準備を終えた俺はパーティー会場に来た。
ヒナたちは着替えに、化粧に、とだいぶ前から準備をしていたが、まだ終わっていないようで、会場に姿は無かった。
会場には既にウタマロたちが歓談していたので俺も合流する。
「よう! ボウズ! おそか……どうしたんだ!?」
ウタマロはお仕置きされた俺の顔を見て、心配していた。
「ボウズ……大丈夫か? ずいぶん手酷くやられたようだが……」
「ああ、問題ない。親方、既婚者の俺から一言忠告しておく」
ウタマロは真剣な顔で俺を見ている。
隣にいるヤダマンとマリーGも静まる。
「暴力を振るう女と話を聞かない女。それと結婚すると……こうなる」
俺の言葉に一瞬遅れ、3人は噴き出す。
「違ぇねぇ! ボウズの嫁さんはおっかねぇからな!」
ウタマロは笑いながら俺の頭を撫でる……顔が少し、痛い……。
「なぁボウズ、デカ乳はそんなに話が通じないのか?」
マリーGの言葉に俺は頷く。
「ヒナは思い込みが激しいからな。こうと決め込んだら、その後は話が通じない……一番ヤバイよ。あと、思いつめるクセがある。俺はそれが心配だ……」
「……そうか」
マリーGは空を見上げた。
正直、マリーGとヒナはお似合いだと思っていた。
2人の掛け合いは夫婦漫才のようで、聞いていて心地いい。
「アル中、ヒナが俺と結婚していなかったら、お前に押し付けたかったよ」
「押し付けるって……こんな俺に大切な妹をあげられるのか?」
「ああ、俺はヒナを大切にしてくれるなら反対はしないさ」
「デカ乳が嫌がるだろうが?」
マリーGが俺を見て言う。どこか、諦めたような表情だ。
「そうでもないぞ? アル中とヒナは、結構お似合いだと思うよ。もちろん、俺の勝手な感想だ。ヒナがアル中をどう思っているか、俺は知らないけどな」
「そ、そうか……」
「おい、アル中! 顔が赤ぇぞ? でも、デカ乳はやめとけ。アイツはボウズに夢中だぞ?」
「アル中にも春が来たっスか?」
「残念ながら、相手は人妻だからな。ボウズ、お前さんが死んだら、デカ乳にプロポーズしてもいいか?」
「ああ、なんなら、遺言状にでも書いておこうか? アル中……いや、マリーG、俺が死んだら、ヒナを頼む。俺と離れたアイツは思いつめて何をするかわからない。危ういんだ……。だから、支え、守ってやってくれ」
「……ああ、俺にできる事だったら何だってやってやるさ!」
真剣な眼差しのマリーGを見ながら、俺は自分の顔に手を当て、中級治癒を使った。
「噂をすれば……来たぜ。ボウズの嫁さんたちが……」
振り返ると、ドレスを着たヒナ、ユキ、クロが入り口からこちらを見ていた。
マリーGが隣で息を呑む。
「おいおい、ボウズ……惚れ直しちまったんじゃねぇのか?」
ヒナはもちろん、ユキとクロの美しい姿がそこにあった。
ヒナとユキは俺を見つけ微笑み、クロは照れ臭そうな様子だ。
……
「お兄ちゃん、どう?」
ヒナにしては珍しく、漆黒のドレスだ。
豊満な胸はドレスの胸元に窮屈そうに収まり、胸の谷間を強調している。
黄金の髪はアップヘアでまとめられており、白いうなじを露出していた。
耳元には深紅のピアスが、胸元には俺とお揃いのネックレスの宝石が黄金色に輝いている。
俺の妹であり、妻であるからといって誇張する気はないが、それでも、絶世の美女と言っても過言ではない。そう、思った。
「ああ、よく似合っているよ。ヒナ、凄く綺麗だ……」
「本当? 嬉しいな……」
ヒナは頬を染め、はにかむ。
背後からマリーGが来たので俺はヒナの元からそっと離れ、ユキとクロの元へ向かった。
ユキは深紅のドレスに身を包み、まるで花びらが舞うように優雅に歩いている。
隣には対照的な純白のドレスを着たクロがユキから一歩引いて静かに歩く。
視線を逸らし気味に、ぎこちなく歩く姿は正に可憐だった。
当たり前だが、同じ顔でまるで姉妹だ。
ユキの耳に輝く黄金のピアスで、辛うじて、どちらがユキか判別できる。
2人の姿に見惚れながら、俺はポケットの中に入っているプレゼントをどのタイミングで渡そうか、考えていた……。
……
パーティー開始の時刻になり、会場は静まり返っていた。
俺の左手にはクロがいる。
綺麗な白銀の髪には漆黒のリボンを付け嬉しそうにそのリボンを撫でていた。
どうやら、気に入ってもらえたようだ。
……
『これは?』
