踏み込んだ部屋は5階、15階、25階と変わらない、開けた空間だった。
正面には絨毯の敷かれた立派な階段があり、その上には大きな扉がある。
部屋の中央にはミカが立っている。もう、馴染みの光景だ。
「無事34階に到達できたようですね。すばらしい♪」
これも何度も聞いたセリフだ。違うのは階だけ……。
「で、ここには何がある?」
笑みを浮かべているミカに俺は問う。
「いい質問ですね。ここには天国と地獄があります。寄り道されてはどうでしょう♪」
ミカは相変わらず表情を崩さずに答えた。
俺は左右の壁にある大きな扉を見る。
左手の壁には金で細工された真っ白な扉がある。まさに天国への扉といった様子だ。
もう片方の壁には重厚な真っ赤な扉。よく見るとあちこちに血塗られた手形がついている。
どちらが天国でどちらが地獄かはすぐに判った。
「地獄の方は論外ね」
「天国だったら、ヒナ、少し見てみたいかも」
ユキとヒナの言葉を聞いて俺は思案していた。
確かに、天国には興味があった。地獄もだが……。
だが、危険は無いのだろうか?
「罠などはありませんし、戻りたいときに戻れますよ。これは保証しますので、どちらも自由に見ていただいて結構です♪」
俺の思考を読んだかのように、室内にミカの声が響く……。
「本当に戻れるのか? どう戻ればいい?」
「入る時と同様です。その扉から出られます♪」
ミカは相変わらず表情一つ変えずに答える。
……数刻後
俺たちは天国への扉の前に立っていた。
「楽しみだなぁ! お兄ちゃん、天国ってどんなところだろうね?」
扉に手を掛けようとするヒナを急いで制止する。普段ならこんな軽はずみな事はしない。余程、浮かれているのだろう。
ユキに罠が無い事を確認して貰い、俺は警戒しながら扉を開けた。
───
扉の先には見渡す限りの花畑が広がっていた。遠くに小高い丘が見える。
澄んだ空には雲一つなく、太陽の光が優しく降り注いでいる。
まるで、塔内ではないような錯覚に陥るが、俺たちの後ろは塔壁であり、まだ閉じていない扉の向こうには笑みを浮かべるミカと、先ほどまで居た部屋が見える。
転移、なのだろうか?
塔壁を見上げると、それは天高くそびえ立ち、天辺は見えない。
扉が、閉まる。
念のため、もう一度扉に手をかけ、開けると、やはりミカと部屋が目に入る。
戻れない、という事は無さそうだ。少なくとも、現時点では……。
「うわぁ! 綺麗!!」
瞳を輝かせたヒナが駆けだす、止めようとするが……。
「クロ、すまないがヒナのそばにいてあげてくれないか?」
「う、うん♪」
そんなヒナを羨ましそうに見ていたクロに声を掛けると、クロはヒナを追いかける。
その顔は明るい。内心、クロもはしゃぎたかったのだろう。
「問題なさそうね」
「今のところは……だけどな」
ユキと共に警戒を続けながら、2人の後を追った。
今まで緊張と閉塞感の中、階段を登り続けてきたのだから、2人には少しくらい羽を伸ばして貰いたかった。
2人は談笑しながら歩みを進めていく。
ユキが俺の右腕に抱きつく。心なしか、嬉しそうな表情だ。
まるで子供を見守る親の気分だ。そんな事を考えながら俺たちは天国を丘に向かって進む……。
……
前を進むヒナとクロが立ち止まった。追い付いてヒナの背中越しに見てみると、半裸の男が立っていた。
恍惚の表情を見せているが、口はだらしなく開き、目の焦点は定まっていない。
「こんにちは!」
ヒナが呼びかけても、男は全く動かず、返事もしない。
まるで俺たちが見えず、ヒナの声も聞こえないようだ。
「放っておこう」
とりあえず無視してそのまま進むと、人が増えてきた。
