※この作品はR-18です。

お兄ちゃんの子供が欲しい妹とそうでもない兄   作:猫見サイル

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84 躾は大事です

 彼はゆっくり優しく、私を愛してくれている。

 私はもう少し激し目が好きだけど、これはこれでいい。

 今の私はクロ。これで十分だ。

 

 私は恥じらいつつも、彼を求める。そう、演技する。

 クロは純粋、控えめ。それでいて、時には大胆。カオルを愛してやまない女。

 カオルへの愛情は私と同等だろう。カオルのためなら、躊躇なく平気で死ねる。

 そんなクロを完璧に演じる。

 

 身体的な差は無いはずだ。クロの身体は入念に調べて、トレースしている。

 念のために、普通なら使わない方の穴も……。

 彼が、クロの嫌がる事をするとは思えないけど、私は念には念を入れて挑んだ。

 

 この行為は私が気持ちよくなるためのものではない。

 彼を安心させるための、行為。

 

 私に快感は要らない。なのに……。

 

「カオル……愛してる」

 

 快感がとめどなく押し寄せる。

 

 自然と声が出てしまう。

 彼にしがみ付き、背中に爪を立ててしまう。

 

 つい、素の自分が出そうになる……。

 

 懸命に自分を抑えながら、私はクロを演じ続ける。

 彼は彼女の名前を呼びながら、私(クロ)を抱く。

 顔は歪んでいた。そろそろ、限界なのかもしれない……。

 

 私はまだまだ余裕があるけど、クロならそろそろかもしれない……。

 

 カオル、あなたのクロはそろそろ限界だよ……。

 

 私は涙を流しながら、彼に懇願する。

 

「カオル、もうダメ……」

 

 私(クロ)の、言葉を聞いた彼の動きが早まる。

 クロならここで殺し文句を言うだろう。大胆なクロの番だ。

 

「私、カオルの赤ちゃんが欲しいの……一番奥に射精(だ)して……」

 

 彼の動きが止まり、彼の愛が私の身体の奥深くに注がれる……。

 私は短く、叫ぶ。

 熱い、彼の遺伝子情報が私の遺伝子を求めている。

 

 脱力した彼が私にもたれかかる。

 その重みすらも愛おしい……。

 

 彼を抱きしめ、頭をそっと撫でようとするけど、必死で耐えた。

 クロはこんな事、しない。

 

「カオル……赤ちゃんの素をありがとう」

 

 私はそっと彼にキスした……。

 

 ……

 

 彼の腕を枕にしながら、私は彼の胸に手を置いて、余韻を楽しんでいた。

 彼の体温が、冷たい私の身体を温める……。

 

「カオル、すごく気持ちよかったよ……」

「俺も、気持ちよかった……それよりクロ、身体は大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ……心配かけてごめんなさい」

 

 クロの身体を気遣ってくれる、彼の言葉が嬉しいし、妬ける。

 でも、彼はすっかり元気を取り戻したようだ。その顔は明るく、穏やかだ。

 クロに成りすました甲斐があった。私の目的は果たせた。そう、確信する。

 

「カオル、私、そろそろ戻るね。ユキが心配しているから……」

 

 ベッドを降りようとする私を、彼が腕を掴んで引き止める。

 

「クロ、行かないでくれ……朝まで一緒に寝よう」

 

 彼の言葉に、私は泣きそうになるのを必死に堪える。

 

(私だって、朝までカオルと一緒に居たいよ……)

 

「カオル、ごめんなさい……。私が戻らないとユキが心配するから……私、ユキに心配かけたくないの」

 

「そう、か……」

 

 彼の失望した様子を見て心が痛むが、この点については譲れない。

 

「なら、せめて俺が眠るまで、傍に居てくれないか?」

 

 少し考えて私はクロとして答えた。

 

「カオル……少しだけ、だよ?」

 

 もう一度、彼の腕を枕にして、彼の体温を感じていた。

 

(ずっと、こうしていたい……。カオル、離れたくないよ…………)

 

 ……

 

 数分後、寝息を立てている彼の頬に軽くキスをした。

 

(カオル、騙してごめんなさい。でも、私はカオルが悲しむのは耐えられないの……許して)

 

 私はソファーに綺麗に畳んで置いてあるチャイナドレスを手に取り、寝室の扉を開けた。

 

(おやすみなさい……)

 

 そのまま寝室を出て、クロとヒナちゃんが待つ寝室へと歩みを進めた。

 

 もう、2人とも寝ているかもしれないので扉を静かにノックする。

 返事は無い。

 

