「お兄ちゃん!」
「ダメだ! 触るな!!」
慌てて扉を開けようとするヒナを制止する。
ヒナはビクっと身体を震わせ、固まる。その手は扉に触れる直前だった。
「ユキ、扉に罠が掛かっていないか調べてくれるか? 慎重に、頼む」
「……ええ、まかせて」
ユキはヒナを下がらせ、跪いて扉を調べ始めた。
「罠は無さそうね。解錠も試す?」
「ああ、頼む」
罠が無くて一安心したところで、俺は振り返り電光掲示板を見る。
電光掲示板の表示内容が追加されていた。あれは、カウントダウンだろうか?
56:34の表示が33、32……と減っていく。
どうやら、時間内に試練を終わらせる必要がありそうだ。
そして、時間切れの場合、何が起こるのかは想像もつかない。
「ダメね。私のスキルじゃこの扉は開けられないわ」
ユキが立ち上がる。
ユキによると、現在の扉は錠がかけられているどころか、物理的に開く事ができない状態との事だった。
試練をクリアするか、時間切れにならないと部屋から出られないと思って良さそうだ。
後者は、推測に過ぎないが……。
「ハグって書いてあるから、ハグすればいいだけ?」
ヒナが俺の元に来て、俺を正面からハグする。
「見て!」
クロが掲示板を指さす。
ハグの下にある0の表示が目まぐるしく変化していた。34、89、7……というようにランダムで数字が表示され続ける。
チーン♪
どこからともなく、何とも言えない音が響く。
鐘? ベル? 風鈴? ……もしかしたら仏壇に置いてある叩く奴かもしれない。
(あれの正式名称は何なのだろう?)
そんな事を考えながら、俺は電光掲示板に表示された数字を見る。
数字は1だった。
その数字が点数なのか、回数なのか判断するため、俺はいったんヒナと離れる。
目の前にいるヒナを真っすぐ見つめた。
「ヒナ、さっきは大きい声を出してすまない」
無言のヒナの背中にそっと手を回し、抱きしめ、目を閉じた。
チーン♪
音が聞こえたので目を開けて掲示板を見る。
表示されている数字は8だ。
どうやら、点数と考えてよさそうだ。
「お兄ちゃん……」
ヒナを抱きしめたままだったので離れようとするが……。
ヒナの手は俺の背中の後ろで固定されていて、離れられない。
頬を紅潮させ、瞳を潤ませるヒナの顔が目の前に迫る。
「ヒナに当たっているよ♡お兄ちゃん、大好き」
ヒナは目を閉じ、俺にキスした。
チーン♪
ヒナとキスをしながら掲示板を見ると、その数字は0だった……。
俺たちは今、ハグをしているが、それ以外の事をすると0になるのがわかった。
ユキとクロの熱い視線を感じる。
どうやら、俺の下半身を見ているようだ。
こうして、第1回ハグ合戦が始まった……。
───
「私、カオルの事が好き、いや、愛しているの! 離さないで! ずっと一緒に居て」
俺にしがみ付くクロの背にそっと手を回す。
「お前はもう俺の女だ。もう飽きかけているが、オナホ替わりにはなるだろう。性欲処理のためにそばに居させてやるさ。まぁガキがデキたら、ポイだけどな……」
俺の言葉にクロは目を見開き、表情は徐々に悲しみに染まる。瞳からは涙を流していた。
「ひどい、ひどいよ……でも、離れられない……」
クロの爪が背中に食い込む。
チーン♪
「すごい! 最高得点!」
ヒナの声に掲示板を見ると54と表示されていた。
目の前で静かに涙を流すクロを見て、心が痛んだ。
「クロ、ごめんな。演技とはいえ、酷い事を言ってしまって……」
「カオル、大丈夫だよ? ……でも、カオルが本心からあんな事を言ったのを想像したら、本当に悲しくなって、涙が止まらなくなっちゃった……困らせてごめんなさい」
ここまでいろいろ実験した結果、どうやら俺が鬼畜な演技をした方が高得点となりやすい事がわかった。
泣き続けるクロの耳元で愛を囁き、軽くキスした。
チーン♪
掲示板に0が表示されている事は見なくてもわかった。
クロも少し落ち着いたようだ。
「クロ、どきなさい。私の番よ!」
ユキは腕を組み、仁王立ちしている。その口元にマスクはなく、不敵な笑みを浮かべていた。
クロは俺との抱擁を解く。その表情は名残惜しそうだ。
「カオル……」
ユキは俺の耳元で設定とシチュエーションを簡単に伝える。
「……あとは、合わせてくれればいいわ」
「お、おう」
ユキは俺の正面に立つと、キャストオフで全裸になる。
