ベッドの向こうから覗いた顔。それは真っ赤な瞳のユキちゃんだった……。
(え?)
私は急いで振り返る。
そこには全裸のユキちゃんが立ち、私を凝視している。
もう一度ベッドの向こうへ目を向ける。
全裸のユキちゃんが立ち上がり、私を真っすぐ見つめながら口元にうっすら笑みを浮かべていた。
(ユキちゃんが2人!?)
私はすっかり混乱していたけど……。
(逃げなきゃ!)
寝ているユキちゃんにおもいっきりドロップキックをしてしまった。
このまま無事に済むハズがない!
私は急いで逃げ出そうとする……が……。
「ッ!!」
身体が動かない!
いつの間にか、背後に立つユキちゃんが私を拘束していた。
急いで引き剥がそうにも、力が強くてビクともしない。
目の前にはもう一人のユキちゃんが迫る。
ユキちゃんの右手に青筋が浮かび、5本の指の爪は鋭く伸び始める……。
このままでは、どんな目に合うのか、想像もしたくなかった。
「ヒナちゃん……よくも……えっ!?」
ユキちゃんが目を丸くし、視線を私に……いや、私の背後に向ける。
「ユキ! どういうことだ!?」
お兄ちゃんもユキちゃんと同様、私の背後を見て呆然としていた……。
───
衝撃で目を覚ました俺の目の前には、あり得ない光景が広がっていた。
右側には怒りをあらわにした全裸のユキが。
左側には拘束されたヒナが。
ヒナを拘束しているのは、昨夜愛し合った女……ユキだった。
「ユキ! どういうことだ!?」
右側のユキに問うが、ユキは目を見開き、信じられないという面持ちでもう1人のユキを凝視している。
ヒナを見ると、今にも泣きそうな顔をしている。
俺は、昨夜の出来事を思い出す……。
───
俺はユキの上で懸命に腰を打ちつけていた。
子を成すための、生命の営み……。
俺の腰の後ろで絡みつくユキの脚に力がこもる。
「カオルゥゥゥ……いいっ! 気持ちいいよぉぉぉ!」
身体の下では愛するユキの甘い嬌声が聞こえる。
射精感が高まる!
性器の先に感じる精石はとろけるように柔らかく、いつ破れてもおかしくない状態だ。
「ユキ! イキそうだ!!」
「カオル!
ユキの脚が力強く俺をロックし、もう抜こうとしても抜く事はできない!
「ユキ! ユキィィィィ!」
右手で思い切りユキの手を握る。ユキも強く握り返す……。
性器が膨らみ、快感が頭から背中を伝わり、やがて股間へと達する。
次のひと突きで、ユキの膣内で性器が跳ねた。
と同時に、性器の先にあった柔らかい弾力の感覚が消え、ヌルヌルした粘液に変わる。
ユキの膣内で痙攣を続けていた性器の動きが止まる。
押し寄せる、虚脱感……。
俺はユキの身体の上にだらしなく崩れ落ちた。
まるで射精したかのような感覚だったが、もちろん、今の俺の性器から精子が出る事はなかった……。
「カオル……精子が……カオルの精子が子宮に入って来たよぅ……愛しているわ! カオル!!」
ユキは俺の右手を強く握り返し、空いた方の手で俺の頭を撫でていた。
「ユキ……俺も愛しているよ……」
「カオル……私、幸せだよ……」
目を閉じ、暗闇の中、ユキの嬉しそうな声が聞こえた……。
……
ようやく、ユキと結合を解く。ユキは名残惜しそうに俺を見つめた。
ユキのオマンコからゆっくり抜くと、俺の性器は、ユキの淫液でヌラヌラ光っていた。
「カオル、私の奥に精子をくれてありがとう……」
「いや、射精はしてない……精石だよ」
「うん、わかっているわ……それでも嬉しいの」
ユキは目を潤ませながら微笑む。
「カオル、私ね……。カオルの赤ちゃんはもう産めないの。でもね……」
「でも?」
ユキは口元に微笑みを浮かべたまま、静かに目を閉じた。
「カオルへの愛とカオルの精子で……もうそろそろ生まれるわ……見守っていてね」
(生まれる?)
ユキはベッドの上でひょいと起き上がると、しゃがみ込む。
「くノ一忍法、・・分身!」
ユキの股間から何かが出てきて、それはコロコロとベッドの縁まで転がり、そのまま落ちていった……。
その様子を呆然として見ていると、やがて、何かが落ちたベッドの傍らに、人影があらわれる。
(これは……!?)
全裸のユキがそこに立っていた。顔は無表情だ。
ベッドの上にはユキが先ほどと同じ格好でしゃがみ込んでいる。
ユキの言葉は途中聞き取れなかったが、たしか分身と言っていた。
影分身と言ったのだろうか?
