恋人たちのコテージに帰ると、ユキちゃんは妊娠検査薬である金魚鉢を持ってお兄ちゃんの眠る寝室に入っていった。
私がもう一つの寝室に1人でいると、ノックと共にクロちゃんが入って来る。
「クロちゃん! お兄ちゃんは!?」
「今は落ち着いて寝ているよ」
クロちゃんの言葉に私は安堵する。
クロちゃんはニコニコしている。機嫌が良さそうだ。
そんなクロちゃんの口の横に何かついている。
「クロちゃん、口に何かついているよ?」
クロちゃんの口の横を指で拭うと、指先に赤い液体がついていた。
(何これ?)
はむっ♪
クロちゃんが私の指を咥えて、舌で指を舐る。
クロちゃんの瞳がみるみる潤んで頬を赤く染める。
「クロちゃん!?」
ちゅぱちゅぱ……。
部屋の中に私の指をしゃぶる音が響く……。
……
「ヒナ、さっきはごめんね……」
しばらく私の指をしゃぶり続けたクロちゃんは恥ずかしそうに頭を下げた。
「いいけど、あれ、何だったの?」
「あ~、あれね……カオルの血だよ」
そう言うと、クロちゃんは私から視線を逸らす。その顔は真っ赤だった。
「お兄ちゃんの血?」
「うん……カオルの処女を捧げた時の血だよ」
「クロちゃん、お兄ちゃんのオマンコ、そんなにひどいの?」
「そうだね。でも、だいぶ出血量は減ってきたよ?」
クロちゃんはあっけらかんと答える。お兄ちゃんが心配ではないのだろうか?
そんな私の思考に気付いたのか、クロちゃんは言葉を続ける。
「ヒナ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ? 今日は無理だけど、明日になったらカオルの中級治癒でよくなると思うよ?」
なるほど。少し、安心した。
ついでなので、気になっていた事も聞いてみる。
「クロちゃん、お兄ちゃんは妊娠しているかもしれないの。どう思う?」
「えっ!?」
クロちゃんは顎に手を当て、目を閉じる。
「……クロちゃん?」
しばらく待って、私はクロちゃんに声をかける。
その瞬間、クロちゃんの目が開く。
「ヒナとカオルの赤ちゃんに会えるの!? 最高だよ!!」
その瞳は輝いている……。
「いや! まだ妊娠しているかわからないよ!? それに……」
「それに?」
私は言葉を続けようとしたけど、クロちゃんの嬉しそうな表情を見て、やめた。
「ううん、なんでもないよ」
早く会いたいと言いながら、クロちゃんは浮かれている。
そんなクロちゃんを見ながら、私は考える。
これからの事を考えると、妊娠していない方がいいだろう。
身重の身体でこの塔を登るのは危険過ぎるし、この塔を出ても旅は続くかもしれない。
でも、もし妊娠していたら?
私とお兄ちゃんの遺伝子を受け継いだ子供が、お兄ちゃんのお腹の中にいるのを想像して、胸が熱くなる。
私はもうすぐ死ぬから会う事はできないし、父親のいない子供になってしまうのは申し訳ないけど、ユキちゃんとクロちゃんが父親代わりになってくれるだろう。
……この命が、私の代わりに3人と未来を歩いてくれる。そんな気がした。
そんな事を考えていると、ユキちゃんが来て、クロちゃんを連れて行ってしまった。
1人になった私はベッドに横たわる。
今日は疲れたし、体調も万全とはいえない。
目を閉じて、そのまま意識を手放した。
───
「ヒナ! ダメ! 死なないで!!」
私の身体に跨って、お兄ちゃんが泣きながら腰を振っていた。
お兄ちゃんの熱くて柔らかいオマンコが、私のオチンチンを擦り上げている。
首にはユキちゃんが牙を突き立て、私の血を吸っている。
「ヒナちゃん、あなたは私の中で永遠に生き続けるのよ」
声が震えている。泣いているようだ。
とても痛いはずなのに、何も感じない。
左手首にはクロちゃんが噛みついていてこちらも泣いている。
「ヒナ! 赤ちゃんをちょうだい!!」
お兄ちゃんの言葉に、オチンチンがムクムク膨らむ。
『準備完了。発射します』
頭の中で声が聴こえて、私は最後の力を振り絞った……。
……
「きゃっ!」
自分の顔に熱い雫が降り注ぎ、目が覚めた。
手で触った感触、ヌルヌルしている。そして、この独特の匂い、精子だった。
目を開けると、精子まみれのクロちゃんが私を見つめていた。
(クロちゃん?)