口元に笑みを浮かべながら木に向かって話している者、ぼうっと横になっている者、大量のペロの上で転げまわっている者、美味しそうに食事する者……。
隣で女が苺を頬張る。その掌には忽然と苺が現れた。
老若男女、どれも半裸または全裸だ。一つだけ共通しているのは、皆、先ほど見かけた男と同じで、目の焦点が合っていない。
さすがのヒナも声を掛ける気は失せたようだ。
進むにつれ、歓談しあう者たち、抱擁しあう者たち、抱き合ってキスしている者たちが目に付いてきた。
男女もいれば、女性同士、男性同士もいる。
……
丘の手前まで進むと異様さが増してきた。
至る所で性行為が行われ、嬌声が聴こえる。
「お兄ちゃん! 早く
男の上で腰を振る女が叫ぶ。相変わらず、目の焦点は合っていない。
「ヒナたちみたいだね……」
ヒナが小さく呟く。
「あぁっ! お兄ちゃん! 熱い! 熱いよぅ!!」
女は男の上で痙攣していた。
どうやら、射精されたらしいが、その目のせいで気持ちよさそうには見えなかった……。
……
「お兄ちゃん! やめてぇ!」
「おらぁ! さっさと孕め!」
叫びながら腰を振るわす男の目も焦点が合っていない。男の下では少女が泣き叫んでいる。
周りには年端もいかない少女たち、その腹は膨らんでいる……妊婦なのだろう。
そして赤子を抱き授乳する少女たちが数十人居た。
全てこの男が産ませた子なのだろうか?
一際お腹の大きい少女がその場に崩れる……出産が始まるようだ。
ヒナが俺の左腕に抱きつく。その顔は不安そうだ。
クロはユキに抱きついていた。
俺たちは4人並んでそのまま丘を登っていく……。
遠くで産声が聴こえる……。
……
もう少しで、丘を越える。
ここに来るまで、嫌がる相手を犯す男女、少年少女を犯す男女、暴力を振るいながら相手を犯す男女……様々な光景を見てきた。
これが、彼らの天国なのだろうか?
前方、丘の向こう側から悲鳴と怒号が聞こえる。
左腕を組んでいたヒナの腕に、力が籠る……。その顔は不安そうだ。
「ヒナ、ここでクロと待っていろ。俺とユキで見てくる」
「イヤだよ! お兄ちゃんと一緒に居たいよ!」
宥めるが、ヒナは置いていかれる事を嫌がったため、仕方なく全員で歩みを進めた。
やがて丘の天辺に着いた。
……
丘の先には見渡す限りの花畑が広がっていた。遠くに小高い丘が見える。
澄んだ空には雲一つなく、太陽の光が優しく降り注いでいる。
最初に目に入ったのは、一心不乱に女を犯している男だ。その女の腹の上には、本人のものと思われる首が置かれている。
男が動くたびに、見開かれた瞳が揺れていた……。
左前方には動物を殺している男、その向こう側には男性器を鋏で切り落としている女。
逃げ惑う少女に向かって弓を射る男、メイスをもって少年を追いかける女、切り落とした耳を自らの身体に貼りつけていて、身体中が耳に覆われ性別不明の者……。
狂乱の宴が、見渡す限りで繰り広げられていた……。
宴の主役は皆、一様に口元には笑みを浮かべ、目が血走っている。
あちこちから断末魔と喜悦の声が聞こえる。
至る所に死体が転がり、血が花を汚している。
俺たちは無言でその光景を観ていた。
「お姉ちゃん! やめてぇ! 許して!!」
泣きながら命乞いする少女に、女が刃物を振り下ろしていた。
耐えきれなくなったのか、ヒナが俺の手を振りほどき、急いで離れて嘔吐した。
「すげぇ胸だな! 俺が切り落としてやるよ!!」
ヒナを介抱しようと近付くと、ヒナめがけて走り寄ってくる男が見えた。
その手には巨大な剣が握られ、左胸には兎と骨を模したタトゥーが見える。
