※この作品はR-18です。

ノア×コード 叛逆のジェラルド 星舟や海兵どもが夢の跡   作:形のない者

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第十五話/話術

 朝方。御船艦隊は南方に発艦。同時刻にジュリオ艦隊はミハイル艦隊と合流するため北方に発艦した。そして東南部海域にて御船艦隊とジュリオ艦隊が激突、交戦。御船艦隊の遥か後方には青桐艦隊が追随するが接近する気配はなく、明らかに漁夫の利を狙っていた。そして一度の交戦を終えた御船艦隊は、ジュリオ艦隊の気迫は凄まじかったが練度は思ったより高くなく、艦隊吸収によるバトルアークの数はこちらより多かったが、次の交戦で旗艦を討ち取れると誰もが思った。しかし作戦上ステラ副艦隊との合流が先決であるため、一度の交戦で決着がつかない場合は突破を選ぶのが作戦会議で決めたこと。すぐには片付けられない相手と判断した御船艦隊は、これ以上は時間を掛けられないため作戦通り南方海域に向けて直進した。

 

 一方ジュリオ艦隊は、一度の交戦の末に御船艦隊の強さを思い知って敗北を悟ったが、“総提督”ジュリオ・フェーデは玉砕覚悟で一矢報いる大打撃をせめて与えようと旋回。しかし当の御船艦隊は突破を判断していたため旋回して戻ってくることはなく、ジュリオ艦隊は九死に一生を得た。しかしそれが生真面目なジュリオ・フェーデの逆鱗に触れた。次に戦えば倒せる相手を放置するとは何事か。憤怒と怨嗟の激情に身を焼き焦がすジュリオ・フェーデは、“総提督”御船真瀬の名前と交戦時に垣間見た顔をしっかりと記憶に焼き付けて覚え込んだ。

 

 そんなジュリオ艦隊の真横に青桐艦隊が現れる。怒りに燃えるあまり青桐艦隊の存在を忘れていたジュリオ・フェーデはしまったと焦るが、次の瞬間ぽかんとする。青桐艦隊は素通りした。ジュリオ艦隊の真横を素通りしていった。何が起きているのか分からない“総提督”ジュリオ・フェーデは、舐めやがってと青桐艦隊に砲撃を加える。しかし青桐艦隊にそれほどダメージを与えることはできず、ジュリオ艦隊は圧倒的な屈辱を感じつつドックに帰港した。こういった輩は復讐心で大きく化ける可能性がある。それを承知で御船真瀬と青桐ガイルは見逃したのか。その真意は今はまだ分からない。

 

 そして御船艦隊は最南東部の諸島の下方をぐるりと回って南部海域に顔を出した瞬間、中央海域より超長距離狙撃砲が飛んできた。最初は風向きが掴めず大きく狙いが逸れたようだが、着弾地点には巨大な水柱が立ち昇る。あの一撃を受ければバトルアーク一隻どころか一つの小隊でさえひとたまりもない。速度の余力を残していた御船艦隊はこの時のために全速前進。補助スキルを使用して艦隊の回避力を向上させつつ、狙撃地帯からの早期突破を試みた。

 

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│         ■■   離    →→→↓↑↓│

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│   ①■■     ②■ 撃   ■■■⑤→→↓│

│              ✖←←←←←←←←←↓│

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 時は遡り。開戦合図と共にステラ副艦隊は東方に向けて発艦。同時刻に海月艦隊も西方に向けて発艦。そしてステラ副艦隊と海月艦隊は南西部海域にて激突する。そこで“副提督”ステラ・パレットは“総提督”御船真瀬から伝言があることを海月結衣に伝える。内容は共闘の提案。このままではステラ副艦隊は本多艦隊によって挟撃に合う可能性が高く、そうでなくともここで互いが潰し合えば漁夫の利を狙われる可能性を指摘。故にここは互いに見なかったフリをしてスルーしないかと提案する。これに対して海月結衣は友人・御船真瀬の言葉を信じたいが、それは選民派であるステラの声を通して聞いたこと。それに勢力を増したい思惑がある海月結衣には、ここで副提督を討ち取った方が良いのではと考える。しかし本多艦隊に漁夫の利を狙われる可能性を考えると互いに見なかったフリをするのは確かに得策かも知れない。

