※この作品はR-18です。

お兄ちゃんの子供が欲しい妹とそうでもない兄   作:猫見サイル

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死産を思わせる描写があります。
ご注意ください。


31 姉弟は兄妹のために

 ヒナが俺の子供を産んだ。

 

 ベッドの上は悲惨なことになっていたが、ヒナが“清掃”を使ったので今は綺麗だ。

 

 ヒナは今カーテンに沿って横たわる。

 俺は相変わらずヒナの左手を握っている。

 

 カーテンの向こうにはユキと俺達の子供がいる。

 

 

 俺達の子供の泣き声は聞こえない。

 

 ……死産なのだろう。

 

 

 ヒナに何と言えばいい?

 できるだけ傷つけずにどう伝える?

 

 

 そんな事は無理だ。

 

 そして……心のどこかでは、子供の事を考慮する必要がなくなり、これで良かったのかもしれない……。

 と思う最低な自分もいた。

 

 

 

「ヒナ、疲れただろう? 寝てくれ……」

 

「お兄ちゃん? ヒナ、早く赤ちゃんに会いたいよ? 寝るなら赤ちゃんを抱いてから一緒に寝たいの」

 

「ヒナちゃん……無理よ」

 

「ユキちゃん……早く赤ちゃんに会わせて?」

 

「無理なの……」

 

「どうして?」

 

「無理だから……。そのカーテンだけは絶対に開けないでね」

 

「何故?」

 

「いいから……絶対開けないで」

 

 

 しばらくしてカーテンの向こう側からぴちゃぴちゃ……。音が聞こえてきた……。

 

「ユキちゃん……何をしているの?」

 

 ぴちゃぴちゃ……。

 

 返事はない。

 

 ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ……。

 

 ───

 

 しばらく沈黙が続いた後、カーテンの向こうのユキちゃんが聞いてきた。

 

「ヒナちゃん、カオル君……。男の子と女の子だった。名前は決めてある?」

 

「朝日(アサヒ)と香織(カオリ)でいいよね? お兄ちゃん」

 

「……ああ」

 

「……そう」

 

 私は少し気になって聞いてみる。

 

「ユキちゃん? “だった”ってどういうこと?」

 

「ヒナちゃん、カオル君……見せるべきかどうか、私……迷ってる」

 

「えっ!? ユキちゃん何言ってるの? お兄ちゃん、なんでヒナに抱きついて泣いているの?」

 

 お兄ちゃんが泣いている。

 私はお兄ちゃんが泣いている理由がわからない。

 

「ヒナ、すまない!」

 

「!? お兄ちゃん、泣いてないで説明してよ。説明してくれなきゃヒナ何もわからないよ」

 

 

「……泣き声が……聞こえないんだ……。俺達の子供の……」

 

「……どういうこと!? ヒナの赤ちゃん、泣いてないの……? それって……えっ!?」

 

 お兄ちゃんが強く抱きしめる。

 

 カーテンの向こうではユキちゃんがすすり泣いている。

 

「ヒナは悪くない……。辛い思いをさせてすまない」

 

「ヒナとお兄ちゃんの赤ちゃん!!」

 

「絶対にカーテンはめくらないで……。見ないで……ヒナちゃん……。お願い……」

 

 ユキちゃんが泣いている。

 

 

 お兄ちゃんも泣いている。

 

 

 私は…………。

 

 

 

 

 察した。

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

 私は思い切り泣いた。

 

 ───

 

「お兄ちゃん! ごめんなさい! ……うわぁぁぁぁぁん!」

 

 私はお兄ちゃんに抱きついて泣いている。

 お兄ちゃんは何も言わずに私を抱きしめる。

 

 昨日の私は……子供なんていない方がいいと思ってしまった。

 産まれない方がいいと思ってしまった。

 

 今朝の私は……お兄ちゃんとの約束を破って、お兄ちゃんを求めてしまった。

 

 こうなってしまったのは……私のせいだ。

 

 ちょっと早いけど、元気な赤ちゃんが無事に生まれてくると思っていた。

 

「お兄ちゃん、もうヒナはお嫁さんやめる! ユキちゃんと結婚して! 2人で幸せになって!」

 

 私は……もう……死にたい……。

 私は泣き続けた。

 

 

「ヒナちゃん……」

 

 カーテンの向こう側から

 ユキちゃんが出てきて私を抱きしめる。

 

「こっちに来て……」

 

 お風呂場とトイレに続く廊下に、ユキちゃんは私を優しく抱き締めながら連れてきた。

 

 私はずっと泣いていた。

 ユキちゃんもずっと泣いていた。

 

 ユキちゃんは涙を流しながら私の正面に立ち、私の顔を見る。

 私も泣きながらユキちゃんの顔を見ていた。

 

 ユキちゃんの瞳が赤く染まる……。

 

 ───

 

 何が起こったのかわからなかった。

 左頬が熱い……痛い……涙が溢れる……。

 私はユキちゃんに抱きしめられる。

 