『俺からのプレゼントだ。クロ、気に入ってもらえるといいが……』
『私に? ……ありがとう! カオル、つけてくれる?』
『付けてあげたいけど、俺は付け方がわからないからな。ユキ、お願いできるか?』
『ふふっ。カオルらしいわね。…………はい、付けたわ。よく似合っているわよ、クロ』
『嬉しい! カオル、ありがとう!』
……
リボンは3人がドレスを選んでいる間、俺が見つけたものだ。
あの漆黒がクロにピッタリだと思い、見つけた瞬間、即購入を決めた。
店主の話では、幸運を呼ぶリボンとの事だった。
また、クロにリボンを付けてもらう事で、同じ顔であるユキと区別しやすくなる狙いもある。
クロはリボンを指に巻きつけ、嬉しそうにくるくる回す。そのたびに漆黒のリボンがふわふわ揺れる。
俺の視線に気付いたのか、クロは顔を上げ、目を輝かせて俺に笑いかけた。
俺の右手に立つヒナは心なしか顔が赤く、落ち着かない様子だ。
しきりにマリーGの方を気にしているあたり、マリーGに告白……いや、プロポーズされたのかもしれない。
俺の視線に気付くと、顔を真っ赤にし、気まずそうに俯いてしまう。
今まで見たこともない反応が新鮮だった。
あの様子だと、ヒナの方もまんざらではなさそうだ。
「それじゃあ始めるが、まずは姫さんの挨拶だ。跪く必要は無いが、静かに聞いてくれ」
ウタマロが言い終わると、空から光が降ってきた。
大小の光る玉に包まれたシップーがゆっくり空から舞い降り、俺たちの前に降り立つ。
シップーは以前のような幼女の姿ではなく、妙齢の女性に変貌を遂げていた。
「また、美しくなった……」
どこからか、アクエリアンの声が聞こえた。
その言葉はシップーの耳にも入ったらしく、目を細め、頬を紅潮させていた。
口元は相変わらず扇に隠れて見えない……。
「皆の者、我のために日々の尽力、深く感謝する」
シップーは軽く頭を下げた。
「よくぞこの短期間で100階まで完成させた、見事じゃ! 見ての通り、我も本来の力を取り戻しつつある。この調子で今後も助力を頼む。とまぁ、堅苦しい挨拶はこれくらいにして、今日は祝いの宴じゃ。存分に飲み、騒ぎ、楽しむといい」
拍手が広がり、パーティーが始まった……。
───
「カオルさん! こっちこっち!」
シフに呼ばれ、クロと一緒に向かった。
シフのパーティーメンバーが輪を作っていた。
その真ん中、目を閉じ腕を組み、笑みを浮かべて立つユキと、その正面にシフのパーティーメンバーであるサムがこちらも目を閉じ立っていた。
「イメージトレーニングで対決中です。ユキさんにカオルさんを呼ぶように言われたの」
「そうですか」
「カオル、イメージトレーニングってなに?」
「前に、ビチクエルの酒場でユキとサムさんがやっていたんだ。イメージで殺し合いをしているらしい……」
「すごいね! ユキの方が優勢かな?」
「クロ、わかるのか?」
「なんとなくね……」
ユキの目が開く。
「驚いたわね。20戦中、5敗もするなんて……」
「あれから俺も力を付けたからな。次はカオルさんも入ってくれないか? 10勝くらいはしてみせるさ」
「どうかしら? カオル、来て」
俺は輪の中に入り、ユキの傍らに立った。
「カオルはそこに立っているだけでいいわ。目は閉じていてね」
俺はユキの指示通り目を閉じる。
その瞬間! 物凄い殺気? 威圧? を前方から感じる。サムのものだろう。
対して、ユキの方からは優しく俺を包むような気配を感じる。
それは温かく、安らぐ……何とも言えない心地良さだった。
「……キツかったわ」
「12勝か。思ったより勝てたな」
2人の声が聞こえたので俺は目を開けた。
サムの勝利にシフのパーティーメンバーは沸いていた。
「ユキ、どういうことだ?」
「カオルがいる事で私はカオルを守りながら戦ったの……12敗したわ」
「カオルさん、気を悪くしないでくれ……カオルさんは何もしない想定での勝負だから足手まといって訳じゃあないぜ」
サムが申し訳なさそうな顔をするので、俺は軽く首を振り、気にしていない旨を伝える。
「サムさん、次はこの子と勝負してみてくれない? クロ、来て」
ユキとクロが入れ替わる。
「あまり私やカオルに恥はかかせないでね」
「ユキ、カオル、私がんばるね!」
ユキはクロの肩にそっと手を乗せると、俺たちから離れた。
目を閉じる。
(ッ!!)