 

 しかし海月結衣は交戦を選んだ。本多艦隊を恐れていては、この先の継承戦は勝ち抜けない。その判断を受けた“副提督”ステラは北(・)東(・)へ(・)の(・)撤退戦の指示を出す。そこで茅森漣は「御船艦隊と合流するなら東方への撤退だろ!?」と指摘。しかしステラは独断専行で北東への撤退戦をすると断言した。そして海月艦隊を圧倒的な機動力で抜いたステラ副艦隊は、しかし。思わぬ敵と遭遇する。北方から南下してきたシャーロット艦隊である。加えて西方からは本多艦隊の艦影を確認。だが接近してくる気配がない。今後の四陣営の混戦を想定したステラ・パレットは、ここで確実に撤退を成功させるためクレーメンスの特殊スキルを切るかどうか考える。そこで“工作参謀”クレーメンスが助言した。「ステラ・パレット。君の考えは読めた。きっと御船総提督も君の意図に勘付くはず。だから僕のスキルは取っておいた方がいい。御船総提督の方が僕を上手く扱えるだろうから」……その助言を受けたステラ・パレットはクレーメンスを温存した状態で撤退戦の継続を指示。だが前門のシャーロット艦隊、後門の海月艦隊は、そうやすやすと逃がしてはくれない。加えて遠方より本多艦隊の中型艦小隊による砲撃が飛んでくる。砲煙弾雨の中、この窮地を切り抜けるために行動開始の命令が欲しいと言ったのは“切込隊長”茅森漣だった。ステラの号令一下、茅森漣が率いる攻撃部隊は怒涛の快進撃を見せてシャーロット艦隊の前線部隊を打ち破る。旗艦までは討ち取れなかったが前方が開けた間隙を突いて、見事ステラ副艦隊は逃走に成功した。

 

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 一方、ステラ副艦隊が戦線を離脱したことで顔を見合わせた海月艦隊とシャーロット艦隊。かたや戦力吸収のため戦いを挑み、かたや同じ全人派同士仲良くしようと説得する。そこに本多艦隊が接近してくる。海月艦隊はシャーロット艦隊の同盟要求を受け入れて、いざ本多艦隊と戦闘態勢に入る。が、その時点で海月艦隊とシャーロット艦隊は敗北を喫していた。本多艦隊は部隊を四つに分けていた。第一部隊はシャーロット艦隊の背後を突くように戦いが始まってからずっと尾行していた。第二部隊と第三部隊はステラ副艦隊専用ドックの近くを抜けて、ステラ副艦隊と海月艦隊の背後を突くように追跡していた。しかし、そこにステラ副艦隊の姿はない。本多正信はその理由を語る。

 

「御船艦隊の“副提督”ステラ・パレットは慧眼だ。我が本多艦隊の艦影を発見した時、なぜ漁夫の利を狙える位置まで接近して来ないのかと疑問に思ったのだろう。そこで兵力を分散させていることに気付いたのだ。こ(・)の(・)ま(・)ま(・)で(・)は(・)本(・)多(・)艦(・)隊(・)に(・)包(・)囲(・)さ(・)れ(・)る(・)。そう判断したステラ・パレットは作戦の進行を繰り上げた。おそらく御船艦隊は我が本多艦隊を倒すより先にミハイル艦隊を打つ作戦を練り上げているはず。そのためには南部海域で合流し、態勢を整えてから対ミハイル艦隊の作戦を発動する順序だったはず。しかし、海月艦隊とシャーロット艦隊を比べれば、前者の方が層が厚く、後者の方が層が薄い。よって時間を掛けて海月艦隊を突破しているうちに、我が本多艦隊に包囲されて殲滅されると踏んだステラ・パレットは、時間を掛けず突破できそうなシャーロット艦隊に矛先を変えたのだ。とても臨機応変な対処と言えよう。次の作戦を成功させるために今の作戦を繰り上げることができるのは、リスクが大きい反面きちんと作戦が練られている証拠でもある。それに比べて────お前たちは全人派同士で潰し合い、包囲されていることにも気付かなかった。ステラ・パレットが包囲について知らせなかったのも、お前たちを餌にして逃げ切るためだ」

