『昨夜のお姉様も激しかったですね。普段のお淑やかなお姉様もいいですが、性欲モンスター、いや、あれは性獣といってもいいでしょう。淫乱なお姉様も素敵です』
脳内でエリが興奮気味に早口で話しかけてきたけど、私は返事もせず、ソファーに腰を下ろしたまま、深いため息をついた。
長い階段を登り、辿り着いた扉の前で“生存本能”スキルが発動し、理性のタガが外れたお兄ちゃんは、まるで獣だった。
際限なく、求められ、文字通り私たちは食べられた。
1泊のはずが2泊して、お兄ちゃんが糸の切れた人形のように眠ってしまったのがつい先ほどだった。
ユキちゃんは全裸でベッドに突っ伏している。お兄ちゃんによる、一番の被害者だった……。
2人が2日でどれだけエッチしたのか、私にはもうわからない。
クロちゃんはお兄ちゃんの胸元に顔を埋めて寝ている。
「おっぱい、もう飲めない……腕がもう、限界だよ……」
かわいそうに、夢の中でもまだお兄ちゃんに奉仕中みたいだ。
手に握ったアサヒを動かす姿が、憐みを誘う。
……そして、当のお兄ちゃんはというと。
(なんであんなにツヤツヤなの?)
肌はピカピカに光、すべすべってレベルじゃなかった。
寝顔はスッキリ晴れやかで、「堪能しました」と言わんばかりだ。
まぁ、お兄ちゃんは私たち3人を限界まで堪能したのは間違いないけど……。
そして、私……。もう、すっからかんだ。
今の私が男の子で、本当に良かった。
男の子は、女の子と違って、元気にならないとエッチできないから……。
元気が無くなった私の股間を、得物を狙う獣のような目で見つめるお兄ちゃんを思い出して、ブルルと身震いした。
だから、ユキちゃんはすごいと思う。
あんなにお兄ちゃんと絡み合い、喘ぎ合い、何度も何度もイッたはずなのに……。
ユキちゃんはずっとベッタリお兄ちゃんにくっついていた。お兄ちゃんが寝落ちした瞬間、白目を剥いてベッドに倒れ込んでいたけど……。
『奥様は健気に尽くしてらしたのに、それに比べて、マスターのヘタレっぷりときたら……』
(うるさい!)
……とエリに言い返したものの、エリの言う事ももっともだった。
もう、出ない、勃たないと言っているのに、お兄ちゃんは私をお口で弄んだ。30分──いや、もっと長かったかもしれない……。
ユキちゃんが助けてくれなかったら、どうなっていたことやら……。
お兄ちゃんの下半身が目に入る。
股間から私の精子と、ユキちゃんのおチンポミルクが混ざりあった白い液体が垂れていた。
(あっ!!)
お兄ちゃんの下半身を見たせいで、私のオチンチンはみるみる元気になっていく。
『マスター、今さら元気になってしまって、ソレ、どうするのですか?』
エリの呆れ声が脳内に響く。
(そんな事言われても……どうしよう……)
『お姉様を起こして、鎮めて頂いてはどうですか?』
(……それは、ダメ! また吸い尽くされちゃうよ!?)
私はお兄ちゃんに見られないように急いでズボンだけ履いた。上半身は裸のままだ。
あとは、ひたすら鎮まる事を願う。
お兄ちゃんにも、困ったものが……。
『マスター、お姉様のあの発情っぷり……あの扉の先には相当危険なようですよ』
(わかってるよ……)
エリの真剣な声に、私も答える。
お兄ちゃんのあのスキルは、死の危険がある時しか発動しない。
そして、100階でもお兄ちゃんはスキルを発動していたけど、今回はその比にならないほど、発情していた。
つまり、100階の何倍もの危険をお兄ちゃんは察知している。
『お姉様が、マスターたちを愛したがるのも、無理はありませんね……』
あの扉の先に行ったら、この中の誰かと、もうエッチできなくなるのかもしれない。
お兄ちゃんはそう、思ったのだろう……。
そんな事は、想像もしたくないけど。
『マスター、本日は皆さま疲れているので、扉の先に進むのは明日でしょう。お姉様と奥様、クロ様をよろしく頼みますよ。早くこの邪悪な塔を出て、お姉様に子供を産んでもらいましょう。お姉様とマスター、そして、私の子供を……』
エリは途中までは良い事を言っていたのに、後半がおかしい。
(なんでアンタの子になるのよ1?)