「カオル、どう? すごいでしょ?」
「ああ、まるで、生きているようだ」
俺はユキの影分身に近寄り、まじまじと観察した。
どう見ても、本物のユキにしか見えない。
ふと、興味本位で影分身の乳首をつついた。
むにっ♪
「ひゃあんっ♡」
(えっ!?)
乳首を通り抜けると思われた指先には柔らかな感触が伝わり、影分身は胸を隠してしゃがみ込んだ。
瞳には涙を浮かべている。
「カオル? 何するのよ!?」
ベッドの上のユキが非難の目を俺に向ける。
「えっ!? 影分身だから平気かと思って……」
「影分身? 違うわ! 肉分身よ! 実体はあるの。私の愛とカオルの精子の結晶よ」
「えっ!?」
ベッドの上のユキがもう一人のユキの傍らに立ち、肩にそっと手を置き、優しく立ち上がらせる。
「可哀そうに……怖かった?」
「ううん、だ、大丈夫……」
胸と股間を隠しながら、分身は潤んだ瞳で俺を見つめていた。
その隣に立つユキは堂々と裸を晒している。
「ユキ、この分身はどうなるんだ?」
「どう? たぶん、そのうち消えるわ。そうよね?」
ユキが分身に問いただすと、分身は静かに頷き、口を開く。
「あと5時間もすれば、私は灰になって消えて無くなるわ」
「そう……」
ユキは憐みの目を分身に向けた。
分身もユキを悲しそうに見つめていた。
「それで、この後、どうするんだ?」
「「えっ!?」」
ユキと分身が声を上げる。
「……そこまで考えていなかったわね。ねぇ、あなた、何かしたいことはあるの?」
ユキが分身に問うと、分身は顔を真っ赤にして、ボソボソと呟く。
俺には何を言ったか聞き取れず、ユキを見る。
ユキもどうやら聞き取れなかったようだ。
「聞こえないわよ? もう少し大きな声で言って」
ユキの声に、分身はビクッと身体を震わせると、涙を浮かべながら、俺を見つめた。
「わ、私、あなたとエッチな事がしたい!」
「「えっ!?」」
今度は俺とユキが声を上げた……。
ユキは分身と俺の顔を交互に見つめた。
「ちょっと!? いきなり、どうしてエッチする話になるのよ!? まるで私が痴女みたいじゃない!!」
ユキの顔は真っ赤だ。ユキの質問に分身は俯く。
「だって、私、は、初めて胸を触られて、それが気持ちよくてエッチな気分になっちゃったの……責任取ってほしいよ……」
「ダ、ダメよ! カオルは私の夫なのよ? カオルが他の人とエッチするなんて、私は許さないわ!!」
「私はあなたの分身よ? 私とエッチするという事は、あなたがエッチしているのと一緒でしょ?」
「そ、それは……」
ユキが分身とやり合う。
俺はだんだん混乱してきた。
ただ……、時々、今にも泣きそうな顔で俺を見つめる分身を見ると、ユキを悲しませているような錯覚におちいり、心が痛んだ。
「とにかくダメ! 絶対ダメ!」
分身に向かい強い口調で拒絶するユキの肩にそっと手を置いた。
「カオル……?」
「ユキ、いいよ。彼女が抱いてほしいなら、俺、抱くよ」
「えっ!? ダメよ! だってカオr「わかっているよ」……えっ!?」
ユキの言葉を遮る。
「本物のユキじゃない、分身だって事はわかっているよ……。でも、ダメだ。ユキを悲しませているような気がして……。俺はユキを悲しませたくない」
「カオル……」
「……」
ユキは押し黙る。分身は無言のまま、俯いている。
「ユキ……イヤか?」
「イヤ……なのかな? この子の言う通り、この子を抱くという事は、私を抱くのと一緒よね? ……何か、よくわからなくなってきたわ……でも」
ユキが俺を見つめる。
「カオルは私の事を想っているのね。それは……とても嬉しくて、私、幸せよ!」
ユキが唇を重ねる。しばしの間、俺はユキの口内を楽しんだ。
分身は羨ましそうに俺たちの接吻を無言で眺めていた……。
……
「さぁ、そうと決まれば、さっさとエッチしなさい。明日も早いからエッチが終わったら寝るわよ」
ユキはベッドの傍らのソファーに座り、俺と分身を見つめる。
俺はベッドに座るが、分身はベッドの傍らに立ち、相変わらず胸と股間を手で隠したまま、動こうとはしなかった……。
「どうしたの? さっさとしなさい。あなた、エッチしたいのでしょ?」
ユキの言葉に分身は無言で頷くが、相変わらず立ち尽くすままだ。
「も、もしかして……あなた、私に見られて、恥ずかしいの?」
分身はコクリッと頷く。
「わ、私、初めてだもん……」
「わかったわ。私はお風呂場にいるから、終わったら呼んでちょうだい」
