「なに? これ……」
クロは手に持つ写真を見ながら、呟いた。
そして、俺の顔をじっと見つめる。その瞳には、非難の色が浮かんでいた。
気まずい、沈黙が続く……。
ぐが~~~!
ヒナのイビキが聞こえた。
俺はヒナを起こさないよう、別の部屋で話さないかとクロに提案した。
クロは黙って頷く。
ヒナを起こさないように、そうっと俺たちは寝室を後にした。
……
もう一つの寝室の扉をノックすると、中からユキの嬉しそうな声が聴こえた。
扉を開けると、ユキが俺に飛びつく途中で、クロの姿に気付き硬直する。
「クロ? どうしたの?」
「ユキ! ひどいよ!!」
クロは手に持つ写真をユキに見せつけた。
そこには、俺の上に跨り、オーガズムに背中をのけ反らせ、恍惚の表情を浮かべたユキのあられもない姿が収められていた。
写真を見た瞬間、ユキの顔が赤く染まる。
その写真は、先ほど、地獄見学ツアーで貰った記念写真だった。
……
『天国へ行った瞬間を激写しました』
黒鬼の言葉を聞いたユキが真っ赤になっていたのを思い出す。
俺はなんて粋な計らいを……と黒鬼に感謝しながら写真を受け取った。
その瞬間、ユキに頭を叩かれた。涙目になりながらも、写真をそっと懐にしまった。
写真のユキは、美しかった。散々オカズにした“兎ありす”超えだ。家宝にしよう。
その後、なんだかんだ言いながらも、ユキも結局写真を受け取っていた……。
……
「これ、いつの間に撮ったの!? どうしてカオルが持っているの!?」
「クロ!? 落ち着いて……」
ユキが必死にクロを宥めるが、クロの言葉は止まらない。
クロの頭の上で漆黒のリボンが激しく揺れる
「ずるいよ! なんで私にはくれないの!?」
「「えっ!?」」
目の前のクロが涙を浮かべながら、俺たちを非難した。
俺はクロの手にある写真をよく見て、なるほどと納得した。
写真を撮ったカメラの位置、この位置からだとクロのトレードマークの漆黒のリボンは映らない。
リボンが無い、ましてや全裸のユキとクロは区別がつかない。
つまり、クロは写真に写るユキを自分と勘違いしているようだ。
それに……。
ちらりとユキを見る。地獄で抱いたユキはどこか、クロの面影を感じた。
それを思い出しながら写真を見ると、恥じらいつつも感じているこの表情はどう見てもクロにしか見えない。
ユキがやれやれといった感じで、軽く頭を振る。
「クロ、ごめんなさい。焼き増しは出来ないから、カオル、クロにその写真をあげて」
「「えっ!?」」
ユキの言葉に、俺とクロは同時に声をあげる。
「いいの!?」
先ほどまでの涙目は何処に行ったのか、クロの顔が輝き出す。
(よく、ないんだが……)
俺は、全力で拒否したかった。俺の、ユキの最高の一枚……それも、“兎ありす”超え……手放すには惜しい……惜しすぎる…………。
だが、大事そうに写真を胸に抱く、クロの姿を見ていると、何も言えなくなってしまった。
「…………ああ、クロに……あげるよ……」
俺は心の中で血の涙を流しながら、やっとの思いでクロに伝えた。
「嬉しい! ありがとうカオル!!」
「ヒナちゃんには内緒にしてよ? 欲しがられても、困るわ」
「わかった! カオル~~」
クロは俺に軽くキスすると、機嫌よさげに鼻歌を歌いながら寝室を出て行った。
ユキと、2人きりになる。
「カオル、これ、代わりにあげるわ」
ユキが受け取った写真を貰えると期待したものの……。
「……」
俺が手に握らされたのは、地獄見学ツアーの記念メダルだった。
メダルには“地獄へようこそ”の文字とその下に“KAORU ♡ YUKI”と小さく刻印が入っている。
「……ありがとう。ユキ、そんなにその写真、俺に渡したくないのか?」
「ええ、そうよ」
「どうして?」
「だって……」
ユキが俯く。
「恥ずかしいじゃない……」
小さく呟く。その顔は真っ赤だ……。
その姿が可愛くて……。
「ちょ、ちょっと! カオル!?」
「ユキ、可愛いぞ……好きだ」
「カオル、当たってるよ♡」
そのまま、ユキを抱き締めた。
ベッドの上でユキとイチャイチャして、そろそろいい感じになってきた時……。
コンコン♪
寝室のドアがノックされ、俺が声を掛けるとそこには……。
「カオル……私、我慢できなくなっちゃった♡」
写真を見たせいで発情したのか、メスの顔をしたクロが乱入してきたのであった……。
───
「カオル、気持ち良かったよ♡ おやすみ」
「ヒナちゃんによろしく。おやすみなさい」
2人きりで寝たいとの事で、俺はユキとクロに寝室を追い出された。
「交尾が終わったら、もう、用済みだ」と言われたような気がして少し寂しい。もちろん、あの2人がそんな事を思っているわけない……そう、信じたい……。
それに、とある昆虫は交尾後、オスを食べるとか聞いた事があるし、それよりはマシだろう。
そう考えて、頭を切り替える。
俺はヒナの寝る寝室の扉の前に立ち、ノックする。
返事がないのでそっと扉を開けると……。
んご~~~!
