「今日は3階を探索するつもりだから少し遅くなるかもしれない。ヒナ、寂しい思いをさせてすまないな」
「ヒナは大丈夫だよ。お兄ちゃん、ユキちゃん、気を付けてね」
私は部屋の扉の前で2人を見送っている。
(あ、一応お伝えておこう)
「お兄ちゃん、ユキちゃんとエッチするなら、そろそろ危険日だからちゃんと避妊してよ? ユキちゃんの嫌がることしたらダメだからね! 手繋ぐのも忘れずにね!」
「ヒナちゃん!?」
「……迷宮で抱いたりしないぞ?」
「お兄ちゃん、サカるとどこでもヤリそうだし♡」
2人きりで迷宮に行くユキちゃんが羨ましくて少し意地悪した。
「そんな事ないぞ。じゃあ行ってくる」
「ヒナちゃん、行くわ」
「行ってらっしゃい!」
───
私は今、恋人たちの宿の部屋で一人アイテム整理をしている。
私の妊娠が判明してから私は迷宮には行っていない。
……というか連れて行ってもらえない。
今、私のお腹の中には、お兄ちゃんの子供がいる。双子だ。
部屋で安静にしていて欲しいというのがお兄ちゃんの願いだった。
(でも、部屋で1人で過ごすのってすごく暇なんだよね……)
元の世界にいたらどうしていただろうか?
(十中八九、お兄ちゃんをオカズにオナニーしてたな……)
でもこの街はオナニー禁止だからオナニーはできない。
また、妊娠したからなのかは判らないが私は性欲が無くなっていた。
あんなに欲しくてしょうがなかった、お兄ちゃんのオチンチンも精子も、今の私の身体は求めていない。
お兄ちゃんの子供を授かるだけでこうも変わるものなのかと、私は私の身体の変化に正直驚いている。
私の身体はお兄ちゃんの赤ちゃんが欲しくてしょうがなかったようだ……。
……
とにかく、暇すぎたのでアイテム整理をし続ける。
未鑑定アイテムが結構増えていた。
そろそろまとめて鑑定して売り払った方がいいだろう。
お兄ちゃんは私がお兄ちゃんの子供を産むまでこの街を拠点にするつもりのようだ。
宿代だってあるからお金はいくらあっても足りない。
今の私は妊娠6週目でお兄ちゃんの子供を産むまであと34週はあるはず。
この宿は1週間の部屋代が200G
200×34=6800G
最低でもこれくらい掛かる。
産んですぐ旅に出るとも思えないから実際にはもっと宿代が掛かるだろう。
私の妊娠が判明するまで1回のエッチで240G使っていた。
種無し薬で40G、無かった事にする薬で200Gだ。
いかに贅沢だったかがわかる。
結局、避妊に失敗して私はお兄ちゃんの子供を身籠ってしまったわけだ。
無駄にお金を使っただけで全てがパァだ。
(私が気持ち良くなるために散財したせいで……。お兄ちゃんもユキちゃんもお金を稼ぐために、死と隣り合わせで迷宮に潜っているんだ……)
そう考えると私はお兄ちゃんとユキちゃんに申し訳なくて悲しくなる。
今は2人ともいないから、泣いても構わないだろう……。
……
少し泣いて多少気分が晴れた。
私は今、お金がいくらあるのか知らない。
そろそろ妻として財布を握る必要があるのかもしれない。
(私が家計をやりくりした方がお兄ちゃんの負担も減るよね? 今夜お兄ちゃんに相談してみよう)
───
翌朝、目を覚ますとベッドには私一人で寝ていた。
お兄ちゃんもユキちゃんもいない。
昨夜2人の帰りを待っていたのに、いつの間にか眠ってしまったようだ。
私は部屋の扉に仕掛けた細工の状態を見る。扉を開けた形跡が無い……。
つまり、お兄ちゃんとユキちゃんは帰ってきていない。
昨日の朝の会話を思い出す……。
(2人でどこかに泊まったのかな? それならいいけど……)
私は最悪の想像をしながら祈った。
最悪1 2人は死んだ
最悪2 2人は私を捨てた
私は捨てられててもいいから、2人には無事でいてほしいと願う……。
(……いきなり未亡人になったら私、壊れちゃうよ? お兄ちゃん……)
私は下腹部を撫でながら2人の帰還を待っていた。
(もうすぐパパとお義姉ちゃんが帰ってくるから心配しないでね……)
───
俺とユキは迷宮2階にいる。
目の前には迷宮3階への階段がある。
「ユキ、降りれるか?」
「2階はもう探索し尽くしたから降りてもいいと思うわ」
「じゃあ行くか。危険だったらすぐ戻るぞ」
「ええ、わかったわ」
……
「いきなり扉か。何か怪しいな」
「そうね。モンスターハウスかもしれないわね」
「ユキ、用心して開けてくれ」
「ええ……。思った通りアラームが仕掛けられているわね。カオル君、少し離れていてくれる? アラームが鳴ったら全力で階段まで逃げて!」
俺は少し離れてユキの様子を伺っていた。
「……解除できたわ。もう安全よ」
ユキが扉を開けると……そこは大広間だった。
「ユキ、どうだ?」
「広くてわからないけど危険はなさそうね」
ユキが一歩踏み出した瞬間……。
シュート!