ユキは立ち上がると、お風呂場に向かう。
お風呂場の扉が閉まる音が聞こえた。
部屋には俺と分身だけが残された。
「恥ずかしいなら、明かりを消そうか?」
「ま、待って!」
明かりを消そうとする俺を、分身が止める。
「顔……よく見せて」
分身が俺の顔をまじまじと見つめる。少し気恥ずかしかった。
「あなた、名前はカオルっていうのよね? 不思議……初めて会ったのに、昔から知っているような気がする……」
「ユキとは昔からの付き合いだから、そう思うのだろう」
「あなたとエッチな事がしたいのも?」
「俺とユキは今まで何度もセックスしたからな。……だからかも?」
分身は胸と股間を隠したまま、俺の隣に座る。
「私……初めてなの……優しくしてね?」
「ああ。ところで、何て呼べばいい?」
「ユキ……でいいよ」
「ユキ、今の俺はこんなだから、気持ちよくしてあげられるかわからないぞ?」
俺は自分の股間を指す。
分身は興味津々という感じで俺の股間を見つめる……。
「さぁ、手を」
「手?」
「ユキと愛し合う時は、いつもこうやって手を繋いでいるんだ……」
胸を隠している左手を右手で握る。
少しの抵抗の後、分身の胸があらわになる。
「あったかい……カオル、私の胸、変じゃない?」
「変じゃないよ。ユキ、綺麗だよ」
「嬉しい♡」
「明かり、消すよ……」
「カオル!!」
「ッ!!」
明かりを消そうとする俺は分身に押し倒され、唇を奪われた……。
───
カオルに抱き着いて気持ちよく寝ていると、突然、背中に衝撃が走り、私は吹き飛ばされた!
その直後、ヒナちゃんの声が聞こえる。
内容を聞くに、ヒナちゃんは怒っていて、カオルを責めているようだ。
という事は、先ほど私を吹き飛ばした犯人はヒナちゃんだ……。
(これは、少しキツイお仕置きが必要ね)
「いったぁ……! よくもやってくれたわね…………」
わざと痛そうな声を出しながら、私は立ち上がり、ヒナちゃんを正面に見据える。
ヒナちゃんを脅すために口には笑みを浮かべ、腕を戦闘モード用に変え、見せつける。
もちろん、ヒナちゃんに手を上げるつもりは無い。
少しだけ、怖がらせるだけのつもりだった……。
私は低い声で言う。
「ヒナちゃん……よくも……えっ!?」
言っている途中で思わず間抜けな声が出てしまった!
私の目の前には、ヒナちゃんを拘束する私の分身が居た……。
(ど、どうして……? いや! それよりも……)
横目でカオルを見る……カオルはどこまで覚えているだろうか?
このままでは……マズイ……。
私は昨夜の事を思い出す……。
───
(カオル……)
湯船に浸かりながら、彼を想う。
今夜は、私が彼を独占できるはずだったのに、私が生み出した分身のせいで、私は今一人だ。
……とんだ邪魔が入ったものだ。
(カオルは今頃、私の分身を……)
頭の中に、ベッドの上での光景が浮かぶ……。
彼の身体の下でよがり乱れる私の分身。
その上には、私の股間に懸命に腰を打ちつけるカオル。
繋がれた左手と右手……部屋に響くのは私の股間から聴こえる水音と……『カオルゥゥゥ!』……彼の名を叫ぶ嬌声。
抽挿が速まり、空いた手で彼の背中に爪を立てる。
私の体内で彼のモノが膨らむ……。
脚を彼の腰の後ろで絡ませ、私の一番奥で彼を迎える準備をする。
胸とお腹と股間と脚に伝わる彼の温もり……。
一瞬の硬直と、その後の痙攣。私の体内で跳ねる彼……。
火傷するかと思われるような熱い液体が、勢いよく私の奥に注がれる。
やがてそれは、ゆっくりと私の冷たい子宮内に広がり、温める……。
愛しい、カオルの遺伝子情報は私の卵と一つになり、私は、彼の子を孕む……。
気が付くと、いつの間にか涙を流していた。
さっきまで散々抱かれたというのに、もう彼が恋しかった。
もっと、もっともっともっともっともっと……抱かれたい。
カオルにメチャクチャにされたい。
腰が抜け、足腰が立たなくなるまで責められたい。
子宮内に限界まで、お腹が膨らむくらい、カオルの精子が欲しい……。
……カオルの赤ちゃんが欲しい……
ふと、我に返り、急いで頭の中の想像を散らす。
これではいけない……。
カオル好みの女の子でいなければ……。
いつだったか、ヒナちゃんが言っていたのを思い出す。
『お兄ちゃん、清楚な女の子が好みだから、ユキちゃんがあんなことしてるって知ったら避けられるかもよ?』
(あれは、この世界にきたばかりのときだっけ?)
