アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
本章のクロスオーバー先:おりこ☆マギカ
【これより超直感と未来予知のハイパー読み合い済みバトルと行きましょう……】美国織莉子
とある少女の話をしよう。
彼女の名は
幼少期の美国織莉子は、母親が亡くなった時、嘆き悲しむ父親の後ろ姿を目にして悟りを得たように確信した。「これからは自分がしっかり者になって家を支えよう」────そう決意したのだ。
しっかり者とは、すなわち母親のような大人になること。幼いながらも聡明だった美国織莉子は、漠然とではなく明確な焦りを感じていたのだろう。今まで母親が成し遂げていた仕事を完璧に引き継いだ美国織莉子は、毎日仕事に出かける父親を健気に支えていった。
その影響か、年齢にそぐわぬ言動が目立ち、子供らしくない思考が日常的となった。周囲からは「大人っぽい」「きちんとしている」と感心されたり驚かれたり、時には「子供とは思えない」と不気味がられることもあった。
そんな美国織莉子は内心どう思っていたのか。実のところ本心では、子供ゆえの弱さや幼さをさらけ出して甘えられる相手を常に求めていた。それは“愛情の渇望”とも換言できる。その反動か、年相応に誰かに甘える子供を見ると、妙な嫉妬心や激しい嫌悪感が身を焦がし、半ば殺意さえ抱くこともあった。
時は流れ、中学に上がった頃。幼い頃から政治改革や救国について父親から語り聞いていた美国織莉子は、この国をより良くするためにはどうすればいいのか常日頃から考えていた。将来は父のような政治家になるのか。それとも母のような役割をこなすのか。そのとき自分は国のために何ができるのか。
そんな時に事件が起きた。政治家である父の汚職疑惑が浮上し、精神を苛まれた父親は自殺した。その日から美国織莉子の環境は激変。昨日まで「名家の
予想はしていたことだ。ドリルのような人間の心は、他人の傷口をわざわざ抉って、自主性のなきまま手の平を返す。それはもはや人類の伝統芸能・弱き人間の習性と言えるだろう。しかし、そうやっていくら達観しても、自分の心は思いのほか傷付けられて参ってしまった。
そして美国織莉子は思い知った。今まで自分は「美国織莉子」という一人の人間として見られていたわけではなく、幼い頃からずっと「政治家の娘」として見られていたことに。──否、それは以前から察していたことだ。薄々とではない。ハッキリと。だが見ないようにしていた。現実を。しかし今回の一件で直視せざるを得なくなり、巧く躱して逃げていた現実をまざまざと突きつけられてショックを受けた。
誰も言ってくれなかった。「親の罪に子は関係ない」と。
誰も慰めることはなかった。「ほら見てあの子が犯罪者の娘だよ」と。
光に満ちあふれた人生を歩んでいると信じていたかった。
救国の為に何を成すか誰よりも考えていたのに、誰も国も自分を救ってはくれなかった。
「────元気出せよ、
そんな時、たった一人だけ。周囲の目を物ともせず、
「人の絆は脆い……とか思ってる? それは違うよ。だってそもそもクラスのみんなは、おりこのことを一人の人間として見ていなかったんだから。よって初めから絆もクソもない! ただ君は人に恵まれなかっただけだ。だから人に絶望するのはまだ早いよ。だってほら、おりこには私がいるじゃん! なら、まだ行けるだろう?」
そうだ。その通りだ。絶望するには早かった。美国織莉子には希望の助けとなる強い人間が、まだそばに居てくれたのだから。そうやって親友に勇気づけられた美国織莉子は、両目に希望の光を灯して立ち上がった。
そんな折、美国織莉子はキュゥべえと出会う。
今まで父のため「大人」として生きてきたが、その父を失った今、何をすればいいのか分からなくなっていた。親友を手に入れたおかげで生きる希望は湧いてきたが、家族を失ったせいでどう生きていけばいいのか分からない。父の汚職疑惑によって社会的にも肩身が狭い。よって将来の展望どころか明日の過ごし方さえ見失った。故に願い事は一つしかない。そのために美国織莉子は願いを告げた。
────《私が生きる意味を知りたい》……と。
常に国の将来を考えていた。
故に、将来の意味を知る方法を求めた。
かくしてキュゥべえとの契約の結果、魔法少女となった美国織莉子は《未来予知》の魔法を手に入れた。が、次の瞬間、美国織莉子は
それは半年後の
業火の海となって
カイコガのような白い魔女の羽化。
超大型魔女ワルプルギスの夜の到来。
鹿目まどかの魔女化により