「ヒナッ! 危ない!!」
俺は声を掛けるが、ヒナは頭を上げない! 俺は、駆け出す。
「禁止行為が行われました。対象を拘束。地獄に送ります」
天から声が聞こえ、男が硬直する。
「嘘だ! お前、人間なのか!? 嫌だぁ! あの地獄には戻りたくねぇよ!!」
男は失禁し、涙を流して天に向かって叫ぶ。
そのまま、男の姿は徐々に薄くなり、遂には掻き消えた。
男が立っていた場所には、濡れた花が咲いているだけだ……。
「ヒナ、大丈夫か!?」
「お兄ちゃん、ヒナ、気持ち悪いよ。もう、帰ろうよ……お願い!」
ヒナは自らの服と顔、自分の吐いた吐瀉物に清掃を掛けた。
ヒナの背中をさすり、落ち着くのを待ってから、俺はヒナをおんぶした。
もう、この先に進む気にはならない。
この先の光景、あの丘の先で行われている事はもう想像したくなかった。
俺たちは来た道を引き返す……。
───
「天国はいかがでしたか? 素晴らしい所だったでしょう♪」
天国から元の部屋に戻ると、ミカが愉快そうに声を掛けてきた。
その表情は、俺たちが天国への扉を開けた時から変わっていない。
俺は無視して部屋の隅に恋人たちのコテージを設置した。
扉を開け、ヒナを寝室に運び、ベッドに横たえる。
「……睡眠!」
苦しそうなヒナの顔が安らかな顔に変わり、静かに寝息をたてる。
「クロ、すまないがヒナに着いていてあげてくれないか?」
「いいけど、カオル、どうしたの?」
「今のうちに確認しておきたい事があるんだ。ユキ、行こう」
寝室を後にし、ユキと供に出口に向かった。
歩きながらユキに伝える。
「ユキ、先に謝っておく。不快な思いをさせてしまう。すまない」
「……」
ユキが俺の手を取る。俺は歩みを止め、ゆっくり振り返った。
そこには俺を真っすぐ見つめるユキがいる。
「カオル、私はあなたの隣に居られるなら、どこまでも着いていくわ。文字通り、そこが地獄だとしても……」
そっと微笑むユキを俺は抱きしめた。心の中で感謝しながら。
「あったかいわ……」
ユキは小さく呟いた……。
───
ミカに戻って来られるのかの確認をし、ユキに安全を確かめてもらってから俺たちは地獄への扉を開く。
扉の先は予想に反して目が眩む程、明るい部屋だった。
あまりの眩しさに、俺たちは咄嗟に目を覆う。
その明るさに慣れてきた時、俺たちに近づく人影に気付き、身構える。
「あらぁ? 新入り……じゃあないみたいね」
現れたのはトラ柄のビキニを着た女性の、鬼だった。
全身真っ赤で長く黒い髪と瞳。
その女のほかにも部屋には数名の鬼がせわしなく動いていた。鬼たちは全て女性だった。
「何の用かしら? もしかして、お姉さんとイイ事シタくて来たの?」
目の前の女は俺の顔を見つめてポーズを取り、ウインクする。
豊満な胸がぶるんっと揺れる。
その様子を見ていたユキが一歩前に出る。
俺は戦闘が始まるのではないかと気が気でなかった。
部屋の中に居る鬼の数を数える……目の前の女を入れて10人だ。
対して、こちらは俺とユキの2人。鬼たちの強さはわからないが、楽勝と考えるのは楽観的過ぎるだろう……。
「私の夫を誘惑しないでちょうだい。用事というか、見に来ただけよ」
「あらぁ? ごめんなさい。知らなくて、悪気があったわけじゃないのよ」
女はユキに軽く頭を下げる。
俺は安堵していた。まぁ、ユキは見境なく喧嘩を売り買いするタイプではないし、俺の杞憂だったようだ。
「それで、見に来たって事は見学ツアーでいいのかしら? 1人1000ペロ、2人で2000ペロよ?」
女の言葉を聞いて、俺とユキは顔を見合わせる。
……