「きゃあっ!」
そのまま、ユキは床に倒れ込む。苦悶の表情だった。
あまりの痛々しさに思わず介抱したくなるが、ぐっと我慢する。
「弱いな。女勇者……お前の力はこの程度か?」
俺の言葉に、ユキは悔しそうに顔を歪めるが、それは一瞬で今度は俺を睨みつける。
ユキの瞳が真っ赤に輝いている。
俺は少し怖かった……。
「私は命乞いなんてしないわ! そんな事をするくらいなら、誇りある死を選ぶわ。さぁ、私を殺しなさい!」
死を覚悟した顔がそこにあった。
「殺す? 何を馬鹿な事を……淫紋!」
ユキの下腹部にぼうっと光が浮かび、やがてそれは魔王の紋章を形作り、下腹部に刻まれた……気がした。
ユキの表情が驚愕に染まる。
「な、何をし……あっ! あぁぁぁぁん♡」
ユキの顔は真っ赤だ。
ピンク色の乳首はツンと天井に向き、切なそうに内腿を擦っていた。
「何……これ?」
ユキは戸惑いながら俺を見上げる。
「お前の身体に淫紋を刻んだ。勇者よ、お前には……私の子を孕んでもらおう!」
ユキの目が見開かれる。
「何をバカな事を……はぁん♡ あなたの子を孕むくらいなら、あんっ♡ 死んだ方がマシよ! ひゃあん♡」
「魔王と勇者の子だ。さぞかし強大な魔力を持って生まれるだろう。楽しみで仕方ないな!」
「わ、私の身体、どうなって……あひぃっ! お、お腹が熱い! ど、どうして!?」
ユキは下腹部を押さえながら戸惑う。
「お前、男に抱かれた事はないのか?」
「あ、あるわけないじゃない! 私は勇者よ!? これまで、あなたとの戦いに全てを捧げてきたわ!!」
「そうか、初モノだったか。なぁに、私に散らされるのだ。光栄に思え!」
ユキは股間を隠すが、そこからは愛液が溢れ、床を汚す。
その様子にユキは混乱しているようだ。
「身体が疼いてしょうがないだろう! お前の身体はもう私の種を求めているのだ。さぁ、勇者よ、わが手の中に……」
俺は手を広げ、ユキに一歩踏み出す。
ユキは身体をビクンと震わせる。
「や、やめて……来ないでぇ!」
「抗っても苦しいだけだぞ……さぁ、勇者……いや、我が妻よ、我が手を取るのだ」
俺はユキに手を差し伸べるがユキは必死に抵抗していた。
そしてなぜか、股を広げ、俺に股間を見せつける。
ユキの股間は愛液のせいでヌラヌラ輝いていた。
「フッ、身体は正直だな……なぜ股を開いている? そんなに私の種が欲しいのか?」
「ふ、ふざけないで! あんっ!」
必死に抵抗するユキの表情は徐々に蕩けていく……。
「あぁ! もう身体がっ!!」
ユキは俺の手を取り、抱擁する。
俺はユキの身体をそっと抱き寄せた。
「我が妻よ……私の子を、孕め!!」
「ま、魔王さまぁ~~~♡」
俺に抱きつくユキの顔は、発情したメスの顔だった……。
パンパカパーン♪
どこからかファンファーレが聞こえる。
掲示板を見ると、93と表示されていた。
「ユキちゃん! お兄ちゃん! すごいよ!」
「さすがユキ! エッチだね!」
ヒナとクロの賞賛(?)の声が聞こえる。
俺はユキを抱きしめながら感慨に耽っていると……。
部屋が一瞬暗くなり、その後掲示板があった壁が2つに割れた。
チャチャッ♪ チャッチャチャ♪ チャチャチャチャララララ……
何処からともなくボス戦のようなBGMが聴こえてくる。
股間がビンビンになる。これは、
「また試練をクリアするものが現れたか!!」
2つに割れたその奥の広い空間に巨大な影が見え、地の底から響くような低い声が部屋を震わせる……。
───
足音の度に部屋が揺れる。それは相手の質量の大きさを示していた。
最初に見えたのは、巨大な蛇だった。緑色の鱗は部屋の明かりを反射し、キラキラ輝く。
口から舌を出しながら、大きく口を開き、威嚇音を発した。口の中にある無数の牙と、一際大きい牙からは液体を滴らせている。おそらく、毒液だろう。
足音は止まらない。そして、相手の全身が見えた。
それは、黒い巨大な亀だった。
見るからに堅硬そうな巨大な甲羅から伸びる四肢には、凶悪な見た目の鋭い爪が伸びている。
そして、先に見えた蛇はこの亀に絡みついているようだ。
複雑に絡み合っているため、亀と蛇の2匹なのか、それとも亀から蛇が生えているのか、判断はできなかった。
ギラギラと目を輝かせながら、亀が口を開く。
「我が名は、げ…………」
(ッ!!)