薄々感づいていた事だけど、私の性欲は強い。
淫乱といってもいいのかもしれない。
少なくとも、“清楚”という言葉とかけ離れているのは確かだ。
元の世界に居た時、家族が居ない家で1日中オナニーしていた事だってある。
もちろん、オカズはカオル……。
できることなら、1日中カオルとエッチしたい……。
エッチな女の子だとバレてしまうから、そんな事はしないけど……。
カオルの前では、清楚な女の子でいよう、そう決めたのだから、我慢する……。
(でも、さっきは、ついつい何度もイッちゃった……。3か月ぶりだし、しょうがないよね? カオルにエッチと思われちゃったかな?)
カオルと私の分身とのエッチが終わったら、もう1回エッチできるかも。
そんな淡い希望を胸に、私はお風呂場の扉が開くのを待っていた……。
……
(遅い……)
1時間は確実に経ったハズだ。
そろそろ2時間は経つのではないだろうか?
いつまで経っても、私を呼びにくる気配は無かった。
(もしかして、エッチが終わって疲れて寝てしまっている?)
私はもう、ベッドに戻ろうと決めた。
無断でエッチを見られた分身に怒られるかもしれないけど、そんなものは些末なことだった。
……
「カオル! 私、またイキそうだよ? イッてもいい?」
お風呂の扉を開けると、分身の嬌声が聞こえる。
部屋の明かりが点いている事に驚く。
ベッドの上ではカオルの上に跨り、腰をグラインドさせている分身の姿がある。
ぬっちゅ……ぬっちゅ……ぬっちゅ……ぬっちゅ……
「カオル! イク! イクゥゥゥゥゥ!!」
分身は背中をのけ反らせ、お尻をガクガク震わせている。
オーガズムを迎えたようだ。
無事、エッチが終わったので、声を掛けようとすると……。
「さぁ、カオル、もっともっとエッチするよ!」
分身の言葉に耳を疑った……。
「ちょっと! あなた!?」
「きゃあっ!? なっ! なにっ!?」
私の声に、分身は飛び上がり、カオルの上から降りて胸と股間を手で隠す。
「み、見ていたの? いつから?」
顔を真っ赤にした分身が恥ずかしそうに私に聞いてくる。
「ついさっきよ。あまりにも呼びに来ないから。それよりも……カオル?」
ベッドの上でカオルは微動だにしない。嫌な予感がした……。
ゆっくりとベッドに近付き、カオルの身体を見た瞬間、私の視界が涙で歪む……。
(そんな……ひどい……ひどいよ!!)
カオルの全身が粘液に塗れていた。
顔も、頭も、胸も、腕も、脚も……股間が一番……酷い。
意識は失っているようで横たわりぐったりしている。
心なしか、顔色も悪い……。
「あ、あなた、何したの!?」
「あ……愛し合ったよ?」
「そんな事聞いてない! カオルに何をしたの? どうしてカオルはこんなにドロドロになっているの? なんで意識が無いの?」
「それは……」
私は私の分身からどんなエッチをしたのか聞いた。
分身は、キスをし、胸を愛撫され、オチンチンを挿入していた。
ここまではいい。問題はここからだった……。
「舐めてってお願いしたら、舐めてくれたの」
「どこを舐めさせたの?」
「胸と乳首と耳と耳の穴にお豆とオマンコ、あとはお尻の穴に足の指……だったかな? いろんな所を舐めてもらったよ?」
「ウソでしょ!? なんてうらやま……いや、何てところを舐めさせたのよ!?」」
「気持ちよかったよ♡」
「そんな事、聞いてないわよ!! ほかにどんなことをしたの?」
こみ上げる怒りを抑え、私は更に聞いた。
「お返しに舐めてあげたの。耳、手の指、足の指、オチンチンと最後にお尻の穴も……」
「……嫌がってなかった?」
「気持ちいいって言っていたよ?」
「舐めただけじゃこんなにドロドロにならないでしょ? これはどうしたの?」
「エッチな事していたら、オチンチンが元気無くなっちゃったの。私がもっとエッチしたいと言ったら、オマンコとお豆を触ってくれたの。それが凄く気持ち良くて、私、彼の身体のどこに擦りつければ気持ちよくなれるか探す事にしたの……」
分身はカオルの身体中に股間を擦りつけたようだった。
それはもう、オナニーではないのだろうか?
