私は腕の中で泣きじゃくるヒナちゃんを抱きしめながら、カオルに顔を向け、問いかけた。
「今のヒナちゃんの話、本当?」
「……本当だ」
ヒナちゃんはカオルに処女を捧げたがっていた。
それを拒否されたら怒るのも理解できる。
「カオル君……どうして? ヒナちゃん、カオル君に処女捧げたいのよ? ヒナちゃんのオマンコはカオル君専用にするくらい、カオル君の事を想っているのにヒナちゃんが可哀そうよ! 私からもお願いするからヒナちゃんを抱いてあげて?」
「抱くのはいいんだ。避妊するなら抱く、避妊しないなら抱けない」
「どうして避妊する必要があるの? この世界は現実世界とは違うんだから避妊せずに、子供が出来てもいいでしょう?」
「そうだよ! お兄ちゃん! ユキちゃんの言う通りじゃない!」
腕の中から顔を上げてヒナちゃんも抗議する。
「子供が出来たとしてどうするんだ?」
「ヒナはもちろん産むよ!」
「小さな子供を連れて旅に出る事になるんだぞ?」
「わかってるよ! ヒナ、育児得意だし、子供は私が守るよ!」
「その先は?」
「その……先?」
「……俺達が元の世界に戻った時、子供はどうなる?」
「!!! …………」
「よく考えてみてくれ。風呂に入ってくる」
カオルの姿がお風呂場に消えた。
私はヒナちゃんを宥めて一緒にベッドに入った。
───
「ヒナちゃん……?」
ユキちゃんが私の顔を心配そうに見る。
私の頭の中はさっきのお兄ちゃんの言葉のせいでグチャグチャだ。
少し整理しよう。
◇子供を産んで元の世界に戻る
論外だ。
いくら元の世界に戻る時に記憶が消えると言っても、お兄ちゃんは絶対にそんな無責任な事は許さない。
◇子供を産んで元の世界には帰らない
私が残ると言ったらお兄ちゃんも残るだろう。
もしかしたらユキちゃんも残る?
でも、この世界で楽しく暮らしたから何だっていうんだろう?
ここは現実世界ではない。
死ぬまで夢の世界で暮らして現実世界で死ぬだけだ。
現実世界では全裸でエッチ直前のお兄ちゃんと私の死体、全裸でオモチャを差し込んだユキちゃんの死体が見つかるだろう。
◇子供を産んで独り立ちするまで育ててから元の世界に帰る
一番現実的だけど、この世界は元の世界とは違って死と隣り合わせの危険な世界だ。
滞在期間が長ければ長い程、死ぬ確率も高くなる。
私は戦闘では役に立たないので、自ずとお兄ちゃんとユキちゃんに頼る事になる。
私1人だけならともかく、2人の人生をそんな死の危険に晒したくない。
◇子供を産まないで元の世界に帰る
……これしか選択肢がない……。
私は私の夢が叶えられない事を理解した。
そして、ユキちゃんとの約束も破ってしまった事も……。
ユキちゃんの顔と視界が涙で歪む……。
───
私はヒナちゃんを抱きしめて慰めていた。
ヒナちゃんは自分の夢が叶えられない事を知り、泣いていた。
そして私にも謝ってきた。
「ユキちゃん、私、お兄ちゃんの子供産みたかったのに産めない! ユキちゃんにも産ませてあげられなくてごめんなさい! うわぁぁぁぁん!!」
「ヒナちゃん、私はカオル君の子供産めなくてもいいのよ。だから気にしないでいいわ」
「でも、ヒナ、ユキちゃんに約束したのに……。2人でお兄ちゃんの子供産もうって。約束破っちゃう!」
「許すわ。本当は産みたかったけどね……」
(ヒナちゃん、ごめん。私はカオルの子供は産めないの)
「うわぁぁぁぁん!!」
───
「ヒナは?」
「泣き疲れて寝てしまったわ」
お風呂から出てきたカオルに答える。
随分長く入っていたのはヒナちゃんに対して気を使ったからだろう。
