アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
「──!」
「……!」
声が聴こえる。聞き覚えのある家族の声。聞き覚えのない動物の鳴き声。
眩い光に照らされてまどろむ
「うい!」
「モッキュー!」
夕暮れの調整屋。蒼海を思わせる光輝に包まれた幻想的な廃屋。広間に点在する様々な家具の中、白い寝台の上で目覚めた環ういは虚ろな瞳で姉の顔を見上げる。
「……お姉ちゃん……」
「そうだよ、うい!」
胸の上には、猫のような白い生物がちょこんと座る。紅い瞳がまるまるで可愛らしい。
「……キュゥ、べえ……?」
「モキュ? モキュー!」
「……今は“リリス”って言うの? そう……」
環ういは起き上がろうとする。頭痛。片目を抑えて痛みに耐える。
「うい!」
「いきなり動いたらダメよぉ~。半年も宝石の中で眠り姫の状態だったんでしょ? しばらく安静にしてね~」
「……半年?」
八雲みたまは調整中に環ういの記憶を覗いた。それでマギウス創設に関する真相と、現在の環ういの状態を知ったが、このことは胸の内に秘めておく。
「うい。まだ寝てなきゃダメだよ」
「……っ。どいて、それどころじゃ……」
「え……?」
環ういは、自分をベッドの上に寝かせようとした環いろはの腕を押し返すと、頭を抱えながら床に立つ。だが歩くことはできないと気付き、仕方なくベッドの上に座って落ち着いた。
「…………あ、そうだ。うい、いくつか飲み物があるの。どれがいい?」
「…………温かいものがいい。それなら、どれでも」
「……そう……」
環いろははあったかいお茶を差し出して、環ういの指先と触れ合いつつ、強烈な違和感を抱いていた。
環ういの反応。表情。喋り方。対応。そのどれもが“いつもの環ういじゃない”と。
控えめな性格。人懐っこい性格。友達の為なら強く頑張る性格。いつも喧嘩する里見灯花と柊ねむの間に入り仲裁する温和な性格。その面影が今はどこにも見えない。
「……お姉ちゃんは、どうやって私を助けたの?」
「え?」
「私は魔法少女になった直後、魔力係数が足りなくて固有魔法《熱量回収》が暴走。穢れを吸収しすぎて魔女化したはず。そこから意識が途切れたかと思えば、次は宇宙のような空間の中で永劫に思える眠りに就いていた。でも実際は半年で救出された。……それなら灯花とねむはどこ?」
「ま、待って……! いきなりすぎて、何を言っているのか分からないよ、うい……!」
環いろはは違和感の正体に突き当たる。現実と合理を突き詰めたかのような思考回路は、まるで悪魔にも似た語り口。
そこで心の中でも噂をすれば影がさす。調整屋の扉が開かれて、外から二人の人間とウワサが入ってきた。
「あら、いらっしゃ~い。でもお客様じゃないみたいね~」
「邪魔するぞ、みたま」
「│いろは、うい……来ちゃった│」
悪魔と万年桜の登場。それに環いろはは目を疑って驚く。
「えっ……えぇ!? 悪魔さんは分かるけど、どうして万年桜さんがここに……」
「│悪魔に攻撃された。是非はともかくウワサの端末の私は自由になった│」
「好奇心は桜をも殺す。二度とオレに触れるな」
悪魔は苦々しい面持ちで席に着く。万年桜は環いろはと環ういを交互に見やり、初めて薄く微笑んだ。
「……悪魔?」
「あ、紹介するね、うい」
環いろはは悪魔と万年桜を紹介する。環ういを救出するため協力してくれた人間とウワサ。その存在に驚く環ういだが、あまり表情に変わりはない。どちらかといえば無表情。その様子は失感情症に近い。
「────……うい。何があったか説明してくれるか?」
「あ、待ってください悪魔さん。ういは今、目覚めたばかりで……」
「いいよ、お姉ちゃん。私も確かめたいことがある」
温かいお茶を飲んで落ち着いた環ういは、ペットボトルをリリスに渡して悪魔を見据える。リリスはお茶を飲みたいのかフタを開けるのに四苦八苦。小さな口を使ってなんとか開けると、チビチビと飲み始めてしっぽを振る。
