ノア×コード 叛逆のジェラルド 星舟や海兵どもが夢の跡 作:形のない者
翌日。再編成したチームの連携能力を高めるため、総提督チームと副提督チームの対決という形で演習を繰り返す。一度の演習で双方の作戦会議に三十分、実践で三十分、合計一時間を費やし、全バトルアークの修理に一時間が掛かる。演習の戦歴は、いわば一軍と二軍の戦いであるため結果は歴然。御船艦隊が全戦全勝しており、ステラ艦隊は全敗を期した。しかし今回の演習は勝敗よりも味方との動きを合わせることに主眼を置いている。何度も演習を繰り返す中で一試合の戦闘時間が伸びており、ステラ艦隊は特に茅森小隊の副旗艦防衛の賜物でそうやすやすと討ち取られない展開が続いていた。やがて同チームでの演習は効率化を極めていき、互いに定石を発見していく。
御船艦隊のジジ小隊には、ステラ艦隊の茅森小隊を当て、その間に小型艦二小隊のニコラとフロラが御船艦隊の小型艦二小隊モニカと藤本と交戦。御船艦隊の後続たる中型艦二小隊エドガーとルチアの砲撃を補助や妨害のスキルで切り抜けていき、劣勢の中を副旗艦ステラ小隊が突撃する。ステラ艦隊の茅森とニコラとフロラの三小隊が攻撃に耐え切れる時間は少ない。その中をステラは毎回異なる方法で旗艦・御船真瀬を討ち取ろうと接近、攻撃を加える。するとファルファラが盾となってくるが、その操艦能力は未だ素人も同然。といってもアンドロイドだけあり学習能力が高く、水を飲むように次々とステラの戦法を覚えて次回の演習では対処してくる。そのためステラも毎回異なるやり方で旗艦を狙う必要があった。そしてフルンベルのチートじみた一撃を受けてニコラとフロラの二小隊が壊滅。ジジ単艦によって茅森小隊が撃滅され、最後は御船真瀬の攻撃で副旗艦ステラが撃破される。
昼食と休憩を挟みつつ七戦をこなす頃には日も暮れて演習は終了。勝敗はともかく互いの戦い方の癖を把握した御船真瀬とステラ・パレットは総提督室で反省会を執り行う。
翌日。今度は御船艦隊総出で出撃。敵はバトルアークに乗艦したAIロボット部隊。仮想敵は無論ビビアナ艦隊。難易度設定はノーマルから始める。まずは肩慣らしで連携の確認を取る。それも終われば難易度シビアで始めて、いよいよ腕試し。敵は二方面に分かれて戦闘を開始するよう設定し、御船艦隊も総提督チームと副提督チームに分かれて二面作戦を展開する。御船艦隊が敵の一軍と戦う中、その背後を突こうとしてくる敵の二軍をステラ艦隊が押し留める。ステラ艦隊は質量ともに劣勢で勝てる見込みはないが、だからこそ昨日の演習が効果を出してくる。誰が言ったか“連携に主眼を置くため勝敗は関係ないと頭では分かっているが、まるでいじめのようだ”と口にしつつ容赦なくカノン砲をぶち込んでいた高貴な人物は、なるほどステラ艦隊を劣勢に慣れさせる意図があったのかと合点がいく。明らかに物量差で押し切られる所をステラ艦隊は副提督の知恵と能力、茅森小隊の火力、ほかアドミラルのスキルで紙一重の中を生き残り、時間を稼ぎ、御船艦隊の背後を守る。そのあいだに御船艦隊は安全な状態で前方の敵に集中でき、ジジの機動力でかく乱、おびき寄せたところをフルンベルの一撃で屠る戦術で敵の旗艦を撃破、戦闘は勝利に終わる。
演習終了後、全員で反省会を行ったあと、夜食となり腹を満たす。そこでステラ・パレットは御船真瀬に質問した。「ぶっちゃけ別の部隊を率いるだけなら副提督ではなく副官でいいのでは?」と。それに付け加えて「あ、でも、副提督が嫌だとか、そういう話ではないです」と補足する。それに御船真瀬は答えた。たしかに別働隊を率いるだけなら副提督にする必要はない。ただの戦闘員でも大勢の部隊を任せることはできる。それは規約上ルール違反ではない。ただ副提督にはメリットがある。それは副提督が敵の旗艦を討ち取った時、総提督の許可を取らずとも独自に“吸収手続き”を済ませられる点にある。正直、副提督のメリットはそれくらいしかない。それを聞いてステラは予想する。