※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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第1.9章 環作万年桜噂 ギフト・フォーエバー ‐四人の再会を祝福するように‐



第1.9章 環作万年桜噂 ギフト・フォーエバー ‐四人の再会を祝福するように‐
4月15日(土曜日)【髪をほどいた風呂上がりのほむらちゃんって、色っぽいね!】鹿目まどか


 

 みかづき荘の早朝。

 

「おはようなのですぅ~……」

「おはようございます」

「モキュ~」

「起きましたぁ~」

「おはようさん……お、いい匂いがしてるじゃねぇか」

「まだにぇむいよぉ……」

 

 二階の寝室から下りてくるは五人と一匹。チーズ柄のナイトキャップとパジャマを着た百江なぎさは大きなあくびをしつつ、既に制服に着替えている環いろはとその肩に乗るリリス、同じく制服姿の鹿目まどか、あくびする佐倉杏子と目をこする千歳ゆま達は、料理が揃った食卓に着く。

 

「おはよう。うがい手洗いは二階で済ませた?」

「バッチリなのです。目やにも付いていないのです」

「私もです」

「モキュー!」

「ただ、ほむらちゃんが起きてこなくて……」

「アタシとゆまはオッケーだぜ」

「ゆまはね、洗面所に届かなかったけど、キョーコが高い高いで持ち上げてくれた!」

 

 七海やちよは背の低い子のために踏み台を用意しようかと考える。

 そして噂をすれば影がさす。廊下の奥からホカホカ具合の暁美ほむらが現れた。パジャマ姿で首にタオルを巻いている。髪も濡れており風呂上がりのようだ。

 

「あら。朝風呂? 珍しいわね。水道の出が悪いと思ってたら、やっぱり誰か入ってたの」

「あ、ごめんなさい!」

「いえ。いいのよ。今日はこんなにいいお天気なんだもの。私もあとでシャワー浴びようかしら」

「……! あ、あの、お掃除しておきましたので! 入っても大丈夫です!」

「……? お掃除までしてくれたの? それはありがとう……」

 

 やけにテンパっている暁美ほむらは真っ赤な顔で食卓に着く。そして深呼吸。

 一方、事情を把握した百江なぎさは興味なしと無視し、佐倉杏子は無言で迎え入れる。どちらも無視した方が本人の為になると知ってのことだ。経験者は内心でそう語る。

 

「それじゃあみんな席に揃ったので食べるのです! いただきますなのです~!」

「まだ私が座ってないでしょ」

「いただきまーす」

「いただきますっ!」

 

 七海やちよが座る直前に両手を合わせた百江なぎさは、彼女が座ると同時に箸を手に取って食べ始める。佐倉杏子も一応は礼を口にして箸を手に取り、千歳ゆまは傍らの佐倉杏子の真似をして礼儀を尽くし箸を手に取った。

 

「いただきます」

「い、いただきます……」

 

 平静に両手を合わせた環いろはは箸を手に取るが、それとは対照的に暁美ほむらは片手で胸を押さえながら箸を手に取った。それを横目に眺めつつ首をかしげる鹿目まどかは「いただきます」と両手を合わせ、白米をつまんだ箸を口元に持っていきながら傍らの暁美ほむらを観察していた。

 

 心臓が痛いのか、緊張しているのか、動悸が止まらないのか。

 食べ物が喉を通らない様子の暁美ほむらは、またも深呼吸を繰り返す。

 

「……ほむらちゃん。大丈夫?」

「え?! な、なにが!?」

 

 見るからに挙動不審の暁美ほむら。その顔は真っ赤。最初は風呂上がりの体温上昇と思っていた一同だが、徐々に暁美ほむらの身に何かが起きたのかと疑問を膨らませる。

 

 その時、階段から足音。二階から降りてきた悪魔は普段の私服(パーカー)姿で外出しようとする。

 

「おはよう」

「────っ!」

 

 悪魔の声にドキリと反応する暁美ほむら。

 そこで環いろはが呼び止めた。

 

「悪魔さん。今日って用事ありますか?」

「? なにか頼みごとか?」

「はい。実は話がありまして……長くなるので朝食後にしたいんですが……」

「…………分かった。ゆっくり食え。庭の椅子で寝てるから」

「! ありがとうございます!」

 

 頭を下げた環いろはは食卓に戻る。七海やちよは目をつむって水を一口。百江なぎさはご飯とおかずとチーズの三色食べ。リリスは食パンの耳を食いちぎるのに苦労してムシャムシャと食べる。一方の暁美ほむらは深呼吸。悪魔が部屋から去ると、なんとか普段の調子を引き戻したのか、髪を耳元にかきあげて食べ始める。それを見つめていた鹿目まどかは、なんとなく友人の表情が艶めいているように感じた。

 

