※この作品はR-18です。

お兄ちゃんの子供が欲しい妹とそうでもない兄   作:猫見サイル

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75 必ず、戻ってきます……

 翌朝、買い物を終えた俺たちは、ビチクアルの街の大通りを歩いていた。

 

「クロ……」

「何?」

「……その服、よく似合っているよ」

「あ、ありがとう」

 

 深紅のチャイナドレスを着たクロの顔は、ドレスと同じくらい赤い。

 特殊な素材で出来たこのドレスは少々値が張ったが、高い防御力を誇るそうだ。

 店主曰く、ジャーマン戦車と同じくらいらしい。

 それに……。

 

『すぐ脱げて、すぐ着られるアルよ。これで何処でもサカれるネ』

 

 店主の言葉を聞いたクロは恥ずかしがっていたが、ユキの強い勧めもあり、この服を選んだ。

 尚、クロは下着を着けておらず、チャイナドレスの下は全裸だ。

 

『そういうものなのか?』

『そういうものネ』

『そういうものよ』

 

 店主とユキが言うのだから、間違いないのだろう……たぶん。

 

 むにゅっ♪ 

 

 クロの柔らかい胸が俺の腕に押し付けられる。

 

「カオル、大丈夫?」

 

 右腕に抱きつくクロが、俺の顔を心配そうに覗き込む。俺はそんなにひどい顔をしているのだろうか? 

 

「俺、そんなにひどい顔か?」

「「うん」」

 

 左腕に抱きつくヒナの声と、クロの声がハモる。

 

「カオルったら、昨夜は激しかったわ♡」

 

 背後からはこの顔になった原因を作った女の声が聞こえる。

 

(ユキは吸血姫(き)と言っていたが、本当は吸精姫(き)なんじゃないか?)

 

 昨夜はユキにこってりと搾り取られた……おかげで、クタクタだ。

 振り返るとユキはお腹をさすっている。その顔は幸せに満ちている。

 

(ユキが幸せなら、まぁいいか……)

 

 俺はフラつく身体をクロとヒナに支えてもらいながら、病院を目指す……。

 

 ……

 

「どうしてこんな状態になるまで放っておいたのですか!? アナタたち、カオルさんをクスリ漬けにする準備を!」

 

 リースの言葉に看護師たちはせわしなく動く。

 

「先生、本当にお世話になりました。先生がいなければ、俺はもう死んでいたでしょう。明日、この街を発つつもりです」

 

 俺たち3人はリースに頭を下げる。そんな俺たちにクロは戸惑いながらも、一緒に頭を下げた。

 

 リースには本当に、世話になった。

 

「先生、無償でサポートして頂きましたが、何か俺たちに出来るお礼はないでしょうか?」

「えっ!? いや、私はヒナさんとユキさんを研究する目的もあったので、お礼なんてとんでもないです! でも……」

 

 リースは右手の中指で眼鏡の位置を直し、真っ赤な瞳をユキとクロに向ける。

 

「ユキさんとクロさん? でよかったですか? 2人の身体を調べさせて貰えないでしょうか?」

「2人がよければ俺は構いませんが、どうして?」

「研究のためです。あと、ヒナさんの子宮内にある魔道具ですが、バージョンアップさせてください」

「バージョンアップ? まぁ、俺は構いませんけど、ヒナ、大丈夫か?」

 

 ヒナは真剣な顔で頷く。

 クロは不安そうだが、ユキに肩を抱かれて決意したようだ。

 

「では、ユキさんとクロさんはこちらへ……」

 

 2人はリースに連れられ、奥へと引っ込んでいった……。

 看護師に点滴の針を刺された俺は、ヒナと2人きりになる。

 

「バージョンアップって、何をするんだろうね?」

「……わからん。何も起きなきゃいいが」

「お兄ちゃん、そういう事を言うのやめない? ほら? 何だっけ? そういうの」

「フラグが立つ……か?」

「それそれ! ヒナ、不安になるよ」

「すまん。忘れてくれ」

 

 奥から、なぜか、ユキの嬌声が聞こえた。

 

「何をしているんだろうね?」

「さぁな?」

 