女の話によると見学ツアーとは文字通り、地獄内の各施設を見学するツアーとの事だった。
最後に記念撮影と記念メダルが貰えるらしい。
特に危険も無いようだ。
俺とユキは話し合い、幸い、ペロにも余裕があったので見学ツアーに参加する事にした。
その意志を目の前の女に伝えると、女は俺たちをとある機械の前に案内した。
その機械は上に大きなすり鉢状の器があり、その中心には穴が開いている。
「テキトーに放り込んじゃって。大丈夫。正確にカウントされるからね」
ユキがペロの詰まった革袋を器の上で逆さにする。
ジャラジャラと音を立てて、ペロが器に落ち、穴に吸い込まれる。
機械に付いているカウンターの数字が目まぐるしく変わる。
1997、1998、1999、2000
カウンターはそこでピタッと止まる。
機械内ではペロと機械がぶつかり合う音が響いている。
女はそれを冷たい目で見て、ため息を吐く。
「いい加減にしてほしいわ。本当に面倒ね!!」
機械内の音が止むと機械の下部でジャラジャラと音がする。
音が止み、女が機械の下部にある扉を開け、中から革袋を取り出した。
「はい、お釣り。革袋代の5ペロは差し引いているからね」
女はユキに革袋を差し出す。ユキが手に持つ空になった革袋と比べると、なかなか立派な革袋だ。
ふと、革袋に浮かぶ兎のクロスボーンの刻印に目が行くが、無視した。
ユキも気付いたようだが、平静を装い、その革袋を受け取る。
俺を見つめるユキに俺は無言で首を振ると、諦めたように革袋を懐に仕舞う。
あの革袋は、あとで捨てよう。
「クロ!」
女が発した言葉に一瞬驚く。
駆けつけてきた女は、目の前の女よりだいぶ細身で小柄の、黒い肌の鬼だった。
「アカ先輩、何用ですか?」
「この方たちを見学ツアーに案内して」
言葉を聞いた黒い女は目を見開く……。
「そんな! 先輩、私には無理ですよ!?」
「業務命令よ!」
「でも……」
目の前で赤鬼と黒鬼がやりあっているが、赤鬼に軍配が上がったようだ。
観念した黒鬼は赤鬼を恨めしそうに見ながら、俺たちを連れてとある扉を目指して進んだ……。
───
俺とユキは目の前の黒鬼と向かい合って立っている。
首からは“見学者”と大きく書かれたプレートがぶら下がっていた。
「では、これから見学ツアーを開始します」
黒鬼は背筋をピンと伸すと、深呼吸して俺たちを見据えた。
ゆっくり、口が開く。
「みんな~! こんにちは~~! 地獄見学ツアーに参加してくれてありがとう! 私は引率員のクロだお♪ よろしくね~♪ それじゃ~さっそく~~レッツラゴー♪」
黒鬼はワントーン高い声で俺たちに呼びかけると、腰に手を当て、もう片方の手で目の前でピースサインを作り、ウインクした。ぷるんと胸が揺れる。
俺とユキは呆気に取られて、固まる。しばし、無言の時が流れた……。
黒鬼の目にウルウルと涙が溜まる。
「あの! 2人しか居ないので、無理せず、普段通りでいいですよ?」
「……ありがとうございます。あなたは優しいですね」
慌ててフォローすると、黒鬼は涙を拭いながら微笑む。
そして軽く咳払いして、俺たちを連れ立って歩き出した……。
───
通路のガラス窓から見えるのは、巨大なタンクだった。
上からは肉塊なのか汚物なのかわからないものが降り注ぎ、タンク内に落ちていく。たまに、人型もある。明らかに人体だった。
「……という訳で、使いものにならない部分はここで資源に戻します。そうする事で……」
俺は黒鬼の話を聞きながら、窓横のパネルに目をやる。
“再生工場”という文字と役割、運用方法などの説明が書かれている。ご丁寧にもイラスト付きだ。