「……なんか、髪をほどいた風呂上がりのほむらちゃんって、色っぽいね!」

「────!!?!?!?!」

「あ……ご、ごめんね! 変な意味じゃないの! 濡れた髪が長いと、なんか大人に見えるなーって思って! 普段のおさげなほむらちゃんは“かわいい”って印象が強いから!」

「……! そ、そんなこと、ないよ……」

 

 鹿目まどかに褒められた暁には、頬の熱は赤色を通り越して紅蓮のような深紅に染まる。頭頂から熱気が蒸発する音。大人の階段を一歩登ってしまった──不思議な自信が混じる──羞恥と、好きな人に褒められた嬉しい羞恥は、掛け合わせれば慙死(ざんし)に至る。

 

 かくして食事を済ませた者から「ごちそうさま」と席を立ち、各々の行動に移る。

 

 いち早く食べ終えた暁美ほむらは巴マミの捜索のため外出し、鹿目まどかを待つ。

 佐倉杏子と千歳ゆまは「また衣食住に困ったら来るぜ」「またねー! みかづき荘のお姉ちゃん!」と立ち去る。

 鹿目まどかは見滝原市の学校に登校。美国織莉子に命を狙われた昨日の今日なので、護衛の暁美ほむらが美樹さやかに護衛役をバトンタッチするまで同行することに。

 百江なぎさは庭から聞こえるナッツとチーズのはしゃぐ声が気になって遊びに行く。

 

「あとは私たちだけですね」

「モキュ!」

「そうね」

 

 最後に残った環いろはとリリス、七海やちよは、庭に出て揺り椅子に揺れる悪魔に声を掛けた。庭ではナッツとチーズと百江なぎさが芝生の上で転がってじゃれあっている。

 

「あの、悪魔さん!」

「────用件は妹の搜索だろ?」

「……!」

「オレの《助太刀》魔法……有り体に言えば、顔(・)と(・)名(・)前(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)友(・)人(・)の(・)下(・)に(・)飛(・)べ(・)る(・)瞬(・)間(・)移(・)動(・)魔(・)法(・)を使えば、ひとっ飛びで環ういの居る場所に行ける。いつか頼まれるとは思っていた」

「……ま、まさにその通りです……で(・)も(・)……」

「そう。で(・)も(・)そのためには、オ(・)レ(・)が(・)環(・)う(・)い(・)の(・)顔(・)を(・)知(・)る(・)必要がある。話を聞くに、環ういはいつの間にか世界から消えており、環いろは含め両親もその存在を忘却していた……その状態では環ういの顔写真も残っていないだろう。つまり現時点では、オレに環ういがどんな顔をしているのか教えるのは不可能だ」

「……で(・)も(・)、ういの顔を悪魔さんに見せる可能性が見つかったんです」

「詳しい話を聴こう」

 

 悪魔は席を立ち、庭に置かれたテーブルを取り囲む椅子に座り直す。

 その周りに環いろはと七海やちよも座った。

 

「絶交ルールのウワサを倒したあと、少しだけ記憶が戻ったんです。実は忘れていたのは妹のういだけじゃなくて、その友達……私の大切な友達でもある、里見灯花と柊ねむという少女ふたりも、世界から消えていたんです」

「……里見……?」

 

 悪魔は一瞬、湯国市の出来事が脳裏をよぎる。だが苗字が同じ人間なんぞごまんといるため、その苗字はすぐに脳の片隅に置いやった。

 

「灯花ちゃんとねむちゃんも病弱で、ういと同じ病室で育った三人組の親友なんです。それでウワサを倒した後、三人が入院していたはずの里見メディカルセンターに行って──レナちゃんたちの協力もあって──調べたんですけど、どこにも三人の記録はありませんでした……」

 

 環いろはは肩を落とす。

 そこで悪魔は思う。自分が栄区でアリナと親睦を深めていた時に、そこまで進んでいたのかと。

 

「その後は手掛かりゼロで、あっという間に五日が過ぎてしまい……ちょうどももこさんたちに用事があって、神浜市を探索できない時、悪魔さんに師事をお願いしたというわけです」

「なるほどな。それで神浜市の魔女を倒し、グリーフシードをゲット。やちよから“神浜市で生きていける”と認められて単独行動が許された。その後すぐ調整屋に向かい、グリーフシードを対価として《調整》を受けた。その時────ま(・)た(・)思(・)い(・)出(・)し(・)た(・)んだな?」

「はい。調整は魂を直接いじるという事なので、その反動で思い出したのかもしれません」

「それで? 思い出した記憶の内容は?」

 

 環いろはは語る。

 

「いつもの病室の中で、私とうい、灯花ちゃんとねむちゃんが、“うわさ作り”をしていた記憶なんです……」

「……!」

 

 悪魔は思わず七海やちよを見る。彼女は目を伏せて腕と足を組んでいた。

 