 しばらくすると、今度はクロの嬌声が聞こえる。クロの喘ぎ声はユキより大きかった……。

 

「気持ちよさそうだね?」

「そうだな……」

「ヒナ、エッチな気分になってきたよ……お兄ちゃん、ここでしちゃおうか?」

「こんな点滴を打っているそばからエッチなんかしていたら、先生に怒られるだろ? ダメだ」

「お兄ちゃんのケチ」

 

 そんな会話をしながら、2人が戻ってくるのを待っていた……。

 

 ……

 

「はい、終わりましたよ。ヒナさん」

 

 リースはヒナのお腹の上に置いた機械を持ち上げる。

 この機械により子宮内の魔道具との通信を行い、魔道具のプログラムを書き換えたようだ。

 事前にリースより説明があったが、難しすぎて1ミリも理解できなかった。

 早口で語るリースを前に、俺とヒナは引きつりながら曖昧な相槌を打つ、相槌マシーンと化した。

 

「先生、何も感じないけど、何が変わったの?」

 

 ヒナはお腹をさすりながら、リースを見る。

 

「前回、ヒナさんが妊娠した時の行動履歴(ログ)から動作を改良しました。これでヒナさんの妊娠はファイブナイン、99.999パーセントあり得ません。あと、ついでに新機能のベータ版も追加しておきました」

「新機能?」

「ええ。楽しみにしていてください」

 

 ニッコリと微笑むリースの顔に、ヒナの顔は不安そうだ。

 

「先生、1つ聞いてもいいですか?」

「ええ? どうぞ」

 

 ヒナは真剣な顔でリースを見つめる。

 

「答えたくなかったら答えなくていいけど、赤目の半吸血姫の赤ちゃん……これ、先生の事ですか?」

 

 ヒナの言葉にリースは驚愕の表情を浮かべる。

 どうやら当たりのようだ。

 リースは「他言無用ですよ」と前置きをした上で、自分の出自について語り始めた……。

 

 ───

 

 病院を後にした俺たちは、ビチクアルの街の出口を目指して歩いている。

 クスリにより、俺の体力はだいぶ回復した……気がする。

 

「ねぇカオル、この手の傷、治して貰わなくてよかったの?」

 

 俺の右手を握るクロが傷を触りながら、俺を見つめる。

 俺はクロと手を離して、右手の甲に残る古傷を眺めた。

 3つあったはずの傷はこの世界に来て、いつの間にか2つ消え、残りは1つだけだ。

 

「先生は綺麗に消せると言っていたが、別にいいんだ。クロ、醜いか?」

 

 左手に抱きつくヒナの力が強まる。俺の言葉のせいだろう。

 

「えっ! 醜いなんて全然思ってないよ? ちょっと気になっただけ……」

 

 クロはそれ以上詮索してくる事は無かった。

 

「カオル、次はどこに行くの?」

「ボットンベリーだ」

 

 背後のユキに答える。

 

「……お兄ちゃん、ボットンベリーに着いたら、別行動してもいい?」

 

 ヒナが静かに聞いてくる。

 

「ん? ああ、構わないぞ?」

「……」

 

 ヒナはあからさまに元気が無い。その瞳に光は無かった。

 悪気が無かったとはいえ、リースとクロのせいだろう。

 そんなヒナの様子にクロも気付いたらしく、不安げな表情を見せる。

 

(リースはともかく、クロには先に言っておけばよかったな……)

 

 今さら後悔しても遅く、自分の浅慮さに腹が立つ……。

 

「ヒナ」

「……なに?」

「マリーGへのプレゼントでも買うのか?」

「えっ!?」

 

 ヒナの顔が赤く染まる。

 

「前に酒を買わなかったから、やり合っていただろ?」

「え? あ……。そうだったね。そうだね、うん」

「ヒナ、顔が赤いよ?」

「ちょ!? クロちゃん? ヒナはお兄ちゃん一筋だよ? ……今のところは……」

「今のところ? 浮気する気満々なの?」

「そ、そうじゃないよ!? なんていうか、アイツとは……」

 

 ヒナの調子が戻ったようで安心する。クロも嬉しそうにヒナをからかう。

 そこからは和やかな雰囲気のまま、俺たちはビチクアルの街を出て、ボットンベリーへ転移した。

 

