に訴える様に再び口を開く。
「おはらいをする」
そう言って彼女は続けた。
「かみさまのところにいく」
時刻は未だ屋外では嵐が吹き荒び、激しい雨音が窓を叩く夜半。
そんな暗闇が支配する一室で、蝋燭の仄かな灯りが辺りを照らしていた。
その暖かな光を背にシャーロットはやはり感情の色が希薄な大粒の宝石の様な瞳で、ヘルゲイをただ見下ろしていた。