環ういは語る。事の始まりを全て。
約半年前。環いろははキュゥべえと契約を交わし魔法少女になった。その代わり《環ういの病気を治して》という願いを叶えた。病気が治った環ういは、しばらく様子を見たあと退院する手はずになったが、その頃から環いろはがお見舞いに顔を出さなくなった。おかしいと思った環うい・里見灯花・柊ねむの三人は、久しぶりにお見舞いに来た環いろはの様子を観察し、心身ともに疲弊していると考察。三人は家に帰る環いろはを尾行。そこで不思議な空間・魔女結界に巻き込まれた。環いろはが魔女と戦う光景を目にして驚いているとキュゥべえが現れ、魔法少女と魔女の世界を知る。
里見灯花は、民俗学の研究をしている叔父・里見太助の研究資料を調べて更なる詳細を把握。里見灯花と柊ねむは、環いろはを魔女化の運命から救うため、自動浄化システムを作り上げる計画を立てた。それには三人の魔法少女が必要であるため、当然、環ういも参加した。その壮大な計画は、やがて全ての魔法少女を救うと信じて。
ある日の深夜。病院の屋上にキュゥべえを呼び寄せた三人は契約を誓う。願いは一律して《キュゥべえの機能が欲しい》というもの。しかし一人の魔力係数ではキュゥべえの全ての機能を手に入れることはできない。よって三つに分けて願い出た。
環ういは《熱量回収》を。
里見灯花は《熱量変換》を。
柊ねむは《熱量具現》を。
かくして三人は魔法少女になった。目の前のキュゥべえは機能を奪われた影響か
「……こんなところ」
「モキュ?」
「────なるほどな。エネルギーの相転移を利用した永久機関の作成か……キュゥべえ。またお前に聞かせるべきではない話を聞かせてしまったな」
「とても面白い話だった。環ういの情報が宇宙から消された理由と神浜市の現状が、これでようやく分かったよ。ただ魔女化とボクたちを遮る皮膜の存在が誰の手によるものなのかは不明だけどね。まぁここまでくれば、ある程度の予想はつくけど」
「……キュゥべえの声? どこかにいるの?」
悪魔はキュゥべえが入っている保存用匣を見せて腰に付け直す。
「この永久機関。インキュベーターからすれば実に初歩的な実験だが……この問題は放置か?」
「宇宙の熱的死を回避しつつ、更なる宇宙の膨張を図れるなら、この上ない美味な話だとは思うけどね」
「しばらくは様子見。付け狙う余地があるなら奪還。と言ったところか」
「さて……それは本当に、君たちの永久機関が
悪魔は将来的なインキュベーターとの全面戦争を直感する。だがそれは始まりの頃から望んでいたことだ。
「原因は判明した。ここからは“その後の話”と“現状確認”のターンだ。いろは、説明してやれ」
「え……?」
「お姉ちゃん。詳しいことはあとで話すから、この半年間、何がどうなっていたのか教えて」
環いろはは──なぜ魔法少女になろうと思ったのか。魔法少女を魔女化から救うとはどういうことなのか。なぜそうまでして危険を冒したのか──など、山ほどある聞きたいことを我慢して語る。
「────そんな感じで、先週までういのことを誰も覚えていなかったの……万年桜さんを除いて」
「そうなんだ……どういうことなんだろう……」
環ういのことを誰も覚えていない。しかしリリスのおかげで環いろはに記憶が戻った。
「ねぇ、うい。後で家に帰ってみよう? もしかしたらお母さんとお父さんも思い出すかも知れないから」
「うん。そうだね」
環ういは無表情で返す。そこで悪魔は、長らく思っていた妙な違和感を直感した。
「なぁ、いろは。お前の妹、少しおかしくないか?」
「え?」
「いや、今のは語弊を招く言い方だった。だがいろはも感じているんじゃないか? なにより、うい自身が一番強く感じているはずだ」
「…………」
悪魔と環いろはは言い知れない違和感を指摘する。
それに頷いた環ういは口を開いた。
「……どう言えばいいのか分からないけど、なんだか
