俺達は真っ白な空間から真っピンクな空間に移動してきたようだ。
「ここは?」
『ふぅ~やっと声が出せます。頭の中に語りかけるのは疲れるんですよね。ここは私の子宮です。敏感なので走ったり飛んだり跳ねたりしないでくださいね♡』
(……)
先程までとは違い、今度は普通に女神テンプレーの声が聞こえる。
『ではイきます。あん♡あんっ♡ああんっ♡』
ぷちゅんぷちゅんぷちゅん……という音と共に人ひとりが余裕で入れる大きさの球体が3つ俺達の方にふよふよ漂ってきた。
透明な膜につつまれていて、中心は綺麗なピンク色だった。
「……これは?」
『私の卵です♡まだ触らないでくださいね♡』
(イヤな予感がするな……)
『これから皆さんには私の卵の中に入って職業、スキル、耐性を選択していただきます。種族も選べますが人間のままでよいでしょう。性格はお好きなものを選んでよいです。詳しくは卵の中で簡易マニュアルを見てください』
(そんなことだと思ったよ……。入るのか……コレに……)
「ひな、ユキ。ちょっと話さないか?」
「うん、いいよお兄ちゃん」
「いいわ」
───
俺たちは今お互いの裸が見えないよう、背を向けあい体育座りしている。
(さて……、少し恥ずかしいが2人に秘密を話すか……)
「ひな、ユキ。俺は2人に隠していたことがあるんだ……」
「「えっ!?」」
「お兄ちゃん、ひなに何を隠してたの?」
「俺、実は……アニメやラノベが好きで、こういう状況での対処法なんとなくわかるんだ。……その……こういう時はこうしようとか、何度もシミュレーションしてたから…………」
「知ってたよ?」
「ええ、頼りにしてるわ」
「えっ!?」
(何故2人とも俺の秘密を知っているんだ……?)
「そ、そうか。なら話は早い。これからの事について相談したい。3人でテキトーに職業を選ぶとこの先苦労すると思うんだ。例えば3人とも戦士とかだと誰も魔法を使えないし、逆に3人とも魔法職だと前衛がいない中戦う事になる」
「……なるほど。3人そろってバランスが良くなるよう職業を選択するべきね」
「ユキの言う通りだ。俺は……勇者を選択するつもりだ。万能型で前衛も可能だし、魔法も使える……はずだ。前衛も魔法も専門職には劣るが、何とかなるだろう」
「わかったわ。私は支援職を選択するわ。例えば盗賊とか? この先の世界がどんな世界かわからないけど、罠とかがあると厄介だもの……」
「ユキはそれで頼む。ひなは俺達をサポートする後衛の魔法職をお願いしたい。攻撃魔法、治癒魔法あるいは他の魔法もあるかもしれない。どの魔法職になるかはひなに任せる」
「お兄ちゃん、まかせて」
(ひなに近接戦闘とかしてほしくないからな……。すんなり納得してくれたようでよかった)
「それじゃ、やるか」
「お兄ちゃん、ちょっと待って。ひな、ユキちゃんと話したい事があるんだけど、女の子同士の秘密の話だからお兄ちゃん……。少し離れててくれないかな?」
「? わかった」
俺は立ち上がり、2人の声が聞こえない位置まで歩いていった。
───
ひなちゃんが私に近づいてくる気配がする……。
(ひなちゃん、私に話ってなんだろう?)
「ひゃっ!?」
思わず声を出してしまった。
ひなちゃんが私の背中に自分の背中をくっつけて体育座りしたようだ。
女の子同士とはいえ、裸で背中を合わせた事なんて無かったので、少し恥ずかしい。
(カオルともこうしてみたいな……)
ひなちゃんは少し小声でとんでもない言葉を投げかけてきた。
「ユキちゃん、ユキちゃんて男性経験あるの?」
「!!」
(なっ! 何てこと聞くのよ!)
「ユキちゃん、お願い。答えてくれないかな?」
「……な、無いわよ」
「……やっぱりね」
ひなちゃんが何故そんな事を聞いてくるのか理解できなかった……。
(私はファーストキスだって今日カオルと初めてしたんだからね!)
「ユキちゃん、ユキちゃんの好きな人ってお兄ちゃんでしょ?」
「……ええ、そうよ。さっき女神に答えた通り、私はカオルの事が好きよ」
「ユキちゃん、さっきのユキちゃんへの女神の質問は……ユキちゃんの“バージンを奪ったのは誰? ”だったよ?」
「えっ!?」
……今、ひなちゃんなんて言った?
