足元に転がる白い仮面。
お兄ちゃんの顔が埋まる程の大きなおっぱい。
右腕は、ユキちゃんの刀で切り裂かれている。
お兄ちゃんの股間の間にある大きなオチンチンがビクビク脈打っていた。
その顔は……。
「お、お姉ちゃん!?」
心臓が凍りついた。血の気が一気に引いていく。
目の前に立ち、お兄ちゃんを抱擁しているのは、私が世界一嫌いな女──
「……カオルちゃん、ずっと待っていたのよ? ようやく、あなたを孕ませられる……。ふふ、私は両方いけるの。だから、今のあなたには私の子種をいっぱい注いで、立派な“私の子”を産ませられるわ。何人も、何人も……」
お姉ちゃんは笑みを浮かべ、目だけで私を射抜く。
「カオルちゃん、あんなゴミに犯されて、孕まされて、さぞかし嫌な思いをしたでしょう。もう、我慢しなくていいのよ。私があなたに極上の快楽を教えてあげる……」
その声を聞いた瞬間、背筋が氷のように冷たくなる。
(やめて……やめてよ……お兄ちゃんは……私のことを愛して……)
私は震える唇を噛みしめ、お姉ちゃんを睨みつける。
お兄ちゃんは、絶対に渡さない……。
「満足するまで私の子供を産んでくれたら、今度は男の身体に戻ってもらって、私に種付けしてもらうわ。カオルちゃんの子供、何人でも産んであげる……ねぇ、とっても素敵でしょう?」
お姉ちゃんはゆっくりと抱擁を解いた。
お兄ちゃんは棒立ちのままで、まるでマネキンのように動かない。
お姉ちゃんが、口を開く。
呪文の響きが空気を震わせると、お兄ちゃんの服が音を立てて裂け、花の上に散った。
全裸になっても、お兄ちゃんは相変わらず石像のように固まったまま、動かない。
「お兄ちゃん!?」
「「カオル!?」」
全裸のお兄ちゃんを目の当たりにして、私とユキちゃん、クロちゃんが同時に叫ぶ。
「……魅力的よ。カオルちゃん、今すぐ、孕ませてあげたいわ……けど……」
お姉ちゃんの視線が、お兄ちゃんから私へとゆっくり移る。
その頬は紅潮し、唇はわずかに震えていた。
「あの目障りがいては、せっかくの気分も台無しよ。あの邪魔者を排除したら、たっぷり注いであげる──私の遺伝子を……」
お姉ちゃんのオチンチンがビクンと震えて、透明な液が糸を引いて花の上に垂れた。
お兄ちゃんの小さなお尻、真っ白な背中。
その向こう側にあるだろう、小ぶりなおっぱいと、その先端に控えめに立っている淡いピンク色の乳首……。
私のオチンチンも震えていた。
下半身に目を移すと、ピンク色の作業服の股間の部分が膨らんでいて、先端は濡れている。
──私、お姉ちゃんと、一緒だ。
お兄ちゃんの大ピンチなのに、その裸を見た瞬間、私の身体は反応する。
目の前の女の子を、今すぐ抱きたい。精子をたっぷり注いで、孕ませたい。
私の子孫を残したい……。
「あら? 私のカオルちゃんを見て、欲情しているの? 万死に値するわね……」
お姉ちゃんの声が、1トーン低く落ちた瞬間、空気が冷たく変わった。
背筋に氷を這わされるような感覚……息が詰まる。
お姉ちゃんの身体から滲み出る黒いオーラが、さらに濃くなった気がする。
まるで見えない手が首を絞めてくるみたいに、体が動かない……。
股間が、縮こまるのがわかった。
私の身体はまだ、お姉ちゃんを恐れている。
お姉ちゃんの、お仕置きが、怖い……。
「ま、真央さんっ!?」
お姉ちゃんから目を逸らして、地面を見ている私の耳に、ユキちゃんの声が入る。
「……ユキちゃん、お久しぶりね。元気……そうではないわね。あなたはもう、死んでいるのね……死臭がするわ。あなたの分身からもプンプン匂うわね……」
その瞬間、胸の奥で何かが爆ぜた。
ユキちゃんを侮辱する言葉が、私の全身を固まらせる。
視界の端が赤く染まるような感覚。
握りこぶしが怒りでブルブルと震え、爪が掌に食い込むほど力を込めていた。
「…………けしてよ……」
それは、気付けば口からこぼれていた。
胸の奥で煮えたぎるものが、言葉になって溢れ出しただけだった。
「取り消して……! ユキちゃんに謝って!」