「カオルは嫌がってなかった?」
「わからない……悲しそうな顔をしていた……」
その言葉を聞いて私はもう抑えきれなくなり、右手に力を込める……。
「ユキが気持ちいいならそれでいいから、好きなようにしてくれ……って言っていた。すごく、悲しそうだったよ……」
その言葉に、分身の頬を引っ叩くために力を込めた手から、力が抜ける。
カオルの事だ。自分よりも相手……私の分身を優先したのだろう……。
「しばらくしたら、眠っちゃった……私、ずっと彼の手を握って愛し合っていた……オチンチンが一番気持ちいいってわかったよ……」
「ねぇ……何回イッたの?」
「……50回はイッてないと思う……」
「ご、50!? 30回は?」
「……余裕で超えた……かな?」
私は頭を抱えた。
私の分身の精神、それは取り繕っていない私の本心に近いだろう。
初体験なのに、明かりも消さず、己の欲望をぶつけ、愛するカオルを貪っていた……。
カオルに、私の本性が知られてしまったかもしれない……。
清楚とは程遠い、淫乱な私の本性……。
思わず、両手で顔を覆い、泣いてしまった。
「大丈夫?」
分身が頭を撫でて、私を慰める。
「やめてよ! 誰のせいでこうなったと思っているのよ!! 私がエッチな事、カオルに知られたくなかったのに! あなたのせいよ!! カオルは私みたいなエッチな女の子は好きじゃないのよ!?」
「大丈夫だよ。エッチな女の子は嫌い? と聞いたら、ユキならどんなにエッチでも嫌いじゃない。愛しているって言っていたよ?」
「それ……ほんとう?」
カオルのその言葉が本心からなら嬉しいけど、私の分身のために取り繕っただけかもしれない。
でも、私はカオルのその言葉に縋るしかなかった。
「本当だよ? ねぇ、そろそろ寝た方がいいんじゃないの?」
「……そうね」
寝る前に、あんまりな姿のカオルの身体を、分身と一緒に清めた。
……
すっかり綺麗になったカオルの隣に横になる。
私の分身はベッドの傍らのソファーに座ったままだった……。
「ねぇ、あなたは寝ないの?」
「うん、もうすぐ消えるし、カオルの顔をこの目に焼き付けておきたいの……それに」
「それに……?」
「起きた時、隣から私が居なくなって、代わりに灰があったら、カオルは悲しむでしょ?」
分身は寂しそうに微笑んでいた。
彼女なりに、カオルに気を遣っているのだろう。
「そうね……あなた、立派よ。私の都合で生み出してしまって、ごめんなさい……」
「いいよ……おかげで、カオルと愛し合えたから……私はすごく幸せだったよ」
「そう……よかったわ。それじゃ、そろそろ寝るわ……おやすみ」
「寝る前に最後のお願いがあるの」
「お願い?」
「明日の朝、カオルに伝えてほしいの。“カオルと愛し合えて幸せだった。一生の思い出にするよ……ありがとう”って」
「自分の口から、カオルに伝えたら?」
「余計に悲しませてしまうから……」
「……そう、わかった。伝えておくわ」
「ありがとう。必ず伝えてね。じゃあ、おやすみなさい……」
(一生の思い出か……この子の一生は、あと数時間で終わるのに……)
不意に切なく、涙が出そうになる……。
分身は満面の笑顔だった。私はその笑顔に何か救われた気がした……。
……
もう、2度と会えない。そう思っていた分身が私の前にいる。
目の前の分身は何故かわからないけど、ヒナちゃんを背後から拘束している。
「ヒナちゃ……その子を離してあげて」
分身がヒナちゃんの拘束を解くと、ヒナちゃんはカオルの元に駆け寄り、カオルの背中の後ろに隠れた。
ヒナちゃんの方が大きいから全然隠れられていないが……。
「ねぇ、あなた、5時間経ったら消えると言っていなかった? どうして消えてないの?」
分身に向かって話しかける。
「うん。消えるつもりだったの……でもね……」
私たちは分身の言葉に聞き入る。
「消えたくなくなっちゃった。このまま消えたくない! そう願った……そしたら……消えなかった……」
カオルとヒナちゃんは分身を見つめ愕然としている。
私の分身はカオルを見つめる。頬を紅潮させ、その瞳は潤んでいた。
「……私、カオルの事が好きになっちゃったみたい……」
「「「えっ!?」」」
分身以外の全員が声を出して驚いた。
「カオルと愛し合えて幸せだった。一生の思い出にするよ……ありがとう」
私が伝えるはずの言葉を、分身はカオルに伝えた。
分身は恥ずかしそうに目を閉じ、口元は微かに笑っている。
それは、恋する少女の顔だった……。