どうやら、天国に供給する物資の原料は、全てこの再生工場で賄っているらしい。
俺は天国で見た食糧、ペロ、武器や拷問具を思い出した。
「つまり、天国は“人間”以外、100%地獄産なのです。質問はありますか?」
「天国でレイプされていた人や、殺されていた人も?」
説明が終わり少し自慢気な黒鬼にユキが尋ねる。
「ああ、
俺もユキも黙っていると黒鬼は満足そうに笑みを浮かべ、通路の奥にある扉へと歩き出す。
俺とユキはタンクに何かが落ちる音を聴きながら、黒鬼の背を追った。
───
「次は少々ショッキングなので、苦手だったらこのメガネをかけて耳栓をしてください」
黒鬼から渡されたメガネを試しにかけてみる。視界がぼんやり歪み、隣にいるユキの顔もよく見えない。
その後、念のためにと言われ、エチケット袋を黒鬼から受け取った。
袋には“地獄へようこそ♪”とポップな文字で書いてある。
黒鬼が扉に手を掛ける。俺はその先に広がる光景を想像して唾を飲み込んだ。
扉が、開く……。
まず、聞こえてきたのは悲鳴と絶叫だ。
「イヤだ! イヤだ!」
「許してぇ!!」
「助けてくれぇ!!」
黒鬼が扉を開け放つと、目の前には通路とその先の扉が見える。通路の両脇には大きなガラス窓が嵌っていた。
窓の外に見える光景は、想像を絶するものだった。
「ここは達磨工場です。右手をご覧ください」
目に入ったのは全裸の老若男女だ。
全員が腕と脚の付け根を鉄板のようなものに固定され、宙に浮きながらゆっくり動いている。
その先には大きな装置があり、装置に近付くにつれ、泣き叫ぶ声は大きくなっていく。
「まず、手足を根元から切り落とします。達磨にするわけですね」
黒鬼は微笑みながら大きな装置を指さす。
必死にもがきながら装置に消える女が見えた。
やがて、絶叫が聞こえ、装置から出てきた時には腕も、脚も無い状態で出てくる。なのに、不思議と血は出ていない。
女はぐったりしており、生きているか死んでいるかわからなかった。
「達磨にしたら止血し、眠らせます。手足は再生工場行きです。あら?」
女を拘束していた鉄板が、女を解放する。女はそのまま無残に落下していった。
俺は窓に近付き、見下ろす。
下にも同じ装置が無数に見え、装置に飲み込まれる人々も無数にいた。底は、見えない。
やがて、落下する女は見えなくなった。
上を見上げると、そこにも同じ光景が広がっていた。
(何千……いや、何万人居るんだ?)
「ショック死してしまう人もいるのです。この場合も再生工場行きですね」
黒鬼は別段珍しい事でもないように軽く手を上げる。
装置から四肢を失った男が出てきたので、目で追う。
その男の先にはまたもや装置が迫っている。
「次に全身脱毛します。どうやっているかは、企業秘密です」
「なぜ、脱毛を?」
「この先の工程で必要なのです。後ほど、説明しますね」
装置から出てきた男は頭髪も陰毛も無くなっていた。
おそらく、体毛も髭も、眉毛やまつ毛もないだろう……。
目の前で残酷な光景が繰り広げられているのに、俺もユキも不思議と落ち着いていた。
天国で見た光景がよほど強烈だったようだ。
地獄の方が人道的だとすら思えた。
脱毛された男は、闇の奥に消える。
「達磨にしているのはどうして?」
「省スペースのためと、不要でしょう?」
「不要? どういう事なの?」
ユキの質問に答えた黒鬼は、さも当然という顔でユキを見る。
「天国と繋がるのに、手足は不要です。性器、肛門、口以外は要らないのです」
悲鳴が聞こえる中、目の前の黒鬼は静かに答える。恍惚の表情を浮かべながら……。