「そうか。ヒナのことユキに任せっぱなしだな。ありがとう」
「私にとってヒナちゃんは妹みたいなものよ。妹のためならお姉ちゃんは頑張るわ」
「……その気持ち、よくわかる。そうだな。俺もヒナの願いは叶えてやりたいが、今回ばかりは無理だ」
「カオル君、ヒナちゃんは本気でカオル君の子供を産みたかったのよ。少し考えが足りてなかったようだけどね。それくらい、カオル君の事を愛しているのよ。それだけはわかってあげてほしいわ」
「……ああ」
「今日はヒナちゃんの隣で寝てあげて。できれば、抱きしめながら……。私はヒナちゃんの涙と涎で少し汚れてしまったから、もう一度お風呂に入ってくるわ。先に寝てていいわよ」
「……わかった。おやすみ、ユキ……」
「カオル君……お休みなさい」
私はベッドから降りてお風呂場の扉を開けた。
───
「お兄ちゃん! 起きて! 大変なの!!」
目を開けると狼狽えているヒナの顔が飛び込んできた。
「ッ!? どうした! ヒナ!?」
「朝起きたらユキちゃんがいないの! お兄ちゃん、ユキちゃん何処にいるか知ってる?」
「俺が寝る前は……もう一度風呂に入ると言ってたが……」
「トイレにもお風呂場にもどこにもいないよ?」
俺は起きてまずトイレと風呂場をチェックする。
ユキはいなかった。
次に部屋の扉を確認する。鍵は掛かっていた。
窓を見る。窓は開いている。
「この窓開けたのはヒナか?」
「ヒナ開けてないよ! ……起きた時から開いてた」
となると可能性として考えられるのは……。
「ヒナ、ユキはこの窓から出て行ったか……考えたくはないが、この窓から入ってきた誰かに攫われた可能性もある」
俺の言葉にヒナの顔が真っ青になる。
「お兄ちゃん、どうしよう? ユキちゃん攫われたら……」
きっと最悪の想像をしているのだろう。
もちろん、俺も想像している。
「可能性の話だ。そうと決まった訳じゃない。部屋に争った形跡はないから、自分から出て行ったと考えるのが妥当だろう」
「なんで自分から出て行ったの? ヒナたちに何も言わずに」
「わからない。ヒナは思い当たる事はあるか?」
ヒナはビクッとして……。
「……無い」
(あるのか……。困ったな……)
「とりあえず俺はユキを探しに行く」
「お兄ちゃんヒナも一緒n「ダメだ」えっ!?」
ヒナの言葉を遮る。
「ユキが戻ってくるかもしれないからヒナは部屋にいてくれ」
「……わかった」
「じゃあ行ってくる。扉に鍵を掛けて、窓にも鍵を掛けておいてくれ。俺かユキ以外を部屋に入れたらダメだぞ。ヒナ……」
「なに? お兄ちゃん?」
「しばらく1人にして心細いかもしれないが我慢してくれ」
「うん」
そして俺は部屋を出た。
───
お兄ちゃんが部屋を出て行ったので急いで扉を施錠した。
窓も施錠済だ。
ユキちゃんが出て行った理由……お兄ちゃんは何も聞かなかったが、私に心当たりがある事は気付いているだろう。
(あの約束を果たせなかった事……しかないよね。昨日は許してもらえたと思っていたけど……本当は許してなかった? もしかしてもう見放された? ユキちゃんに……嫌われた?)
考えるだけで落ち込む。涙が勝手に溢れてくる……。
攫われた可能性は考えない事にした。
そっちを考えると、私は壊れてしまいそうだったからだ。
(ユキちゃんお願い! ヒナの事嫌いになっててもいいから無事でいて!)
───
俺はユキが行きそうな場所全てに足を運んだが目撃情報すら無かった。
念のため女性向けの娼館にも足を運んだが無駄足だった。
なお、流石に“穴×棒”には行かないと思ったので除外した。
(もしかして……迷宮か!?)