「もう一回言ってくれないかしら?」
「バージンを奪ったのは誰……だよ?」
(好きな人は誰? って聞かれると思ったからカオルと答えた。実際にはバージンを奪ったのは誰? と聞かれてカオルと答えた……)
言葉を理解し、顔が紅潮してくるのがわかった……。
(私、なんて事を口走ってしまったのよ~~!!)
───
前々から怪しいとは思ってたけど、ユキちゃんやっぱりお兄ちゃんの事が好きだったんだね。
(ユキちゃんのこと大好きだから応援したいところだけど、お兄ちゃんだけは渡さないよ?)
「ひなちゃん、私、カオル君にどう接すればいいの?」
「ユキちゃん、落ち着いて……。たぶんだけど、お兄ちゃん、勘違いしていると思う。きっとユキちゃんの彼氏の名前が“カオル”だと思ってるんじゃないかな?」
「えっ!?」
「という事は、カオル君は私がカオル君以外の男性と経験済って思ってるの?」
「たぶんね。でも、その方が都合がいいんじゃないかな?」
「どういうこと?」
「ユキちゃん、この世界に来た時にあんあん言ってたの覚えてる?」
「……お、覚えてるわよっ!」
「お兄ちゃんの名前叫びながら、オモチャでアヘアヘしてたよね? お兄ちゃん、清楚な女の子が好みだから、ユキちゃんがあんなことしてるって知ったら避けられるかもよ?」
(嘘ついてごめんね。ユキちゃん。お兄ちゃんはおっぱいが大きくてエッチな女の子が好きなんだよ)
「えっ!? それは困るわっ!!」
「でしょ? 私にいい考えがあるんだ」
「……いい考え?」
「うん。ユキちゃん、元の世界で彼氏とエッチ中だった事にするの。そうだな~。彼氏にお願いされて断れなくて、エッチな事言わされてアヘアヘしてた……とかでどうかな? 彼氏の方はユキちゃんのいやらしい姿を見ながら、自分でしてたとか……」
「な、なるほど? でも、その後襲ってしまったのはどうするの?」
「お兄ちゃんを襲ったのは、彼氏に“イッたあと、ユキの方から俺を襲ってほしい”ってお願いされてたことにしてさ、ユキちゃんは恥ずかしいけどいやらしいこと言いながら襲ったの。イッた時の涙で目がよく見えなくて彼氏と勘違いした……。これなら、彼氏からのエッチなお願いを断れない清楚な女の子で通せると思う」
「た、確かに……」
「それに、これから堂々とお兄ちゃんの名前を呼べるようになるでしょ? またアヘアヘした時は、遠慮なくお兄ちゃんの名前叫んでいいよ。彼氏の名前ってことにすればいいんだし……。想像力豊かなユキちゃんとしては魅力的じゃない?」
「……そ、そうね」
「あとさ、ユキちゃん、好きな人は? って聞かれてお兄ちゃんって答えるのはダメだよ? あんなの告白と一緒でしょ? 約束覚えてるよね?」
「そ、そうだったわね。ひなちゃん、謝るわ」
「まだ元の世界では今日は終わってないんだからね。今回は未遂だからいいけど、ひなとの約束は絶対守ってよ。破ったら……いくらゆきちゃんでもひな許さないからね」
「ええ、もうこんな失敗は犯さないわ。私はひなちゃんとの約束は絶対守るわ!」
「ユキちゃん大好き!」
いつもならここでユキちゃんに抱きつくところだが、今は裸なのでやめておいた……。
(おっと忘れるところだった)
「ユキちゃん、ひな、ユキちゃんのオモチャに付いてた名札を……」
「見たのっ?」
「……ごめんなさい。見ちゃった」
「こ、この事は……」
「わかってる。貸し1だよ」
私はニッコリ微笑んだ。
───
ひなから話が終わったと聞き、俺はひな達のもとに戻った。
今、俺達はお互いに背を向けて立っている。
3人の目の前には女神の卵がそれぞれ1つずつふよふよ浮いている……。
『それでは皆さん、卵に入ってください。最初はびっくりするかもしれませんがすぐに慣れますよ』
俺はおそるおそる目の前の卵に手を伸ばす。
透明な膜は思ったより抵抗がなく、容易にその先にあるピンクの球体に触れそうだ。
ピンクの球体に触った瞬間、ものすごい吸引力で球体内に吸い込まれた……。