ノア×コード 叛逆のジェラルド 星舟や海兵どもが夢の跡 作:形のない者
プロローグ/秩序戦争
かつて人類が棲んでいた惑星《地球》では、海面上昇の影響により、地上の生命は生存圏を脅かされていた。それを知ったノア=ブルーフィールドと呼ばれる存在は“旧約聖書に記されるノアの再来”と呼ばれ、沈みゆく地球の生命を救おうと立ち上がり、彼とその仲間たちは地球脱出計画────作戦名:
それから一千年。地球時代の繁栄を取り戻しつつある国境線のない世界での平和は永遠に続くかのように思われていた────が、しかし。一千年前に滅亡の危機から逃れた人類は、再び生存の危機を脅かされる窮地に陥っていた……。
時は《N.P.1016》 全人類統一議会本部アイリスにて。ノア=ブルーフィールドの末裔たるノア=ローゼンクランツという白髪金眼の少女を全人類統一議会議長とし、惑星ノア最高AIエムザラを中立帯として、ほか三席の人類派閥代表者が集い、惑星ノアを襲う脅威への対抗策について話し合う議会が開かれていた。
現在の惑星ノアに襲いかかる危機的状況とは、地殻変動による海面上昇である。まさに三度目の滅びを迎えつつある人類を救うため、惑星ノア最高AIたるエムザラは
そして今、十二隻目の方舟アーク・ピスケスが発掘される。あとは十二隻の方舟のサポートを得て、全人類を乗せた超大型輸送艦セカンドクレイドルを発艦させることで、惑星ノアの近辺に存在する地球型双子惑星のもう片割れたる“惑星ラメク”への移民計画を成功させる────エムザラのやることは、もはやそれだけだった。
しかし人類は三度目の滅びを前にして大きく分裂していた。エムザラが全人類移民計画を提案した段階で三つの派閥が出現し台頭。
全人類を移民させる思想を持つ、全人類移民派。その代表者はカイン=ローゼンクランツ。
選ばれし人類のみを移民させる思想を持つ、選民移民派。その代表者はシェーラ・カーマイン。
全人類は惑星ノアと共に海の水底に沈むべきという思想を持つ、終末派。その代表者はアリア・ロタス。
全人類移民派代表カイン=ローゼンクランツは、全人類統一議会議長ノア=ローゼンクランツの実兄である。
選民移民派代表シェーラ・カーマインは、超大型輸送艦セカンドクレイドル建造の全責任を負うメリトクラシー財団の総帥である。
終末派代表アリア・ロタスは、ロタス教の教主であり、全ての魂は死後、楽園の理想郷ニライカナイへと導かれて惑星ノアに再誕すると謳っている。
この三勢力の激突は容易に予想された。話し合いでの決着は不可能であり、政治闘争による決着もまた血なまぐさい歴史を繰り返すだけで得策ではない。武力行使による戦争
その名も“継承戦”である。
かつて地球が水没した際、人類の脱出に使われた惑星間航行移民船《方舟》────それは特殊な脳波を有する人間にしか操縦できない代物だった。そういった特殊な素質を持つ人間はアドミラルと呼ばれ、当時はノア=ブルーフィールドとその仲間たちが十二隻の方舟をアドミラルとして動かしたが……それでは
全人類統一議会本部アイリスは協議の結果、決定を下した。特殊な脳波を有する人間“アドミラル”を捜索しつつ、彼らを集めて方舟を動かす訓練を施し、あとは自由意思により所属する派閥を決めさせ、その上で継承戦を行なう。継承戦に勝利したアドミラルはマスターアドミラルとして一隻の方舟を継承し、そのマスターアドミラルが所属していた派閥が勝ち星を稼ぐ。そうして全十二回に渡る継承戦を終えた時、最も勝ち星の多い派閥が勝利し、その派閥の意見が採用される。
全人派が勝利すれば、全人類は惑星ラメクに移民する。選民派が勝利すれば、選ばれた人間だけが惑星ラメクに移民し、選ばれなかった者は沈みゆく惑星ノアに取り残される。終末派が勝利すれば、超大型輸送艦セカンドクレイドルと十二隻の方舟は破棄され、全人類は惑星ノアと共に海の底“ニライカナイ”へと沈む。
かくして継承戦は今までに十一回、執り行われた。以下に過去の継承戦の戦歴を書き記す。
N.P.1011 第一回継承戦 勝者は全人類移民派────カイン=ローゼンクランツ