 

 海月結衣は反論する。自分たちはここで負けない。本多艦隊が部隊を小分けにしたのであれば、そのぶん層が薄くなっている所があるはずだ。そこを突破させてもらうと。それにシャーロット・ソールズベリーも同意して、二つの艦隊は共同戦線を張る。それに本多正信は重く深くため息をついた。

「愚かな。四つの部隊は全て中型艦が中心である。加えて補助スキルで防御力は万全。一点突破したところで破られる布陣ではない。包囲された時点でそちらの殲滅は必至。しかし窮鼠猫を噛むという。それなりの抵抗は見せてくれるだろう。手こずらせてくれる。だが日が傾く頃には終わっているはずだ。さて、もろとも吸収させてもらうぞ、全人派の艦隊よ」

 

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 中南部海域。御船艦隊は定期的に狙撃される砲弾を回避しつつ、ステラ副艦隊との合流地点に急いでいた。そこで御船艦隊の後方より追跡してくる青桐艦隊が徐々に接近し、やがて肩を並べてきた。彼は青桐ガイルと名乗り、銀の甲冑を着て銀の剣を腰に差していた。彼は断続的な狙撃の中で「ちょっと話をしよう」と独り勝手に語りかけてくる。

 以下は総て独り言。

「全人派は理想論者ばかりだ。選民派のような将来性のある発展計画をぜひとも教えてほしいものだよね。ただし選民派の革命思考とやらも、なんだか漠然としすぎていて結局は何も変わらない未来しか待っていなさそうだけど」

「それに俺は選民派のような選(・)ば(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)未(・)来(・)を(・)勝(・)ち(・)取(・)れ(・)な(・)い(・)弱(・)者(・)を最も忌み嫌っている。かえって全人派は全(・)て(・)を(・)背(・)負(・)う(・)こ(・)と(・)を(・)覚(・)悟(・)し(・)た(・)連(・)中(・)の(・)集(・)ま(・)り(・)だ。それに対して選民派は全(・)て(・)を(・)背(・)負(・)う(・)こ(・)と(・)を(・)諦(・)め(・)た(・)者(・)た(・)ち(・)だ。諦めた奴を弱者呼ばわりして何が悪い? ……剣を鞘に収めるのも勇気だって? あはは馬鹿を言え。戦うべき時に戦えない腰抜けが、その名言を使うんじゃねぇ」

「自分たちが生きたいから見知らぬ誰かを切り捨てる。その覚悟が出来ている奴は別に文句はない。ただそれが出来ていない奴は虫酸が走るぜ。遊びじゃねんだよ。ガキんちょども。そろそろ道徳の授業を受けて、人の命について考えてみたらどうだい? 無知なクズども」

「その一方で終末派のような救(・)い(・)を(・)求(・)め(・)る(・)者(・)た(・)ち(・)には一定の理解と共感を示しているつもりだ。戦うことに疲れたのならば、今は亡き家族と再会したいと願うのならば、アァ……好きなように死ねばいい。だがそれに他人を巻き込むな。全人類と無理心中? 一人で死ぬ勇気もねぇ奴が必死こいて死ぬために戦うとか、なんだそりゃ! 滑稽な話だぜ! だがよ。そうなったのは全人派のせいでもあるんだぜ。死にたい奴は死なせりゃいいのに、お前らは終末派の命を助けるだけで、その心までは救おうとしていない。だから終末派は全力で抵抗するんだ。その偽善をやめてくれと」

