アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
朱橋の大空間を落下しつつ、凄まじい銃撃戦が展開される。
暁美ほむらは増殖魔力で弾丸を無限複製。フルオートマチックの銃器と組み合わせることで無限連射を可能とする。ただしオーバーヒートに注意。が、魔力操作を極めつつあるが故に会得した修得魔法《
対する黒紫羽根はスタンド製の拳銃と弾丸を作成し、一見普通に見える弾丸を射出していた。
空中で弾丸が交差して激突、音響と火花を散らす。充満する火薬のにおい。リロード要らずの暁美ほむらは物量で押し切る。対する黒紫羽根は連射力で劣るがゆえ幾つか被弾するが、そのたび魔力の高速再生で肉体の傷を穴埋めする。
(ただ銃器を使うスタンド……? いや、それだけじゃない気がする……)
両者は朱橋の上に着地。直後、朱橋の裏に設置されていた爆弾が起爆。足元が崩れ落ちた。
「えっ……!?」
あらかじめ罠を仕掛けていたのか。黒紫羽根は無限の銃弾に追い込まれているように見えて、実際は暁美ほむらをこの場に誘導していた。突然足場を失くしたことでバランスを崩した暁美ほむらの片脚に一発の弾丸が命中する。
(っ……! ────《
それは空間操作魔法の一種。縮地魔法とも称されるそれは、数十メートル以内の空間に一瞬で移動する事を可能とする修得魔法。
壊れていない橋の上に着地した暁美ほむらは高速再生で貫通した傷口を穴埋めしつつ後退。が、不意に体が斜めに倒れた。
「え……?」
片脚に力が入らない。麻痺したような感覚。どういうことかと見下ろすと、スタンドの弾丸を受けた片脚はゴム風船のように膨らんで柔らかくなっていた。
「や、柔らかくて、まっすぐ立てない……?!」
足に力を入れても脱力する。地に足をつけても膝の関節からグラグラプルプルと揺れるため、まともに歩けない。
刹那、前方からマズルフラッシュ。
(っ! 《
単純な魔力障壁を眼前に作成。何発か被弾した瞬間、その魔力障壁はグニャグニャと柔らかくなり、自重により上からへにゃりと屈むように倒れてしまった。さらに前方からマズルフラッシュの連射。一枚の盾では一発の弾丸を受けただけで柔らかくなって使い物にならなくなる。そのため暁美ほむらは魔力障壁の派生魔法を行使した。
(──《
それは増殖魔力によって無数の盾を作り出す修得魔法。数量を増やすタイプの使い方だとこうなるが、もう一つ。体積を増やすタイプの使い方だと巨大な盾を作成する《
前方に浮遊する小さな盾にスタンドの弾丸が次々と命中。被弾した盾は柔軟となって盾の役割を失い撃墜される。
(撤退と考察する時間が欲しい……敵の周辺空間に構築魔力と遮断魔力による薄い結界を形成、その内部に《
それは魔法の盾の砂時計から流れ落ちる砂を魔力で遅らせることで任意の空間が遅延する修得魔法。《時間停止》魔法には劣るが、砂が落ちる速度も遅れるため、時間停止魔法を使うまでもない時にもっぱら使用する。
黒紫羽根の周辺空間が遷延し、動きが遅れ、発射される弾速も低下。暁美ほむらには空間の流れがゆっくりに見えるが、黒紫羽根にとっては暁美ほむらの動きが急に速くなったように見えていることだろう。
(盾の中にある砂時計の砂が落ちきると、私は《時間遡行》の魔法が使えなくなる……つまり二度と“やり直し”が出来なくなるということ。だから、時間操作魔法の一種でありながら砂時計の砂をあまり使わないこの魔法はとても使い勝手がいい……でも自分も相手も時間がゆっくりになってしまうのが玉に瑕だった。でも悪魔さんの修行で魔力操作を上達させてから、指定空間だけを遅延させる使い方を編み出した! この調子で状況を有利に持っていく……!)