「ではビビアナ艦隊は副提督を要した別働隊を用意してくると? それを私の部隊が倒して吸収し、総提督の部隊に救援として駆けつける……的な」それはイイ線を行っていた。しかしビビアナ艦隊は副提督を使ってくることはないだろう。捕らぬ狸の皮算用と言ってしまえばそれまでだが、これはビビアナ艦隊を倒したあとの保険とでも思えばいい。この47セクターでの戦いを終えたあと、別のセクターに配置されたとき、きっと副提督としての立場が役に立つだろうから。そう言われて納得したステラは、いつか自分が御船真瀬の危機を救う時が来るのだろうかと想像した。
§
ある日のこと。ステラ・パレットは総提督室に呼び出された。そこで御船真瀬から古代兵法書の断章(その壱)を渡されたステラは、これを読んでみてくれと言われる。言われた通り読み進めていくと、すぐに古代兵法書なる書物の戦術的価値に気付いて興奮し、同時にこの書物が御船真瀬の強さのひとつでもあることを悟る。そして古代兵法書の素晴らしさについて少々語ったステラは、その場で夢中になって一夜のうちに読破せんとばかりにかじりついた。
やがて夜も更けてきたが、未だステラはブツブツと何かを呟いて古代兵法書から目を離せないでいる。そろそろ休んだ方がいいと御船真瀬は声を掛けるが、ステラは呼びかけに気付かない。まさかここまで食いつくとは、御船真瀬は苦笑いで様子を見守る。それからしばらくして、またちらりとステラのいるソファを見ると、そこには小さく寝息を立てている少女がいた。「まいったな……」そう言って頭を掻く御船真瀬は、よしと体に力を入れてステラを抱き上げる。そのままヴィエナ・アウッティの自室まで送り届け、彼女の案内でステラの自室を教えてもらい、寝台に寝かせて御船真瀬は去っていく。最後にヴィエナがステラの体に布団を掛けるが、そこでぼそりと声を掛けた。
「ねぇステラ。ホントは起きてるんでしょう?」
「ぎくっ……なんで分かったの?」
「ふふっ。顔が真っ赤だったから。……いつから寝たふりをしていたの?」
「えっと……廊下あたり……かな? なんか揺れるなぁと思ったら、お、お姫様抱っこされてて……あぁ、わたし寝ちゃったんだと思うと、なんかすっごく恥ずかしくなって、起きれなくて……」
「そう。そんなに夢中になって寝ちゃうまで、どこで何をしていたの?」
「いや……ちょっと本を読んでいて……。そ、そろそろ寝るね? 毛布、掛けてくれてありがとう、ヴィエナ」
「どういたしまして。それじゃ、おやすみなさい」
ヴィエナは退出する。消灯された寝室。布団の上で気恥ずかしい心地に襲われるステラは、ぼそりと文句を言う。
「もうっ……あのお兄さん、顔がいいからホント困る……」
そう呟いて布団の中に潜ったステラは眠りに就く。きっと明日も総提督室に言って古代兵法書を読みに行くが、今度は夢中になりすぎて居眠りしないよう気を付けよう……そう強く思いながら。
§
自由時間で暇を持て余す昼間。ステラ・パレットは御船真瀬の紅茶が恋しく思い、総提督室に向かっていた。ドアをノックして入室。すると、そこには意外な人物がいた。机の上で教科書を開き、顔を突き合わせているのは御船真瀬とジジ・ヴァイオレット。ジジは勉強を教えてもらっている所を見られて気恥ずかしく思ったのか誤魔化しにかかるが、ニヤケ顔のステラは「へぇ~? あのジジが誰かに懐くなんてねぇ~?」とからかう。そう言うステラは何用なのかとジジは問いかける。もちろん紅茶をご馳走になろうかと思ってとステラは言って慣れたようにソファに座る。
「たしかに御船真瀬の紅茶は絶品ですが……ステラはそれだけの理由で訪れているのですか?」
「そうだよ? まぁここ、珍しい本がいっぱいあるから、それを読みに来てるってのもあるけどね!」
御船真瀬に振る舞われた紅茶を嗜みつつ二人の少女は語らう。やがてファルファラや藤本さち、モニカ・ランドールも訪れて、今や総提督室は憩いの場のようになっていた。