「なるほど。道理でやちよも同席しているはずだ」

「で、でも! あんな凶暴なウワサとは違うんです! あくまで遊びの一環で……」

 

 環うい。里見灯花。柊ねむ。その三人は社会の授業で外出した日、病室からでは見られない外の世界に触れて大きな興味を持った。三人はホワイトボードに神浜市の地図を大きく貼り付け、病院に来る様々な人たちに神浜市のオススメスポットを尋ね、そのスポットの写真を譲り受けたり、環いろはが撮りに行ったりすることで、どんどんい(・)つ(・)か(・)行(・)き(・)た(・)い(・)神(・)浜(・)市(・)の(・)地(・)図(・)を作り上げていった。

 

 やがて神浜市の地図がオススメスポットを指し示すカラフルなピンと写真で埋まった時。三人はまだまだ遊びを楽しむため、今度は架空のスポットを作ることにした。それが“うわさ作り”……子供が色々な事を頭の中で想像して遊ぶように、面白おかしいお話を考えて、そのお話の舞台となる場所を神浜市の地図にピンで指し示して記していった。しかし架空のお話では“写真”は用意できない。よって代わりとして、スケッチブックに想像上のスポットを描くことにした。

 

「みんなでお話を作って、みんなでお話に出てくるキャラクターの絵を描いて、神浜市の地図に書き足していく……その遊びには私も混ざっていて、私は一つの“うわさ”を考えていたんです。それが────“万年桜のうわさ”────」

「…………。つまり、もし“ウワサ”の存在が、お前たちの“うわさ作り”に関わっていた場合……その“万年桜のうわさ”も“ウワサ”としてあるかもしれない……と?」

「もしかしたら、ただの偶然の一致かもしれません……みんなでホラースポットを考えた事もあったけど、私とういは怖がってあまり作らなかったので……“絶交ルールのうわさ”なんて記憶にないですし……」

「カラダ探しのウワサは? オレは先日それに巻き込まれた」

「えっ……それってどんなのですか!?」

 

 悪魔は簡潔に説明する。カラダ探しのウワサとは、人間の体を八つに分割したモノを全て見つけきるまで“赤い人”と言われる敵性存在に殺され続けるデス・ゲームであったと。

 

「そ……そんな怖いウワサに巻き込まれていたんですか!?」

「すぐに潰したがな。オレも一回殺された。仮想空間上だったから本当に死ぬことはなかったが」

「────でも、それならやっぱり、私たちの“うわさ作り”と“ウワサ”は関係ないのかな……? 悪魔さんが言うように、そんな悪趣味なお話は……小説家のねむちゃんなら作りそうだけど……私が怖がると思って作るのをやめてくれそうだから……」

「そのあたりは今考えても仕方がない。問題なのは類似点が多すぎることだ。やちよもそこが気に掛かっているんだろう。環いろはの記憶が真実であれば、一気に“ウワサ”の真相に近付くことになる。そもそもその真偽を確かめるため、これから“万年桜”を探しに行くつもりなんだろう?」

 

 悪魔は立ち上がる。続いて環いろはも立ち上がった。

 しかし七海やちよは座ったまま動かない。

 

「……やちよは来ないのか?」

「私にはほかにやることがあるからね」

 

 七海やちよは神浜ウワサファイルを取り出す。

 

「環さんの記憶が真実であれば、それで良し。一気に真相に近付ける。でもその記憶が何かしらの罠や嘘だったら? 徒労に終わる可能性に時間を使うのは本人だけで構わないわ。その間に私は悪趣味なウワサを一つずつ確実に潰していく」

「つまり役割分担か。いろはは真相究明。やちよはウワサ退治。さしずめオレはいろはの護衛か」

「勘違いしないで。私は環さんの実力を認めたわ。環さんの妹探しには、あなたの瞬間移動魔法が必要。つまり環さんは悪魔の監視役。あなた、自分の立場を忘れてない?」

「そういえばそうだった。しかしそれなら、なぎさは?」

「これから私と一緒にウワサ巡りのツアーよ」

「えー! なぎさはこれから神浜チーズツアーに行こうと思ってたのにー!」

 

 百江なぎさからブーイングが飛ぶ。席を立った七海やちよは彼女の首根っこを引きずってリビングに戻った。百江なぎさに抱き締められていたチーズはそれに巻き込まれて連れて行かれてしまう。

 

「やちよ! 離すのですー!」

「キュー!?」

 

「……それじゃあ、オレたちも行くか」

「はいっ!」

「行くぞ、ナッツ」

「ガウ!」

「行くよ、リリス!」

「モキュッ!」

 

 駆け出したナッツは悪魔の肩に乗り、リリスとその尻尾が環いろはの両肩に乗る。

 

「それで場所は?」

「北養区の山中にあります」

 

          †

 

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