 出る前に鍵を掛けるよう念を押したので、鍵が掛かっているだろうが問題ない。

 私は“解錠”スキルを使って、難なく扉を開けると、部屋の中から嬌声が聴こえる。

 

 ベッドの上には身体をよじるクロと、その上に跨っているヒナちゃんの裸の背中が見えた。

 

 私は静かに扉を閉めて、ベッドに近寄る。

 

「何を、しているの?」

 

 私の声にビクッと2人の動きが止まる。

 

「ユキちゃん!? 違うの! これは!!」

「違う? 何が違うの? 私にわかるように説明してちょうだい!」

 

 慌てるヒナちゃんを尻目に、私は左手薬指から指輪を抜き取り、クロに渡す。

 頭のリボンを解いて、クロの頭にリボンを結び、優しく頭を撫でた。

 

「クロ、リボンをありがとうね。このリボンは、あなたが一番似合っているわ……。それに、カオルはあなたを本当に愛しているのよ……」

 

 クロは頬を赤く染めながら、私に指輪を返す。

 

「ユキ、カオルは大丈夫だった?」

「ええ、大丈夫よ。すっかり元気になったわ。クロと朝まで一緒に寝たいって。私、ユキとしてカオルの元に戻ろうかしら?」

「えっ!? ずるいよ!」

 

 クロが頬を膨らます。その姿が可愛い。

 

 そしてヒナちゃんを睨みつける。

 

「で、何が違うのかしら? ヒナ?」

「あ~、え~と、ユキちゃん?」

 

 狼狽えるヒナちゃんも可愛い。少しだけ意地悪して正解だったようだ。

 

 ……

 

「私に甘えたくて、部屋に来たら、部屋に居たのはクロ。落ち込んでいたから慰めたら、盛り上がって……そういう事?」

 

「……うん。だって、リボンの無い、裸のクロちゃんはユキちゃんにしか見えないよ?」

 

「それはそうだけど、ヒナ、これって浮気ではないの?」

 

「クロちゃんはユキちゃん自身だし、ユキちゃん自身とエッチな事しても浮気にはならない……よね?」

 

「疑問形で答えられても困るわよ……」

 

 ヒナちゃんが黙る。面白いので、もう少し意地悪してみる。

 

「なら、こうしましょう。ヒナ、あなたはクロを愛しなさい。クロは私自身なんでしょ? 私との関係は解消よ! 私は、カオル一筋で生きていくわ!」

 

「それは絶対にダメ!!」

 

 ヒナちゃんが叫び、私は少し驚く。

 顔を上げたヒナちゃんは瞳に涙を溜めながら、私を睨みつける。

 

「いくらお兄ちゃんでも、ユキちゃんを独占するなんて、ヒナは許せない! ユキちゃんはお兄ちゃんのものでもあるけど、ヒナのものでもあるの! もしも、お兄ちゃんがユキちゃんを独占するなら……」

 

 ヒナちゃんのあまりの剣幕に、私は唾を飲み込む……。

 

「……独占するなら?」

 

「お兄ちゃんに決闘を申し込んで、ボコボコにしてユキちゃんを取り返す!」

 

 ヒナちゃんは目を閉じて静かに言った。

 

 しばらく沈黙が流れた後、私は噴き出した。クロもだ。

 

「ちょっと!? なんで笑っているの? ヒナは真剣だよ!?」

 

 ヒナちゃんが顔を真っ赤にしている。

 私はそっとヒナちゃんの傍にいき頭を撫でた。

 

「わかった。でも、私のために争わないでよ」

 

「それは、ユキちゃん次第だよ? ユキちゃんが私とお兄ちゃんに二股掛けていてくれる限り、私はお兄ちゃんをボコボコにしないで済むよ?」

 

「はいはい、わかったわ……」

 

 ヒナちゃんは私の胸に頬ずりしながら気持ちよさそうに目を閉じていた。

 まるで、猫みたいだ……。愛猫のみぃちゃんを思い出す。

 

 そんな私を見つめながら、クロは心配そうに私に言う。

 

「ユキ……私の赤ちゃんが消えて、泣いていたのをヒナが慰めてくれたのは本当だよ? だからヒナを許してあげて……」

 

 クロの真剣な顔に私も応える。

 

「しょうがないわね。クロに免じて、ヒナちゃん、許すわ。……それから、クロを慰めてくれてありがとう。これからもクロの事、よろしくね。ピアス、付けてくれるかしら?」

 

 私の言葉を聞くと、ヒナちゃんの目が開き、ぱぁっと輝く。

 そのまま、私たち3人でベッドの上で乳繰り合った……。

 

 ───

 

「お兄ちゃん、お店に行こうよ。ペロも貯まってきたし」

「そうね。そうしましょう」

「うん、カオル、いいよね?」

「……」

 

 妻たちの仲がいい。

 いや、元から仲は良かったが、より、仲が良くなったというか、絆が深まったというか……。

 まぁ、妻同士、仲がいいのは良い事なので何も言わないが、時折、3人で楽しそうに会話が盛り上がっているのを見ると、少しだけ疎外感がある。

 俗に言う、パパだけ除け者にされる気持ちってこんな感じなのだろうか?