少し離れた席で紅茶を飲む八雲みたまは知らんぷり。
それを悪魔は直感しつつ、違和感について説明する。
「万年桜から環ういに関する記憶を見せてもらった時、ただの一枚絵のような姿を見せられただけだが、そこからある程度の性格は直感できた。人見知りな部分以外は、実に姉の環いろはに似た性格だ。しかし
「え? 悪魔さん。それってどういう……!」
「うい。さっきいろはから
「うん。記憶の中の私はもっと明るかったけど……なぜか今の私はすごく……すごく
環ういは自分の両手を見つめる。それは虚空を捉えている。たとえ目の前で人が死んでも何を感じる事はないだろう。その死人が環いろはであっても同様だ。以前の自分なら取り乱す。だが今の自分なら、どんな絶望が襲おうとも感情が揺らぐことはないと確信できる。そんな自分に記憶の中の環ういが恐怖を抱きそうで、しかし今の自分は恐怖すら
「以前の私なら、目が覚めた時、目の前にお姉ちゃんの顔があったら、絶対に嬉しくて泣き出したと思う。でもそうはならなかった。お姉ちゃんも驚いたよね?」
「それは……うん……正直、ういがういじゃない、とは思っちゃった……」
しかし目の前にいるのは確かに環ういその人である。
ふと八雲みたまは、悪魔に見つめられている事に気付いた。
「なぜ伏せる?」
「あら。いきなりなに? 前に言わなかったかしら。調整屋は中立。どうしても魔法少女の頭の中を覗いてしまうお仕事だもの。情報は秘密にするのがモラルでしょ~?」
「その割には、際限なく罪悪感が増幅しているようだが」
「────っ!? あなた、心が読めるの……?」
八雲みたまはマズイと思ったのか席を立ち、奥の部屋に去ってしまう。
「……?」
「みたまは原因であるが元凶ではなく単なる部外者だ。──それより“現状確認”に移る。環ういの状況についてオレの推論を話す。根拠に乏しいが的は射ているはずだ。ういも記憶の自分と現在の自分に著しい矛盾があれば気が気でないだろう。感情がないから精神に影響はないが、少なからず魂と肉体に“苦痛”は感じているはずだ」
環ういはこくりと頷く。
「ではまず、魂と精神と肉体の三要素があるとする。次に現場には、魔法少女となった環うい・里見灯花・柊ねむがいて、機能を奪われて空っぽになった
「モキュ!? モキュキュー?」
やっぱり小さくなったキュゥべえって自分なの? と言うようにリリスは驚いて首をかしげる。
その驚きは環いろはも同様だった。
「そして環ういが魔女化しかかった時、おそらく里見灯花の変換魔法によって“環ういの精神”が、小さなキュゥべえの中に《変換》された。
「……じゃあ、ういに感情がないっていうのは……」
「私の
「モキュ?」
「──……おそらく、それは少し違う」
悪魔は続きを語る。
「環ういの中に精神がなければ万全な知性活動は行えない。お前たちの計画は永久機関の完成だ。QB契約による魔法少女システムは願いの力に起因する。精神がなければ願いは発生しない。つまり精神がなければ魔法を十全に使えない。環ういが半魔女になった状況でも計画の続行を謳うなら、白いカイコガのような半魔女には“熱量回収”の仕事をしてもらいたかったはずだ。となれば、その状況化では柊ねむが動くしかない」
魂や肉体だけの存在でも命令をインプットすれば知性活動自体は可能だ。つまり白いカイコガのような半魔女に精神がなくても稼働自体は可能である。現に熱量回収の仕事を今も続けているからこそ、絶交ルールのウワサの時、神浜市にいる魔法少女の穢れが回収されることで、水波レナと秋野かえでの魔女化が寸前で食い止められて半魔女化に落ち着いた。
しかしそうなると矛盾が生じる。精神を抜かれたままの環ういが、もし寝台の上で目を覚ませば、ゼロから精神の発達が始まるため、赤子のようになった環ういが目覚めていたはずだ。それは傍から見れば幼児退行に見える。だが目の前の環ういは年齢通りの精神を備えている。その矛盾を推理する。
