暫くの間ヘルゲイはシャーロットの身体を丹念に拭いていた。
艶やかな少女のしっとりとした肌は、布地が其処に触れる度に柔らかな感触をヘルゲイへと与えていた。
それは二の腕、無毛のツルツルとした脇の下、華奢で少し強く触れただけでも折れてしまいそうな肩、そして滑らかな曲線を描く豊満な乳房にも及んだ。
其処は少しでも力を加えるとまるで押し返してくるかの様に、柔らかにその身を弾ませた。
加えて色素の薄いピンク色の乳首は傍目にも理解出来る程に勃起していて、その先端を尖らせていた。
だからそれを出来るだけ気にしない様、ヘルゲイはなるべく刺激を与えない為に、優しく適切な力加減で布を滑らせた。
けれどやはり流石に直に触れてしまえばヘルゲイとて立派な雄であり同時、その肉体は全盛期であった。
故に気がつけば自ずと股ぐらの逸物は鎌首をもたげていて、衣服越しにもその大きな膨らみがシャーロットにも確認出来るに違い無かった。
─最悪だ‥
するとこれに内心で己に失望を隠せないヘルゲイは、理性とは裏腹次第に湧き上がる欲望を忌避した。
無論これはヘルゲイの人生においては初めての事であり、十代の時などは寧ろ欲望を原動力にして底辺から這い上がった。
にも関わらず現在ではそれに嫌悪すら覚えており、陰茎に血が巡る事に怒りすら感じられた。
途端に焦燥が背筋を襲いきて、ヘルゲイはシャーロットに己の晒した醜態を気取られない事を只々祈るばかりであった。
「‥だいじょうぶ。それはしぜんな、いとなみだもの」
だが次の瞬間にはそんなヘルゲイの杞憂を他所にして、シャーロットは暖かみのある声で語って見せた。
「あたりまえのこと。だからへいき」
「だが‥」
「いいの」
「すまない」
それも表情こそ変わらないもののシャーロットの冷たい美貌が今だけはヘルゲイにとって穏やかに微笑んでいるようにも見えた。
けれどそのお陰でヘルゲイは自分自身がまるで穢れた存在である事を突きつけられた様で、情けない思いに心中を支配された。
己は自身の欲望すら自制出来ないのかと、あまりの至らなさを恥じ入った。
それも必然、シャーロットという美貌の少女と対面しては誰もがこう思うに相違ない。
何せ彼女はそれほどまでに清廉であり正しく人の身でありながら、女神の様な美しい顔立ちをしていたのだから。
だからこそ人々は光に照らされてその内心に潜ませる影をおもてに浮き彫りにする。
そして露わとされた自身の薄汚い心底を見透かされてしまい否応にも自らに失望してしまうのだ。
「‥へいき?」
「ああ。ただ君はこんな事を俺の様な男にされて何とも思わないのか?」
「あなただから」
「君と出会ってまだそれ程経っていないはずだ‥」
「‥いや?」
「勿論君にそう言われるのは嬉しい。だが安易に男を信用しない方が良い。君の様な少女は特に」
「わかった。きをつける」
「そうしてくれ」
そうして少しばかり落ち込んでいたヘルゲイの機微を悟ってか、シャーロットはやはり抑揚の欠けた声で問うてきた。
これに応じてヘルゲイは少女のその人形の様な無防備さに危機感を覚え、要らぬお節介だと理解していたが気がつけば忠告していた。
そう注意を促されたシャーロットは依然情緒に乏しい面持ちで、そのかんばせを縦に振り首肯した。
無論そんな会話を交わしている間にも気まずさから気を逸らす為に手だけはなるべく止めない様努めていた。
だがそれが仇となり遂にヘルゲイの手は子供特有のふにふにとしたシャーロットの腹部へと至る。
「んっ‥」
するとシャーロットはぴくりと身体を震わせてその身を捩る。
「くすぐったい」
ただ表情は冷たいまま少女は次いで一言、自らの要求を口とした。
「もっとつよくしてほしい」
「それは‥構わないが良いのか?」
「ん、かまわない」
「そうか」
どうやらくすぐったかった様で、先程のはそれを耐えた反応であったらしい。
それにしてはやはり少女の面に出す感情は希薄であり、およそ年頃の少女の振る舞いとはとても思えなかった。