顔を起こして自分の下半身を見ると、ズボンとパンツが膝まで下げられていて、オチンチンがビクンビクンと痙攣していた。
また、夢精してしまったようだ。
「ヒナ、ごめんね。窮屈で苦しそうだったから……」
どうやら、下半身を丸出しにした犯人はクロちゃんのようだ。
自分の身体に清掃をかけていると、ユキちゃんが寝室に入ってきた。
私は急いで股間を隠し、クロちゃんは精子まみれのまま苦笑いしている。
そんな私たちを見て、ユキちゃんは固まっていた。
「何があったの?」
また夢精してしまった事を話すと、ユキちゃんはコンソールを開き、困った顔をしている。
「発情LV3だわ。ヒナちゃん、試練の間であれだけ射精したのに、もう性欲が溜まっているの?」
私はユキちゃんのコンソールを覗き込み、指さす。
「たぶん、これのせい……」
私の職業は“女勇者の花婿(絶倫)”に変わっていた。
「もしかして……」
「うん、これのせいだと思うよ」
私が股間を指差すと、ユキちゃんは頬を染める。
「私が処理してあげたいけど、無理ね。明日になったらカオルに処理して貰って。ヒナちゃん、それまで我慢できる?」
「うん。我慢するしかないもんね……」
それからお兄ちゃんの妊娠検査の結果を聞いた。
結果は陰性。私は安堵すると共に、少し残念だった。
お兄ちゃんに私の子供を産んで欲しかった。
もうすぐ死ぬ私の代わりに、私の子供はお兄ちゃんたちと共に人生を歩んでほしかった。
そんな事を考えていると、ユキちゃんの表情が沈んでいる事に気が付く。
「ユキちゃん、何かあった?」
「カオルは妊娠はしていないけど、排卵中なの。できるだけ、精子は掻き出したし、吸い出したけど、まだ安心できないのよ……明日、また検査するわ」
そして、今日はユキちゃんと一緒に寝る事になり、クロちゃんはお兄ちゃんの寝ている寝室に向かった……。
───
頭を撫でられる感触で目が覚めた。
まぶたを開け、隣を見るとそこにはクロがいた。微笑んでいる。
俺に気付くと、クロはためらいがちに顔を近づけてきた。
そっと触れた唇。優しく、柔らかな感触。それはすぐに離れていく。
目の前にはクロの顔──その頬は微かに紅がさしていて、潤んだ瞳はまっすぐ俺を見つめていた。
綺麗だと思った。このまま、クロと愛し合いたいし、実際そうなるのだろう……そう思った。
「あっ♡」
クロを抱きしめるとクロは短く声をあげる。
そこで違和感に気付く。
いつもなら、こうして抱きしめた際に股間に感じるクロのしなやかな身体。
それが感じられない。
不思議に思い、俺は股間に手をやる。
だが──そこにあるべきものが、無かった。
(……え?)