片脚飛びで後退。遅延結界から弾丸が脱出した瞬間、それは元の弾速を取り戻して飛来してくるが、無数の盾によって相殺される。そろそろ盾が底をつくが、軌道が読めているなら回避は容易い。
(っ……やっぱりどれだけ魔力を回しても、ゴムのように柔らかくなった片脚が治らない……まさかスタンドを倒すまで効果が持続するの……? だったら二度と被弾できない……どうにかして無力化しないと……)
黒紫羽根のスタンドは拳銃型。人型ではないため殴る蹴るといった攻撃手段は持たない。つまり攻撃してもスタンドによって防がれる事はない。だが魔法少女は魔力を回すだけで傷を再生できる。本体を殺すか、本体を昏倒させる以外に、スタンド使いを倒す方法は少ない。
(こういう時は元を断てば……スタンドを発現させるカードは使用すると体内に入っていった……それを摘出できれば……)
暁美ほむらは立ち止まる。
(勝負は一瞬……確実に決める! 《時間遅延》魔法解除! そして《
体内魔力の循環性能を向上させ、一発の弾丸に魔力を蓄積、魔弾の操作能力を向上させ、無事な方の片脚に魔力を集めて一気に放出させる。直後、黒紫羽根は、暁美ほむらが一撃で勝負を決めるつもりだと察して全弾発射。六発の弾丸が迫り来る。
「────《
「────《
それは《
「くっ……!」
爆発的に魔力を増大させた黒紫羽根は、必殺に近い双剣乱舞を繰り出す。
「《
それは《時間停止》魔法の部分行使。停止魔力を盾に纏わせることで、あらゆる攻撃を完璧に受け流す魔力操作。
双剣乱舞が盾に命中した途端、暁美ほむらの認識時間が停滞する。その最中に“どういうふうに盾を構えれば攻撃を完璧に受け流せるのか”を考察。盾の位置を微調整────そして暁美ほむらの認識時間が動き出した瞬間、盾使いとして拙い防御は、完璧な受け流しの技術に昇華されて、双剣は盾の上を滑走し空振りに終わる。
「なにっ!?」
それは一瞬の出来事。コンマ数秒前の盾の構え方なら暁美ほむらの体を袈裟斬りにできると確信していた。そのはずが、いつの間にか盾の位置が完璧に微調整されており、双剣の攻撃を完璧に受け流されてしまった。黒紫羽根は動揺する。
(今だ!)
黒紫羽根の懐へ潜り込むことに成功した暁美ほむらは、その胸元に一発の弾丸を撃ち込む。高速化し蓄積した弾丸が体内に侵入した瞬間、弾丸を操作して体内のカードを貫通する。しかしカードは銃弾を通さない程度に固く、そのまま黒紫羽根の体内から弾丸と共に排出された。
「なん────だと……!?」
「これでスタンドは使えない!」
暁美ほむらのブヨブヨとした片脚が治っていく。そのまま跳躍。ペルソナカードを奪取した暁美ほむらは「ペルソナ」と叫ぶ。
「しまった……!」
「降参して! じゃないとスタンドで一気に叩く! ────《
それは機械仕掛けの人型スタンド。能力は
(周りに砂がないから能力が使えない……でも便利なカードを手に入れた。魔女化の危険を考えると魔法が使い放題になるわけじゃないけど────このスタンドは単体性能だけでも戦えるほど……強いッ!)
暁美ほむらのスタンド・
「がはっ……!?」
強烈な衝撃を顔面に受けた黒紫羽根は吹き飛ばされて柱に激突。ペルソナカードが取られた事もあり戦意喪失。気を失ったようだ。
「スタンド解除っ!」
ペルソナカードが排出される。ソウルジェムの穢れ具合は三割から一気に五割へ。グリーフシードを取り出して浄化する。
「よし、なんとか一人で対処できた……! 急いでマミさんの所に行かないと……!」
暁美ほむらは魔法少女として着実に強くなっている事を実感する。それでも巴マミには依然として届かないことを自覚しつつ、巴マミの複製体を呼び出してしまった責任を取るため、上空の社殿に向かい始めた。
†