地球最後の人類“悪魔と女神と狂獣”の
その後のビジョンはテレビの砂嵐のように乱れて途切れ、地球の未来はお先真っ暗。
────それが美国織莉子の予知した未来だった。
美国織莉子は世界の終焉を目の当たりにして絶句する。だが怯えている暇はない。世界の危機を知って、もはや周囲の白い目を気にしている場合ではなくなった美国織莉子は、父の教えである“救国”のため、どんな手を尽くしてでも
「これが……私の生きる意味……!」
それから美国織莉子の長い戦いが始まった。
まず美国織莉子は計画を立てる。目的は鹿目まどかの暗殺。彼女だけは絶対に魔女化させてはならない。だが鹿目まどかは巴マミの誘いに乗って、既に魔法少女になっていた。未来予知すると、そのどれもが“鹿目まどかに敗北する美国織莉子”のビジョンとなる。暗殺は容易ではないと判断した美国織莉子は、まず暗殺のため力を蓄える方針に転換した。
そのため美国織莉子は魔法を調べる。未来予知魔法の使い方。特徴。傾向。仮説と検証の繰り返し。結果、未来予知に対する理解が深まり、戦略・戦術・戦闘といった分野で未来予知の魔法が使い物になるよう、魔法の熟練度を完成させた。
そうして美国織莉子は、徐々に魔法少女の世界に慣れていき、鹿目まどか暗殺計画の準備を着々と進めていく。しかし世界のためとはいえ人を殺すことに
そんな時、突発的に未来予知の魔法が発動した。実は美国織莉子の未来予知は、願いを叶えた直後のように突然発動する事がある。こういった未来予知はコントロールすることができず、ただ棒立ちとなってビジョンを視るしか方法がない。
それは鹿目まどかの日常。
彼女の父と母と弟の花のような笑顔。
両親の愛情を一身に受けて日々を暮らす平凡で満足で幸福な光景。
────
美国織莉子の中でうねり狂う冷たい殺意。それは日増しに高まっていた。まるで宇宙の意志が“お前にとって憎い鹿目まどかを殺せ”と背中を押すように……美国織莉子は毎晩“赤の他人のシアワセな夢”を
さらに美国織莉子は、グリーフシード調達のため魔女狩りをする関係上、たびたびグリーフシードの強奪や縄張り争いに巻き込まれた。美国織莉子は降りかかる火の粉を払うため邪魔な魔法少女の未来を予知する。だがそのたび彼女たちの弱さや甘えを何度も目にする羽目になった。親に甘え、友に甘え、周囲に甘える、醜い弱さ。それは美国織莉子が最もしたかったことで、最もできなかったこと。その結果、彼女たちへの嫉妬心や嫌悪感が抑えきれず、時には罪悪感より殺意が勝ることもあり、計画のためなら容赦なく
しかし慈悲深さまで捨てたわけではない。それは計画に必要な人材を篭絡するために使える手練手管、すなわち人心掌握術である。人望なくして計画は成し遂げられない。美国織莉子の温厚非情・表裏一体なやり方は加速する。
そうやって美国織莉子は、自らに忠誠を誓う右腕を用立てた。名を
そして時は
「今こそ好機ね……」
美国織莉子は最後の仕上げに未来予知を繰り返す。鹿目まどかを殺す未来を視るために。完璧に計画を遂行するために。そのためには一度の失敗も許されない。未来という外堀を埋めて確実に始末する。
赤い魔法少女と緑の幼女。
暁美ほむら。
鹿目まどか。
茶髪の少年。
茶髪の少年。
茶髪の少年。
茶髪の少年。
茶髪の少年。
茶髪の少年。
茶髪の少年────
「っ……!? なに……!?」
美国織莉子は驚愕した。鹿目まどか殺害まで後一歩のところで、毎回毎回、
「ウソでしょ……まさかこの子……
無敵かと思われた未来予知を
「いったい何者なの……? いえ、そんなことを考えている時間はない……なんとしてでも、この“悪魔”の
でなければ勝算はない。莫大な魔力を使い、何度も何度も未来予知を繰り返した美国織莉子は、とうとう
「さぁ……悪魔。既に勝負は
これより超直感と未来予知の
かくして準備を整えた美国織莉子は神浜市に赴く。
あらゆる未来の外堀を埋めて、確実に鹿目まどかを葬るため。
(────確定? “終わらない逆転劇”の間違いじゃないか?)
「……言ってなさい。勝つのは、わたしよ……」
逆転とは、誰にとっての逆転なのか。
突発的な未来予知の中で語りかけてきた悪魔。
それにゾクゾクとした興奮の怖気を抱きながら、美国織莉子は自宅を後にした。
/
────全知の神からすれば、
そこから眺める世界の驚きなど、現実味のない演目に過ぎない。
美国織莉子
/
────しかし全知の神にも弱点がある。それは人の心の中までは視えないことだ。
悪魔はそれを指差してあざ笑う。偽神が思い上がったと。
今までの未来予知能力者たち
†