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
俺が見たのは、2つの赤い閃光が目の前の怪物に向かい、尾を引きながら迫る光景だけだった。
気が付くと、床には亀と蛇の首が落ちていた。
怪物の身体が崩れ、ペロとなり床に散らばる。
そのペロの山の前に、全裸のユキが静かに立っていた。両目は真っ赤に輝いている。
それは、先ほど見た閃光の正体だった。
「魔王様と私の子作りを邪魔しないでほしいわ……」
ユキはペロの山に振り返り、言い放つ。
俺はユキの言葉に、「お~い! そろそろ戻ってこ~い」と心の中で呟く。
ヒナとクロは、そんなユキの姿を呆気に取られた顔で見ている。
「えっ! もう終わり!?」
「試練をクリアしました」
ヒナの言葉に答えるように、機械的な音声が部屋に響き、部屋の扉が開く音が聞こえた……。
───
「魔王様、観てもらえましたか? 私の力……」
「えっ!? お、おう……」
(まだ、やるの?)
ユキが嬉しそうに俺の元に駆け寄ってきた。
その目は、完全に女勇者であった。
まだ設定が抜けていないようなので、合わせる事にする。
「さぁ、魔王様。私、早くあなたの子供が欲しいです」
「よかろう……」
俺はマントでユキの身体を隠し、お姫様抱っこする。
「ヒナ、クロ、すまないがペロの回収を頼む」
「ユキちゃん……大丈夫?」
「うん、任せて!」
2人は思い思いの言葉を発しながら、ペロを回収している。
腕の中ではユキが潤んだ瞳で俺を見つめている。瞳の色は、元の色に戻っていた。
(いつまで続けなきゃならないんだ?)
2人がペロを回収し終わったので、試練の部屋を後にした。
部屋から出ると、ミカが試練クリアを褒めたたえるも、今のユキの状態では面倒事になりそうなので、無視して恋人たちのコテージに入った。
「魔王様、遂に私は魔王様と結ばれるのですね♡」
「…………ああ」
ベッドにユキを寝かせると、ユキは恥ずかしそうに頬を染める。
その様子をヒナとクロは白けた顔で見ていた。
「魔王様、私、初めてなのです……優しく、してください……」
「お、おう……」
(ユキ、早くこっち側に戻ってきてくれ……)
ユキの唇が俺に迫る……。
……こうして俺たちは結ばれ、俺は何度も何度もユキに搾り取られるのであった。
尚、ユキが元に戻ったのは翌日の事だ。
しかし、前日の無理が祟ったのか、全身筋肉痛のため、俺たちは試練をクリアしたのに3日ほど10階への滞在を余儀なくされた……。
───
「これで最後かな?」
床に落ちているペロをヒナが拾い、革袋に収める。
もうすっかり見慣れた光景だった。
……10階を出発して3日目、俺たちは順調に塔を登っていた。
20階の試練は“キス”、30階の試練は“クンニ&フェラ”だった。
それぞれをクロとヒナの手を借りてクリアし、今は40階を目指して進んでいる。
尚、ユキがまた、あっちの人になってしまうのが不安で、20階以降はユキの手は借りていない。
ユキはそれが不満なようだった。
塔を登るにつれ、モンスターが強くなるものの、俺たちの相手ではなく、幸い苦戦する事もない。
だが、この慢心と油断が危険なので、気を引き締めて俺たちは塔を登っていたのだが……。
「34階? 今まで部屋があったのは5階毎だったよね?」
「そうだな……」
俺たちの目の前に、真っ赤に彩られた大きな扉があった。
扉の上には34を象るネオン管がピンクの光を放っている。
(ろくでもない目に遭いそうだな……)
学習済の俺は半ば諦めつつ、その扉に手を掛ける。
「準備はいいか? 開けるぞ」
3人が頷くのを確認して、俺はゆっくり扉を開いた……。