アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
【これまでのあらすじ】
「さぁ始まっちゃった☆ 神浜の夜を彩るFM神浜、オーキドラジオステーション。DJの白蘭です☆ みんなは今日という日の夜をどういうふうに過ごしているのかな? ボクはポップコーンを食べながらマイクに向かって独りおしゃべりをする変人だよ。というわけで今日はどんな音楽を流そうか。そうだなぁ……じゃ、これで! お聞きください。DJ白蘭の“これまでのあらすじ”────」
♪~“BOYS & GIRLS”~♪
「二木市から命からがら逃げてきた悪魔クンは、不時着した宝崎市という場所で、黒江という魔法少女と出会ったんだよね。さっそく悪魔契約を交わして、一人のか弱い魔法少女を
────と、こんな感じであらすじは終わっちゃうんだけど……
これじゃあ短すぎるから、次は登場人物の紹介でもしてみようか!
悪魔。本名は秘密☆ ボクは知っているけど、彼はその弱い心を守るために秘密にしておきたいみたいだから、ここは伏せておこう。伏せる意味ないけどね!
さて、彼の過去は悲惨な経歴に包まれている。年齢は今年で14歳。普通なら中学二年生の青春を謳歌している頃だ。でも彼にその自覚はない。自分の年齢や学年を数え覚える暇さえ彼には無いんだよ。その証拠に一年半ものあいだ日本中を旅していたため、在籍している学校では不登校扱い。いや、それどころか故郷の
次は外見を紹介しようかな。とりあえず爆発したようなツンツン頭の茶髪と、静かな闘志を燃やす橙色の三白眼が特徴的だ。戦闘時は額から橙色の炎が灯る。全身は生傷古傷カサブタだらけ。皮膚の大半に絆創膏や湿布が貼られていて、下手な巻き方の包帯も多い。両手には多くのリングを装備していて、腰にはベルトと鎖で繋いだ
笹川京子。悪魔の同級生だ。悪魔が好きな女の子☆ 願い事は「◆◆くんに逆転勝利させて」────あぁ、なんて健気で意地悪な願いなんだろう。この願い事によって悪魔の魂には“逆転勝利の呪い”が掛かり、悪魔が窮地に陥るたびに彼の潜在能力が解放されていくようになった。そうやって次々と底のない才能を開花させていった悪魔は、「超直感」「死ぬ気の炎」「封印結界魔法」「熱量操作魔法」「悪魔契約魔法」といった多くの能力を開発した。ちなみに笹川京子のソウルジェムは結界に守られて、ずっと悪魔の右目に封印されているよ!
三浦ハル。悪魔の女友達で、悪魔がうざがる女の子☆ 悪魔の目の前でソウルジェムが砕かれて死亡した。彼女のソウルジェムの欠片は《フラグメントリング》と呼ばれる形に加工されて、笹川京子と同じ結界の中に封印されて大切に保管されている。
青音すず。まさかまさかの
水泳の魔女。その性質は叛逆。真名は
本当に悪魔クンは、大切に思っている女の子のソレを目の中に入れるのが好きみたいだね! 変態なのかな? それとも目の中に入れても痛くないってやつ? う~ん────やっぱHENTAI!!
仮称・悪魔キュゥべえ。悪魔の口づけを受けた個体。ほかのキュゥべえと“個体差”を付けられたインキュベーターの一匹だね。彼もとい彼らは悪魔の封印結界魔法と叛逆魔法の応用により完成しつつある熱量操作魔法すなわち第二種永久機関の完成と更なる拡大を目指すため、現在は悪魔と協力関係にある。一年と半分の間、悪魔と日本各地を旅しているけど、悪魔に対して妙な愛着などは一切湧いていない。それどころか隙あらば悪魔の両目の中で守り隠されている笹川京子のソウルジェムと水泳の魔女のグリーフシードを奪取する気でいる。
それでも今すぐ奪取計画を実行しないのには理由がある。結論から言えば
それでもキュゥべえにとって宇宙の延命は現行の魔法少女システムだけで事足りる。第二種永久機関は宇宙の維持に使えるだけで、宇宙の延命を助けるものではないから、ぶっちゃけ
つまりキュゥべえは「悪魔が永久機関を完成させればボクらの仕事はかなり楽になるが、別になくても問題ないので放置で構わない。ただし彼はインキュベーターに敵意を抱いており、いつか完成させた永久機関を利用して牙を向かれても困る。よって何か不穏な動きがあれば、すぐに無力化できるよう監視していよう」と考えて、悪魔のそばに一匹のキュゥべえを派遣したのかもしれないね!
こんな感じでキュゥべえは、悪魔に少しばかりの期待を寄せる程度に留まっている。そうじゃなかったら、今頃悪魔はキュゥべえに殺されて大切な女の子の形見を奪われているし、あるいはキュゥべえから見向きもされていない。だから悪魔とキュゥべえの関係って、とても微妙で絶妙な利害関係から成り立っている構図なんだよね。ま、だからなんだって話だけど。
黒江。宝崎市の元・魔法少女。現在は普通の人間に戻れた喜びを噛み締めているようだけど、元々誰かの為に頑張りたいと思う心を持っているため、これから何をすればいいのかと悩んでいる。なお魔法少女の真実──ソウルジェムは魂だとか、魔法少女はいずれ魔女化するとか──を知った今、魔法少女に戻るつもりはさらさらなく、キュゥべえからの再契約の申し出は全て断っている。……はぁ、つまんない女の子だね。とってもわがままな子だ。こういう女の子ほど、ホントどうしようもないくらい面倒なんだよね!