サムの殺気が全く感じられず、クロから漂う温かい気配しか感じなかった。
「驚いたな……。こちらの20勝だが、カオルさんに触れる事すらできなかったよ……」
サムの言葉に目を開ける。
「おいおい? サム、どういう事だぁ?」
「ユキさんの時は何度かカオルさんを切りつける事が出来たが、クロさんは命を捨ててカオルさんを守っていたので一度も切りつけられなかったぜ。その代わり、俺が勝ったがな……」
「ねぇ! サム、本当なの!? 一度も攻撃を当てられないなんて……」
「あぁ、断じて俺は手を抜いてねぇ! でも、無理だった……」
シフたちは信じられないといった様子でサムを見つめていた。
クロを見ると悲しそうな表情で俺を見つめている。
「思った通りね……。サムさん、次は私も入るわ」
「ユキさんとクロさんかぁ……嫌な予感しかしないな」
「クロ、カオル最優先で、あとは私に合わせて!」
「わかった!」
俺は目を閉じる。
先ほどと同じく殺気は全く感じない。
また、最初にユキからは温かい気配は一切感じなかった。
「完敗だ! 20敗。うち18回は手も足も出なかったぜ」
目を開けるとサムは降参したかのように両手を上げていた。
「もう少し、やれると思ったのだが……俺もまだまだだな。鍛えないと……」
「いい戦いだったわ。私も存分に刺激された……この子もね」
「サムさん、ありがとう」
目の前ではサムとユキとクロが握手を交わし合っていた。
「クロ、よくやったわ! あなたの守りは完璧よ……」
ユキの言葉に、クロは嬉しそうに笑っていた……。
そんなクロを見るユキの顔が一瞬悲しそうに歪んだ気がした。
クロの表情は変わらない。ほんの一瞬だったので、俺は気のせいだと思い、深くは考えなかった……。
───
クロ……やはりこの子はダメだ。
熱っぽい目でカオルを見つめるクロを見て、私はそう判断した。
先の勝負、20戦完勝して当然の布陣だった。
なのに……2回……それは勝利であっても、こちらに犠牲が出た。それは、クロの死……。
クロは、おそらくもうカオルを愛している。そのため彼を必死で守る。カオルも……おそらく……。
そこまではいいが、このままではいずれ悲しい結末しか訪れない。
クロを失った時のカオルの悲しみようを想像すると、私の心は張り裂けそうになる……。
カオルを悲しませる事はできない、早く何とかしなければ……。
クロを見上げて楽しそうに笑うカオルを見て、私はある決心をする……。
私はカオルのためなら、鬼にも悪魔にもなれる……。
2人に気付かれないように、拳を握り締めた……。
───
ユキはサムたちと戦闘論について熱く語っていた。
俺とクロはそっと離れ、ヤダマンたちの元へ向かう。
ヤダマンは周りに娼婦を侍らせてご機嫌だった。
「おっ! ボウズじゃないっスか!」
「テレポ、ご機嫌だな。親方とアル中は?」
「アニキはコルガとシッポリっスよ! アル中は……」
ヤダマンは親指を立てると、ニヤけながらとある方向を指す。
その方向にはソファーに並んで座るヒナとマリーG。2人の後ろ姿があった。
お互い、顔を見つめ合いながら楽しそうに歓談しているようだ。
「カオル……」
「うん?」
クロは不安そうな顔で俺を見つめている。
「ヒナ、楽しそう……いいの? カオルのお嫁さんでしょ?」
クロの言いたい事を察する。
「ああ、いいんだ。俺はヒナを愛しているが、独占欲は無い。何より、俺はヒナのお兄ちゃんだからな……ヒナが幸せなら、それでいいと思っているよ」
「カオル……ヒナがいなくなっても寂しくないの?」
「寂しくない……と言ったら嘘になるだろう。でも、俺にはユキがいるし……」
「……」
「今はクロ、お前もいるからな……」
「カオル……」
「お二人さん、甘いっスね……あっしは羨ましいっス!」
「テレポさん、私とカオルはそんな関係じゃ……」
「違ったのか?」
「カオルの意地悪……」
クロはわざとらしくプイと顔を逸らす。
その姿がたまらなく可愛かった……。
ふと、ヒナたちがどんな話をしているのか気になる。
「テレポ、あの2人がどんな会話しているか、気にならないか?」
俺の言葉を聞いたヤダマンは悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「なんだかんだ心配なんスね?」
「ああ、お兄ちゃんだからな。悪い男にダマされていたら……と心配だ」
「ははっ! ただ会話が気になるだけっスよね? ボウズとオニ、あっしに掴まってくだせぇ。転移後は音を立てたらダメっスよ?」
俺とクロはヤダマンに掴まる……。
ヤダマンはヒナたちの背後に転移した……。
───
私は……変だ……。
隣にいるのは頭が馬で筋肉ムキムキの、人間ではない。モンスターだ。
そして、酔っ払い、アルコール中毒、汚部屋暮らしのロクでもない男。
なのに……話していて、心地いい……。
『デカ乳、ボウズが死んだら、俺と一緒にならないか?』
パーティーが始まる前に言われた言葉が頭から離れない……。
鼓動が速まり、顔が熱い……。
お兄ちゃん以外の男の人でこんな風になるなんて、初めての経験だった……。
「デカ乳、ここにはいつまで居るんだ?」
「……わからないよ。お兄ちゃんの呪いが解けたら、きっとここから離れると思う……」
「……そうか。なら、そろそろだな」
「えっ!? アル中、どういう事!?」
マリーGは私を見つめる。
「姫さんを見ただろ? もう、大人の女になっていた。きっとボウズの呪いを解けるはずだぜ?」
「そう? ……なんだ…………」