室内からヒナのイビキが聴こえる。
ぐっすり眠っているようだ。
俺は部屋に入り、慎重に扉を閉めた。
ヒナはベッドの上で爆睡中だ。
シーツははだけ、豊満な胸を晒しているが……。
(相変わらず、酷い寝相だな……)
股をだらしなく広げ、口からは涎を垂らしている。
色気も何もあったものではない。
ぐが~~~!
ヒナの脚を閉じさせ、タオルで涎を拭い、シーツを掛ける。
(子供の頃から変わらないな……)
これでオネショでもしたら完璧にあの頃と一緒だと思うと、急におかしくなって噴き出してしまう。
んがっ!!
いびきが止み、ヒナが目を開ける。
「お兄ちゃん……?」
「ヒナ、すまん。起こしちゃったか?」
ヒナは目を擦りながら上体を起こす。
「あれ? ヒナどうしてここで寝ていたの?」
ヒナの問いに俺は答えるべきか、迷った。ヒナは不思議そうに俺を見つめて首を傾げる。
「ヒナ、確か、お兄ちゃんたちと天国に行って……」
ヒナは目を見開き、口元を押さえて寝室に備え付けの洗面所に駆け込む。
……
「お兄ちゃん、安心して。妊娠はしてないよ……」
漸く落ち着いたのか、ヒナは顔を上げて軽口を叩く。
その顔色は真っ青だ。
「知っているよ。ゆっくり、深呼吸しろ」
「うん……お兄ちゃん、ごめんなさい」
ヒナは両手で俺の右手を握り、謝る。左の指で俺の手の甲の傷を撫でていた。
「もう謝らない約束だろ? あの事はもう忘れろ」
「うん……」
「水を取ってくるよ」
立ち上がり、寝室の扉に向かって歩く。背後からはヒナのすすり泣く声が聴こえた。
(俺のせいで、すまない)
心の中でヒナに謝りながら、俺は扉を開けた……。
……
しばらく、時間をおいて寝室に戻ると、ヒナはベッドに腰かけていた。
だいぶ落ち着いたのか、顔色も少し良くなっている。
無言でコップを渡すと礼を言って受け取り、一気に飲み干した。
「落ち着いたか?」
「うん、ありがとう。お兄ちゃん、今日は一人で寝てくれる? ヒナ、今日はユキちゃんたちと寝たい」
暗に、俺と一緒に居たくないという事だが、俺は快く承諾し、寝室から出ていくヒナの背中を見送る。
(一人で寝るなんて、いつぶりだろうな)
俺はベッドに横になり、ぼうっと天井を見る。
不意に、クロに渡した俺の家宝、ユキの写真を思い出した。
あんなものを今見たら、オナニーしたくなってしまうから、クロに渡して正解だったのかもしれない。
それにしても……惜しい事をした。
俺は、
そんな事を考えていると、寝室の扉がノックされる。
「どうぞ」と声を掛けると、扉が開き、ヒナが顔を覗かせた。
「追い返されちゃった……」
ユキたちがヒナを追い返すなんて珍しい事もあるものだと思いながら、俺はベッドを降りる。
「ヒナ、ここで寝ろ。俺はリビングのソファーで寝るよ」
「うん……お兄ちゃん、ごめんね」
「いいよ。ヒナ、おやすみ」
ヒナの「おやすみ」の声を聞きながら、俺は寝室を後にした……。
リビングに行く途中、ユキたちが居る寝室の前を通った時、寝室内が少し騒がしいような気配がして立ち止まった。
いけないと思いつつも、扉に耳をあてる。
寝室内からは何かを押し殺しているような声と励ます声が聴こえる。
もしかして、2人でエッチな事でもしているのだろうか?