 抱き締められたまま、耳元でユキちゃんが荒い息を吐きながら言う。

 

「ハァ……ハァ……ヒナ、ふざけないで……。危うく首をはねるところよ」

 

 ユキちゃんの言葉を聞いて、ゾッとした……。

 

 

 ユキちゃんは静かに怒っていた。

 

 ───

 

「私はヒナがどうしてもカオルと添い遂げたいというから協力した。本当は私が添い遂げたいのを必死で我慢してだよ? それが何よさっきの? お嫁さんやめるって!? ヒナの想いはその程度だったの? その程度で私から私のカオルを奪ったの?」

 

 ユキちゃんは抱擁を解き、私の顔を真っすぐ見る。

 ユキちゃんの目は赤く輝いている……。

 口元はマスクで見えない……怖い。

 

「カオルを見て。……どう?」

「お兄ちゃん……泣いてる」

「なんで泣いてるかわかる?」

「ヒナが……お兄ちゃんの子供を無事に産めなかったからだよ!」

「……ちがう!」

「えっ!?」

「ヒナのせいで泣いているんじゃないよ! ヒナが傷付いてるのが悲しくて泣いている」

 

「……そ、そうなの……!?」

「そんな事もわからないの? ヒナが辛くて泣くのは……いい。そんなヒナを想ってカオルは泣いている。私はヒナの事を想って泣いているカオル、そして一番傷付いているヒナ。2人を想って泣いている。皆辛いの……」

 

 私の目から涙が溢れる。

 

「辛いのはヒナだけじゃない! みんな辛い! 辛いのは自分だけとは思わないで!」

 

「お義姉ちゃん! ごめんなさい!」

「謝るのは私じゃない……カオルに謝って! ヒナとカオルは夫婦だよ? 悲しみは夫婦2人で共有して、2人で悲しんで」

 

 私はお兄ちゃんの元に駆け寄り泣いて謝った。

 お兄ちゃんは無言で私を抱きしめ続けた……。

 

 ───

 

 俺達は今3人でベッドの上に座っている。

 目の前にはカーテンがある。

 

「私は……今でも迷っているわ。2人に、子供を見せるべきかどうか……。見たくないなら……私が処分して、この事はお墓まで持っていく秘密にするわ。見るかどうか、2人で決めて」

 

 俺の腕の中で泣いていたヒナは俺の目を見る。

 涙はもう止まっていた。

 俺は無言でヒナに頷く。

 

「ユキちゃん、ヒナ自分の産んだ子を見るよ」

 

 

「そう……でも覚悟して頂戴。勘違いしているかもしれないから言っておくわ。死産ではないの! でも、死産の方がマシと思うかもしれないわ。それでも……見る覚悟はある?」

 

「っ!! 生きているのか!?」

 

「……わからないわ。これは私の想像の域を超えているの。自分の目で判断して」

 

「見せて! ユキちゃん!」

 

 

「……そう……なら見て」

 

 ユキはそう言って即席のカーテンを開けた。

 俺達の子供はベッドの上でシーツにくるまれていた。

 随分……小さい……。

 

 俺がヒナの顔を見ると、気付いたヒナが頷く。

 

 俺はゆっくり手を伸ばしてシーツを解いていく……。

 

「!!!」

 

 想像を絶するものが目に映っていた……。

 

 ───

 

 ヒナが出産する前日……。

 

 姉と弟は母の子宮内で話し合っていた。

 もちろんまだ言葉を話す事はできないため、一種のテレパシーのようなもので意思疎通を行っている。

 

 

「……ってママは思ってそうなの」

 

「そうなの? お姉ちゃん? これからボク達どうすればいいの?」

 

「そうね。ママに会いたい?」

 

「別に会いたくない」

 

「私もよ。パパには?」

 

「別に……」

 

「私もよ」

 

「ボク達、産まれない方がいいんでしょ?」

 

「そうね。私達を産むとどうなるかわかる?」

 

「わからない」

 

「ママは、最低5年は無駄な時間を過ごす事になるわ。パパは16年くらいかな?」

 

「勝手に時間を無駄にするのは別にいいよ。結局ボクら、望まれていなかったんだね」

 

「そうね。だからこのまま私と死んでくれない? 私達が死んだ方がママもパパも楽になるんだよ」

 

「……ボク達が死んだらママとパパは悲しまない?」

 

「えっ!? ……それは……」

 

「……ボクいい事を思い付いたちゃった。これならママとパパの力にもなれる。悲しませちゃうかもしれないけど、ボク達が死ぬよりは悲しまないはず……」

 

「聞かせて」

 

 弟は姉に自分の計画を語る。

 姉は弟の計画を大層驚いて聞いていた。

 

 

「どう思う? お姉ちゃん」

「弟……あなた……天才?」

「お姉ちゃん、早速行動しよう……」

 

 ───

 

「ボク達だけの力じゃこの計画は成功しない。パパとママの協力が必要だよ」

 