『当然ではありませんか。私とマスターは一心同体。それに、マスターの精子は私がたっぷり可愛がっているのですよ?』
(え? 何それ……アンタ、私の精子に何しているの!?)
しばらく時が止まる……。
『……黙秘します』
その後、いくら話しかけても、エリは反応しなかった。
私は諦め、明日に備えてユキちゃんに抱きついて、目を閉じた……。
───
とうとう、この時が来てしまった。
ユキちゃんが扉の前に跪き、私たちは少し離れた所からユキちゃんの様子を伺っていた。
しばらくするとユキちゃんが立ち上がり、私たちの前まで歩いてくる。
「罠は無いし、鍵もかかっていないわ」
「ユキちゃん、ご苦労さま。じゃあ、ユキちゃんとヒナが前衛で。クロちゃんはお兄ちゃんをよろしく。お兄ちゃんもそれでいい?」
お兄ちゃんの顔を見ると、なんだか少し寂しそうに見えた。瞳も少し潤んでいる?
「お兄ちゃん? どうしたの?」
「何でもない……」
「そう? なら、いいけど。ちゃんとスキルは切っておいてよ。また、大変な事になるんだから……」
お兄ちゃんが頷くのを見届けてから、私は扉の前に立つ。
隣にはユキちゃん、後ろにはお兄ちゃんとクロちゃんが立っていた。
「準備はいい?」
振り返って言うとお兄ちゃんとクロちゃんが真剣な顔で頷く。
隣のユキちゃんもだ。
「行こう! ユキちゃん、お願い!」
ユキちゃんが扉に手を掛け、力を込める。
轟音と共に、分厚い扉が開いて、私たちを光が照らした……。
───
扉の先にはお花畑が広がっていた。
見上げた空には雲一つなく、太陽の光が私たちを照らす。
心地よい風が吹き、花とユキちゃんの髪を揺らしていた。
以前の私なら綺麗な景色で感動しているところだけど、今はもう違う。
34階の天国を思い出し、この素晴らしいと思える景色も、不気味さしか感じない。
風にそよぐ花の甘ったるい香りにも、何処か不吉な予感を感じる。
私はいつ戦闘が始まってもいいよう、金棒を取り出し、肩に担ぐ。
ユキちゃんたちも武器や盾を取り出した。
「あの丘を、目指して進むよ……。いいよね? お兄ちゃん……」
「ああ……」
遠くに見える小高い丘に向かって、私たちは歩み始めた。
……
私の足に驚いたハチが、別の花を探し音を立てて飛び立つ。
見たこともない美しい蝶がそこら中をヒラヒラと舞っていた。
木々の枝からは鳥のさえずりが聞こえるが、鳥の姿は見えない。
川のせせらぎが聞こえる……。
ここまで、虫や鳥はいたけど、人は居なかった。
34階の天国では、丘の手前からエッチな事をしているおかしな人たちだらけだったけど……。
丘の頂上に近付くにつれ、花が密集してきて、匂いがきつくなる。
この花の名前は何なのだろう?
私は花に興味は無いし、お兄ちゃんもユキちゃんも知らないらしい。
もうすぐ、丘を登り切る……。
……
丘の上は一面お花畑だった。
少し離れた場所に鉄柵で囲われた一画がある。
鉄柵の中は植物がうっそうと茂っていて、外からは様子が見えない。
だけど、中からは悲鳴のような声が絶え間なく聞こえる。
皆と顔を見合わせると、全員が無言で頷いた。
私とユキちゃんが先頭になり、鉄柵に囲われた一画に向かって歩き出す。
近付くにつれて、聞こえているのはエッチな声だと気付く。しかも複数人の。
中には悲鳴に近いものもあった。
中で、誰かがエッチしているのだろうか?