「まぁ難しい話だよな。誰の心が疾うに死んでおり、誰の心が未だ救える段階にあるのか。終末派に所属する全ての人の心を、全人派が調べ尽くすなんて無理難題な話だ。だからひとまず本当に死にたい奴も、誰かに助けてほしい奴も、まるっとひっくるめて惑星ラメクに連れて行き、そこでカウンセリングしようと考えている。だが惑星ラメクに行けば、まずは復興作業が先決だ。人の心なんて当然後回し。結局は生存のため善行を後回しにする。だから終末派は絶望しているんだ。なんせ人類は、地球時代からそ(・)う(・)だ(・)っ(・)た(・)からな」

 

 要するに青桐ガイルの言い分は、派閥ごとの問題点の指摘にあった。短絡的にモノを考える子供たちは自らの代表者を馬鹿にするなと返すが、人類の成り行きを考える話で誰か一人を馬鹿にしても仕方がないと青桐は返す。加えて選民派のアドミラルが多いことを見抜くと、青桐ガイルは特大の爆弾(知る人ぞ知る真実)を落とした。

 

「シェーラ・カーマインなんてカエルがタカのフリをしているだけだ」

「蛙の子は蛙。鳶が鷹を生むなんてそうそうあることじゃない」

「虐待されて育った子が親になると、育て方がわからず自分の子に虐待してしまう。そんな話がある。本当の所どうなのか知らないが、この話はつまり子(・)は(・)親(・)も(・)と(・)い(・)誰(・)か(・)か(・)ら(・)習(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)し(・)か(・)で(・)き(・)な(・)い(・)ということを言っている」

「シェーラ・カーマインは選民思想の温床とも言えるセクターの都市で育った。そこでは実力のある子供が集められて、最後の一人になるまでアドミラルとして争わせるらしい。もちろん負けた奴は弱いから要らない。そうやって切り捨てられた子供たちはスラム街で親もなく生きねばならず、必然、すぐに死ぬそうだ。そんな中でシェーラ・カーマインとその双子の弟グレン・カーマインは生き残った。いや……勝(・)ち(・)残(・)っ(・)た(・)」

「クソな社会を実感した二人は、クソな社会を形成しているメリトクラシー財団の総帥の座に就いた。そして二人はメリトクラシー財団に叛旗を翻し、クソな社会を変えるために動き出した。しかし実態はどうだ。シェーラ・カーマインは選民派として惑星ノアの人々を選民している。まるでそ(・)れ(・)以(・)外(・)の(・)育(・)て(・)方(・)を(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)と泣き叫ぶように!」

「だから俺は何度でも言うぜ。蛙の子は蛙。鳶が鷹を生むなんてそうそうあることじゃない。よってシェーラ・カーマインはタカのフリをしたカエルなんだと」

「子が親の呪縛から解き放たれるためには相当な勇気と胆力と観察眼がいる。周りを見て他者と比較して自らを育て上げる準備期間が必要になる。でなければクズな親と同じことを繰り返してしまう。さて、シェーラ・カーマインは“準備”……しているのかねぇ?」

 

 そうやって御船艦隊の面々──特に各派閥の代表者を慕っている御船真瀬やジジやエドガー──と論争を交わした青桐ガイルは、最後に本心を剥き出しにする。

 

「俺の家族を紹介するよ。俺の家族は最高だ。母親は虐待されて育ったが、周りを見て自分の状況はおかしいと気付き、のちに教育免許を取ってオレを“ふつうに”育て上げてくれた。つまり俺はごくごくふつうに愛されて育ったんだ。こればかりは皮肉じゃないぜ。だからシェーラ・カーマインにも、俺のおふくろのような根性があることを期待するよ。……まぁあの人、まだ十六歳だけどな」

