※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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第2章 水名口寄神社 アウグーリオ・ギャングスター ‐願いは為らず、だから勇んで駆け出して‐



第2章 水名口寄神社 アウグーリオ・ギャングスター ‐願いは為らず、だから勇んで駆け出して‐
4月16日【八雲みたまという魔法少女は“厄災を呼び込む器”なのですか?】百江なぎさ


 

 早朝。みかづき荘。

 食後、団欒できる居間に移った全員はソファに座り、今後の方針を定めるための会議を始める。

 

 壁を背に腕を組む悪魔。ソファに座る環いろは、環うい。その後ろに立つ万年桜。七海やちよ、暁美ほむら、鹿目まどかもソファに座るが、百江なぎさはソファの数が足りないため、まどかとほむらの間の背もたれに身を預けている。机の上ではナッツ、チーズ、リリスの動物組がカリカリむしゃむしゃと食事している。

 

 そこで七海やちよが口を開いた。

 

「では今まで得た情報をまとめるわ。まずは確定しているものから。絶交ルールのウワサを倒して一週間が経過した。その間、私となぎさは幾つかのウワサを潰し、悪魔もウワサを一つ潰した。そして昨日、環さんと悪魔は万年桜のウワサを辿って謎の植物園に佇む大型魔女から環うい(妹さん)を救出。彼女の記憶から里見灯花・柊ねむという人物と“自動浄化システム”という計画が判明した。

 そして、ここからは不確定な話。自動浄化システムというのは、神浜市に存在するソウルジェムの穢れを吸い上げる代物。おそらくソウルジェムの穢れがマックスになると、自動浄化システムによって穢れが吸われて魔女化が避けられる。ただし一定時間、半魔女という形態に変化し、あるいはそのまま魔女化する。システムが不完全なのかどうかは不明。妹さんによれば“自動浄化システムが完成したら、それは本当に幸(・)福(・)を(・)呼(・)ぶ(・)シ(・)ス(・)テ(・)ム(・)”らしい。というわけで、いつまでも白いカイコガのような半魔女と呼ぶわけにもいかないから、悪魔と環さんが発見した大型魔女は、仮称・幸福の魔女と呼ぶ。妹さんもその呼び方でしっくりくるみたいだし……」

 

 七海やちよは視線を向ける。頷く環姉妹。万年桜も異論なし。

 

「その一方で、神浜市にはウワサという謎の存在がはびこっている。これは人に危害を加えるモノが多く、人々を守るためには調査・解決しなければいけない相手である。悪魔によれば、自動浄化システムの開発者と繋がりがあるとのこと。だけど証拠がないから確定ではない。ただし頭の中にだけは留めておいてほしい」

 

 また、仮に悪魔の憶測が正しくて、自動浄化システムとウワサに関わりがあり、ウワサがなければシステムが稼働しないという代物なら、どのみちウワサは倒す必要があり、開発者をとっちめる必要がある。魔法少女のために他者を犠牲にすることを容認している思想を持つ可能性が高いため、目的はともかく方法が間違っているとして敵対は免れない。だが敵対するなら相応の代案を用意して然るべきと悪魔は進言。それが不可能なら────悪魔が代案を用意すると口に出した。

 

 それは昨日の夜に、悪魔と七海やちよが交わした会話内容。あまりに先を見越した話であるため、情報誤認を避けるためにも上述の全ては口に出さず、ともかく七海やちよはウワサ退治の気概を見せる。

 

「────よって、これからもウワサ退治を続けるわ。確かに万年桜のウワサのように、人間に無害なウワサも幾つか知ってる。それでも潰す必要があると判断したら潰してきた。私の方針はこんなところよ。環さんたちはこれからどうするのかしら?」

 

 環いろは、暁美ほむら、鹿目まどかが視線を交わす。

 

「あ、私は……灯花ちゃんとねむちゃんの捜索を続けます。だから方針はやちよさんと変わりません。悪魔さんとの修行後、お話して答えを貰った通り、一(・)緒(・)に(・)ウ(・)ワ(・)サ(・)を(・)調(・)べ(・)ま(・)す(・)。……それでいいよね? うい」

「うん。一緒にウワサを探す。それが灯花ちゃんとねむちゃんに近付ける唯一の方法だと思うから」

「……そうね。なら再び答えを言っておこうかしら。答えは“はい”よ、環さん。妹さん」

 