ユキの足元がパカッと開いてユキの姿が消えた!
(危険はなかったんじゃないのか!?)
───
◇シュート
今いる階より下の階に落とされる落とし穴
ダメージは受けない
たまに同じ階の別の場所に移動する(原理は不明)
つまりユキは今1人ぼっち。俺も1人ぼっちだ。
一気にピンチになってしまった。
(そうだ! 俺もこの罠に嵌ればユキと同じ場所に行くはずだ!!)
俺はユキの消えた場所におそるおそる立つ。
……何も起きない。
念のためジャンプしたりこじ開けようともしたが罠は発動しなかった。
こうなると1人で進むか戻るしか選択肢は無い。
(初めて来た3階で1人はさすがに危険だな)
危険でもユキを置いていく訳にはいかない。
但し、うかつに動くの考えものだ。
俺にはどこに罠があるかわからないからだ。
(ユキを頼りにしていたツケがここで出てきたか……)
ユキを助けるには慎重かつ罠に引っかからないように、前に進む必要がある。
今の俺は1人だから催眠ガスでも致命傷になり得る。
……今だから言おう……俺はビビりだ。
ヒナもユキも居ない今、俺のビビりっぷりを解放する時だろう!
俺はモードを切り替える。
ここは怖がりながらも大胆に進む、“言いながら淳
───
「こわいな~恐ろしいな~そう思って通路を進んだんです」
(さすが“淳
そう思いながら俺は“言いながら淳
“言いながら淳
「ここには誰もいない……ワタシの足音しか聞こえないんですよ。夜空を見ると月が雲に隠れてる。真っ暗な中ワタシ一歩一歩進みましたね」
(空なんか見えないぞ! お前の声も聞こえるし)
「ワタシ、自慢じゃありませんが罠の判別なんて出来ませんからね。解除なんてもってのほかだ。でも……幼馴染を助けるためには進むしかない。このまま帰ればカミさんに叱られる。 カミさんに叱られないなら、とっとと帰るところですよ……。仕方ないので進みました……」
(薄情なヤツだな……)
「そのまま歩きながらふと思った。広間にはポツポツ灯りが見える……。おかしい……。誰がこの松明を点火したり、補充したりしてるんだ?」
(確かに!? てか、真っ暗ってさっき言ってなかったか?)
「そのまま歩いて行きますとね、何か見えました。なんだ? あれ? って思いながらワタシ近づいていきました。近づいていくと、だんだんそれがなにかわかってきました」
(なんだったんだ?)
「それは看板……いや立札といいますかね? ボロボロかと思いきや妙に新しい。いや、これはついさっき設置したかのような新しさでした」
(ふーん)
「こんなところに立札立てる人がいるんだなー。ワタシそんな事思いながら立札見ました」
(何てかいてあるんだ?)
「そこでワタシ、気付きました」
(何を!?)
「こんなところに立札がある! いや、あり得ないんだ! こんな人里離れた迷宮に立札があるなんておかしい! 誰が誰に対して立てた立札だとワタシ思いましたね……」
(続きが気になるぞ……)
「ふと気配を感じて振り向くとあれ? 人影がある。さっきまであんなところに人がいたかな~と思いましたが、声を掛ける事にしました。お~~~い!」
(ふむふむ)
「声を掛けて気が付きました。ここは迷宮でしかも3階だ。こんなところにいるのは、人よりモンスターの可能性の方が高いんじゃないか……」
(おいおいおいおい!)
「人影がワタシに近づいてくる……。よかった。人の形をしている。あーよかった! モンスターじゃない! ……でもまてよ? そうなんだ! 人の形をしているモンスターなんていくらでもいるんだ! 例えば、ゾンビ、腐った死体、グール、リビングデッド、バタリアン……」
(全部一緒だよ!)
「人影がどんどん近づいてくる……。ワタシ思わずうわ──! って思いっきり叫んだんですよ。……あ! これはマズイな~。叫んだせいでモンスター呼び集めちゃうんじゃないか? 叫んでから気付きましたね」
(おいおい! やめてくれよ!)
