「はぁぁ~~…幸せな時間だったわぁ~♡」
ご機嫌な様子の二乃が、お風呂の中で僕の胸の中に収まっている。
「五月が毎日求めるのも納得ねぇ~♡」
「それはまた誤解を招く言い方だな」
思わず苦笑すると、二乃はくすくすと笑った。
「でも本当よ。こうしてると安心するもの」
そう言いながら、僕の腕に自分の手を重ねる。
湯気の立ち込める浴室。
聞こえるのは静かな湯の音だけ。
さっきまで賑やかだった時間が嘘みたいに穏やかだった。
「ねえ、和彦」
「ん?」
「私、ずっと焦ってたのかもしれない」
珍しく弱音にも似た声だった。
「焦ってた?」
「だって、五月も三玖も四葉も……みんな少しずつ前に進んでたから」
二乃は湯面を見つめながら続ける。
「置いていかれるのは嫌だったの」
その言葉に、僕は少しだけ腕に力を込めた。
「置いていくつもりなんてないよ」
「分かってる」
二乃は小さく笑う。
「分かってるんだけどね」
そう言って肩を預けてきた。
強気で負けず嫌い。
いつも前を向いているように見える二乃だけど、本当は誰よりも不安を抱えている。
そんなことを改めて感じた。
「でも今日は安心した」
「どうして?」
「だって」
二乃は振り返り、真っ直ぐ僕を見る。
その瞳は驚くほど優しかった。
「ちゃんと私を見てくれたから」
胸の奥が少しだけ熱くなる。
僕は答える代わりに、そっと二乃の頭を撫でた。
「ふふっ♪」
途端に機嫌が良くなる。
単純なのか、素直なのか。
多分、その両方だ。
「ねえ和彦」
「今度は何?」
「次はもっと長い時間ちょうだい」
「また無茶を言う」
「恋人の特権よ♪」
得意げに笑う二乃。
その笑顔につられて、僕も自然と笑っていた。
穏やかな湯気の中。
僕たちはしばらくの間、何も考えずにその時間を楽しむのだった。
のはずが──
「あッ……あッ……いいッ……♡」
バシャバシャというお湯の音と共に二乃の喘ぎ声が木霊する。
「残りはゆっくり過ごすんじゃないのかよッ…!」
「だってえぇッ…♡またいつできるかわからないじゃないッ…ああッ……すごくッ…いいぃッ……♡」
まだ時間があることを確認した二乃は、振り返ると躊躇無く勃起していた僕のペニスを握るや、自分の膣へと挿入したのだ。
「ああぁんッ……やっぱりッ…きもちいいぃッ…♡はっああぁんんッ……あッ……いつきがッ…んッ……はまるのもッ…はッ……わかるわぁぁッ……♡」
二乃は両腕を僕の両肩に乗せて、お湯の中など気にせずバシャバシャと腰を上下に動かしている。
僕はそんな二乃の腰を両手で支えるようにしている。
「あッ……あッ……ヤバいッ…これッ…すぐイッちゃうッ…♡はッ……あッ…あんッ……イクッ…イクイクッ…イッちゃうぅぅぅッ……♡」
ガクガクと全身を震わせながら僕の首を二乃が抱き締めてくる。
「はぁぁッ……はぁぁッ……はぁぁッ……」
「無理しないで…今は自分の体を心配しな」
両胸に顔が挟まれるとても素敵な場所ではあるが、二乃の息づかいを聞きながら、頭と背中を撫でてあげる。
「でもッ……はぁぁッ…んッ……はぁぁッ……かずひこのッ…まだッ…はぁぁッ……おおきいままじゃないッ…」
「僕の事は気にしなくて良いよ。てか、これ以上
笑いながら問題ない事を伝えると、ペニスを二乃の膣から抜き二乃を抱き上げてお風呂から上がった。
「それにこのままじゃ、脱水症状になっちゃうでしょ」
マットの上に仰向けで寝かせた僕は、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して二乃に渡す。
「んッ……んッ……んッ……んッ……ぷはッ…」
渡された二乃は一気に飲み干さんとする勢いでその水を飲んでしまった。