「それから──お兄ちゃんから離れて!」
「アスカとミユキちゃんを返して!」
「私たちの前から……消えて!!」
私は顔を上げた。
ユキちゃんに冷ややかな視線を向けているお姉ちゃんの目を、真正面から睨み返す。
お姉ちゃんは一瞬だけ、驚いたように目を見開いた。
けれど次の瞬間、口元にゆっくりと笑みを浮かべる。
「ふふ……断るわ。ずいぶん生意気な口が叩けるようになったわね」
左手が右腕に触れた瞬間、真っ二つに裂けていた肉が音もなく癒えていく。
血も傷跡も消え、まるで何事もなかったかのように──ぞっとするほど自然に。
そしてお兄ちゃんをお姫様抱っこして、私へと向き直る。
その瞳は、私を値踏みするように細められていた。
「カオルちゃんは私の花嫁、花婿になってもらうわ」
「ユキちゃんと分身は、オナホ替わりに仕えさせてあげる」
「連れ去った子供は、返すわけないでしょ」
──息が詰まる。足がすくむ。けれど、視線だけは逸らさない。
「ヒナ、あなたは……ここで殺す!!」
胸の奥が燃えるように熱くなった。
恐怖も迷いも、一瞬で怒りに呑み込まれる。
「やれるものなら──やってみなよ! クソ
叫ぶ私に鼻を鳴らすと、お姉ちゃんはお兄ちゃんを抱き抱えたまま、私の左前方に冷ややかな視線を向けた。
「……お前たち、もう出てきていいぞ」
その瞬間、空間がぐにゃりと歪み、辺りの色が吸い込まれるように真っ暗へと変わった。
空気が重く沈み込み、耳鳴りがする。
そして、闇の中心から姿を現したのは──漆黒に輝く大きな玉座。
威圧感に満ちたその椅子の両脇には、巨大な影と小さな影が二体、静かに佇んでいた。
形はぼんやりとしているのに、その存在だけで肌が粟立つ……。
(……嘘でしょ!?)
闇の中から現れた大きな影の正体が、はっきりとした瞬間、私は目を疑った。
クモの胴体に、女の人の上半身。
その胸──乳首の部分には、芋虫のような不気味な生き物がうねうねと動いている。
甘ったるく、鼻を刺すような腐臭が漂い、吐き気がこみ上げる。
──間違いない。
ボットンベリーの迷宮で、私たちが確かに倒したはずの怪物──ヴァーギナーだ。
ヴァーギナーと玉座を挟んで立つ、もう一つの影。
闇がすっと晴れ、その姿があらわになる。
腰まで届く長い緑髪が、光に照らされ淡く輝いている。
その髪の間から覗く白い肌は、雪のように滑らかで、完璧すぎて人間味を感じない。
瞳は深い翡翠色──だけど、その奥に映るのは慈愛ではなく、冷たく研ぎ澄まされた捕食者の光。
胸元は大胆に開いていて、女神のような神々しさと、肉感的な艶やかさが同居していた。
けれど、その微笑みは何もかもを見透かすようで……背筋に氷を流し込まれたような感覚が走る。
──知らないはずなのに、直感でわかる。この女は、関わってはいけない存在だ。
お姉ちゃんが玉座へ向けて歩みを進めた瞬間──ヴァーギナーと、緑髪の女神は同時に片膝をつき、深々と頭を垂れた。
(……嘘……この化け物たちが、お姉ちゃんの部下!?)
空気がさらに重く、黒い圧力が全身を押し潰すように広がっていく。
玉座の前に立つお姉ちゃんは、抱き抱えていたお兄ちゃんをそっと座らせた。
ふかふかの豪奢なクッションの上──まるで囚われの人形のように、お兄ちゃんは首を傾けたまま瞬き一つしない。
(……お兄ちゃん……どうして……動かないの……?)
その頬は白く、唇には微かに色がなくなっている。
でも、胸はかすかに上下していて──生きている。
お姉ちゃんはその肩に手を置き、まるで宝物を守るように撫でた。
「これからあの愚かな妹を殺して、カオルちゃんが私の物になる瞬間をこの特等席で見ていてね。この戦いが終われば、その金縛りは解けるから安心していいわ」
そう言うと、お姉ちゃんは静かにお兄ちゃんの前に跪き、右手を取って唇を重ねた。
その光景に、胸の奥が締めつけられる。
お兄ちゃんは無抵抗で、まるで囚われの人形のようだった。
絶望と怒りが入り混じった熱い感情が、私の身体中を駆け巡る。
(絶対に……お兄ちゃんを取り戻す。絶対に……!)