……
私は新たなスキル“肉分身”について、カオルとヒナちゃんにかいつまんで説明した。
私の疑似卵子とカオルの精子により受肉した分身であること。
全てではないけど、私と同等の能力とスキルを兼ね備えていること。
私の記憶は引き継いでいないこと。
通常、数時間で灰となって消えてしまうこと。
性格に個体差があること。……これは、昨夜の分身のやらかしを誤魔化すためのウソと、今後何かをやらかした時のための保険だ……。
分身の性格……それは素直な私といったところだろう。
「このスキルを習得するために、私はカオルを断つ必要があったの……。カオル、ヒナちゃん、ごめんなさい。でも、無事にカオル断ち100日を達成して、このスキルが使えるようになったわ」
「言ってくれればよかったのに……」
「言えば、2人は配慮してくれただろうけど、それは甘えになるの。2人に怒られてもいい、嫌われてもいい、そういう覚悟がこのスキルの習得には必要なのよ」
チラリと分身を見る。
分身はカオルと腕を組み、ベッタリくっついている。
反対側の腕にはヒナちゃんが、分身に張り合うように豊満な胸を服の上から押し付けていた。
「それで、お兄ちゃんの精石のおかげで、この子が生まれたのはわかったけど、どうして消えないの?」
カオル、ヒナちゃん、そして私は分身を見る。
「わからない……消えたくないって願ったから?」
分身がカオルを見つめる。
「カオル、消えたいって願ってみる? そしたら、消えるかもしれない……。私、カオルのためなら消えても構わないよ?」
「やめてくれ……そんな事、俺は望んでないよ。消えないでくれ……」
「カオル……うれしい♡」
分身は嬉しそうにカオルの腕に頬ずりする。
優しいカオルがそんな事を望むハズがない。
カオルはもう、分身に情が移っている。
それだけに、危うい……。
この子は、いつ消えてもおかしくない、所詮分身なのだ。
この子が消えた時、カオルはどれだけ悲しむだろう?
それだけならいい……この子のためにカオルが命の危険を冒すことになったら……。
(それだけは絶対にダメ!)
後でよく言って聞かせよう……そう私は決意した。
目の前ではカオルにじゃれつく分身と、恥ずかしそうにしているカオルの仲睦まじい姿がある。
そんな2人の様子に、明らかに不満そうなヒナちゃん……。
この微笑ましい光景が、できるだけ長く続きますように……私は静かに願った……。
───
「ク……クロです。み、皆さん、よろしくおねがいします!」
「おう! よろしく、オニ! そんなに緊張しなくていいぞ」
朝礼でウタマロの隣でクロ……そう名付けたユキの分身が皆に挨拶をした。
ユキとは対照的な白い作業服で身を包み、不安そうに皆を見ている。
若干、緊張しているようだ。
……
『クロ? ……なるほど。私の分身……影……黒……いい名前ね』
『ユキちゃんの雪から連想する白と真逆だね……さすがお兄ちゃん!』
『カオル、ありがとう……。あなたからの初めての贈り物……嬉しい』
クロは嬉しそうに俺を見つめていた。
3人が勝手に盛り上がっていたため、俺は
『クロ……クロ……クロかぁ……』
クロは嬉しそうに自分の名前をずっと呟いていた。
本人が喜んでいるのでそれでいいだろう。
……
ちなみに、ユキと同じ顔では混乱すると思い、最初は般若の仮面をつけさせていた。
これにシフのパーティーメンバーの何人かと、キュウの子供が酷く怯えたため、今は仮面を取り、素顔のままだ。
ウタマロはこの時の般若からオニとあだ名を付けたようだ。
「皆、知っての通り、今日は祝い事があるから仕事はしねぇ! 100階完成記念パーティーの時間まで、ゆっくり過ごしてくれ! 以上、朝礼、終わり!!」
ウタマロの声の後、歓声が響く。
ウタマロの部屋へ向かおうとする俺の元に、シフが駆け寄ってきた。
「カオルさん、私たち、これから酒場に行くけど、一緒に行きませんか?」
「シフさん、ありg「ダメ!」……!?」
隣のクロが、言葉を遮り、俺を抱きしめてシフを見ている。
「カオルは私と一緒にいるの! だから行っちゃダメ!」
「クロさん?」
シフは一瞬驚いたようだが、すぐに笑みを浮かべる。
「クロさん、カオルさんだけじゃなく、ヒナさん、ユキさん、そしてあなたも誘うつもりでしたよ。大好きなカオルさんと一緒にいられてよかったですね」
シフは最後の一言の後、悪戯っぽく笑う。
クロは顔を真っ赤にして俯く。