 七海やちよの顔がほころぶ。同じ目的を共有する者が増えて嬉しいのだろうか。

 

「それじゃあ私たち、ウワサ退治の仲間ですね! やちよさん!」

「いいえ、仲間じゃないわ」

「ふぇぇ!? ……この前、神浜市の単独行動を許されて、一緒にウワサを倒す約束をした時もそうでしたけど……やちよさんはよく分かりません……」

「何度も言うように、私たちはただの協力関係。チームは組んでも仲(・)間(・)じゃないわ。だから、そうね……これから環姉妹は、私の助手ということにしましょうか」

 

 やけに“仲間”というワードにこだわる七海やちよ。

 悪魔は静観し、暁美ほむらと鹿目まどかが口を開く。

 

「私はマミさんの捜索を続けます。でもウワサの多くが危険なものであることも知っているので、お手伝いできる時はさせてください!」

「わたしも同じです」

「そう……ありがとう、暁美さん、鹿目さん」

 

 次に百江なぎさが口を開く。

 

「なぎさの方針は不変なのです。常にチーズを求めての旅なのですよ。今は衣食住を負担してくれるマミが行方不明なので、やちよに寄生して雨風空腹を凌ぐのです。佐倉杏子みたいな生活は、なぎさには毒すぎるから真似したくないのです。よってこれからもよろしくなのですよ、やちよ」

「穀潰しが鼻ほじって偉そうにしてると、どうしてこうも簡単に腸が煮えくり返るような心地になるのかしらね……」

「お、落ち着いてください、やちよさん!」

 

 七海やちよはゲンコツを作ってわなわなと震える。百江なぎさはその反応を楽しむように甲高い声を上げて笑顔で逃げていった。それに釣られて動物組のチーズ、ナッツ、リリスが追いかける。彼らは階段を登っていき、みかづき荘で鬼ごっこが始まった。

 

 最後に悪魔が口を開く。

 

「これで終わったな。さっさとウワサを探しに行くぞ」

「待ちなさい。まだあなたの方針を聞いていないわ」

「特に変わらずだ。三人の蘇生とインキュベーターへの復讐。そのために今は栄総合学園に通っている」

「栄区に? ──あ、もしかして……だからこの頃、自室で絵画を描いてたの?」

「まぁな。しかし攻略難易度がAランクオーバーだから参ってるよ」

 

 悪魔はボソリと呟く。

 狂乱天賦のマッドアーティストたるアリナ・グレイ。彼女は現在、何かしらのアート製作に夢中なようで、それが終わってからではないと悪魔の計画に協力してくれない様子。ならばそれまでに親睦を深めようと行動するが、気難しい性格は超直感でも捉えきれない。その上さすがは魔境・神浜市。栄総合学園ではカラダ探しのウワサに巻き込まれ、環ういの搜索ではスタンドバトルに発展、どうも落ち着ける暇がない。

 

「先に外で待ってる。今日は日曜で学校もやってない。さっさとウワサを探しては潰して探し物に近付くぞ」

 

 みかづき荘を出た悪魔。

 方針会議は終わり、七海やちよは今日の行動を明確にする。

 

「悪魔の言う通り、今日は全員の探し物が見つかる日になるかもしれないわ」

 

 その言葉に環いろは、暁美ほむら、鹿目まどかが反応する。

 

「やちよさん、それって……」

「マミさんが見つかるんですか?」

「教えてください!」

 

「今日調べるウワサは“口寄せ神社のうわさ”よ。水名区で噂されている話で、とある神社で会いたい人の名前を絵馬に書き参拝すると本当に会える……という噂。もちろん、ただの“うわさ”で空振りに終わる可能性もある。それでも調べてみるだけの価値はあるでしょう?」

 

 七海やちよは立ち上がる。それに釣られて各々も立ち上がり、ちょうど百江なぎさもドタバタと降りてきた。

 

「まずは水名区の各地に散らばって多くの人から噂について話を聞く。そうやって情報を集めて真相に辿り着く。何か分かったら連絡して。私は水名区の中心から調査を始めるわ。環さんと妹さんは西側からはじめてちょうだい」

「あ、はい!」

「わかりました」

 

 七海やちよは颯爽とみかづき荘を出て行く。環姉妹も立ち上がり後を追いかけ、万年桜も付いていき、鹿目まどかと暁美ほむらも立ち上がる。

 