『もう少し……がんばっ……』
『ん~~~! ん~~~~!! んんん~~~!!!』
一際大きな声がして、静かになった。
『よく……まだ……制御……』
『……カオルの……ちゃん、……6人……』
『泣かない……ごめん……クロ』
『……しあわせ……ママ……』
何かのシチュエーションだろうか?
裸のユキとクロが絡み合う姿を想像して、股間が熱くなる。
『……秘密……カオルに……絶対……』
『…………カオル……会いたい』
『ダメ……』
「うっ!」
扉に股間が擦れて、思わず声を出してしまった!
その途端、室内から息を呑むような声が聴こえた。
「誰!?」
室内から、俺に問い掛ける声の主はユキだった。
無言を貫き、誤魔化そうとも思ったが、盗み聞きした罪悪感もあり、素直に答える事にする。
「ユキ、俺だ」
「ッ!? カオル? 何の用?」
室内からバタバタと慌ただしい音が聴こえる。
「リビングに行く途中で、少し騒がしい気がして……大丈夫か?」
「わ、私もクロも大丈夫よ? そうよね? クロ」
「う、うん。カオル、私は大丈夫だよ?」
「そうか、ならいい……何かあれば、何でも言ってくれ。おやすみ、ユキ、クロ……」
2人のおやすみの挨拶を聞いて、俺はリビングに向かった。
何か隠し事をしていそうだが、どんな人間にも秘密はあるだろうし、詮索するのは止そう。
いつか、2人が俺に相談してくれる事を願いながら、俺はリビングのソファーに横になり、目を閉じた……。
───
「カオルゥゥもっと……奥までぇ♡」
私の目の前ではお兄ちゃんとクロちゃんが愛し合っていた。
40階、試練の間の電光掲示板には“セックス”“2/3”と表示されている。
クロちゃんとのエッチが終われば、“3/3”となり、ボスが出てくるだろう。
くちゅん……くちゅん……
クロちゃんは恥ずかしいのか、全裸にはなっていない。
チャイナドレスのスカートを腰までまくり上げて、お兄ちゃんの下でよがり狂っていた。
クロちゃんの股間から、いやらしい音が絶え間なく聞こえる。
(さっきは何だったのかな?)
クロちゃんは最後までお兄ちゃんとエッチするのを拒否していた。
いつもなら、あんなにお兄ちゃんとエッチしたがるのに、不思議だった。
『クロの代わりに私がカオルに2回抱かれるわ』
ユキちゃんはお兄ちゃんと2回エッチしたけど、カウントは増えなかった。
あのカウントは回数ではなくて、人数なのだろう。
でもそのおかげで2回もお兄ちゃんとエッチできたユキちゃんはズルいと思う。
ユキちゃん、私の順でエッチをした後、クロちゃんは仕方なくといった感じでお兄ちゃんとエッチし始めたけど……。
「熱い! 熱いよぅ!」
クロちゃんは涙を浮かべながらお兄ちゃんに抱きついている。
お兄ちゃんの動きに合わせて、頭のリボンが激しく揺れていた。
拒否していた割には、物凄く嬉しく、幸せそうな顔をしている。
そして、それとは対照的に、ユキちゃんはものすごく不安そうな顔でクロちゃんとお兄ちゃんの行為を見ていた。
お兄ちゃんもクロちゃんもエッチに夢中で気付いていなさそうだけど……。
少し気になった私はそっとユキちゃんの隣に腰を下ろす。
「ユキちゃん、不安そうな顔しているよ? 大丈夫?」
「えっ!? ええ、大丈夫よ」
驚き過ぎで怪しい……これは、もしや……。
「ユキちゃん、安心して。お兄ちゃんが一番好きなのはユキちゃんだから……クロちゃんに盗られる心配は無いよ?」
悔しいけど、これは本音だ。お兄ちゃんは私、ユキちゃん、クロちゃんに優劣はつけないけど、一番愛しているのはユキちゃんだ。
血の繋がっている私とはどこか後ろめたい所があるのだろう。
となると、ユキちゃんに軍配が上がるのはしょうがない。これは、人間の本能なのだ。
「あっ! んちゅぅ……」
お兄ちゃんとキスしているクロちゃんのリボンが揺れる。
クロちゃんはユキちゃんの分身だ。クロちゃんには悪いけど、分身がオリジナルに勝てるとは思えない。
もしかしたら、この3人の中で一番序列が低いのは私?