「シフさん、ありがとう。俺は用事があるから少し遅れます。3人と一緒に先に行ってください。ヒナ、ユキ、任せていいか?」
「お兄ちゃん、クロちゃんが増えたから、違う部屋を借りたくて、私たち部屋の整理をしたいの。シフさん、せっかく誘ってもらったのにごめん!」
「いえいえ、気にしないで。じゃあ、パーティーで!」
シフたちは去っていった。
「クロ、ヒナとユキを手伝ってあげてくれ。俺は親方に少し用があるんだ」
「……わかった。早く帰ってきてね」
クロは名残惜しそうに抱擁を解き、俺を見ている。
「ああ。クロ、またあとで」
俺はウタマロの元に向かった……。
───
「クロちゃんもいるし、もう終わっちゃったね。シフさんに悪い事しちゃったな~」
部屋の整理が終わり、私は2人に声を掛けた。
お兄ちゃんはまだ、帰ってこない。
「少し汗かいたし、お風呂入ってくるよ。ユキちゃんもどう?」
「ええ。一緒に入りましょう。クロもどう?」
「私は、恥ずかしいから2人の後で入る……」
「そう? わかったわ。……キャストオフ!」
ユキちゃんが裸になったので私もキャストオフで裸になる。
尚、クロちゃんはキャストオン・オフが使えないとの事だった。
「ヒナ! それ!」
クロちゃんは裸になった私のお腹を凝視していた。
「あ、クロちゃんはまだ知らないか。私のココはお兄ちゃん専用なの」
クロちゃんは私の言葉に驚いたようだ。
「ヒナ、もしかして……カオルと……エッチしているの?」
「うん? ヒナはお兄ちゃんのお嫁さんだよ? エッチするに決まっているじゃん」
「えっ!? だって、カオルはユキの旦那様って……」
「クロ、ヒナちゃんも私もカオルの妻なのよ。……幻滅した?」
「わからない……それと、ヒナ、お兄ちゃんってカオルの事だよね? なぜお兄ちゃんって呼んでいるの?」
「ヒナのお兄ちゃんだからだよ? ヒナは小さい頃からずっとお兄ちゃんって呼んでいるよ?」
「もしかして、ヒナはカオルの妹なの?」
「うん、そうだよ?」
「兄弟で結婚してその……エッチしているの?」
「うん……お兄ちゃんの子供も3人産んだよ」
「……」
クロちゃんは目を見開いたまま、言葉を失っていた。
私は、お兄ちゃんの子供を妊娠した時の事を思い出し、多幸感に包まれる。自然と下腹部を撫でていた。
「クロちゃん、ヒナ、気持ち悪い? ヒナのことはどう思ってもいいけど、お兄ちゃんを気持ち悪いとか言わないで、傷つくからね。そんな事をしたら、ヒナ、怒るよ?」
「……気持ち悪いなんて、思ってないよ……」
クロちゃんの声はかすれている。
「本当……?」
私はまっすぐにクロちゃんを見つめる。
クロちゃんの表情から動揺が伝わる。
「うん……ただ、びっくりしたの。だって、兄妹なのに……」
クロちゃんの言葉を聞いて、私は微笑みかける。
「ヒナにとっては、当たり前だよ。ヒナはお兄ちゃんを愛しているの。お兄ちゃんは、ヒナの全てだもん」
言葉にした瞬間、お腹の中が熱くなる……。身体がお兄ちゃんを求めていた。
私の言葉を聞いて、クロちゃんは俯き、拳をぎゅっと握り締める。
それは、嫌悪からなのか、悔しさからなのか、私にはわからなかった。
ユキちゃんの手が私の肩に置かれる。
「ヒナちゃん、そろそろ行きましょう」
「ごめん! ユキちゃん。じゃあね、クロちゃん」
ユキちゃんと腕を組みお風呂場に向かった。
……
「クロちゃん、大丈夫かな?」
ユキちゃんと並んで湯船に浸かりながら、先ほどのクロちゃんの様子を思い出し、呟いた。
「初めて知ったから、驚いているのよ。クロは純粋だから……少し時間をあげましょう」
「私とユキちゃんの関係もまだ秘密にしておいた方がいいかな?」
「そうね」
私はお湯の中で恋人繋ぎしているユキちゃんの手をぎゅっと握る。ユキちゃんも握り返す……。
ユキちゃんが私を見つめる。私も見つめ返す。
ユキちゃんの耳元で私の瞳と同じ色のピアスが輝いている。
鼓動が早まる……。
どちらからともなく、私たちは唇を重ねた……。
ユキちゃんの冷たい舌が私の口内に侵入してくる。
しばらく、お互いの舌を絡ませていた。
お腹の奥が熱くなる……。
「ユキちゃん……ヒナ、寂しかったよ」
「ヒナ……ごめんね」
「ううん、ヒナにはお兄ちゃんがいたから、耐えられた。ユキちゃんはよく耐えられたね?」
「カオルの精石を舐めながら、毎日ベッドで泣いていたわ。あれがなかったら、耐えられなかったかもしれないわね」
ユキちゃんは遠い目をしていた。