 ───

 

「じゃあ、お兄ちゃん、ここからは別行動で!」

「ああ、訓練場で落ち合おう」

「うん、わかった! あ! 不要なアイテムは勝手に売ってもいい?」

「いいぞ」

「ありがとう。じゃあまたあとでね、ユキちゃん、クロちゃん。転移!」

 

 ヒナはカントン寺院のパネルに手を置き、転移していった。

 その様子をクロは驚きの表情で見ていた。

 

「ヒナが!」

「転移したんだ。クロ、俺たちはこのパネルだ。手を触れたまま転移と言えば転移する」

「わかった。でも、不安だから手を繋いでいて」

 

 クロは俺の右手をギュッと握ると、おずおずとあっちの訓練場のパネルに手を置く。

 俺とユキもパネルに触れる。

 

「「「転移!」」」

 

 一瞬にして景色が変わる。

 訓練場の受付には見知った顔がある。俺たちが向かうと、向こうも気付いたようだ。

 

「久しぶりじゃない? 元気だった?」

 

 受付嬢のレセプが満面の笑みで俺たちを迎える。

 

「カオル、知り合い?」

「ああ」

「あら? 新しい奥さん? って、あれ? 顔が……」

 

 レセプはユキとクロの顔を見比べて混乱しているようだ。

 ウタマロたちと過ごしていたせいで麻痺していたが、目の前に同じ人物が2人いたら混乱してもしょうがない。

 服装が違い、ユキはマスクをしているとはいえ、中身は同一人物。

 解決策を何か考えておこうと心の中でメモする。

 

「話せば長くなるから省くが、新しい妻のクロだ。クロ、こちらは受付嬢のレセプ」

「は、はじめまして」

「こ、こちらこそ……で、今日は何の用? あ! 私、結婚したからエッチは出来ないわよ?」

「えっ!? あなた、カオルとどういう関係?」

 

 クロがレセプに食いつく。

 また余計な事を言いやがったと思い、俺は天井を見上げた。

 

「どういう関係って……元カノ?」

「じゃあ、カオルとエッチは……」

「してない……。クロ、レセプの冗談だ。元カノも嘘だ」

「もうっ! そんなにすぐバラさないでよ!」

 

 レセプは悪戯っぽく笑みを浮かべる。

 

「でも、結婚したのは本当……あなたにはお礼をしなくちゃね」

 

 レセプは左薬指の指輪をそっと見せる。

 

「そうか、おめでとう」

「お礼は私の身体でいい?」

 

 また、レセプの冗談が始まった。

 

「また今度な。それよりも、訓練メニューを見せてくれ」

「はい、どうぞ」

 

 ニッコリ微笑むレセプから訓練メニューを受け取るとユキと覗き込む。

 クロは文字が読めないため、手持ち無沙汰そうだ。

 

「まず、文字訓練が1つ。あとは……」

 

 俺は必要な訓練を次々レセプに伝えていく。

 

「そんなに? 結構高いけど大丈夫?」

「ああ、金ならある!」

 

 俺は全財産が詰まった革袋を机の上に置く……。

 

 ……

 

「ユキ、すまない。俺は情けないよ……」

 

 レセプから聞いた金額は目玉が飛び出るほど高額で、俺はいくつかの訓練を諦める事になった。

 以前、ユキが受けたがっていた“つよつよマンコ訓練”もその1つだ。

 

「カオル、いいのよ……気持ちだけ受け取っておくわ」

「カオル、元気だして?」

 

 床に崩れている俺の頭をユキが撫でる。クロは俺の背中を撫でていた。

 

「イチャついているところ悪いけど、持ってきたよ」

 

 レセプの声を聞いて俺は立ち上がる。

 机の上には大量のポーションが並べられていた。

 

「えーと、文字訓練が1つ、塔士訓練が4つ、あとこれは……」

 

 クロに文字訓練のポーションを飲ませ、俺とユキは片っ端からポーションを飲んでいった……。

 

 ……30分後

 

「飲み過ぎて気持ち悪いわね……」

「ああ……」

 