「パパの種とパパの手が必要ね」

 

「そう。そのためにはママに協力してもらう必要がある」

 

「ママ……お願い……私達のために、行動を開始して!」

 

 

 姉弟はまず母の閉ざされた性欲を解放させた。

 

 

「すごい! もうママがパパを欲しがってるわ」

 

「少し暑くなってきたね。ママは変態だからこの分だとすぐ手に入れそうだ」

 

「変態とはちょっと違うと思うわ。ママはパパの事が好き過ぎるだけよ」

 

 ───

 

 ヒナが出産する朝……。姉弟は時が来た事がわかり期待に胸を膨らませていた。

 

 

「お姉ちゃん。思ったより時間が掛かったけど、やっとパパが入ってきたよ。もう少しで種が手に入るよ。準備はいい?」

 

「うん、準備は出来てるわ」

 

 姉弟の元に種が届く……。

 

「よし、種が手に入った。これでスキルが使えるよ」

 

「いよいよね」

 

「お姉ちゃん、ボクが先に生まれさせて貰うね」

 

「どうして?」

 

「ボクが先に生まれた方が面白いから♪ ユキさんの驚く顔が見たい♪ ……強制出生!」

 

「弟……無事を祈ってるわ。あ! パパがママの手を握った! これでもうパパの手が使えるわ」

 

「お姉ちゃんも無事で。パパの手よ! ボクの願いは……ボクは魔道具としてママから生まれたい! 捧げる代償はボクの命だ!」

 

 弟の姿はみるみるうちに変わっていった……。

 

「お姉ちゃん、先に生まれて待ってるね」

 

「私もすぐ行くわ。……強制出生! ……パパの手よ!」

 

 こうして姉弟は自分の命と引き換えに、魔道具としてこの世に生を受ける事となった。

 

 ───

 

 シーツにくるまれていた我が子を見て、俺は固まっていた。

 俺の頭の理解が追い付かなかった。

 

「ユキ…………?」

 

「私に聞かれても困るわ。私もわからないの……」

 

「ユキちゃん、本当にヒナから産まれてきたの?」

 

「……そうよ。間違いないわ」

 

 俺とヒナの子供。ヒナが産んだ子は、ディルドとオナホだった……。

 

 

 おそるおそるヒナの顔を見る。

 

 ヒナは俯いていて顔が見えない。

 

「お兄ちゃん、ユキちゃん、さっきは取り乱してごめんなさい。ヒナ、ヒナのせいで、お兄ちゃんの赤ちゃんを無事産めなかった。そう思っていたの……」

 

 ヒナが顔を上げる。

 

 

 泣いていた……。

 

「ヒナ、間違ってた。ちょっとほかの赤ちゃんとは違う姿だけど、正真正銘、お兄ちゃんとヒナの子供だよ。無事生まれてきてくれてありがとう」

 

 俺はヒナの肩を抱く。

 

「そうでしょう? お兄ちゃん?」

 

「そうだ。俺達の子だ」

 

 ヒナがディルドを手に抱く。

 

「抱かせて……朝日(アサヒ)。お前の名前は朝日(アサヒ)よ。パパが付けてくれた名前よ」

 

 

 俺はオナホを手に抱く。

 

「そしてお前の名前は香織(カオリ)だ。無事生まれてきてくれてありがとう」

 

 俺は泣いていた……。

 

 ───

 

 ……姉弟は命を失っていたがまだ意識はあった。

 

(これがボクのママ? 会うつもりはなかったけど会えてよかった。綺麗だねママ。大好きだよ!)

 

(私のパパ!? ママが好きになるのもわかるわ。こっちはユキさん? 私達が無事生まれるよう、頑張ってくれてありがとう)

 

(お姉ちゃん……。もうそろそろ、僕らは僕らじゃなくなる……)

 

(そうだね。でも私、生まれてきて良かった。名前も付けて貰えた。香織(カオリ)……素敵な名前。嬉しかったよ。ママ、パパ……)

 

(良かったね。僕も朝日(アサヒ)って名前が好きだ。カオリお姉ちゃん……出来れば元の世界でも……お姉ちゃんのおとうととしてうまれ……)

 

(うん。アサヒ……みじかいあいだだったけど……。……たのしか……)

 

(ぼくも……カオ……おね……ちゃ……)

 

 姉と弟はここで意識を無くす……。

 ここからは魔道具として機能する人生が待っている……。

 道具に感情も意識も必要はなかった……。

 

 ───

 

「お兄ちゃん! カオリがすごく濡れてる……」

「アサヒも先走り汁がすごいな……」

 

 カオリとアサヒから分泌される液体がシーツにシミを作っている。

 

 

「2人とも泣いているのかな?」

 

「……かもしれないな。悲しいのか……?」

 

「ママとパパに抱かれてるんだから、悲しい訳ないでしょ?……嬉しくて泣いているのよ」

 

 

 ユキは静かに言った……。

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