暗い部屋のベッドで1人、泣きながらお兄ちゃんの精石を舐めるユキちゃんを想像して、胸が締め付けられた。
「ユキちゃんのココ、お兄ちゃんの精子が入っているよね?」
ユキちゃんのお腹に手を置く。
「ヒナちゃん……欲しいの?」
私は無言で頷く。
「外にはクロも居るし、いつカオルが帰ってくるかもわからないわ。声を出したらダメよ? 約束できる?」
「……うん、ユキちゃん、ヒナを抱いて」
ユキちゃんと一緒に立ち上がる。
これから始まる行為に乳首はピンと立ち、オマンコが濡れてくるのを感じた……
───
部屋の扉をノックすると、クロが出迎えてくれる。
部屋にはクロしかいないようだった。
「ただいま。ヒナとユキは?」
「おかえり。2人はお風呂に入っているよ」
クロは何か言いたそうな顔で俺を見ている。
「クロ? 何かあったのか?」
「カオル、ヒナを妊娠させて子供を産ませたって本当?」
クロの言葉に一瞬固まる。
ヒナかユキから聞いたのだろう。
いずれ知られる事なので正直に答える事にした。
「ああ、避妊に失敗して……俺が悪いんだ。2度もヒナを妊娠させて……子供を産ませてしまった……」
「2度? ヒナは3人産んだって言っていたけど?」
「双子だったんだ。あと……俺はユキも妊娠させて……ユキも俺の子を産んだよ」
「ユキも!?」
「ユキは吸血
「カオルの赤ちゃんはどこにいるの? 私、見たい……」
「……ここにはいないよ……」
俺はクロに、生まれたばかりの子供をオコメと名乗る女に攫われた事を話した。
ユキは目の前で自分が産んだばかりの子を奪われた事を、ヒナは自分が産んだ子を一目も見ないうちに奪われた事も。
「そんな……ひどい!」
話を聞いたクロは驚愕の表情だ。
「クロ、2人の前では子供の話はしないでほしいんだ。2人とも、悲しむから……」
「うん、わかった……ねぇ、カオル、私も子供が欲しいって言ったら、私を妊娠させてくれる? 私に赤ちゃんを産ませてくれる?」
クロの言葉を聞き、俺は黙ってしまう。
俺はユキを愛している。これは間違いないが、ユキの分身であるクロの事は?
どう答えたらいいかわからず、しばし気まずい空気が流れる……。
「ごめん、困らせちゃったね……。さっきの言葉は忘れて……」
クロはそう言うと、ゆっくり近づき、俺の肩を掴む。
悲し気な表情で俺を見つめている。
クロはそのまま、ベッドに倒れ込む。
クロの冷たい身体の上に、俺の身体が重なる。
ボタンの無い、作業服の前がはだけ、サラシに巻かれた胸と引き締まったお腹があらわになる。
瞳を潤ませたクロが俺の頬にそっと手を添える。
「私、カオルのこと……」
クロが言いかけている途中で、風呂場の扉が開く音が聞こえた。
「お兄ちゃん! 帰ってたんだ? ……って、何しているの!?」
クロは急いで俺を跳ねのけ、ベッドの上に座り込み、恥ずかしそうに俯いてしまった。
ヒナはクロに駆け寄って抱きしめ、俺を睨みつける。なぜかヒナの顔は紅潮していた。
「クロちゃん、大丈夫!? お兄ちゃん! ヒナたちに内緒でクロちゃんを襲っていたの!? ケダモノ! ヘンタイ! レイプ魔!!」
「ご、誤解だ! クロ、お前からも言ってやってくれ!」
ユキが背後から、俺を拘束する。
力が強く、ピクリとも身体が動かせなかった。
「クロ、大丈夫!? 何をされたの?」
「ま、まだ……何も……」
まずい……クロのあの言い方では、余計に誤解を生んでしまう……。
「クロ、危ないところだったわね……よかったわ。ねぇ、ヒナちゃん……私たちの愛しい旦那様は躾が必要なようね……どうする?」
「そうだね……言い訳は聞きたくないから、とりあえずお兄ちゃんの口を塞いでくれる?」
「ええ、任せて」
ユキのスキルにより俺は猿轡をはめられた。
「あ……か……」
クロは言葉が出ないようで泣きそうな顔でオロオロしていた。
「クロちゃん、怖かったでしょ? ヒナたちが来たからにはもう安心してね。お兄ちゃんへのお仕置きはヒナたちに任せて!」
「クロ、お風呂場に行ってなさい! クロには少し刺激が強すぎるわ!」
ヒナがクロを抱いて立ち上がらせ、お風呂場に連れて行こうとする。
「あ……カオルは……」
「何も言わなくて大丈夫。さぁ、クロちゃん、お風呂場に行こうね……」
クロの言葉を遮り、ヒナはクロを連れ、お風呂場に消えた。
その後、俺は2人にたっぷりお仕置きをされた。
クロの言葉により、誤解が解けたのはそのお仕置きが済んだ後だった……。