 俺とユキは受付前の椅子に座り、吐き気をこらえていた。

 もっと時間を置けばよかったと後悔したがもう遅い。

 途中で気付き、クロを止められたのが幸いだった。

 まだポーションを飲んでいないヒナにも警告してやろう。

 

「飲みながらオナニー禁止って……私、オナニーなんかしないもん……カオルのオチンチンがいいもん」

 

 俺の隣では文字が読めるようになったクロが、手の中にあるポーションのラベルを見て呟く。

 

 ……

 

「お兄ちゃん! おまたせ!」

 

 ヒナの声に振り向くと、一升瓶を抱えたヒナが嬉しそうに俺たちの方に向かってきた。

 

「あれ? 2人とも顔色が悪いような?」

「……ああ。ポーションの飲みすぎだ。もう少し休ませてくれ」

「ヒナちゃん、ごめんなさい。私も今すぐには動けないわ……あら?」

「うわぁ……ヒナ、大胆!」

 

 ヒナの持つ一升瓶のラベルを見てクロが頬を染める。

 

「中途半端なのはヒナらしくないし、ハッキリしたほうがヒナは好きだからね!」

「ヒナちゃんらしいわね……」

 

 満面の笑みを浮かべるヒナにポーションを渡すと、クロの隣に座り1本目を開ける。

 

「クロちゃん、かんぱ~い!」

 

 チン♪ とポーション同士を合わせたあと、ヒナは一気に飲み干した。

 

「ゆっくり時間を置いて飲んだほうがいいぞ……」

「は~~い!」

 

 一升瓶を大事そうに抱えながら、ヒナはゆっくりポーションを飲んでいく……。

 

 ここで俺は閃いた。

 ヒナは不要なアイテムを売り、いくらか金を持っているはずだ……。

 俺はどうしても諦めきれない、あの訓練を受けるため、一縷の望みをかけてヒナに聞く。

 

「ヒナ、金を貸してくれ」

「お金? これ買うのに全財産使ったからもう無いよ? 足りなくてマケてもらったくらいだし」

「…………そうか」

 

 俺は、“少林寺木人拳訓練”が叶わない事を知り、失意のどん底だった……。

 

 ───

 

 右ビチクの塔で迎える最後の夜が明け、俺たちは普段の服装で朝礼に参加していた。

 冒頭で俺から皆への簡単な挨拶が済むと、いつも通り朝礼が進む。

 

 ……

 

「本日も、よろしくお願いします!」

「「「お願いします!」」」

 

 朝礼を終えたシフたちパーティーが俺たちのもとに来る。

 

「寂しくなりますね……。皆さん、お元気で……」

「はい、シフさんたちもお元気で……」

 

 シフたちと握手を交わすと、階段へと向かうその背を見送る。

 

 残ったのは俺たちとウタマロ、ヤダマン、マリーGだけ。

 キュウはアールが産気付いたとの事でこの場にはいない。

 

「ボウズ、気を付けてな。必ず戻ってこい……」

「ああ、親方、世話になったな」

 

 ウタマロと握手を交わす。ヤダマン、マリーGとも。

 

「アル中……これ……」

「俺に!?」

 

 ヒナがラッピングされたプレゼントをマリーGに渡す。

 開けてよいかと聞くマリーGに、ヒナは無言で頷く。

 

「こ、これは……」

「か、勘違いしないでよね! 前にお土産を買ってこられなかったから、その代わりだよ」

「そ、そうか……デカ乳、ありがとう! ……気を付けて行けよ」

「……うん」

 

 

 ヒナはマリーGとハグをする……。

 

 ユキとクロはヤダマンと握手しながら短い言葉を交わしていた。

 

 ……

 

「じゃあ、行くよ」

「ああ、行ってこい!」

 

 別れを済ませた俺たちは、階段に向かう。

 

「ボウズ! 必ず帰って来いよ!」

「体に気を付けるっスよ!」

「デカ乳! 俺は待っているからな!!」

 

 背後から元仲間たちの声が聞こえる。

 俺たちは振り返らなかった……。

 

「……バカ」

 

 隣で呟くヒナの声は震えている。

 ヒナの腰にそっと手を回すと、ヒナは無言のまま、その手をギュッと握る。

 