お兄ちゃんの手から唇を離すと、お姉ちゃんはゆっくりと立ち上がった。
その目がこちらに向けられると、心臓が激しく鼓動を打ち始めた。
全身の感覚が研ぎ澄まされ、緊張で肌がざわつく。
「さあ、カオルちゃん。この薄汚いヒナの血でヴァージンロードを作って挙式を上げるわよ」
その声に宿る冷酷な確信が、私の全身を凍らせた。
でも、もう後戻りはできない──。
「ユキちゃん……アレを貸して」
ユキちゃんは私の右に立ち、両手で一振りの剣を差し出した。
その剣を見つめる瞳には、強い覚悟と信頼が宿っているのがわかる。
私は静かに手を伸ばし、剣の柄を握った。
右ビチクの塔の姫様──オコメから託された、伝説の剣だ。
──グラス・ソード。
透明な刀身は光を受けて七色に揺らめき、ひんやりと冷たい感触が掌に伝わる。
それでいて脆く、まるでガラス細工のように繊細だ。
一度振るえば相手に致命傷を与える代わりに砕け散る、命を賭けた剣。
握りしめたその感触が、決意の証のように私の胸を熱くした。
「……ヒナちゃん、本当に真央さん──お姉さんと戦わないといけないの?」
ユキちゃんが私の顔を覗き込む。
その瞳は涙で潤み、今にも泣き出しそうだった。
私は一瞬、言葉を詰まらせた。
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
だけど、決めたことは変えられない。
「うん……戦わなきゃいけない。私がお姉ちゃんを倒して、お兄ちゃんも、アスカもミユキちゃんも、みんな取り戻すから」
私の声は震えていたけれど、目は揺るがなかった。
ユキちゃんも小さく頷くと、ぎゅっと私の手を握り返した。
そして──唇にユキちゃんの柔らかい唇の感触が伝わる。
「愛しているわ……必ず、勝って…………」
私の目が大きく見開かれる。
ユキちゃんの唇が離れると、そこには涙を湛えながらも、強く私を見つめる瞳があった。
胸の奥が熱くなる。
恐怖も、迷いも、その温もりが溶かしていく。
「ヒナ、ユキとカオルを泣かせたら、私は許さないからね……」
いつの間にか、クロちゃんも傍にいて、ユキちゃんの手の上から、私の手を握る。
「約束だよ。何があっても、生き残るのよ」
クロちゃんの真剣な眼差しに、私は無言で頷く。
クロちゃんもゆっくりと頷いた。頭の上で漆黒のリボンがふわりと揺れる。
「……うん、絶対に勝つ」
私はユキちゃんの手をもう一度強く握りしめてから、手を離した。
ユキちゃんとクロちゃんが数歩下がったのを確認してから、グラス・ソードを構えた。
目の前には、お姉ちゃん──私が越えなければならない壁が立ちはだかっている。
最後に、玉座に座るお兄ちゃんの様子を伺った。
お兄ちゃんは無表情で、相変わらず人形のようだったけど……。
(ッ!?)
お兄ちゃんの頬を伝う一筋の涙は、光を反射してきらめいていた。
その涙が、お兄ちゃんが私の身を案じている証に見えた。
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
守らなきゃ。奪い返さなきゃ。
お兄ちゃんを心配させちゃいけない。
この涙を、二度と流させないために──。
私は息を吸い込み、視線をお姉ちゃんへと戻す。
もう、迷いはない。
私が命を懸けて、お姉ちゃんを倒す。
お兄ちゃん、アスカ、ミユキちゃんを取り戻す。
そして──お兄ちゃん、ユキちゃん、クロちゃんと子供たち……。
いつまでも平和に、幸せに暮らすんだ!
「涙が出るくらい、私と結ばれるのが嬉しいのね……カオルちゃん」
お姉ちゃんは恍惚とした笑みを浮かべる。
「何人でも産ませてあげる。未来永劫、私とあなたと子供たちで幸せに暮らしましょう」
「……子供たちに種付けしたり、子供たちの子供を孕むのもいいかもしれないわね」
お兄ちゃんの涙に気付いたお姉ちゃんが、正気とは思えない言葉を吐き続ける。
こんな頭のおかしい女に──お兄ちゃんを渡すわけにはいかない。
「お兄ちゃんは、私のものだよ!」
私の叫びに、お姉ちゃんは妖しく口角を吊り上げた。
「いいえ、カオルちゃんは……私のモノなのよ♡」
二つの声が、空間でぶつかり合い、火花を散らす。
空気が一瞬で張り詰め、互いの視線が鋭く絡み合った。