お互い、何も言葉を発しない時間がしばらく続く……。
「デカ乳、俺は、本気だぜ?」
「本気?」
「ああ、俺は飲んだくれだが、約束だけは守る男だ。ボウズが死んだら、俺はデカ乳を……」
「私を?」
「第34夫人として娶るつもりだ!」
マリーGは親指を立て、ウインクする。
一瞬、呆然としたあと、私は噴き出す……。
「アンタが33人もお嫁さんを作れる訳ないでしょ!? 寝言は寝て言ってよね!」
「ハハハ! だがな、こう見えて、俺は結構モテるんだぜ!」
「どうせ、娼婦からでしょ?」
「おう! よくわかったな! お前、エスパーギャルか?」
私とマリーGは笑い合う。
こんな軽口を叩ける男の人は、今までお兄ちゃんしかいなかった……。
私は……認めたくないけど、マリーGの事を…………。
「なぁ、デカ乳、どうしてここを出ていくんだ? ずっとここに居たらいいじゃないか?」
真剣な顔で私を見つめるマリーGの言葉に、私はなんと答えればいいのかわからなくなる。
(ここは……お兄ちゃんの真似をして……)
「7つ集めると願いが叶うと言われている、ゴールデンボールを探す旅n「おいっ!」……えっ!?」
背後から、お兄ちゃんの声が聞こえ、肩に手を置かれる。
振り向くと、お兄ちゃん、クロちゃん、そしてニヤついているヤダマンがいた。
「お、お兄ちゃん!? いつからそこに居たの? どこから聞いていたの!?」
「子供は5人欲しいって言っていた時からだな……」
お兄ちゃんは笑みを浮かべる……どうしようもない嘘をつく時の顔だった……。
「ヒナ、そんな事言ってないよ!? お兄ちゃんの意地悪……」
お兄ちゃんは笑いながら、私の頭を撫でる。
「ヒナ、つまらない嘘をつく必要はないさ。正直に話してやれ。誠意には誠意で返せ……」
お兄ちゃんの言葉を聞いて、私はマリーGに全てを語った……。
別の世界から来た事、お兄ちゃんの子供を3人産んだ事、攫われたアスカを取り戻すために旅をしている事、お兄ちゃん以外の人とエッチは出来ない事……。
全てを語り終える頃には私は涙を流していた。
お兄ちゃんは優しく頭を撫でる。クロちゃんは私を抱擁していた。
「という訳だ。……マリーG、俺に何かあったら……というか、何かある可能性の方が高いと、俺は思っている」
「デカ乳と狂犬には何かあるとは思っていたが……そんな事があったなんてな……」
私の隣でマリーGは静かに呟いた。
「もしも、俺に何かあったら……俺の代わりにヒナを支えてあげてくれないか? これは、俺からの願いだ……」
「……ああ、任せろ……」
「アル中! 私はアンタとエッチできないし、子供も産めないんだよ!?」
思わず、大きい声を出してしまい、ヒステリックになった自分に嫌気がさす……。
「デカ乳、俺の話を聞いていたか? お前は第34夫人として娶るつもりだ……その頃には俺の子供は100人はいるだろう。もうガキなんざいらねぇさ」
「そうっスね……。100人もガキが居たら1人や2人……いや、10人くらい誤差っスよ!」
「確かにそうだな……」
マリーGとヤダマンとお兄ちゃんは笑っていた。
それにつられて、私とクロちゃんも笑う。
「……そうだ!」
お兄ちゃんが何かを思いついたように声を上げ、笑い声が止んだ。
「ヤダマン、ユキはどうだ? 俺に何かあったらユキを娶る気はないか?」
お兄ちゃんの言葉に思わず息を飲む……。
……いや、これは冗談だろう。お兄ちゃんがユキちゃんを手放すとは思えない……。
「……遠慮しやスよ……あっしは……」
皆でヤダマンの言葉に耳を傾ける……。
「……怖い女は苦手なんスよ……」
「「「……」」」
一瞬、全員が固まったあと、全員で噴き出した。
マリーGとヤダマンがお互い顔を見合って笑っている。
お兄ちゃんとクロちゃん大きく口を開いて笑っていた。
私もお腹を抱えて笑っていた……。
まさか、今、後ろにユキちゃんはいないよね?
一瞬そんな恐ろしい想像がよぎるけど、笑いを止める事はできなかった……。
───
「ボウズ、楽しんでいるところ、すまん」
俺たちの背後から声が聞こえ、笑いが止んだ……。
俺の背後にウタマロが立っていた。
「親方? どうした?」
「ボウズ、姫さんがお呼びだ。ボウズの妻たちと一緒に行ってくれ」
ウタマロの瞳は濃いサングラスに隠れて見えないが、声からは真剣さが伝わる。
「クロ、ユキを呼んできてくれ! ヒナ、行くぞ!」
「うん。お兄ちゃん……アル中、また後で……」
───
俺たち4人はシップーの前に跪いていた。
目の前の椅子には、アクエリアンにお姫様抱っこされているシップーが居る。
「ボウズ、此度のお主の尽力には感謝しておる。お主のおかげでこの短期間にここまで塔が完成し、さらに我にダーリンを巡り逢わせてくれた。感謝してもしきれまい」
シップーはアクエリアンの仮面を愛おしそうにそっと撫でると、身体を跳ねさせる。
「ダーリン、お、大っきい♡」
「愛する妻にそんな事されて、私が大人しくしているとでも……?」
「早く契りを……」
「まだまだ、ハニーが美しく熟成するまで、私は……」
目の前でシップーとアクエリアンがイチャつく。仲睦まじい事だ……。
「姫様、それで俺たちに何か話があるのでは?」
俺の言葉にシップーは咳払いをする。
「ボウズ、ようやく、お主に褒美をやるれようになった」
その言葉に俺は目を見開き、シップーを見た。
「俺に掛けられた呪いが解けるのですか?」
「そうじゃ。我はようやく、その力を取り戻したのじゃ。スキルではないがな……」
(スキルじゃない?)