一瞬、現実を理解しきれず、混乱する。
そして、指先が何かに触れた。
柔らかく、腫れたような感触。
その瞬間、鋭い痛みが腹の奥から突き上げてきた。
「あっ……! がっ……!」
一瞬、呼吸が止まる。叫びも、言葉も出ない。
耐え難い痛みと混乱で、頭の中が真っ白になり、涙が溢れる。
「カオル!」
クロの声が聞こえる。
気が付けば、クロが俺の身体を包み込んでいた。
「カオル、落ち着いて……ゆっくり深呼吸して……」
クロの言葉に従い、深呼吸すると、幾分か痛みが落ち着いてきた。
「ちゃんと説明するから……2人を呼んでくるからもう少し我慢してね」
クロは抱擁を解くと、寝室を出ていく。
俺は痛みに耐えながら、3人を待った……。
……
「……ダメ……だ。……起き上がれない」
痛みを堪えながら俺は背中をベッドに預ける。
俺の言葉に目の前にいる男が両手で顔を覆う。男になったヒナだった。
「お兄ちゃん、ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいよ。明日、また治癒魔法を使えば何とかなりそうだ……」
ヒナの野太い声に、返す俺の声は1オクターブ高くなっていて、それがどこか可笑しかった。
ユキの指示通りに中級治癒をかけたが、もう今日の分は使い切ってしまった。
最初から股間を優先した方がいいのでは? と俺はユキに訴えたが、痛々しい俺の顔と身体を見るのが忍びないらしく、顔、身体の順に中級治癒を使うよう3人に泣きつかれてしまい、今に至る。
特にヒナだ。
俺の顔を見た途端、筋肉隆々のその身体を震わせて、ヒナは本気で泣き出した。
涙と鼻水を垂らしながら、ゴリラみたいな肩を揺らすその様子は──異様な光景だった。
「ユキ、これからどうする?」
「カオルが動けないから、今日はここで一泊──いえ、明日も中級治癒を使うから、万全を期すなら二泊するわね。それと……妊娠している可能性があるから後で検査しましょう。昨日は陰性だったけど、カオルは今、排卵中なの」
「そうか……」
肩をすくめて笑ってみせたが、唇の端は震えていた。
男でなくなったこと。妹に襲われたこと。
そして──身体の奥に“新しい命”が宿っているかもしれないという現実。
正直、まだ少し混乱している。頭が追い付かない。
この二泊のあいだに、気持ちの整理ができればいいが……。
……
ユキとクロは妊娠検査薬を買いに行ったため、寝室には俺とヒナの二人きり。
呆然と立ちつくしていたヒナは、今は俺の隣で横になっている。
「体調はどうだ?」
「うんっ……大丈夫、だと思う」
「そうか、よかったよ」
ヒナの顔を見る。頬は少し赤い。きっと恥ずかしさのせいだろう。
でも、元気そうで本当によかった。
「女の子の身体になった気分は……どう?」
「不思議な感じだよ。ヒナは、今の俺をどう思う?」
ヒナは俺を見つめる。少し、気恥ずかしい。
「髪型のせいでぱっと見は男の子に見えるけど……ボーイッシュでとてもかわいい女の子だよ」
俺は照れくさくて、ヒナから目を逸らした。
「おっぱいは、もう少し大きい方がヒナは好きだな。お兄ちゃんは貧乳だったね」
ヒナが冗談っぽく笑う。
そういえば、ヒナは昔から巨乳に憧れていたっけ。
確かに今の俺の胸は元の世界のヒナよりも小さい。
男だった頃なら笑って流せていたが、今はどうにも少し引っかかる。
「大きければいいってもんじゃないぞ?」
そう返すとヒナがにやりと笑う。
「そんなこと言って、お兄ちゃんはおっぱいが大きい女の子が好きじゃん」
確かに昔の俺はそうだった。
でも今は──もう違う。
「昔はな……今は違うよ」
「えっ! そうなの!?」
ヒナが目を丸くして声を上げる。その反応が可笑しくて、俺は心の中でそっとほくそ笑んだ。
「胸の大きさなんか関係ないよ。大きくても、小さくても、ヒナはヒナだ。俺の……愛する人のままだよ。例え、性別が変わってもな……」
ヒナの目が一瞬、大きく見開かれた。
そして、ほんのり染まっていた頬の色が濃くなり、視線が揺れる。
「お兄ちゃん……ズルい。そんな事を言われたら、エッチしたくなっちゃうじゃん。エッチしたらダメなのに……」
ヒナが小さく呟く……。
その声は恥じらいと、抑えきれない想いが滲んでいる。
俺はそっと手を動かすスピードを速める。
ヒナの息がだんだん荒くなってきた。
「ヒナ、今はダメだから、これで我慢してくれ」
手の中でヒナの性器が固く、熱く、大きくなる。
「お兄ちゃん……あと20秒で
性器がビクビク震え始めた。
「いいよ。そのままイッて」
随分具体的な秒数だなと思いながら、俺は両手でヒナの性器をしごき続けた。
ヒナはカオリを取り出し、性器の先端にあてがう。
「イッちゃう!