 

 現在、俺たちは塔45階に居る。

 部屋の中央には相変わらずミカが居て、何か言っているが俺たちは無視する。

 アイツは意味深な事を言うだけで、こちらが知りたい事は何も答えない、ただのノイズだ。

 俺たちはもう、学習済みだ。

 

 正面、ミカの奥にある階段のほか、左右の壁に扉がある。

 右手の扉には商店、左手の扉にはPUBとそれぞれ扉の上にネオンが輝いていた。

 

 妻たちは躊躇する事なく、商店の扉へと進む。

 ユキが扉を調べ、無言で頷く。罠は無いようだ。

 

 俺は扉を開けた……。

 

 ……

 

「お兄ちゃん、正解だったでしょ?」

「……そうだな」

 

 ヒナはあの大量にあったペロの8割を換金アイテムに変えていた。

 革袋にして、20袋分だ。

 ようやく、あのラビットボーンの革袋を捨てられて、俺はせいせいしていた。

 

「これからどうする? 50階を目指すか?」

 

 俺の言葉に3人の妻は、お互い顔を見合わせた。

 

「今日はもう、この階で泊まりましょう。PUBに行ってみたいわ」

「賛成! クロちゃんもいいよね?」

「うん、カオルも、いいよね?」

「……」

 

 今朝からずっと、この調子だ。

 ヒナかユキが提案し、どちらかが肯定し、クロが俺に形式上の確認を取る。

 PUBへの扉が近づくと、俺は念のため股間を見た。生存本能(チンコレーダー)は発動していない。

 危険は無いようだ

 

 罠が無い事を確認し、俺たちはPUBに入った……。

 

 ───

 

 店内は騒がしく、世紀末的な衣装を纏ったゴロツキ達でごった返す、とても上品な場所だった。

 

 店の入り口に立つ俺たちに店中から奇異の目が向けられる。

 

(ユキ……)

(ええ、任せて……)

 

 ユキにアイコンタクトを送り、俺たちは空いているテーブルに腰かけた。

 

 口笛が聴こえた。

 

「すげぇデカ乳だな! おい! 嬢ちゃん、オレの女にならないか? 天国に行かせてやるぜ」

 

 隣のテーブルで眼帯を付けた髭面の男がニヤニヤしながらヒナの胸を凝視していた。

 “デカ乳”というフレーズに懐かしさを感じながら、俺はまたこのパターンかと力なく首を振る。

 

 隣のヒナはニッコリ笑って立ち上がり、男に近付く。

 

「ヒナに触りたい?」

 

 その言葉に周りの客が大盛り上がりだ。

 口笛と野次が飛ぶ。

 

「ああ、たっぷり可愛がってやるぜ」

「そう? どうぞ。優しくしてね♡」

 

 ヒナは顔を赤くしながら、スカートの裾をそっと持ち上げる。

 男はニヤついた顔でスカートに手を入れ……。

 

 身体が硬直したあと、白目を剥いて失神した。

 

(バカ! やり過ぎだ!)

 

 俺は目を掌で隠し、天を仰いだ。

 男が天国または地獄に行っていない事を祈る。

 

「ヒナの前で“天国”なんて言葉を出したら許さないよ! 次に言った人は地獄行きだよ!!」

 

 ヒナの言葉に店内は静まり返った。

 

「こっ! このやろ……」

 失神した男の仲間が立ち上がろうとするが、既にユキが背後に回り、喉元に短剣を押し付けられ、言葉を続ける事は無かった。

 

「動かないで! 先に仕掛けてきたのはそっちよ? それに、私たち3人は彼の妻なの。人の女に手を出したら、どうなるかくらいわかるでしょ?」

 

 ユキは冷たく、言い放った。

 

「いや、そんなの知らな……」

「知らない!? 彼女を見なさい。ウエディングドレスを着ているでしょ? それを見ても誰の物にもなっていない女だと思うのかしら? あなた達は知っていた。知っていて手を出したの!」