「そしたらモンスターがぞろぞろ出てきたんですよ。あれはスケルトンかな? あっちは……狼男だ。こっちはフランケンシュタインの怪物。見た事あるような無いようなモンスター達が、大量にワタシを目指して歩いてくる……」
(ふざけんな!)
「ワタシは……。うわー! 助けてくれ! ナンマンダブナンマンダブ……。一生懸命念仏を唱えたんです。そしたらワタシの目の前まで来たスケルトンが言うんです。“大丈夫ですか? 出口はあちらですよ? ”ワタシ唖然としちゃいましてね、思わず“どうも”と言ってしまいました。イケメンなスケルトンでした。いや、ワタシ素人だからわかりませんが女性なのかもしれませんけどね」
(声でわかるだろ!)
「そのままモンスター達は素通りしてワタシの背後に消えていったんです。いや~不思議な事もあるもんだと思って……そうだ! 立札に何て書いてあるんだろう? 気になって振り向きました」
(良かった……助かった)
「そろそろ時間切れですね。ではカオルさん、次回の怪談ナイトでお会いしましょう♪」
そう言って“言いながら淳
(肝心な所で消えやがって! 続きが気になるぞ!)
俺の目の前には立札。『女体収穫祭会場コチラ』と書いてある。
その先には下り階段があった。
(降りるしかないよな)
俺は階段を下りた。
ダッダッダッ!
わざとらしい音が聞こえた。
───
4階に降りると賑やかだった。
「俺は今日のために10日間オナニーしてないんだ!」
「何言ってる! 俺は1か月だぞ!」
「オレハ1ネンダ!」
「いや、吾輩はオナニーしたことないでおじゃる!」
「早く挿れてぇな!」
「皆さん、静かに……。オナ禁の期間は皆様の御心のままに!」
「狂信者は死んだ方がいいと思うの!」
「誰が狂信者と!?」
「お前しかいないの!」
そう言って目の前にいた神父の恰好をしたゴブリンは
女装した巨人に踏みつぶされた。
もしかしたら女性の巨人だったかもしれない。
(なんなんだ? ここは!?)
俺はモンスターだらけの列を見ながら、できるだけ善良そうなモンスターに声を掛けることにした。
“友好的なスケルトン”に声を掛ける。
「ここ、なんなんです?」
「女体収穫祭会場だよ」
「女体収穫祭って何なんですか?」
「主催者に聞いた方が早いよ。私は列を離れられないから案内できないけど、この先にいるよ」
「ありがとうございます。ところで……」
「何かな?」
俺は疑問に思うことを聞く。
「オナニー禁止じゃないんですか?」
「ああ、人間たちはそうみたいだね。モンスターには関係ないんだよ。私なんて毎日してるよ」
「そうなんですね。ご丁寧にありがとうございました」
(ナニが無いのにどうやってオナニーしてるんだろう?)
───
“友好的なスケルトン”に教えられた主催者のもとに向かう。
「あなたが主催者ですか?」
「そうだ」
主催者はフクロウ? ミミズク?
そんな被り物をしている不気味な(おそらく)男だった。
「私はアクエリアン。この祭りの主催者だよ」
(あー、あの映画か)
「女体収穫祭ってなんなんですか?」
「別名“種付け祭り”という毎月3日と4日に開催する、ツガイを見つけるための祭りだよ。この祭りに参加する人間は少ないんだ。キミよく来たね。ツガイが欲しいのかい?」
「ツガイとは何ですか?」
「言葉通り、夫婦になるための相手だよ」
「列には女性もいるようですが?」
俺が目を向けた先にはサキュバスとラミアがいた。
どちらも胸があるので女性だろう。
「別に女性同士で夫婦になってもいいだろう? 何か問題あるかな?」
(確かに……)
「説明するより見てもらった方が早いから見学していくかい?」
「はい、お願いします」
(ユキを探すには進むしかないからな……)
───
祭り会場は壮観だった。
至る所でモンスター達が性行為を行っていた。
「たまんねぇ! 射精するぞ! オラァ!」
「オレノ子供ヲ産メ!」
「ハァハァ……3発目だ! 10発目まであと7発だ!」
「可愛いお嫁ちゃんマンコね♡お姉さんと貝を合わせましょう♡」
聞こえてくるのは男(?)達ばかりで女達の声は聞こえない。
ほとんどが意識がないようだった。
「何なんです? これ……」
「上を見てごらん」
「上?」
嫌な予感しかしないが俺は上を見上げる……。
俺の真上には巨大なオマンコがあった……。