 俺たちはそのまま無言で階段を降りる。

 

 用が済んだら、真っ先に戻ってこよう。

 

 俺はそう決意し、右ビチクの塔を後にした……。

 

 ───

 

 カオルたちの姿が見えなくなっても、ウタマロたち3人はその場に立ち尽くしていた。

 

「行っちまったな……」

「ああ、振り返りもしなかったな」

「振り返れなかったんじゃないスか? デカ乳はたぶん、泣いていたっスよ?」

「フン! アイツが泣く訳ないだろ? そんなヤワな女じゃあねーよ」

 

 マリーGの表情は明るい。その目はヒナから贈られた一升瓶に向けられている。

 そのラベルには……

 

 “愛人”

 

 と達筆で書かれていた。

 

「デカ乳のヤツ、よくこれを買えたな……」

「それ、そんな貴重なんスか?」

「ああ、値段も高いが、それよりも……入手困難な幻の酒だぜ、これは……」

 

 天を仰ぐマリーGにウタマロが肩を叩く。

 

「おい、マリーG……今日は仕事する気にならないだろうから、てめぇはその酒でもかっ喰らって寝ていやがれ! ボーっとしてケガでもされちゃ、かなわねぇからな……」

 

 ウタマロの言葉に、マリーGは首を振る。

 

「アニキ、俺、しばらく禁酒するわ」

「「は?」」

 

 ウタマロとヤダマンは口をあんぐりと開けて驚く。

 

「俺は、デカ乳と再会する日まで酒は飲まねぇよ。さぁ、忙しくなるぞ! デカ乳を第34夫人として娶ると約束したからには、33人、嫁さんを作らないとな……そのためには金も必要だ。仕事も頑張らなきゃな!」

 

「おい!? マリーG? 何言っているんだ?」

「しょ、正気になるっスよ!?」

「俺は正気だ。アイツと約束したんだ。アイツに相応しい男になるため、突っ走るだけだ」

 

 呆れたようにマリーGを見ていたウタマロが笑みを浮かべる。

 

「そうだな……真面目に仕事してくれるなら、大歓迎だ。だが、デカ乳はボウズに惚れているし、あのボウズが簡単に死ぬようなタマじゃねぇ事、お前も判っているだろ?」

「死ぬよ……」

「え!? どういう事っスか!?」

 

 驚くヤダマンにマリーGは目を閉じ、静かに答える。

 

「ボウズは人間だ。あっという間に寿命が尽きて、死ぬ。その時、俺はデカ乳を娶るよ」

「なるほど、ボウズはその事まで考えていたのかもしれねぇな……まぁ頑張れよ!」

 

 ウタマロがマリーGの背中をパンッと叩くと、マリーGは目を開く。

 その瞳には彼の決意が宿っていた。

 

「その手があったっスか!? もうデカ乳ゲットも時間の問題じゃないスか! ちくしょ~、あっしは羨ましいっス。あっしも恋人を作るためには、まずは金っスね。こうなったら、今流行りのカジノで……イタッ!!」

 

「……やめとけ! お前なんざ、ケツの毛までむしり取られるのがオチだ」

 

 ウタマロに小突かれるヤダマンを見て、マリーGは呆れた顔で笑う。

 

「さてと、俺達もそろそろ行こうや……ボウズたちが戻ってきた時、“俺達が去ってからこれしか進んでいないのか?”なんて言われたら、示しがつかねぇしな!」

「デカ乳をガッカリさせないためにも、ガンガン進めるぜ」

 

 そう言うと、マリーGはヤダマンの肩に手を置く。

 

「行こうぜ、ヤダマン……」

「それじゃアニキも捕まって……って、アニキ! どこ握っているんスか!?」

「うるせぇ! いいから、さっさとイケ!」

 

 ヤダマンの転移スキルにより3人の姿が消える。

 

 

 それぞれの決意を胸に、別々の道を歩むカオルたちとウタマロたち。

 

 

 彼らの未来はまだ見えないが、それぞれの信念が道を切り開いていくだろう。

 今はただ、前を向き、歩みを進める……いつか再会できる事を信じて……。




この話で5章は終わりです。読んで頂きありがとうございました。
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