「ほむらちゃん。わたしたち、特に何も言われなかったけど……」

「えっと、たぶん……好(・)き(・)に(・)し(・)ろ(・)ってことじゃないかな? 環さんたちは“助手”だから、直接指示を受けたのかも」

「そっか。ならわたしたちは……東側かな? 一緒に行動した方がいいよね?」

「そうだね。あ、それと……ホントにちょっとだけ……ちょっとだけだけど……」

「……ほむらちゃん?」

「────水名区、観光名所みたいだから……ちょっとだけ、二人で歩いて回らない?」

「……! うん! いいよ! みんなには、ちょっと申し訳ないけどね……!」

「うん。だから、本当にちょっとだけ……ね!」

 

 微笑み合う鹿目まどかと暁美ほむらは手を繋いで家を出る。

 それを眺めていた百江なぎさは動物たちを引き連れて家を出て、門扉の前に立つ悪魔に飛びついた。

 

「クマ吉! なぎさたちも行くのです!」

「中央、西、東か……ならオレは北、お前は南だな」

「イヤなのです! 一緒に行くのです! 水名チーズ観光に行くのです!」

「────なんだ? なんで少し寂しがってるんだ?」

「別に寂しがってないのです! あとマミ用のお土産も買うのですよ!」

 

 百江なぎさに腕を引っ張られて、悪魔は水名区に連れて行かれる。それについて行くナッツ、チーズ、リリスは、悪魔の両肩と百江なぎさの頭の上に飛び乗った。

 

          †

 

 新西区・廃墟ビルの中。

 魔女の使い魔を相手に奮戦するは、藍色の魔法少女・八雲みたま。

 

「はぁっ──!」

 

 勇気を出して踏み込み接近。左手のハンカチを使い魔の体に被せ、そこに魔力を込めた右手による掌底を加える。調整とは現代風に言い換えればツボ押しのようなもの。良いツボを押せば体の調子が良くなるように、悪いツボを押せば体の調子は悪化する。時に秘孔や死の点とも呼ばれるそれを突いた途端、使い魔は絶命して魔力の塵となり風に吹き消えた。

 

「た、倒せた……! 百回くらい攻撃したかしら……まだまだダメね……もっと効率のいい攻撃方法を考えるべきかしら……」

 

 息せき切る八雲みたま。

 そこに男の声が反響する。

 

「調整屋に居ないからどこに行ったのかと思えば、健気に修業中だったか」

「────っ!? だれ!?」

「確率即死。悪くない発想だ。しかし複数に囲まれたら文字通り手の施しようがない。構築効果で武器を作成し、魔力操作による施術を上乗せした方がいいんじゃないか? こう……大剣で薙ぎ払うだけで、命中した対象の魔力回路を破壊するような……」

 

 八雲みたまは周囲を見渡す。ビルに声が反響して位置が掴めない。魔力感知。頭上に気配。

 

「つまり、もっと大雑把でいいんだ。いつも繊細な仕事をしているから癖になってるのか?」

「────っ! 悪魔……!」

 

 鉄骨の上に立つ悪魔と、その傍らに座る百江なぎさ。

 

「クマ吉。寄り道するのは別に構わないのです。ただ、ここに何の用なのです?」

「口寄せ神社のウワサについて聞きたくてな」

「……!」

 

 悪魔は飛び降りる。視線が交差。八雲みたまは警戒するように後ずさる。

 

「調整屋は中立という立場を遵守する。特に情報は慎重に扱う。なぜなら調整とは魔法少女の魂に触れて潜在能力を解放する技術。どうしても魂に触れた瞬間、その魔法少女の記憶を覗く形になる。無論、それを了承した上で魔法少女は調整を受けに来るわけだから、そこには何も問題はない」

「っ……何が言いたいの?」

「た(・)だ(・)の(・)隠(・)し(・)事(・)な(・)ら(・)首(・)は(・)突(・)っ(・)込(・)ま(・)な(・)い(・)という話だ。なぁ、みたま……お前、事の真相を全て知っているな? しかも、それを秘匿することを中(・)立(・)の(・)立(・)場(・)を(・)破(・)る(・)こ(・)と(・)として認識している。その有様で中立を語り情報を明かせないと宣うとはお笑い種だ。清廉潔白が売りの調整屋はいつからペテン師に成り果てた?」