シップーの言葉に少し引っかかる。
「呪いを解く前にお主に確認しておきたい。お主、その娘は既に娶っておろうな?」
シップーはクロを見ていた……。
───
「わ、私は……カオルのお嫁さんじゃない……です」
クロは困惑しているようで見ていて可哀そうになるくらいオロオロしている。
「ボウズ、それは本当か?」
「本当です。クロと俺は婚姻関係にはありません」
「ふむ。ボウズ、この娘を娶る気はあるか?」
「「えっ!?」」
カオルとクロが声を上げる。
「先日、書庫を整理していた時、古い伝承を見つけてな……3人目の妻を娶ると呪いが解けたとの事じゃ。迷信と一笑に付してもよいが、ボウズの呪いを解く成功率を上げるためにも、物は試しにこの娘を娶る気は無いか?」
どこかで聞いた事のある話だ。あれは確か……ヒナちゃんがカントン寺院の大神官の娘さんから受け取った紙の束に書いてあった。
「結婚しろと言われても……」
「お主、この娘を愛してはおらぬか?」
「それは……」
カオルは黙ってしまう。
そんな彼を見て、クロは悲しそうに俯いた。
「クロ、あなたはカオルの事をどう思っているの?」
私の言葉にクロは顔を上げる。顔が真っ赤だ……。
「私、カオルの事、……大好き……いえ、愛してるよ」
クロはカオルを見つめて、本心を告げていた。ふわっと漆黒のリボンが揺れていた。
「だって。お兄ちゃん……。お兄ちゃんはクロちゃんの事をどう思っているの?」
私、ヒナちゃん、クロ、3人ともカオルを見ていた。
「……いつまでも一緒に居たい、大切にしたい気持ちはある。ただ、この気持ちがクロに対するものなのか、愛するユキの分身だからなのか、それがわからないんだ……」
(カオル、ありがとう)
私は彼に感謝する。私の心は決まった……。
「そう……なら、クロを傷物にした責任を取って、結婚してあげて」
「ユキ!?」
クロは目を見開き、私を見つめる。私は笑みを浮かべ、ゆっくり頷く。
私は嬉しかった。クロはありのままの私。
清楚とはかけ離れ、四六時中エッチな事ばかり考えている女の子……それをカオルは拒絶するどころか、多少なりとも好意を抱いているようだった。もしかしたら、既にクロを愛しているのかもしれない。
という事は、私は彼に愛されている。
「そうだよ! お兄ちゃん。嫌がり泣き叫ぶクロちゃんの処女を無理やり奪って、もうクロちゃんはお嫁に行けないんだから、責任を取らないとね?」
「同志よ……キミには失望したよ……」
「ボウズ、お主は可愛い顔に似合わず、鬼畜な事をするのじゃな……」
ヒナちゃんの冗談にアクエリアンさんたちが騙される。
「ヒナ、余計な事を言うな! 冗談ですよ? アクエリアンさん、姫様……」
「私、嫌がったりしていません……どちらかと言えば、私がカオルを「ストーップ!!」……」
クロが余計な事を言いそうなので慌てて止める。危ないところだった……。
「カオル、まだ決心はつかない? 結婚するなら、クロに言ってあげて……」
その言葉にカオルは私の顔を見て頷き、立ち上がる。
クロの目の前に跪き、手を差し出す。
「クロ、こんな俺でよければ、結婚して、俺の妻になってくれ……」
「はい……私でよければ、喜んで……」
クロは彼の手を取り、静かに涙を流した……。
どこからか風が吹き、クロの頭のリボンが揺れる。
それはまるで、2人を祝福しているように静かに揺れ続けた……。
───
パーティーが終わり、ヒナちゃんとクロと私は、3人でお風呂場にいた。
カオルはまだ、帰っていない。
クロとカオルの結婚が決まった後、カオルを残し、私たちは下がらされた。
彼はまだアクエリアンさんたちと一緒だろうか? 何も起きなければいいが……。
「ヒナ、恥ずかしいよぅ……」
「クロちゃん、ヒナたちと家族になったんだから、恥ずかしがっていちゃダメだよ? ヒナたちは部屋ではずっと裸なんだから……クロちゃんにも慣れてもらわないと……さぁ、その手をどかして」
クロは顔を赤らめて、ゆっくり胸と股間をさらす。
ヒナちゃんはクロの身体をいろんな角度から眺めていた。
「さすがユキちゃんの分身だけあるね……ユキちゃんと一緒だね。さて、失礼しま~す!」
そう言ってヒナちゃんはクロの乳首に吸い付いた。
「ちょっと!? ヒナ! あっ! やめっ!! あはぁ! やめてよっ!」
嫌がるクロを無視してヒナちゃんはちゅぱちゅぱと乳首を吸っていた。
そして、口を離す。
「クロちゃんは母乳は出ないんだね?」
「で、出る訳ないでしょ!?」
「あ、ヒナとユキちゃんは出るんだよ。最近、だんだん出なくなってきたけどね」
「もう少ししたら、母乳は出なくなるかもしれないわね。クロ、少しだけでいいから、私の母乳を飲んでくれないかしら?」