そう、ヘルゲイが知る限りではシャーロットくらいの年齢の者達は皆元気溌剌として、正にこの宿屋の店員程が丁度良いだろう。
にもかかわらずシャーロットはその推測できる齢に反して、極めて寡黙であった。
或いはシャーロットが適切な生育環境に置かれていなかったという可能性もあり得るが、果たしてこれ程に善良な彼女がその様な事よく考えてみれば有る筈が無い。
だがやはり同年齢と比較して明らかに言語の発達は遅れているし、シャーロットの年齢ならばもう少し口達者で然るべきだろう。
増してや男児よりも少女の方が弁舌が立つとの噂も小耳に挟んで聞いた覚えがある。
これに加えてその突出したシャーロットの美貌は、より一層彼女自身を浮世離れさせている一因の一つだろう。
スッと通った鼻筋に、艶やかなみずみずしい唇。
そして形の良い眉に、プラチナブロンドと同色の白金の長い眉毛に縁取られた大粒の宝石の如きシャーロットの瞳は、傍目にも見て良く映える。
まさかこれ程の美貌は一国の美姫にしてもそうは居まい。
否、ヘルゲイは未だかつてシャーロットに勝る容姿の持ち主を見た覚えが無かった。
少女はその表情の乏しさに反して、顔立ちは美しかった。
極めて綺麗だ。
その分、まるで感情の希薄さと言語の拙さを引き換えに代償として支払ったかの様だ。
とはいえ無論シャーロットにも欠点があり、それは彼女が極めて無愛想だという事だ。
だが本来はそれも大した事では無く、実際にシャーロットとの言葉を交わしてみると、その人懐っこい性格が理解出来るだろう。
だからこそこうした不安定な差異が、殊更に少女へと掴み所が無い印象を与えていた。
それは見る者が受ける印象が極端に分かれると称するべきだろうか。
正にそれこそが少女をシャーロットたらしめる所以であり、故にその神秘性が其処にはある。
それもそのはずで、何を考えているのか分からないシャーロットに人々は少なからず知的好奇心を抱くであろう。
或いはその美貌に釣られてか、当初はヘルゲイも単純な関心からシャーロットに話し掛けたのだ。
そして今に至ってはシャーロットは自らの裸体を外気へと惜しげもなく曝け出し、それにヘルゲイが奉仕をしているといった塩梅だ。
そう、シャーロットという存在は端的に言って、ヘルゲイからしてみれば不思議な印象を受ける少女である。
だから例えまかり間違ってもそんな相手に対して欲情などしないと心に誓っていた。
けれど未だ穢れなき純白の少女を前にしてはヘルゲイの男の部分が己の色に染めたいと、膨張を続けているのもまた事実である。
「くるしい?」
するとヘルゲイ自身気付かずにシャーロットに見惚れてしまっていた所に、再び声が与えられた。
「すごく、くるしそう」
眼前の少女はヘルゲイ股座の張り詰めた陰茎を衣服の布地越しに見下ろして、何処か切なげな声色で呟いた。
そう何と、凡そ目の前の清廉なシャーロットがとても平素では言いそうに無いヘルゲイの勃起した陰茎に関して言及したのだ。
「‥男は如何してもこうなってしまうんだ。許してくれ」
「いいの、しぜんなことだもの」
「本当にすまない」
「でも、どうして?」
次いで少女は弁解を諦めたヘルゲイの素直な謝罪に対して、更なる追求をした。
つまり何故今ヘルゲイのペニスが勃起しているのか、その理由をどうやら問うている様だった。
「それは‥君がその‥魅力的だからだ」
「みりょくてき?」
「ああ、可愛らしいという意味だ」
「‥そう。ありがとう」
「いや、良いんだ。それよりも不快じゃ無いのか?」
「なぜ?とてもうれしい」
「俺みたいな男にそう言われてもか?」
「ん、あなただから」
先程からヘルゲイの疑問にはやはり同様の返答がもたらされるのみであり、それを特段シャーロットはおかしいとは思っていない様だ。
ただ明らかにヘルゲイからすれば違和感が拭えず、一体どうしてシャーロットがこれ程までに己に信を置いていてくれるのかがまるで理解出来なかった。