「……なんとでも言ってちょうだい」

「罪の意識に苛まれてでも成し遂げたい“何か”があるのか?」

「あなたには関係のないことよ」

「ではオレが引き下がる為にも、一つだけ情報を教えてほしい。────口寄せ神社のウワサは水名区のどこにある?」

「────…………」

 

 悪魔は直感した。口寄せ神社のウワサは水名区に存在する。場所までは知らないが、神社に縁のある場所であるのは事実。そして出現時間を知らなければ辿り着けない。キーワードは逢(・)魔(・)が(・)時(・)……密やかなる逢瀬は暗闇がふさわしい。

 

「情報提供感謝する」

 

 悪魔は背中を見せる。

 自らを抱くように腕を庇う八雲みたまは冷や汗を流して呼び止めた。

 

「待って。このこと……みんなに話すの?」

「それは今から分かることだ」

 

 ふと魔力反応が多数。否、三つ。飛び降りてきたのはチームももこだった。

 

「お、見つけた! さっきそこで悪魔とバッタリ会ったんだけどさ、調整屋が居ないから探してて……」

「ちょっと悪魔! 見つけたんならさっさと教えなさいよ!」

「レナちゃん。いま見つけたのかもしれないでしょ?」

 

「ももこ……レナちゃん、かえでちゃん……」

「で、悪魔。調整屋と何を話してたんだ? 用があって来たんだろ?」

「もう済ませた。じゃあな」

 

 悪魔は立ち去る。それに付いていく百江なぎさ。

 見送る八雲みたまは、このことは内密にしてくれるのだと察する。

 

(でもどうして……?)

 

 それを知りたいなら、再び悪魔と話すしかない。

 とりあえずチームももこは調整を受けに来た様子。八雲みたまは使い魔との戦いで疲弊しているため、しばらく休んだら開店すると告げる。それまでお茶会を開くことに。

 

 和気あいあいとする廃墟街。そこを去った悪魔は一応、百江なぎさに告げておく。

 

「なぎさ。このことは……」

「なぎさは大人なので口は堅いのです。心配ご無用なのですよ」

「そっか。サンキューな」

「……でも、なぜ秘め事に加担するのです? 何か知ってるなら吐かせないのですか?」

「原因ではあるかもしれないが、元凶ではないからな。みたまはオレと同じなんだ。願い事の作用でその身に呪いを受けた者同士……多少のことは目をつむってやるかと思ってな」

「────なるほど……では八雲みたまという魔法少女は“厄災を呼び込む器”なのですか?」

「“逆転勝利を呼び込む器”のオレと同じく、な」

 

 八雲みたまの願い事。その詳細までは分からない。だが彼女の心境は、常にその願い事の作用ばかりに気を取られていた。自(・)分(・)が(・)神(・)浜(・)市(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)とでも言うように。そして彼女は無属性の魔法少女。その属性を持つ魔法少女は往々にして呪(・)い(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)願(・)い(・)を(・)叶(・)え(・)た(・)子が多い。となれば、ある程度の見当はつく。彼女は大東区の出身。神浜市では東西の軋轢で差別意識が根強いそうだ。その差別の渦中にあり、何かに絶望した所を狙いすますようにキュゥべえが契約を迫ってきたとしたら……感情の昂ぶりの弾みで恐(・)ろ(・)し(・)い(・)こ(・)と(・)を願ってしまった可能性は充分にある。その後、調整屋を開業。多くの魔法少女の心に触れて、そのたび罪悪感に苛まれる。その罪の意識の正体は、自らの願い事を後悔するようなもの。つまり自らの願いに多くの魔法少女が巻き込まれることを案じるような心情が読み取れる。しかし心の奥深くではまだ黒い炎の火種が燻っている。それは八雲みたまという少女を、それ以上に焼き焦がさんとする勢いがあった。

 

(もし復讐が目的だ(・)っ(・)た(・)なら“神浜市を滅ぼす存在になりたい”とでも願ったのかな……それはキュゥべえに聞けば分かることだが、他人のことを根掘り葉掘り聞くもんでもないし……改めて会う機会があれば腹を割って話すとしよう)

 

 八雲みたまは後回し。今は口寄せ神社のウワサを調査する。

 そうして悪魔と百江なぎさは水名区に飛び立った。

 

          †

 

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