鉄柵の前に辿り着いた。
強烈な薔薇の香りが私の嗅覚をマヒさせる。
鉄柵のすぐ向こうから、男女の交わる音が聞こえる。
(この声、どこかで、聞き覚えがある……)
鉄柵の外周を回り、ようやく見つけた入り口から中を覗いて、私は息をのんだ。
最初に目に飛び込んできたのは、宙に浮くいくつもの大小のスクリーンだった。
そこに映っていたのは、私たちだった。
クロちゃんが、お兄ちゃんに抱かれて嬌声をあげている。
私とユキちゃんが絡みあい、お互いの身体を愛撫しながらいやらしい声を出している。
男の子になった私が、まだ男の子のままのお兄ちゃんに後ろから突かれている。
ハゲ頭の男の下で泣きながら叫ぶ女の子になったお兄ちゃん……。
それらは、私たちがクリアしてきた、試練の間での映像だった。
スクリーンの手前、ティーテーブルの上に素足を置いた女の人が私たちに背を向けて座っている。
テーブルの上には黒いシルクハットが置かれていた。
薔薇の花に囲まれて、女の人は身じろぎ一つしない。
「もう少し、待ってください。今、イイところなんです」
私たちの嬌声に混じって、女の人の声が響く。
レイプされるお兄ちゃんの姿が、他のスクリーンより大きくなった。
『いっ! 痛い! やめてぇぇぇぇ!!』
ハゲ頭はお兄ちゃんを無視して腰を振り続けている。
お兄ちゃんは懸命に逃れようとするけど……。
『大人しくしろよ! オラ!』
男は、お兄ちゃんの頬を張り倒す。
頬を叩かれたお兄ちゃんの瞳によりいっそう涙が溜まる。
『お!? 締まる! たまんねぇな!!』
お腹の上から、お兄ちゃんの子宮をグリグリしながら、男が腰を激しく振っていた。
『くぅぅぅ! キツイ! もうそろそろ、イキそうだ』
男の声を聞いたお兄ちゃんの瞳が見開かれる。
『ヤダ!? やめて……膣内には射精さないで!?』
『おう! 一番奥で射精してやるからな……さぁ、ママになる準備はいいか?』
こんなの、私の記憶には無い……。
「止めてよ!!」
私は金棒を入り口の鉄柵に振り下ろす。不思議な力で、鉄柵の手前、宙で金棒が止まり、鉄柵まで届かない。
男の腰の動きがどんどん速くなる。
『お! 射精る! 射精るぞぉぉぉぉ!!』
懸命に逃げようとするお兄ちゃんの腰を掴んで、男は荒々しく腰を振っていた。
こんなの、私じゃない……。
『お兄ちゃん! レイプでロストバージンして、初めての中出しで、ヒナの赤ちゃんを妊娠して!!』
そう叫んで、男の動きが止まった。お兄ちゃんの腰を掴んで、限界までくっついていた。
その結合部がアップになる。
収まりきらなかった精子が、溢れていた。
破瓜の血混じりの、ピンク色の精子……。
そして、お兄ちゃんの顔がアップになる。
最初は戸惑いの表情だったが、やがて、絶望に変わる。
『いやっ! いやっ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
スクリーンから聞こえる、お兄ちゃんの叫び声を聞いて、私の中で何かが壊れた……。
隣では、ユキちゃんが全身を震わせている。怒りによるものだろう。
スクリーンに映っているハゲ頭──お兄ちゃんの処女を奪い、レイプして、膣内射精したのは、男の子になった私だった……。
吐き気が込み上げ、私はその場にしゃがみ込む。
(お兄ちゃん……ごめん……ごめんなさい……)
不意に、背中に温かい手が触れた。
「ヒナ、落ち着いて……深呼吸しろ」
お兄ちゃんに言われた通り、深呼吸すると、少し、落ち着いてきた。
「ヒナ、あれは試練をクリアするためにしょうがなかったんだ。だから気に病む事ないよ。今は……ヒナのチンポ、凄く気持ちいいから……」
そう言われて、お兄ちゃんに後ろからハグされた。
お兄ちゃんの言葉が嬉しくて、救われた私は…………。
『ムヒョ~~! お姉様がマスターの……いえ、私の生殖器が気持ちいいと、褒めてくださいました! これは堪りませんぞ! このお褒めの言葉はヘビロテ確定ですな!!』
また、コイツだ……。せっかくの気分が台無しになる。
「魔王様……果てます……オコメのはしたない姿をお許しください……」
その直後、いやらしい絶叫が、響いた……。