「ユキの母乳を?」
「ええ、イヤ?」
「……嫌じゃないけど……」
クロはおそるおそる私の乳首を口に含む。
ちゅう…………ちゅう…………
私は彼女を抱きしめ、頭を撫でる。……ミユキを思い出していた。
思わず、涙がこぼれた。
クロはしばらく母乳を飲み続け、やがて口を離し。
私の涙に気付くと慌て始めた。
「ユキ、ごめん! 痛かった? どうして泣いているの?」
「ごめんなさい……。ミユキを……私の赤ちゃんを思い出して……。どうだった?」
「とても甘くて……美味しくて、なぜか安心したよ……」
「あなたもある意味、私の赤ちゃんだからかもしれないわね……」
私は涙を拭い、笑顔を作る。
「湿っぽくしちゃってごめんなさい。さぁ、カオルの妻同士、裸の付き合いで親交を深めましょう」
……
私、ヒナちゃん、クロの順番で肩を並べて湯船に浸かっている。
新しく借りた部屋の浴槽は前の部屋より大きく、まだまだ余裕があった。
(カオルともう1人くらいなら入れそうね)
この場にはいない彼を、私は想っていた。
「以上が私たち、お兄ちゃんのお嫁さんのルール。クロちゃん、やっていけそう?」
ヒナちゃんによるクロへの説明が終わった。
私たち3人はそれぞれ第一、第二、第三夫人だけど、序列は無く、平等であること。
この世界では性欲を貯め過ぎると頭がおかしくなるので、適度に性欲を発散すること。
自慰行為は禁止されていること。
家族だけの時は全裸で過ごすこと。
「うーん、少し恥ずかしいけど、たぶん、大丈夫かな?」
「最初は戸惑うかもしれないけど、少しずつ慣れてもらうしかないわね。じゃあ改めて、クロ、同じカオルの妻として、これからよろしく」
湯船の上に手を出し、クロに差し出す。
クロはおずおずと私の手を握った。
「……まだ、カオルの妻になった実感が湧かないけど、みんなと一緒にやっていく覚悟は決めたよ。2人とも、私の方こそよろしくお願いします」
私とヒナちゃんと握手を交わすクロは、前より自信に満ち溢れていた。
ヒナちゃんが私を見る。私は無言で頷く。
「クロちゃん、お兄ちゃんには内緒なんだけどね、私もユキちゃんもお兄ちゃん以外に愛している人がいるの……」
「えっ!?」
クロの瞳が赤く染まる……
その顔は非難の色に染まっていた。
「ヒナ、ユキ、あなたたちはカオルを裏切って、他の男の人とエッチしているの? 私……許せない!」
「クロちゃん……」
クロの表情に思わずヒナちゃんが後ずさる。
私はヒナちゃんを抱き締めた。
「クロ、こういう事よ……」
私はヒナちゃんとキスをする。
咄嗟の事でヒナちゃんの身体は硬直するが、やがて力を抜き、私の背中にそっと手を回す。
クロは驚き、目を見開いて、目の前の行為を無言で見ていた。
唇を離すと、ヒナちゃんの瞳はとろんとしていた。
私はヒナちゃんを後ろからハグして、クロと向き合った。
「クロ、あなたをがっかりさせたかもしれないけど、私とヒナちゃんはこういう関係なの」
「そんな……女の子同士で……?」
ヒナちゃんがゆっくり頷く。
「話せば長くなるんだけど、どうしてもお兄ちゃんとエッチできなくて、それでも性欲を発散させなきゃいけなくて……ヒナはユキちゃんと結ばれたの……」
私はハグする力を強める。
「あっ!」
ヒナちゃんが艶めかしい声を短くあげる。
「クロ、これはカオルには黙っていてちょうだい。この事を知れば、カオルはきっと自分を責めるわ。彼を悲しませたくないのよ……」
クロの瞳が銀色に戻る。
「クロちゃん、ヒナはユキちゃんの事、本当のお姉ちゃんだと思っている。クロちゃんもそうだよ? だから、もしどうしてもお兄ちゃんとエッチ出来なくて困ったら、ヒナに言って。処理するから……」
ヒナちゃんの言葉を聞いたクロが口を開く。
「驚いたけど、カオルには黙っておくね。私……ちょっと甘く考えていたのかもしれない……ここで性欲を発散できず貯めてしまう事……そんなに大変な事だったんだね。女の子同士でも発散しなければならないなんて……」
「クロちゃん……お姉ちゃん!」
ヒナちゃんがクロに抱き着く。クロは驚いたようだが、ヒナを抱擁する。
「……お姉ちゃん、かぁ……」
クロは静かに呟いた……。
───
「で、これが秘薬?」
「……ああ、シップーが言うにはな……」
俺はシップーから渡された薬を見せる。
それは封がされた試験管だった。中には黄金の液体が詰まっている。
試験管にはラベルが貼られており、シップーという名前と今日の日付、時刻が書かれていた……。
「カオル……これってまるで……」
「ユキ……何も言うな……飲めなくなってしまう……」