継承された方舟はアーク・タウラス。
概要:選民派の好敵手たるグレン・カーマインとの最終決戦では紙一重の差で勝利を掴む。その戦果は卓越の一言。
N.P.1011 第二回継承戦 勝者は選民移民派────グレン・カーマイン
継承された方舟はアーク・ジェミニ。
概要:既にマスターアドミラルとなったため以降の継承戦に参加できない
N.P.1012 第三回継承戦 勝者は終末派────クー・クライング・クルー
継承された方舟はアーク・スコーピオン。
概要:その恐ろしい求心力で勝利を収める。また、継承戦の後に犯人不明の殺人事件が相次いだ。その後も何かの陰謀が渦巻いているという噂が頻出する。
N.P.1012 第四回・第五回 継承戦 同時開催 勝者は選民移民派────夜明けのヴァンとレイ・ラングレン
継承された方舟はアーク・アリエスとアーク・カプリコーン。
概要:継承戦後、新たなマスターアドミラルの誕生を祝福する儀式の場にて、終末派のマスターアドミラルたるクー・クライング・クルーを狙った殺人未遂事件が起き、現在二名のマスターアドミラルを拘留中。
N.P.1013 第六回継承戦 勝者は全人類移民派────エリザベス
継承された方舟はアーク・リブラ。
概要:覚醒したスキルによって大逆転の勝利を収める。
N.P.1014 第七回継承戦 勝者は選民移民派────シャルル・ジ・ブリタニア
継承された方舟はアーク・レオ。
概要:大いなるカリスマ性による圧倒的な勝利。
N.P.1014 第八回継承戦 勝者は全人類移民派────ルルーシュ・ランペルージ
継承された方舟はアーク・サジタリウス。
概要:海面地形を利用した巧みな戦術で勝利。戦術家という新しいタイプのアドミラルとして一躍有名になる。また、ルルーシュ・ランペルージは継承戦前まで選民派に所属していたが、継承戦の勝利後、全人派に鞍替えしたことで大きな問題となる。この件以降、スパイの存在を認めない取り決めが制定され、継承戦の後に個人的な派閥の変更はできても、マスターアドミラルとしての派閥は変更できない旨が明記された。
N.P.1014 第九回継承戦 勝者は全人類移民派────枢木スザク
継承された方舟はアーク・キャンサー。
概要:圧倒的な「生きろ」の効力で無双の限りを尽くして勝利した。
N.P.1015 第十回・第十一回 継承戦 同時開催 勝者は終末派────ミハイル・ギャレットとファサリナ
継承された方舟はアーク・アクエリアスとアーク・ヴァルゴ。
概要:全人派と選民派の戦いが熾烈を極める中、漁夫の利で勝利。これは両派閥にとって最大の失態と揶揄されている。
そして現在……N.P.1016にて、第十二回継承戦が執り行われる。
継承される方舟はアーク・ピスケス。
かくして今までの勝ち星をまとめる。
全人派:勝利数☆☆☆☆ 所有方舟は四隻。
選民派:勝利数☆☆☆☆ 所有方舟は四隻。
終末派:勝利数☆☆☆ 所有方舟は三隻。
エムザラは語る。第十二回継承戦において全人類と選民派のいずれかが勝利した場合、そのまま勝った側の思想を採用して人類移民計画を実行に移す。しかし終末派が勝利した場合、全派閥の勝ち星が同数となってしまい決着が付かないため、特別に“第十三回継承戦”もとい“最終継承戦”を執り行う。継承される方舟は超大型輸送艦セカンドクレイドル。そして最終継承戦に勝利した派閥が、真の勝利者として人類の運命を決定づける。
ただしエムザラは警告を発した。海面上昇の刻限を考えると、人類の余裕は第十二回継承戦の後半までしかないことが分かっている。つまり最終継承戦を執り行う場合、その間に惑星ノアが水没する可能性が高い。よって時間的余裕がなくなった場合は最終継承戦を執り行わず、第十二回継承戦の勝利者が真の勝利者として人類の運命を決める────そう断言し、予断は許されない旨を語った。これは全人類統一議会本部アイリスも了承している事。要するに第十二回継承戦が実質的な最終継承戦となることが周知された。
かくして第十二回継承戦、アーク・ピスケスを巡る、最後となるであろう継承戦が開始される。