 

 そう言うと、ユキは何も見ずにテーブルに短剣を突き刺す。

 突き刺さったのは男の指と指の間だ。

 テーブルの男たちはビクリと身体を震わせた。ユキと話していた男は泡を吹いて失神していた。

 

 

「私たちは干渉されない限り、こちらから干渉する事は無いわ。その代わり、私たちにちょっかいを出すなら死を覚悟してちょうだい!」

 

 ユキはテーブルから短剣を引き抜き、ヒナと共に俺のテーブルに戻ってきた。

 失神した男がテーブルに突っ伏す鈍い音が響く。

 

「どうだった? お兄ちゃん?」

「やり過ぎだ! 大体、最初に胸を触られたらどうするんだ?」

「だいぶ前に“迎撃おっぱい”を取ったから、平気だよ?」

 

(えっ! そうなの!?)

 

 そうとも知らず俺は今までヒナの胸を無防備に触ったりしていたのか……恐ろしい。

 いつか、ヒナがスキルを切り忘れて、酷い目に遭うかもしれない……。冷や汗が出る。

 

「ちなみに、特定の相手はお兄ちゃん、ユキちゃん、クロちゃんを指定しているから、3人は触っても大丈夫だよ」

 

 俺の心を読んだかのようにヒナが付け加える。そういや、そんな仕様だったな……。

 そんな事を思っている俺の隣で、クロは尊敬の眼差しでヒナとユキを見ていた。

 

「すごいね! 2人ともかっこよかったよ! なんか、慣れてる?」

「クロちゃんは知らないけど、ビチクエルの街ではいつもこんな感じだったからね。だから、街ではクロちゃんも私たちも絡まれなかったでしょ? 街では相当名声を高めたからね」

 

 ヒナは胸を張ってクロに答えたが、高めたのは悪名だ。“……の花嫁”とか言われていたがもう、思い出せなかった。

 

 “ちょっかいを出されるなら、出されないように躾ければいい”

 

 これをモットーにだいぶ無茶していた頃が懐かしい……。

 

「次はクロちゃんもやってみる?」

「いいの!?」

 

 クロは声を弾ませ、キラキラと目を輝かせた。憧れでもあったのだろうか?

 

「ユキの真似をすればいいんだよね? 首をはねればいいのかな?」

「クロちゃん、それ、やり過ぎ……死んじゃう」

「クロ、あなた、何て事を言うのよ」

 

 クロの物騒な言葉に、ヒナとユキは引きつっている。周りの客も……。

 クロは人差し指を口元に当て、首を傾げた。

 

「それじゃあ、ヒナの真似をして、おっぱいを触ろうとする人の手首を切り落とす?」

「クロ……」

「なぁに? カオル?」

「クロは何もしなくていいよ。俺からのお願いだ」

「カオルのお願いじゃ仕方ないね……わかったよ」

 

 あからさまに残念そうな顔をしているので、優しく頭を撫でると、クロは嬉しそうに目を細めた。

 

 周囲の客たちはすっかり静まり返り、俺たちを見てくる者はいなかった。

 無事、躾は成功したようだ……。

 

 ───

 

「お兄ちゃん、そろそろ機嫌直してよ……」

「……」

 

 俺はヒナの言葉を無視して、無言で扉を開ける。目の前に広がる部屋は60階だ。

 部屋の真ん中に居るミカを無視して試練の部屋の扉へと向かう。

 

「カオル、わたs「ユキ、罠が無いか調べてくれ」……わかったわ」

 

 ユキの言葉を遮り、俺は目配せする。

 一瞬、躊躇してから、ユキは扉へ駆けた

 悲しそうな顔のユキに心が痛むが、堪える。

 

「お兄ちゃn「ユキ、罠は?」……」

「……無いわ」

 

 今にも泣きそうなヒナの顔を見ないようにしながら、俺は目の前の扉に集中した。

 股間を見た。生存本能(チンコレーダー)はビンビンだ。

 

「カオル……」

 

 オロオロするクロを見ると、胸が痛む。クロ、すまない……。

 

 今の俺たちの空気は最悪だ。俺は、機嫌が悪い。

 原因はわかっている。

 昨日、50階の試練の間が全て悪いのだ。

 

 俺はあの試練を用意した奴をぶん殴りたくてしょうがなかった……。

 

 扉を開け、部屋の電光掲示板の内容を確認する。

 

 電光掲示板には“3P”そのすぐ下には“0/1”と表示されていた……。

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