「お兄ちゃん、薬もそうだけど、これ、大丈夫?」
ヒナが目を通していた紙を俺に見せる。
「読めない……ヒナ、なんて書いてあるの?」
「そっか、クロちゃんはまだ読み書きができないんだね? えーとね、例えばこれだけど、“縛って棒で叩いて責めると、呪いが出ていく”って書いてあるの」
「縛って叩くってカオルを?」
3人の目が俺を見る。
心配そうな顔のクロ。その後ろで口元に笑みを浮かべるヒナとユキ……。
寒気がする……。
「これを全部実行してから、秘薬を飲めと?」
ユキが俺に聞いてくる。俺は、頷くしかなかった……。
「お兄ちゃん、本当にこれ、全部やっていいの?」
嬉しそうなヒナにも、俺は頷くしかなかった……。
「そんな……ひどいよ! カオルを棒で叩くなんて、私、できない!」
泣きそうなクロだけが俺の癒しだった……。
「それにしても……どれもこれもヒナちゃんが貰った紙に書いてあるものと一緒ね? クロとの結婚も……」
「ああ、そうだな……」
「私の結婚? ユキ、どういう事なの?」
「クロちゃん、呪いを解く方法はヒナたちも調べていたの……この紙に呪いを解く方法がいろいろ書いてあるんだけど、姫様からもらった紙と一致している話が結構あるの。でね、クロちゃんが結婚したのは……」
ヒナがカントン寺院の大神官の娘から受け取った紙束を取り出し、クロに読んで聞かせた。
「3人目を妻を娶った男は、呪いが解けて、不能が治りました。……その後、1人目の妻とは1人、2人目の妻とは2人、3人目の妻とは10人の子に恵まれ幸せに暮らしましたとさ」
「え!? うそでしょ……」
クロの顔は真っ赤だ。
「私、カオルの赤ちゃんを10人も産まないといけないの?」
「ええっ!? いや、そんなことないよ? ヒナが産むから、クロちゃんは無理しないで?」
「でも、ヒナは1人、ユキが2人、私は10人だよ?」
「クロ、これは呪いが解けた後の話なのよ? しかも、私たちではない、誰かの話。本当にあったかどうかもわからないの。だから、この通りにする必要はないのよ?」
「そっか……10人じゃ足りないかぁ……」
3人の会話は嚙み合わない……。
クロは俺を見つめていた。
「クロ?」
「カオル、私、カオルのためなら、何人でも赤ちゃん産むからね!」
そう言うクロの瞳は潤み、輝いている。
「……ああ、クロ、ありがとうな」
(ダメだこりゃ)
俺はクロの頭を撫でる。
クロは嬉しそうに目を細めていた……。
クロの頭を撫でる手を止め、俺はヒナとユキを見る。
覚悟が決まった!
「ヒナ、ユキ、頼む」
俺の言葉に2人は無言で頷く……同時に、2人の瞳が輝いた気がした……。
───
「カオル! 大丈夫?」
その声で俺は覚醒する。
目の前には心配そうに俺を見る天使。
その背後には2人の悪魔が居た。
「ああ、……大丈夫だ」
「お兄ちゃん、ヒナもつらかったけど、これで全部終わったよ」
「カオル、あとはこの秘薬だけよ」
悪魔2人が口元に笑みを浮かべていた。
悪魔の1人が俺に薬を手渡す……。
試験管の中で泡立つ、黄金の液体。
『これが秘薬じゃ。これを寝る前に飲むのじゃ。明日の朝には呪いは解ける……ハズじゃ。ちなみに、どのように入手したかは……教えられぬ』
『これは伝説の聖水!! 同志よ! 私はキミが羨ましくてしょうがない! 効果は私が保証しよう!』
(この人たち、本当に大丈夫だろうか?)
シップーとアクエリアンの言葉を思い出す。
アクエリアンの言葉を聞いた時、俺は本当に信用していいものか疑問に思った。
俺はもう一度、手の中の秘薬を眺める……。
(これ、本当に飲まなきゃいけないのか?)
俺は、試験管の封を開ける。
その瞬間、何ともいえない匂いが漂う。
「くさっ!」
ヒナは口を手で覆い、顔をしかめる。
ゴクリ……
俺は唾を飲む。
試験管を持つ手は小刻みに震えていた……。
ヒナとユキを見る。
2人は憐みの目で俺を見つめている……。
クロを見る。
クロの瞳はキラキラ輝いていた……。
「その薬で、カオルの呪いが解けるのね?」
「お、おう?」
クロは満面の笑みを浮かべる……。
「ヒナ、水を用意しておいてくれ。あと、念のために洗面器を……」
「わかった!」
……
目の前にコップ一杯の水と、空の洗面器が用意された。
「それじゃ……いくぞ!」
「カオル! がんばって!」
「お兄ちゃん! ファイト!!」
ヒナとユキが声援を送る。クロは黙っていた。
「……」
「カオル……飲まないの?」
「お兄ちゃん! イッキ! イッキ!」
(ええい! ままよ!!)
俺は一気に秘薬を飲み干した!
口の中に広がるアンモニア臭と酷い味……。
思わず吐きそうになり、目の前のコップを掴み取ると水を一気に飲み干した!
