ノア×コード 叛逆のジェラルド 星舟や海兵どもが夢の跡 作:形のない者
第七話/休暇2
《第1.5章》
夜間照明の点いた廊下。御船真瀬とカトリーナ・オーケルフェルトは参謀同士の会話をしていた。
「前回とは反対になったな。以前は茅森漣の独断専行で御船艦隊は崩壊したが、今回はビビアナ・サリニャーナの独断専行でカトリーナの作戦がうまくいかなかった」
「……何が言いたいわけ? 敗者に追い打ちをかけるとかやめてほしいわ」
「気を悪くしたら済まない。そういう意味じゃないんだ。ただ……子供の面倒を見るのも参謀の務めなのかとたまに思う……それだけさ」
「……そうね。それには概ね同意するわ。たしかに継承戦に“世話役”という役割が存在する以上、義務教育を受ける年齢の子の面倒を見る必要はある。そして、その務めを果たすのは年長者であることが多い。ただ問題なのは世話役の人員不足ね。“参謀”には当然その役割柄、年長者が多い。だから兼任を求められるのよね……おかげで肩が凝るわ。こんなババくさいこと言いたくないけど」
「はは……お互い、わがままな子供を持つと可愛くて仕方がないな」
「────ふん。とんだ皮肉ね。ほんと、可愛さ余って憎さ百倍よ」
子供の舵取りには苦労する。軍隊のように規律を教えて指導するのも大切だが、時にはいっそのこと自由にさせた方が動かしやすいし、子供のストレスにもならないだろう。そんな教育法の書物も読みあさらなければいけないのが“元参謀”御船真瀬と“参謀”カトリーナ・オーケルフェルトの現状であった。
そして、その話を途中から聞いていたビビアナがジジを連れ立って飛び込んでくる。
「ねぇねぇ、今ビビのことかわいいって話をしてた!?」
「ビビ、今のは皮肉ってやつよ。わからない?」
「ヒニク? なにそれ。お肉の話だったの?」
ジジは呆れる。そして、そんなちょっとおバカなビビアナの頭を優しく撫でたカトリーナは、どことなく足取り軽やかに去っていった。それを見送ったジジは、御船真瀬の方を向いて一言。
「真瀬さん。親密度を上げるための世間話、ご苦労様です」
「ははは。なんだかジジは手厳しいな」
実際お話は大事だ。そのことをジジ・ヴァイオレットは御船艦隊に吸収されてから実感していた。全人派は選民派の混合艦隊。なんなら選民派の方が多い御船艦隊は、いわゆる仲間との信頼とやらでセクター47での海戦を本当に勝ち抜いてしまった。もはやそれは実力と言っていいだろう。
「……総提督。もしよければ今度、戦術について教えてほしいのですが」
「あぁ、いいよ」
「えっ……ほんとにいいんですか? だって私は選民派で……それって敵に情報を教えるようなものじゃないですか」
「俺は派閥の違いを敵対とは思わない」
「……そうですか。相変わらず甘いですね。お人好しすぎます。いつか足をすくわれないように」
「その忠告、しかと受け取っておくよ。ところで戦術について教えるっていうのは、勉強と同じ感じで教えてもいいのかな?」
「はい。その方が分かりやすいので。訓練時代も戦術については概要程度ならさらっと学びましたが、真瀬さんほど造詣を深めているわけではないので……きっと戦術について語り合うことはできませんから」
そこでビビアナがジジの腕を掴む。
「む~なんか難しい話してる! ねぇジジ、寝る前にトランプしようよ! エルシェとアレックスも入れてさ!」
「わ、ビビ。引っ張らないで。それならステラとヴィエナも呼びたいんだけど……」
「いいよ! 一緒にやろう! ……あ! お兄さんも一緒に遊びたい?」
「え、俺か? 仲間に入ってもいいのなら……」
「いいよー! それじゃあこっちこっち!」
そうしてビビアナは御船真瀬の腕も掴み、二人を強引に引っ張って遊戯室に連れて行った。