「俺がひねくれてんのは生まれつきだぜ。おふくろからは人の気持ちを察しろと教えられた。だから人の心の矛盾に気付くようになった。ひねくれたのは矛盾している奴らのせいだ。オヤジからは特に何も教わらなかった。強いて言えば自制心かな。オヤジは買いたいといえばなんでも買ってくれる。おかげで俺が欲を出せば家計は火の車。だから子供である俺が自省しなきゃならねぇ。とんだ面白愉快な教育法だよ。そんで俺の可愛い弟妹たちは脳や体に障害を持っているから惑星ラメクには連れていけないらしい。────ムカつくぜ」

「俺の最高の家族を切り捨てようとする選民派は絶対に許さねぇ。マスターアドミラルになった暁にはブチ殺してやる。シェーラ・カーマインどもを惑星ノアに置き去りにしてな」

 青桐ガイルの殺意が怒りの相貌としてあらわとなる。それを見た一同は、彼が常におちゃらけて皮肉屋であるだけの男ではないことを悟った。

 

 そして青桐ガイルは、そろそろ補助スキルの回避力アップが途切れるため、ミハイル艦隊の狙撃から逃れようと撤退した。いったい彼は何をしに来たのか。勝手に付いてきて議論を交わし、最後は自分の家族を誇らしげに自慢して帰っていった。とんだ変人だったが、今はそのことに気を取られている余裕はない。ミハイル艦隊の狙撃を回避しつつ、御船艦隊は先を急ぐ。

 

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 そこで“諜報員”藤本さちからの緊急報告。双眼鏡で確認する限りステラ副艦隊との合流地点ポイントにその姿が見えないとのこと。ともかく狙撃から逃れるため海月艦隊のドックが近い島に避難し、島の形状を盾にして狙撃から身を守る。さて御船真瀬は合流できるまで待機するか、それとも何か行動を取るか考える。そこで藤本さちが島の反対側に打ち上がった信号弾を確認。おそらく全艦隊が目撃したであろう上空の閃光は、ステラ副艦隊によるなんらかの合図だった。御船真瀬は推理する。藤本さちの偵察情報によれば西の海域では本多艦隊が海月艦隊とシャーロット艦隊を包囲しているという。ならばステラ艦隊はその包囲から逃れることを優先したために合流ポイントに来ることができなかったのでは? だとしたら島の外周をぐるりと回って合流してくるのか。いや、そんなことをしてはミハイル艦隊に見つかって狙撃を浴びてしまい、ブランBが露見してしまう。────そう、プランBである。

 

 御船艦隊がステラ副艦隊に合流して海月艦隊を挟撃する作戦が、本多艦隊とシャーロット艦隊の横槍によって失敗に終わった以上、ステラ副艦隊は独断でプランBに切り替えていたのだ。プランBとはミハイル艦隊への奇襲作戦。理想は海月艦隊を倒した後にミハイル艦隊を叩くのが最良だったが、こうなっては仕方がない。“総提督”御船真瀬はプランBに作戦が移行したことを告げて、来た道を戻り、あえてミハイル艦隊に姿を晒して狙撃の雨を一手に引き受けながら北方に前進、ミハイル艦隊に向かって突き進む一見無謀な作戦を取る。プランBの作戦通りなら、ステラ副艦隊はマップ上の⑥ミハイル艦隊専用ドックを抜けて中央海域を南下し、ミハイル艦隊の背後に迫るはず。こちらは②海月艦隊専用ドック近辺から東に戻り中南部海域から北上することでミハイル艦隊に接近する。つまりこの二つの艦隊の動きはミハイル艦隊を挟み撃ちする形になる。御船艦隊はミハイル艦隊に向かって全速前進。わざとらしくてもいいので、とにかく敵の注意を引き、ギリギリの中で狙撃を回避していく。

 