「うわぁ……」
ヒナの軽蔑するような顔。
水を飲んでも口の中にまだあの風味が残っていた。
吐き気がこみ上げる。
『必ずこれを飲み干すのじゃ……吐いてはいかんぞ!』
『ハハハッ! ハニー、こんなご褒美を吐くなんて、私の同志はそんなヤワではないよ』
頭の中でシップーとアクエリアンの声がリフレインする……。
「ユキ! おっぱい! おっぱいをくれ!」
「ええ、どうぞ!」
ユキの乳首に吸い付き、母乳を飲む。
とろけるような甘さでなんとかあの嫌な風味を中和した。
「カオル、これで呪いが解けたの? 私に赤ちゃん10人産ませるの?」
クロは頬を染めて俺を見つめる。
「ああ……」
俺は、反射的に適当に返した。
クロの瞳の輝きが増していたが、そんな事はもう、どうでもよかった……。
気分は最悪だ……。
「カオル、お疲れ様」
俺の苦しみを和らげてくれた、ユキが女神に見えた……。
───
秘薬を飲んだカオルは、私の胸に顔を埋めたまま、眠ってしまった。
私は、カオルを起こさないようにそっと胸から引き離し、ベッドに寝かせる。
「クロ、あとは任せていい? せっかくの初夜だけど、今夜はエッチは出来ないと思うわ。ごめんなさい」
「うん、カオルの事は私に任せて」
「クロちゃん、ごめんね! お兄ちゃんをお願い。じゃあ、おやすみなさい」
クロにおやすみの挨拶をしたあと、私はヒナちゃんともう一つの寝室に向かう。
クロにとっては結婚して最初の夜だ。
クロは、この世に生まれ、その日にエッチをし、その翌日には結婚し、初夜を迎えた。
(めまぐるしいわね)
憐みそうになるが、慌てて打ち消す。
『私……カオルのお嫁さんになれて、幸せだよ』
お風呂場での彼女の言葉を思い出す。当人が幸せなら、外野がとやかく言う必要は無い。
ましてや、彼女は私の子も同然だ。
(クロ、お願い! レイプだけはしないでね……)
先ほどの弱り切ったカオルと、自らの欲望に忠実なクロ……それだけが不安だった……。
───
ユキちゃんとのエッチが終わり、そろそろ寝ようかと話していたその時。
「ユキ! ヒナ! カオルが大変なの!!」
今にも泣きそうな顔をしたクロちゃんが、私たちのいる寝室に駆け込んできた。
ユキちゃんを連れ、急いでお兄ちゃんの下に向かった。
ベッドの上ではお兄ちゃんが苦しそうに顔を歪ませていた。
全身、汗でビッショリ濡れている。
「お兄ちゃん!」
声を掛けても反応は無かった。
「クロ! 何をしたの!?」
「何もしてない! 静かに寝ていたのに、突然呻き出して……」
ユキちゃんは厳しそうな顔をし、クロちゃんはオロオロしていた。
「ユキちゃん! お兄ちゃん、何だか大きくなっていない!?」
「えっ!?」
私はお兄ちゃんのオチンチンを指さす。
すっかり見慣れた皮を被ったオチンチンの先から、先っぽが少し見えていた。
お兄ちゃんの身体も、心なしか大きくなってきている気がする。
「幼児化が、解けている!?」
ユキちゃんの言葉に私は固まる。
「幼児化? ねぇ、何が起きているの?」
「クロ、カオルは元々私と同じ年齢で、呪いのためにこの姿になっていると言ったわよね?」
「うん、聞いたよ。でも、それって呪いが解けるからじゃないの?」
「呪いのせいでこの姿になっているわけではないの。カオルはね、呪いのせいで射精し続けると死んでしまうの……だから、薬で無理やり射精できない幼児になっていたのよ」
「えっ!? じゃあ……」
「このまま射精できるまで成長した時、その時に呪いが解けていなかったら……カオルは死ぬわ」
「そんな! カオル!」
クロちゃんは両手で顔を覆って、泣き始めた。
私も泣きそうになるが、必死に堪える。
これがお兄ちゃんの最期なのかもしれない。
だったら、泣くのは、お兄ちゃんが死んでからだ。
せめてお兄ちゃんを悲しませないよう、苦しませないように逝かせてあげよう。
私はベッドに正座で座り、膝の上にお兄ちゃんの頭をそっと乗せる。
傍らにあったタオルでお兄ちゃんの汗を拭いてあげる。
ユキちゃんも察したようで、お兄ちゃんの隣に添い寝する。
「カオル……今までありがとう。幸せだったよ……」
ユキちゃんは笑みを浮かべて苦しむお兄ちゃんの頭を優しく撫でていた。
「オ、オチンチンが……」
クロちゃんの声にお兄ちゃんの股間を見ると、もう元のサイズに戻っていた。
オチンチンがだんだん元気になっていく……。
「ダメ! オチンチン大きくしちゃダメ!!」
クロちゃんは叫びながらお兄ちゃんのオチンチンを握って抑えようとするが、元気になるのを止める事はできない。
やがて、お兄ちゃんのオチンチンは完全に元気になり、先端からは透明な液が出始めた。
「ユキちゃん……変わってくれる?」
「ええ、いいわよ……」
私の目を見て、ユキちゃんは察したらしい。
膝枕をユキちゃんと変わり、私はお兄ちゃんのオチンチンをそっと握った。
「ヒナ!? 何をするの?」
「クロちゃん、お兄ちゃんの精子が貰える最後のチャンスなんだ。ヒナの次はクロちゃんだからね」
「えっ!?」
「クロ、準備しておきなさい。クロの次は私……その頃にはもう血しか出ないかもしれないわね……。カオル、私はあなたの血をすべてこの子宮で受け止めるわ。あなたは私の身体の中で生き続けるのよ……」
ユキちゃんは笑っているが、目からは涙を流している。
私も涙で視界が歪んでいるけど、笑みだけは絶やさないように我慢する。
お兄ちゃんに跨り、ゆっくり腰を下ろす。
オマンコの入り口にお兄ちゃんの熱いオチンチンが触れる。
物凄く悲しいのに、触れた瞬間、身体中を快感が駆け巡る。
「はぁっん! お兄ちゃん、ヒナのオマンコの奥にいっぱい精子ちょうだい!」
お兄ちゃんの顔を見るのがつらいけど、一生忘れないよう、しっかり目に焼き付けておこうと決心する。
お兄ちゃんのオチンチンの大きさ、形、太さ、硬さ、熱も……。
全神経をオマンコに集中させる。
「カオル! 死なないで! 私に10人赤ちゃん産ませるって約束したでしょ!?」
背後からはクロちゃんの悲痛な叫び声が響く…………。