「おそらく柊ねむは、環ういを半魔女化した状態から元に戻す希望を諦めず、何かしらの手を打った。手を打たずにはいられなかったんだ。そのため柊ねむは具現魔法で“魔女化しない環ういの精神”を創造し、それを環ういの精神空洞に栞を挟むように挿入した。────つまり今の環ういは、柊ねむが創造した仮想人格を
「えっ……模倣って……」
「……そっか。確かにねむちゃんなら、そんなことしちゃうかも」
「つまりは偽の人格だ。しかも非魔女化に特化した精神構造。ならば無感情にも説明がつく。柊ねむが思い描く理想の環ういの仮想人格だ。それが今の環ういの“気持ち”の正体。それを自分ではないと思うか、それでも自分だと思うかは……当人次第だ。うい」
「……うい……」
「…………」
環ういは押し黙る。思ったことは、不惑。となれば、悪魔の推論はある程度当たっているのかもしれないと思った。
対する環いろはは、偽の人格と言われてもピンと来ない。大事なのは環ういがどうして欲しいのかだ。妹のためになるよう寄り添いたいという思いが、環いろはを行動に移す。
「うい……」
「……抱き締められても、ありがたいと思えないのは、少し嫌だね」
「……っ!」
環いろはの瞳が震えて潤む。
そこで悪魔が口を開く。記憶と現在の気持ちのズレ。その
「これは人工知能に真の感情はないのか、そもそも真の感情とは何か、という哲学的問題に発展する代物だ。故にあまり気にすることはない。現に興味はないのだろう? 魂がソウルジェムとして物質化するのと同様に、精神が模擬人格としてぶち込まれたのと同様だ。魔法少女になるということは、魂が改造されるということ。そして永久機関の完成のためには、自分がどうなっても構わないと誓って願いを叶えたんだろう? ならば自業自得だ」
「──悪魔さん……!」
「いいよ、お姉ちゃん。その通りだから。私はあまり気にしていない。気にすることもできない。興味がない。それも
「ただし一ついいか? たとえ人格がオリジナルであろうと偽物であろうと複製に近い性質であろうと、精神や人格、価値観や倫理観は、あくまで環境が作り上げるものだ。後天的に自他が育成するものだ。自分探しの旅なんて、それの最たる例だろう。確かに今の環ういの精神構造は“模倣存在”であるかもしれない。だがそれは時間を掛けて多くの経験を得ることで“唯一無二の環うい”に近付いていく。無論アイデンティティの置き所は人によるが、これからの環ういは“本物”になっていくのだから、今すぐ考えすぎてわざわざ
「……うん」
「モッキュ!」
よく分からないけどそれは自分も同じだ、とリリスは鳴き声を上げる。
「そうだな。それはリリスも同じだ。こいつは空っぽの体に“環ういの精神”を移された時、そこで
「モッキュ!」
「ただし酷なことを敢えて言う。環ういの精神はリリスの中に保管されている。であれば双方の精神を交換すれば環ういは元に戻る」
「モキュ!?」
「知り合いにアシュリー・テイラーという魔法少女が居るんだが、彼女の固有魔法とオレの叛逆魔法を合わせれば元に戻すことは可能だ。どうする?」
「そんな……悪魔さん……!?」
リリスは冷や汗を流しつつ、環ういの無表情を見上げる。目と目が合う。深淵に誘われそうなうつろな瞳。何を考えているのか読めない。否、そもそも何も考えていないのかもしれない。
「……そんなひどいことはできません。リリスの気持ちを奪うなんて残酷な真似はできない……だから私はこのままでいいです」
「うい……!」
「キュ~……。……」
無感情とはいえ記憶を参考にしたのか、環ういの中に優しさが残っていると知った環いろはは礼を言うように抱き締める。無論、苦しい問題だ。手放しには喜べないし礼を言うべきではない。
リリスも安堵したが、それで本当に良いのだろうか。返すべきではないのだろうか、と考え込む。
「……確かに今までの私と比べたら、少しねむちゃんに近い考え方になっているかも。でも精神が変換される前の記憶はしっかりとあるので、全然問題はないように思います」