 一方その頃。ミハイル艦隊は謎の信号弾を発見したあと、わざわざ島の死角に逃れた御船艦隊が姿を晒して無謀にも接近してきたことに違和感を覚えていた。信号弾と御船艦隊の動きには何か関連性があるのかと疑った次の瞬間、“総提督”ミハイル・スルコフは後方より艦影を発見した報告を受ける。それは機動力に特化したステラ副艦隊であった。ミハイル艦隊の偵察情報によれば、先刻までステラ副艦隊は南西部海域で四面楚歌の戦いをしていたはず。持ち前の機動力を活かしてあっという間にミハイル艦隊の背後を突いていたステラ副艦隊は、攻撃を加えることで御船艦隊への狙撃を妨害し、かつ小型艦小隊が大型狙撃艦の懐に入ることで狙撃を封じる。死角に入り込みさえすればミハイルの超長距離狙撃用の砲塔は真下を狙えない。しかし狙撃を封じられて焦るミハイル艦隊ではない。彼女の攻撃部隊には、あの“切込隊長”槐新がいる。それなりに高い練度を伴った反撃がステラ副艦隊をジリ貧に追い込むが、“切込隊長”茅森漣とその小隊は、旗艦ステラ・パレットを討ち取られまいと奮迅し、槐新の小隊と交戦。一方“落葉の桜”ビビアナ・サリニャーナはアレックス小隊とエルシェ小隊を引き連れて大型狙撃艦に怒涛の攻撃を浴びせる。が、大型艦の耐久力と防御力は尋常ではないほど高かった。しかし倒す必要はない。ステラ副艦隊の目標は狙撃の阻止と合流までの時間稼ぎである。その目標は達成された。

 

 水平線に日が落ちる頃。御船艦隊が到着。ステラ副艦隊の尽力によって狙撃が止んでいた間に急接近していた御船艦隊はステラ副艦隊とようやくの合流を果たす。そして“副提督”ステラ・パレットは指揮の全権を“総提督”御船真瀬に預け、御船艦隊の全てが一致団結することで本領を発揮。“狙撃手”エドガー・フェザーストンによる改造したフルンベルの狙撃砲は、“観測手”ニコラ・ハドソンによる測量により百発百中の精度を誇って槐新の攻撃艦隊とミハイル・スルコフの大型狙撃艦を穿っては削り、貫いては吹き飛ばす。かくして御船全艦隊は狙撃封じの奇襲合流作戦、名付けてプランBの臨機応変な作戦により、ミハイル艦隊の旗艦を討ち取ることに成功した。ミハイル艦隊の吸収手続きを済ませる。

 

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 時刻は夜。不意に本多艦隊の艦影を確認。満身創痍の御船艦隊は連戦を覚悟する。そこに青桐艦隊が現れた。青桐艦隊の位置は本多艦隊の攻撃を物言わず牽制している。そこで“総提督”青桐ガイルが“総提督”本多正信に提案する。

「自分を副提督にしてくれるなら軍門に降ってもいい」

 その言葉の意味とは。本多正信は一瞬で見破った。「一度艦隊に吸収されれば、その艦隊のデータを隅々まで閲覧することができる。その全データを持った上で、次の戦いでは副提督の権限を使い、独断専行で御船艦隊に突っ込んで、全力で戦うフリをしながらわざと敗北して御船艦隊に吸収されるつもりだな? そうすれば我が本多艦隊の情報を提供することができる。見え見えの罠だ。全人派はそこまで姑息な真似をして勝ちたいのか」

 青桐ガイルは真意を当てられた。うまくいけばそうなって欲しかったが、どのみち本多正信ほどの人物を出し抜けるわけがないと思っていたため、もとより挑発のつもりで口にしていた。

 

 そうやって会話をしている間に戦闘禁止期間が到来。本多艦隊は次の戦いで決着をつけると言って引き上げていった。青桐ガイルの位置取りと話術に助けられた御船真瀬は礼を言う。青桐ガイルの話術は常に意味深長で、必ず相手に考える時間を与えるものだった。先の御船艦隊との会話でもそうだったが、その弁舌において青桐ガイルの右に並ぶアドミラルはあまりいないかもしれない。

 

 かくして御船全艦隊はマップ上の◎における御船艦隊専用ドックに旗艦。藤本さちによれば本多艦隊は海月艦隊とシャーロット艦隊を吸収した模様。よって次は本多艦隊との決戦を想定し、御船艦隊は準備を進める。

 

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