その1 有原翼
【D.C.〜ダ・カーポ〜】
……自分が母さんと同じ選択をするなんて思わなかった。
問題の先延ばしなのは分かっていた。せめて、この子にはできる限りの自由を
男性「やあ!大丈夫かい?」
男の子「??」
男性「キミの名前は葛木夏姫」
「ボクかい?ボクの名前は桜内義之だ」
さくらさん。俺の母親のように『ボク』としたのは、俺の記憶がそうさせたのか……
男性「とりあえず、ボクの自宅に行こうか」
「暖かいご飯もあるし、桜姫もきっとキミに優しくするはずだ」
これは有り得ないパスのお話。
『枯れない桜』物語は、悲劇は繰り返される……
【1】
十数年後 風見学園高等部入学前の春
ピン……、ポーン………
夏姫「帰って来ちゃいました」
さくら「お帰りなさい。夏姫くん」にこにこ
夏姫「はい……」
さくら「なにを暗い顔してるのさ!」
「まずは入った入った。あっ、隣の方がいい?」
夏姫「いえ」
(由夢ちゃんの家……、朝倉家に電気が通ってる?)
居間
さくら「はい。お茶」コトっ
夏姫「ありがとうございます」
さくら「まったくもう。数年本土で暮らしてる間に他人行儀になっちゃって~」
「こんなでも、義之くんの母親でキミのおばあちゃんなんだからね」
夏姫「すみません」
(この幼児体型のおばあちゃん、さくらさんがどうやってお父さんを産んだのか?未だに不思議ではあるが……)
さくら「ボクは一応日本に残って初音島でのんびりしてたからね」ズズズ
「夏姫くんもまた野球をやれるようになるまではここにいなよ」
さくら「おまんじゅう食べる?」ポン
夏姫「いただきます」はむっ
(もらっておこう)
さくら「美味しい?」
夏姫「はい」
さくら「もちろん。笑顔になれる『魔法』つきだよ」
「夏姫くんも出せたよね?おまんじゅう」
夏姫「出せると思います。多分……」
さくら「それでいいと思うよ」にゃはは
「『魔法』なんて、日常の中ではそこまで使うタイミングはないからね」
さくら「そうそう。夏姫くんと同じように春からあと2人ここに来るんだよ」
「女の子だから、隣の朝倉家で生活してもらう予定だけどね」
夏姫「そうなんですか?」
さくら「魔法使い見習いの子がね」
夏姫(『魔法使い』………)
さくら「試験に通っていれば同じ風見学園だし。仲良くしてあげてよ」
「それと、翼ちゃんが困っている時は助けてあげて欲しいな」
夏姫「分かりました」
(試験に通っていればかぁ〜……)
さくら「でも、くれぐれも間違いのないようにね!夏姫くん」
夏姫「あ、あるわけないじゃないですか!」///
さくら「ごめんごめん」あははは
「音姫ちゃんの息子なら、間違いも起こらないか」
数日後
翼「ごめんくださ〜い!!」ピンポーン
夏姫「あっ、はい……」
さくら「いいよ。翼ちゃんたちかもしれないから、ボクが出るよ」
翼「さくらさんですよね?」にこっ
さくら「うんっ!待っていたよ、翼ちゃん」
智恵「あのっ…!はじめまして、芳乃さん」
「私は。翼、有原翼さんと一緒に来た『河北智恵』と言います」
さくら「智恵ちゃんのこともご両親に話は聞いてるから」
「Welcome. 翼ちゃん、智恵ちゃん」
ガラガラ〜〜!