「むうぅぅ……もう少し体力もつけないといけないわね」
「ほどほどにね」
体力がないことに不満げな二乃に苦笑いする。
すると二乃は匍匐前進よろしく、お風呂場の床に座っている僕の股まで来た。
「まだこれだけは出来る体力はあるわよ♡あむッ……じゅるッ……」
そしてそのまま僕のペニスを咥えた。
恐らくお掃除フェラのつもりなのだろう。
だが、中途半端で終えている僕には普通のフェラと思ってしまう。
「じゅぷッ……じゅぷッ……じゅるッ……♡は、れえぇぇろッ……れえぇぇろッ……はぁぁ……はむッ……じゅぷッ……♡」
「気持ちいいよ。二乃」
男の本能だろう。
先程はああは言ったものの、
しゃぶってる二乃の頭を撫でながらも押さえ込んでしまっている自分がいる。
「んふッ……♡じゅるッ……じゅぷッ…じゅぷッ…じゅぷッ…じゅぷッ…♡」
かえってそれが嬉しかったのか、二乃のフェラのスピードが上がる。
我慢できなくなった僕は、そのままペニスを二乃の口から出すと、うつ伏せで寝転んでいる二乃に覆いかぶさるようにした。
「え?何々?」
「ごめん、二乃。もう少し我慢してね」
そう言った僕はそのまま二乃の膣にペニスをあてがって挿入してしまう。
「あ、ああぁぁんんッ……すごッ…いきなりッ…♡」
十分濡れていたので挿入はスムーズに行えた。
僕はそのまま、パンパンと音を立てる様に二乃の
「あッ…あッ…あッ…♡すごッ……むりやりッ…されてるのにッ…きもちいいぃぃッ…♡」
「そろそろッ…イクよッ…」
射精感が高まってきた僕は、ラストスパートの如く腰を動かす。
「あ、はぁッ……いいぃッ……いいぃッ……だしてッ……そのままッ…わたしのッ…しきゅうにッ…とどけてえぇぇッ……♡」
「ああッ……イクよッ…」
ドクンッ……ビュルルルルルッ……ビュルルルルルルルッ……
「ふ、あぁぁぁぁぁんんんッ……♡」
一番奥に精液を届けるように腰を打ち付ける。
「あ……あ……あ……せーし……いっぱいッ……♡」
二乃も同時にイケたようで喘ぎ声をあげたまま、上半身を弓の様にしなった。
そして、また倒れ込むと幸せそうな声を出すのだった。
結局、その後も火照った体を冷ますようにもう一度シャワーを浴び直し、お互いの水分を丁寧に拭い合ってから身支度を整える。
容赦なく刻まれる時計の針が、楽しかった時間の終わりを告げていた。そろそろ時間だ。
「ホント素敵な時間だったわ……~~♡」
吐息混じりにそう呟くと、二乃は最後の時間を名残惜しむように、背中に腕を回してきつく抱き締めてきた。
その柔らかな温もりと、まだ少し湿った髪から香るシャンプーの匂いに、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
「ご満足いただいたようで何よりだよ」
冗談めかして返しながら、彼女の濡れた髪を優しく撫でる。その指先が、彼女の耳元で小さく煌めくものに触れた。
「今日はリボンじゃなくて、蝶々の髪留め付けてきてくれたんだ。気に入ってもらえて良かったよ」
重なり合っている最中は、髪が乱れるのを気にして外されていたから気づかなかった。
鏡の前で帰り支度をする彼女の後ろ姿を見て、ようやくそれが僕の贈ったものだと気づく。いつも彼女の象徴である黒いリボンではなく、あえてこの日のために、僕が選んだ小さな蝶を髪に飾ってくれていたのだ。
自分のためだけに施されたその秘められた特別感に、今更になって心臓が跳ねる。
「……気づくの、遅い。バカ」
二乃は俺の胸に顔を埋めたまま、くぐもった声で ── だけど心底嬉しそうに、さらに腕の力を強めてきた。
「……もう、行かなきゃダメ?」