そう考えると少し悲しくなるけど、それでもいい。
私はお兄ちゃんの傍に居られて、お兄ちゃんと私の遺伝子をたくさん残せれば、それでいい。
拳をギュッと握る。早く、攫われたアスカを取り戻したい。そしたら、子作り解禁だ。早く、お兄ちゃんの次の子を孕みたい。
これは、ユキちゃんやクロちゃんにはできない、私にしかできない、私の使命だ。
ふと、どうして私はお兄ちゃんの子供が欲しいのだろうと考えて……。
「うぷっ!」
私は急いでベッドを降り、部屋の端までダッシュして、壁際で嘔吐した……。
(助けて、お兄ちゃん……許して……)
もう、胃液しか出ないけど、気持ち悪くてしょうがない。涙で視界が歪む……。
えずいていると背中をそっと撫でられた。
振り向くと、私がお兄ちゃんの次に愛している人、ユキちゃんが心配そうに私を見ている。
「ヒナ、大丈夫?」
“ちゃん”付けで私を呼んでいない、久々にユキちゃんはお姉ちゃんモードだ。
「ユキちゃん、ううん、お姉ちゃん、お兄ちゃんには言わないで。心配かけちゃうから……」
ちらりとお兄ちゃんを見ると、相変わらずクロちゃんと愛し合っている。もう、2人だけの世界に閉じこもっているのだろう。
それを見て、私は心底ほっとした。
私のこんな姿、お兄ちゃんには見せたくないし、見られたら、きっとお兄ちゃんは自分を責める。それだけは、避けたい。
「ヒナが何か抱えているのはわかっているわ。一人で抱え込まずに、話したくなったら話して。私は、ヒナのお姉ちゃんなんだからね」
私の頭をそっと撫でるユキちゃんの言葉が、嬉しい。ユキちゃんが本当のお姉ちゃんだったらよかったのに……。
いや、ユキちゃんがお姉ちゃんだったら、お兄ちゃんも私も苦しんでいなかっただろう。
「うん、いつか、話すね。お姉ちゃん、ありがとう」
私は“清掃”スキルを使って後始末してから、お兄ちゃんたちの元へと戻った。
……
ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん!
お兄ちゃんはクロちゃんに激しく腰を打ちつけている。もう、終わりが近いのだろう。
クロちゃんは涙を浮かべながら、お兄ちゃんを見つめている。幸せそうで、羨ましい。
隣のユキちゃんの顔が曇る。なぜ? 私は不思議だった。
「クロ、もう限界だ!」
「カオル、赤ちゃんちょうだい!」
クロちゃんは叫んでお兄ちゃんにしがみ付く。いつものセリフを聞いたお兄ちゃんの動きが止まった。
クロちゃんの頭の上で激しく動いていたリボンがふわりと揺れて、止まる。
「熱い! カオル、愛してる!」
クロちゃんの一番奥で、お兄ちゃんは射精したのだろう。クロちゃんはギュッと目を瞑り、涙を流していた。
ピクピク震えていた脚が、徐々におとなしくなる。
羨ましいなと思いながら、アサヒとカオリを取り出した。
私は電光掲示板を見る。その表示は“2/3”から“3/3”に変わった。
ファンファーレが鳴って、変な音楽がどこからか流れてきた。
壁が割れる。もう、慣れっこだ。
壁の向こうに、炎に包まれた赤い鳥が見えて、熱波が私たちを襲う。
隣で身構えるユキちゃんの瞳が赤く染まる……。
お兄ちゃんも身構える。
クロちゃんは……ダメだ。お股を広げたまま、あっちの世界に旅立っている……。
オマンコから、お兄ちゃんの精子が垂れていた。いますぐ舐め取りたいのを我慢して、私はカオリとアスカを握り締めた。
目の前の鳥と、音楽が煩い……。
───
漸く、ユキちゃんが、鳥の首をはねた。
これまではユキちゃんが瞬殺していたけど、今回は宙を飛び回っていたため、少し時間が掛かった。
「クロちゃん、ありがとう」
クロちゃんは盾を構えて、私やお兄ちゃんを鳥の炎から守ってくれた。
相変わらず、私は何の役にもたてなかった。それが、悔しい……。アサヒをギュッと握る。
「ッ!!」
私の前に立つクロちゃんがフラフラと身体を揺らし、その場で倒れた。
「クロちゃん!! どうしたの!?」
クロちゃんは苦悶の表情を浮かべながら、お腹を押さえて苦しんでいた。
胸騒ぎが、する……。