さくら「夏姫くん。翼ちゃんと智恵ちゃんが来たよ」
翼(夏姫?あの男の子と同じ名前だ……)
夏姫「今お茶持ってきますね」
翼「!!!」
(うそ……)
智恵「あの男の子だ」
夏姫「へっ?」
さくら「やっぱりか〜」にやにや
(翼ちゃんから聞いてもしかしたらと思ってはいたけど、夏姫くんだったんだね)
翼「………なんで?」
「かつらぎ、葛木夏姫さんがここにいるんですか!?」
夏姫「なぜというか、さくらさんは俺の祖母にあたる人なので……。ですかね?」
翼「なんだぁ〜」
「たまたま自宅に帰っていただけなんですね」
夏姫(それは)
翼「野球はどうしたんですか?」
「夏姫さんなら。界皇でも、向月でも引く手あまたですよね?」
智恵「落ち着きなよ、翼」
……………
………
翼「肩が故障……」
夏姫「ああ。ゴメン、有原さ」ビクっ
翼「治します!!」
「私、できますから」
智恵「ちょっ、翼!」
さくら「翼ちゃん!」
ぽわあぁ…。プスン……
翼「えっ、なんで」
夏姫「それは」
さくら「夏姫くんもまた優れた魔法使いの素質を持っているんだけど、逆にそのせいで回復系の魔法もあまり効果が無い……。はっきりと言えば効かないんだ」
翼「そんな、私の『夢』なのに」
夏姫「すみません。有原さん」
翼「そんな……」
智恵「翼、そんな顔するのは夏姫さんにもさくらさんにも迷惑が掛かるからさ」
翼「うん。夏姫さんは悪くなくて」
「私が勝手な期待を抱いただけで……」
夏姫(やり方がないわけでもない。無理をしてでも、次の『お役目様』の望みなら)
さくら「夏姫くんも変なこと考えたらダメだよ」
夏姫「さくらさん……」
さくら「さて、ボクは2人に使ってもらう予定の『朝倉家』の案内をするから」
「夏姫くんは夕飯の準備をしていてよ」
商店街
夏姫「さてと」
(あの2人をもてなす料理と言われてもな〜……)
咲「あ、葛木くん」ノシ
夏姫「近藤さん」
咲「葛木くんも夕食の買い出し」
夏姫「そんなところかな」
咲「なるほどね……。さくらさんの話し方だと葛木くんが普段作っている料理でいいんじゃないかな?」
夏姫「一応、大切なお客さんみたいだけど」
咲「手抜き料理でなければ、大丈夫だと思うよ」
「本当に重要な相手なら、葛木くんに任せはしないだろうし」
夏姫(確かに……。まだ近い由夢ちゃんを呼ぶよな)
「ありがとう、近藤さん。それならカレーか」
咲「ちょっと待って!」
「桜内家のカレーは美味しいけど、初対面だとカレーは好き嫌いがあるから」
夏姫「危なっ、本当に助かったよ」
咲「どういたしまして。じゃあ、頑張って」
夏姫(そうだ!!)
柴田屋
夏姫「諳子さん、ぴょん太焼きまだありますか?」
逢見諳子「季節の味は今日はもう売り切れちゃったけど、普通のあんこなら残ってるよ」
夏姫「じゃあ、4つで」
諳子「はい。どうぞ」ふふっ
「帰り道、車に気を付けてね」
夏姫「ありがとうございます」
台所
夏姫「すみません。手伝ってもらって」
智恵「気にしないでください」スッスッ
「私はこのために付いてきたんですから」
夏姫「あとで俺にもその辺を聞かせてください」
「っと、古いキッチンなんで揚げ物はやります」
智恵「分かったよ」
翼「私も、少しくらい料理ができるようにはなるんだった〜」
さくら「夏姫くんの料理も絶品なんだよ」
「あと、カレーの腕前は年々義之くんに近づいてきてね」
翼「楽しみかも」にこにこ
夏姫「とんかつにしてみました」
翼「おお〜!!」じゅる
智恵「コラ。さすがに、自宅じゃないんだから」
夏姫「こっちにも、待てそうにない人が一人」
さくら「バレた?」
夏姫「さくらさんが家長ですから、食事前の挨拶頼みます」ちらっ
翼&智恵「」こくん
さくら「それじゃあ」
4人「いただきます」パチ
翼「美味しい!!」パクパク
智恵「うん、うん、、。美味しいよ」
夏姫「そうですか」
さくら(よかったね)
夏姫「食後のおやつに『ぴょん太焼き』でもと買ってきました」
さくら「えぇ~!買ってきたやつなの?」
夏姫「『アレ』は泥棒みたいなもんですよ」
「カロリーこそ消費するんで、釣り合ってますが……。初対面の人には出せません!!」
さくら「でも、ボクは夏姫くんのが食べたいよ~。お饅頭でいいからさ」
夏姫「分かりました」
ぽむっ!!
智恵(和菓子、本当に出るんだ……)
翼「それって、立夏さんの魔法ですか?」
「夏姫さんも使えるんですね」
夏姫「えっ、ああ。よく知ってるね」
「一応、魔法はお母さんから基礎の基礎だけは教わっています」
翼「じっくり見たいんで、もう一度和菓子を出す魔法やってくれませんか!?」
夏姫「いいですよ」ぽむっ
さくら「でも、その前にキミたちは『ぴょん太焼き』を食べなよ」パクっ
翼「いたらいらす」っはむ
智恵「もう」はぁ
翼「………!!…美味しい」
「この和菓子、どこに売ってるんですか?」
夏姫「商店街の『柴田屋』さんです。今度案内しますよ」
翼「いいんですか!」
……………
………
朝倉家
さくら「今日はもう遅いから、とりあえずで片付けた部屋のベッドで休んでよ」
翼「助かります」
智恵「私の部屋までいいんですか?」
さくら「年頃の女の子だったらプライバシーは最重要事項だからね」
「2人で寝たかったら、適当に」
智恵「えっ?」///
翼「ともっち。今日は2人で寝ちゃう?」
智恵「もう!翼ってば……」
「私たちだって子どもじゃないんだよ」
さくら「あはは!!それと、本格的な魔法の修行は今の生活に慣れてからにするから」
「朝も普通の時間に起きてね」
翼「分かりました!」