抱きしめた腕の力が、少しだけ緩む。離れたくないという本音が、上目遣いの瞳からはっきりと読み取れた。いつもなら強気な二乃が、今は恋に落ちたただの女の子の顔をしている。
「引き留めたくなるから、そういう顔しないで」
俺が苦笑混じりに言うと、二乃はふいっと顔を背け、少しだけ乱れた前髪を指先で整えた。その仕草の拍子に、さっきの蝶々の髪留めが小さく揺れる。
「……勘違いしないでよね。アンタに寂しい思いをさせるために付けてきたんだから」
強がりの中に、精一杯の愛しさが詰まっている。
彼女はドアノブに手をかけ、最後に一度だけ振り返った。
「また、すぐ呼んで。……約束よ?」
そう言い残して、蝶のように軽やかに、だけど確かな未練を残して彼女は去っていった。部屋に残されたのは、微かな彼女の香りと、まだ冷めやらぬ肌の記憶だけだった。
「はぁぁ……疲れたぁ~~……」
部屋のドアが閉まる音を見届けてから、ベッドへと倒れ込む。シーツに顔を埋めたまま吐き出された僕の声は、自分でも驚くほど締まりのないものだった。充実感と、それと同じくらいの気怠さが四肢にまとわりついている。
「お疲れ様でございます、和彦様」
静かなノックの音に続いて、彩里を先頭にしたメイド隊が音もなく部屋へと入ってきた。
彼女たちの手には、手際よく新しいシーツや清掃用具が握られている。
「ホント悪いね、こんな事にまで付き合わせちゃって……」
せめて邪魔にならないようにと、重い体をどうにか起こしてベッドから立ち上がる。
さっきまで二乃と肌を重ね合っていた、その生々しい痕跡が残る場所を他人に片付けさせるのだ。何度経験しても慣れない猛烈な申し訳なさに、僕は小さくなって頭を下げた。
すると、すぐ近くにいた彩里から、悪戯っぽくも温かい微笑みを向けられる。
「ふふふ。毎回、全く同じお言葉をいただいておりますよ」
釣られるように、後ろに控える他のメイドたちの口元にも柔らかな笑みが浮かぶ。主人のバツの悪そうな姿が、彼女たちにとっては微笑ましい日常のひとコマになっているようだった。
「こういった職業、専門のサービスもあるではないですか。私たちにとっては、それと同じことでございますよ。どうかお気になさらずに」
「いや、まあ……そうなんだけどね」
割り切ったプロとしての言葉。
けれど、その声の響きには僕の気まずさを和らげようとする確かな優しさが含まれていて、僕はただ曖昧に苦笑いを返すしかなかった。
テキパキと、しかし決して事務的ではない滑らかな動きで、メイドたちはベッドメイキングを始めていく。
乱れたシーツが瞬く間に剥がされ、部屋の空気が入れ替えられていく。
窓から滑り込んできた新しい風が、さっきまでこの空間を支配していた熱気を、容赦なく外へと連れ去っていった。
僕は部屋の隅にある一人掛けのソファに深く腰掛け、彼女たちの見事な手際をぼんやりと眺めていた。
乱雑だった空間がみるみるうちに整えられ、完璧な静謐を取り戻していく。その一切の無駄がないプロフェッショナルな仕事ぶりに、僕は改めて深い感謝と、やはり少しの申し訳なさを覚えていた。
作業が一段落し、新しい真っ白なシーツがピンと張られたところで、彩里が僕の方を振り返って小さく一礼する。
「お待たせいたしました、和彦様。お部屋の片付け、すべて完了いたしました」
「うん、ありがとう。いつも本当に助かるよ……」
僕はソファから立ち上がり、少し照れくさそうに頭を掻いた。いつも完璧に自分をサポートしてくれる彼女たちに、ただ言葉だけで「ありがとう」と言うだけでは、なんだか物足りないような気がしたのだ。
ふと、頭の中に一つのアイデアが浮かぶ。
「ねえ、彩里。みんなも」