急いで迷宮に行こうとしたが、1人で迷宮に潜るのは危険過ぎるため諦めた。
(2次遭難、最悪死ぬ可能性がある。ヒナを残して死ぬ訳にはいかないからな)
もうお手上げだ。
(もしかしたらもう部屋に戻ってきてるかもしれない。ヒナを1人にしてからだいぶ時間が経ってるし、一度部屋に戻るか)
俺は宿屋に転移した。
───
部屋をノックする。
「ヒナ、俺だ!」
扉が開いて取り乱したヒナが出てきた。
「お兄ちゃん! 待ってたよ! ユキちゃんが大変なの!!」
「ッ!! 帰ってきたのか?」
「帰ってきたんだけど、とにかくお兄ちゃん魔法をお願い!」
「わかった!」
急いで部屋に入り扉を施錠してベッドを見る。
ベッドの上にはボロボロになったユキが横たわっていた。
打撲痕、切り傷、裂傷が身体中の至る所あった。
忍び装束もボロボロだった。
マスクをしたまま苦しそうに息をしている。
意識はないようだ。
「ユ……キ……?」
俺は最悪の想像をして呆然としてしまった。
「お兄ちゃん!? しっかりしてよ! 早く魔法を使って!!」
「っ!! そうだった。……下級治癒!」
使えるだけ治癒魔法を使った。
「顔色が少しよくなってきたな。もう命の危険はない……と思う。今日はもう魔法は使えないから明日、また治癒魔法を掛けるよ。傷の具合を確かめるために服を脱がせt「ダメ!!」……えっ!?」
ヒナが俺の言葉を拒絶する。
「ユキちゃんと約束したの! 服もマスクも絶対に脱がさないでって。だからユキちゃんの服もマスクも脱がしたらダメ!」
「……わかった」
ヒナの言葉に絶望した……。
ユキの身体がどれだけひどい事になっているんだろう?
想像しただけで……いや、今は想像しない方がいいだろう。
「お兄ちゃんは魔法を使うためにもう寝て。ヒナがユキちゃんの事見てるから」
「わかった。……ユキの事……頼む」
「うん」
寝ないとMPが回復しないので俺は無理やり眠る事にした。
───
私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。
ユキちゃんがこんな事になったのは私のせいだ。
お兄ちゃんは今寝ている。
明日、魔法を使うために無理やり寝たのだろう。
お兄ちゃんはたぶん最悪の想像をしている。
私だってユキちゃんが帰ってきたときは同じ想像をしていた。
でもそうではない事を私は知っていた……。
───
お兄ちゃんがユキちゃんを探しに部屋を出てどれくらい経っただろうか。
ドンッ!
部屋の扉の何かがぶつかる大きな音がした。
お兄ちゃんには、お兄ちゃんとユキちゃん以外を部屋に入れるなとは言われていたけど、私は気になって部屋の扉を開けた。
そこにはボロボロになったユキちゃんが倒れていた。
「ユキちゃん!!」
ユキちゃんをバックハグで引きずって部屋に運び、急いで扉を施錠する。
お兄ちゃんがいない今、ユキちゃんを守れるのは私しかいない。
最大限の注意を払って行動する必要がある。
本当は映画のようにお姫様抱っこで運びたかったけど。
(ユキちゃん、ヒナ、そんな力は無かった……。ごめんね)
そのままバックハグでベッドの方まで引きずり、何とかベッドの上に寝かせられた。
ユキちゃんの全身がボロボロで私の視界が涙で歪む。
とりあえず傷を確認しようとユキちゃんの服を脱がせようとしたその時……。
「ヒナちゃん……。私の服と……マスクは……何があっても……絶対に取らないで……脱がさないで」
「でもっ!?」
「おねがい……。やくそく……して……」
「……うん……わかった」
ユキちゃんは意識を失った。
マスクで見えないがたぶん微笑んでいた。
私はユキちゃんの言葉に最悪の想像をして遂に涙が零れた。
……
私はどうしても確かめたいことがあった。
ユキちゃんの純潔は守られているのか……。
もしもユキちゃんの純潔が破られていたら私はプランを変更する。
ユキちゃんが戦闘マシーンなら、私は殺戮マシーンになってやる!
そのためのスキルも想定済だ。だいぶ犠牲を払う事になるが……。
意識を無くしたユキちゃんのドレスの裾に手を入れる。
ふんどしは…………あった!
湿り気は…………少しある!!
(ユキちゃん! ごめんね!)
私はふんどしの裾からユキちゃんのオマンコに指を突っ込んだ。
ユキちゃんのオマンコの中はひんやりしていて全く濡れていなかった。
指が入りにくいので私の涎をたっぷり指に絡ませてから、ユキちゃんのオマンコに挿入し、中を優しくかき回した。
手を抜き、指の匂いを嗅ぐ。
ユキちゃんのオシッコらしき匂いしかしない。
いやらしい雄の匂いはしなかった。
(お兄ちゃんの精子の匂い嗅いでおいてよかった……)
私は安堵して泣いていた……。ユキちゃんは純潔のままだ。
ユキちゃんはレイプはされていない。ただ暴行されただけだ。
(よし、あとはユキちゃんに聞いてからプランの変更を検討しよう。私のユキちゃんをこんな目に合わせた奴を私は絶対に許さない!)