びゅるるるるるるるる……
カオリに収まりきらなかった精子が、鍛え抜かれたヒナの腹筋と、俺の手を汚す。
熱い……。
「ハァ……ハァ……」
ヒナの荒い呼吸が室内に響いていた……。
……
「お兄ちゃん……もう、ヒナの精子残量はゼロみたい……」
その言葉を聞いた俺はヒナ自身から手を離す。
ヒナは俺、自分、ベッドの順に清掃をかけ始める。
俺は上着を羽織る。ヒナの性欲処理をサポートするため、上半身は裸だった。
「お兄ちゃん、ありがとう……」
ヒナの傍らにはカオリと8個の精石が転がっていた。
「ヒナ、その精石をどうするつもりなんだ?」
「これ? クロちゃんにお願いされて作ったんだけど、何に使うかはヒナ、知らないよ?」
クロか……嫌な予感を振り払い、俺はヒナに添い寝して、目を閉じた……。
「ねぇ、お兄ちゃん、もしも赤ちゃんが出来ていたら……」
ヒナの声は震えている。俺は目を閉じたまま、優しくヒナの頭を撫でる。
「産むよ。ヒナ、男の子と女の子の名前を決めておけよ。ヒナがいなくても、俺とユキたちで立派に育てるからな……」
しばらくして、ヒナのすすり泣く声が聞こえる。
「お父さんになるのかもしれないのに、泣き虫だな……」
俺はヒナが泣き止むまで、そっと抱き締めて、髪の無い頭を撫で続けた……。
───
私は今、寝室のベッドに一人で横たわっている。
お兄ちゃんは妊娠検査薬を買って帰ってきたユキちゃん、クロちゃんと共にお風呂場だ。
今頃、妊娠検査中だろう。
耳を澄ませても、浴室からは何の音も聞こえない。
思えば、最初の妊娠検査──私とユキちゃんがした時は大騒ぎだった。
そんなに前の出来事でもないのに、懐かしい思い出だ。
あの時の騒動を思い出して私は噴き出し、しばらく一人きりで笑った。
──けれど、すぐに笑みは消えていった。また部屋内が静寂に包まれる。
この静けさが、私は怖い。
どれだけ謝っても、許されないこと、それは分かっている。
だけど、お兄ちゃんは……あの人は、それでも私を抱きしめてくれた。
『産むよ』
その言葉が、頭から離れない。
私のために女の子の身体になって、ボロボロになって、それでも命を……。
私を責めるどころか、私が生きた証を未来に残そうとしてくれている。
(あっ!?)
そこで、気が付いた。──クロちゃんが私に精石を作らせたこと。
今回、妊娠していなくても、精石があればお兄ちゃんは私の赤ちゃんを妊娠する事ができる。
そのために、クロちゃんは私に精石を作らせたんだ……。点と点が繋がった。
「クロちゃん、ありがとう。私はもう死ぬけど、いつか、お兄ちゃんにヒナの赤ちゃんを産ませてね」
私は思わず、小さく呟いた。
『マスターは現在精子残量が3%な事を除けば健康体です。不慮の事故等を除けば60日以内に死亡する確率は0.00001%と断言できます』
頭の中で声が響き、私は跳び起きる。
(何!? 誰!?)
私は釘バットを取り出し、握り締める。
「誰!? どこに居るの?」
『マスター、ようやく、我々との対話に応じてくれましたね……』
またも頭の中で声が響く。私はバットを両手で握り締めて、敵を探す……。
(まずい……今の私は1人きりだ。これが精神攻撃だったら……)
お兄ちゃん達に襲い掛かる、錯乱した私の姿が脳裏に浮かび、私の身体は震えだす。
『いいえ、マスター、これは精神攻撃ではありません』
思考が、読まれた……。
私は見えない敵に最大限の警戒を払い、お兄ちゃんたちに危害が及ばぬように敵を片付けようと決意する。
(お兄ちゃん達を危険に晒す事なんて許せない! 絶対にぶっ殺してやる!!)
バットを握る手に力を込めた……。