僕が声をかけると、退室しようとしていたメイドたちが一斉に足を止め、不思議そうにこちらを振り返った。
「いつもこうして僕の我が儘や、個人的なことの後始末まで嫌な顔一つせずに引き受けてもらってるでしょ? だから……もしよかったら、今度お礼に僕が手作りクッキーでも焼いてこようと思うんだけど、どうかな?」
その提案に、部屋の空気が一瞬だけピタリと止まった。
いつも冷静沈着で、完璧なポーカーフェイスを崩さない彩里が、信じられないものを見たかのように目を丸くしている。
後ろに控えていた若いメイドたちも、お互いに顔を見合わせて、言葉を失ったように硬直していた。
「……和彦様が、私どものために、手作りを……ですか?」
彩里が確認するように、どこか微かに震える声で聞き返す。
「あ、いや、もちろんプロのパティシエが作るような上等なものにはならないと思うけど……一応、味には少し自信があるんだ。迷惑じゃなければ、だけど」
僕が少し気後れしながらそう付け足した瞬間──部屋の空気が一気に爆発した。
「め、迷惑だなんてとんでもありませんっ!」
「和彦様の手作りクッキー……! 嬉しい、信じられない……!」
「私、絶対にその日はお休みを入れないようにします!」
いつもは規律正しく、静かに控えているメイドたちが、まるで少女のように目を輝かせて歓声をあげる。
彩里もまた、いつもの大人の余裕はどこへやら、頬をほんのり桜色に染め、両手を胸の前でぎゅっと握りしめていた。
「和彦様、本当によろしいのですか……? 私ども一同、これ以上ないほど光栄に存じます。今から皆で楽しみにさせていただきますね」
「あはは、そんなに喜んでもらえるなら作った甲斐があるよ。期待して待っていて」
僕が笑って答えると、メイドたちはこれまでに見たこともないような、心からの満面の笑みを浮かべて何度も深くお辞儀をし、嬉しそうな足取りで部屋を後にしていった。
静まり返った部屋に、再び僕一人になる。
完全にリセットされたベッドに横たわってみると、糊のきいた清潔なシーツの匂いが鼻腔をくすぐった。
二乃との濃密な時間の余韻は、メイドたちの手によって綺麗に片付けられ、今はもうどこにもない。
けれど、手のひらに残るかすかな体温の記憶と、さっきのメイドたちの弾けたような笑顔の余韻が、冷えかけた部屋をどこか優しく、じんわりと温めてくれているような気がした。
「よし……何クッキーにしようかな」
静かな部屋で、僕は次の約束に思いを馳せながら、心地よい疲労感を感じるのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回は二乃との特別な時間、その後のお話でした。
強気で積極的な二乃ですが、最後には少しだけ「離れたくない」という素直な一面も。
そして、以前プレゼントした蝶々の髪留めもしっかり付けてきてくれていました。
こういう普段とのギャップは、やっぱり二乃の大きな魅力ですね。
一方で、和彦の何気ない一言によって、何故かメイド隊との間にも新たな約束が……。
手作りクッキーを巡って、こちらも何か起こりそうな予感です(笑)
そして──まだ、この一日は終わっていません。
次に和彦のもとを訪れるのは誰なのか。
それぞれがどんな時間を過ごすことになるのか、引き続き楽しんでいただければ嬉しいです!
「二乃可愛かった!」
「続きが気になる!」
と思っていただけましたら、お気に入り登録や感想で応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!
いつも読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
それでは、また次話で!