確認が終わったので私は“清掃”を使ってユキちゃんの身体を清めた。
───
「……下級治癒!」
翌朝、目を覚ました俺はユキに最後の治癒魔法を掛け終えた。
MPは空なのでもう今日は魔法が使えない。
ユキの身体の傷はだいぶ消えてきたが意識はまだ戻らない。
苦しそうな顔をしているが、昨日より顔色はだいぶ良いようだ。
「ヒナ、ユキはもう大丈夫だと思う」
「お兄ちゃん! ありがとう」
ヒナの様子を見る。
一睡もしていないのだろう。疲れ切った顔をしている。
「ヒナは少しは寝ろ。身体が持たないぞ。ヒナが寝てる間は俺がユキを見ててやる。俺が寝てる間はユキを頼む」
「……うん。ヒナだいぶ無理してた。お兄ちゃんの言う通りにする。ユキちゃんをよろしくね」
余程疲れていたのだろう。すぐにヒナの寝息が聞こえた。
ユキに顔を向ける。
(ユキ、すまなかった。ユキの彼氏もすまない……。俺はユキを守れなかった……)
「絶対守り通すつもりだったのにな……。何故こんな事に……」
ヒナとユキの顔を見ながらただただ後悔していた……。
───
私が目を覚ますと泣き腫らしたヒナちゃんの顔があった。
身体中が痛い……がだいぶ和らいでいた。
「ユキちゃん! 気分はどう?」
ヒナちゃんが抱きしめてくる。
傍らにはカオルが寝ていた。
(カオルの治癒魔法のおかげね。ありがとう)
「ッ!!」
「ごめん! 痛かった!?」
「……平気よ……。ここは?」
「宿屋の部屋だよ? 今は夜中」
「……そう」
何とか私は無事ヒナちゃんのいる部屋まで帰り着いたようだ。
記憶はほぼなかった。
「ユキちゃん……。なんでこんな事を……」
「ヒナちゃん…………いや、今はヒナと呼ぶわ!」
「っ!?」
「ヒナ、愛する人との子供を産む事だけが幸せではないわ。私はそう思ってる。子供のいない夫婦は不幸なの? ちがうでしょ?」
「……うん」
「愛する人と結ばれれば幸せなのよ。そこに子供の有無は関係ないわ」
「でも! ヒナ、お兄ちゃんの子供産みたかったよ!」
「ヒナ、産めばいいじゃない? 元の世界で」
「えっ!?」
「元の世界に戻ったら産めばいいでしょ?」
「でもそんなの許されないよ!?」
「誰が許さないの? ヒナの幸せを壊す権利は誰にも無いわ! もちろん、兄妹の子供にはリスクがあるわ。でも、そんなリスクはヒナだって想定済でしょ?」
「……うん」
「なら、産みなさい。私が全力でヒナをサポートするわ。カオルも説得してあげる。私はカオルと結婚してヒナとも一緒に暮らすわ。3人で幸せになりましょう。私は2人、ヒナは3人カオルの子供を産みましょう」
「ユキちゃ……お義姉ちゃん!」
「ヒナ、泣かないの。せっかくの可愛い顔が台無しよ……。それから……これを」
懐から出した布の包みをヒナちゃんに差し出した。
「これ……なに?」
「私から2人への贈り物よ。子供が産めないならせめて結ばれなさい。ヒナ、カオルと結婚しなさい」
ヒナちゃんが私に抱きついて泣いていた。
ヒナちゃんの頭を撫でる。
私はヒナちゃんの体温が心地よくて……。
「ヒナ……ごめん。眠くなっちゃった……。お姉ちゃんは寝るね……」
私は意識を手放した。
───
翌朝、俺とヒナは指を絡ませて手を繋ぎ、
静かに眠るユキの寝顔を見ていた。
「ユキがそんな事言ってたのか……」
「うん。お兄ちゃん……。ユキちゃんが元気になったらヒナと結婚して……」
「バカだな。そういうセリフは男に言わせるものだぞ」
「……もうそんな時代じゃないでしょ?」
「それもそうか……」
俺が少し強く手を握ると、ヒナがそれにこたえて強く握り返してきた。