そこで環ういは目をつむり、ニコッと微笑みながら目を開く。
光る瞳。その表情は、いつもの環ういの通りに
「えっと……たぶん、普通の人ならもっと混乱するんだろうけど、私は少し、以前より心が強くなっているようだから……」
「そりゃあ魔女化に耐える精神構造を具現化されたわけだからな。こと“割り切りの良さ”に関しては他の追随を許さないだろう。“今までの環うい”は、柊ねむが理想とする“リアリストな環うい”に変わった、ということだ。しかし記憶は魂に根ざす。元の自分に戻りたいなら記憶を拠り所にすればいいし、そうでもないならせっかくの割り切りの良さを活かした考え方をどんどん身につけていけばいい。いずれにせよ、そのどれもが“将来の環うい”だ。元が偽物であれ、時を経れば真に勝ることもある。心とはそういう良質そうな曖昧さが売りなんだ」
「……ふふっ。なんだか病院のカウンセリングを受けているみたい」
一挙手一投足における振る舞いが全て演技だと直感する。おそらく環いろはに心配を掛けまいと始めたのだろうが、そんなもの姉の前には無意味だ。
「うい。無理しなくていいんだよ? ういがどんな状態でも、お姉ちゃんはういが無事で、苦しまずにいてくれれば、それだけでいいんだから……」
「お姉ちゃん……」
ならばと環ういは自然な状態────瞳から光が消えた無機質な
そこで悪魔は話を進めた。環ういの魂と肉体の苦痛が少し和らいだのを直感してのことだ。
「では、なぜ環ういに関する情報が世界から消えたのかと推理しよう。まずインキュベーターは“宇宙の意思の体現者”である。とある民俗学者がそう言っていた。それが本当なら、三人の願いで回収・変換・具現の願いを叶えた時、同時に“その要素”も取り入れてしまったのかもしれない。結果、宇宙の意思は環うい・里見灯花・柊ねむを操り、今の状況を作り上げたと推論できる」
「……?」
「宇宙の意思……たしか灯花ちゃんが似たようなことを言っていたような……」
「つまり環ういに関する情報を宇宙から抹消させたのは、それが
環ういはこくりと頷く。
「あの白いカイコガのような半魔女は、現在、環ういに代わり、神浜市に限定して機械的に穢れを回収している。それを里見灯花の変換魔法で穢れを純粋なエネルギーに変換。それだけでは魔力係数が足りずエネルギーに質量が伴わない──虚数である──ため、柊ねむの具現魔法で実体化させてプラスとなったエネルギーを宇宙に解き放つ。かくして永久機関の完成。環ういの存在を忘却した二人は、穢れという名のゴミを──例えるなら──電気に変換し、電力として具現化させ、宇宙を股にかけてあばれまわろうというわけだ」
「……暴れ、まわる……?」
「……?」
環姉妹は、悪魔のおかしな表現に疑問符を浮かべる。
「│……そろそろ家に帰ろう。いろは、うい│」
万年桜はういの腕を引っ張る。
悪魔も席を立ち、去り際に忠告。
「忘れたか? おそらくウワサを作り出しているのは柊ねむだと言ったはずだ。具現魔法を持つならそれも可能だろう。環ういの話を聞くに、里見灯花と柊ねむは随分と天才的でお転婆な少女らしい。それが宇宙の意思に従って動いているとなれば、まさにインキュベーターのような残酷無慈悲な活動をしている可能性が、これで飛躍的に高まった。ウワサを守る白黒のローブに身を包んだ魔法少女やスタンド使いからも見て取れるように、明らかに過剰な戦力を蓄えている。“何か”を相手に一戦やらかす気でいるのは間違いない。戦争の気配がしてきた。……あまり考えたくはない話だけどな……」
不穏な言葉を残し、悪魔はその場を後にする。
残された環いろはは、その言葉によって言い知れない不安を抱きつつ、環うい・万年桜と共に一旦、宝崎市の自宅に帰るのであった。
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