ちなみになんだけど、物事には必ずしわ寄せってものがやってくる。魔法少女を辞めたのなら、それにふさわしい結末が彼女を待っているはずだ。それが世の道理だからさ。
────って感じで、第一陣のキャラ紹介は終わろうか。
お次は第二陣のキャラ紹介! といっても、これはちょっとした紹介だ。そして曲は────」
♪~“ファミリア”~♪
「シトピ隼人。中学二年生。なぜか悪魔を時折“十代目”と呼ぶ。日本人とイタリア人のクォーター系ダイナマイト魔法少女。
水野
羅宇らん。超うざい五歳児。五分間だけ十年後の自分と交代できる稀有な魔法少女。
笹川もみじ。中学三年生。妹思いのボクシング部主将。並盛町を守るバカチン魔法少女。
恭弥アーデルハイト。年齢不詳。孤高の風紀委員長。匣兵器の可能性を探求する最強の魔法少女。
ジュリー凪。中学二年生。薄幸の美少女。ソウルジェム等の施術魔法を有する健気な魔法少女。
────彼らの詳細は、いずれ来る過去編で描かれるさ。彼らに関しては第五章あたりの回想編でお会いしましょう~! 全部の伏線が明らかになる超重要章だから、むしろ一章から四章を飛ばしてそこだけ見ても面白いかもね! まぁそこまでエタらなければの話だけどさ! ははっ☆
そして第三陣のキャラ紹介! といっても無名の少女たちの小話だ。BGM? 別にナシでいいんじゃないかな。だって無名の連中だし。
多数の無名の魔法少女。彼女たちは悪魔と共闘したり、敵対したり、無関係を貫いたり、悪魔の目の前で死亡したり、魔女化したり、悪魔契約を結んだり、悪魔と様々な関わり方をしてきた。その中でも悪魔と悪魔契約を交わした魔法少女は、ただの人間に戻った後──元の日常に戻る・キュゥべえと再契約して願い事をやり直す・その人生を終わらせる────などなど、それぞれ思い思いの道を歩んだ。
それについてボクから特に感想はないかな。だってモブでしょ? そんな奴らに一々かかずらってらんないって! アハハ☆
────さて、そんな感じでFM神浜は飽きたので一旦の幕引きとします。
次の夜にまた会いましょう。気ままに気まぐれなDJの白蘭でしたっ☆」
†
走行する列車の車内にて。車窓から山肌の街を眺める悪魔は頬杖を突いており、その傍らでキュゥべえは寝そべり尻尾を振っている。
「なぁキュゥべえ。今回はすんなりと契約できたな」
「たしかに、いつもならもっとごねられるよね。肉体関係を持つ以外に方法はないのかって。今回は悪魔契約完了後に逆恨みで攻撃されることもなかった。そこそこ稀有な例だったよ」
「それほどなりふり構っていられなかったんだろう。体より命を取った……ということだ」
命には代えられないものがある。それを聞いたキュゥべえは首をかしげた。
「命あっての物種か。それについては本当に理解に苦しむよ。だってその格言とされる言葉は、全体のためではなく、個体のための教えなんだろう? ボクらにはその解釈が理解できない。どうして人間は全体の利益を考えられないのか」
「それくらい考えてる奴はいるさ。だがそれの実行には感情的に強い決意と覚悟を要する。それくらい統計で分かりきっていることだろ」
統計。つまりは歴史。
そう聞かれたキュゥべえは、悪魔の言いたいことを先読みして答える。
「つまり君はこう言いたいのかい?
「感情がどこから来るのか、そんな難しい話はオレにも分からないから断言はできない。が、突き詰めればそうなるのかもな」
キュゥべえは「やっぱりわからない」と呟いて目を閉じる。
対する悪魔は、まだ喋り足りないのか、流れる話に身を任せた。
「全体・個体・感情の由来か。……それを言うならインキュベーターの所業も、一つの感情的な行動と言えるのかもしれないな」
「……ボクらが感情的な行動をしている?」
「あぁ。実はインキュベーターは
「……」
「どんな感情も、それを向ける相手が受け入れてくれなければ、自分勝手な押し付けとなる。……インキュベーター、お前らの所業のことを言っているんだぞ」
「ボクらの? ボクらが何をしたって言うんだい」
「宇宙の延命は人類のためになると言って、一方的な価値観や善意を押し付けているじゃないか」
「それの何がいけないんだい? どこが一方的なんだ。いずれ人類のためになるのは単なる事実じゃないか」
瞬間、悪魔の目付きが鋭さを増す。脳裏によぎる超高速の閃き。それは悪魔が何かを直感した時の表情である。
「……オレの話を聞いていたか?
「……また超直感か。君と話していると、いつも議論の着地点を見失う」
インキュベーターに感情はない。しかし彼らは時として、それを理由に次のようなことを言ってくる。
────
そんなことを言われて、納得できる知的生命体はいるだろうか。このようにインキュベーターも伊達に高度な文明は築いていない。彼らは自分たちの生物的欠陥とも言える無感情の特性すら
なぜなら魔法少女契約。それは対等な取引ではない。対象の命を懸けた悪魔の取引なのだから。
「この手の議論で重箱の隅をつついてんのはお互い様だろう」
「お互い様だって? 君が取るに足らない部分ばかりにわざわざ注目して難癖を付けているんじゃないか」
「お前らにとってその
悪魔の横顔をジッと見つめてまばたきしたキュゥべえは、本当に不思議そうに問いかける。
「難癖の付け合いではなく、難癖を付けているのは君だけ……ということはないのかい?」
「ない。それでもお前は一方的に難癖を付けられていると感じるんだよな? ならばきっとキュゥべえは、オレに難癖を付けられて飽き飽きしている。だからオレの言うことにいちいち反論しないと気が済まないんだ。ある意味、感情的になっているのかもな」
「ボクが感情的になっている? 飽き飽きしていることは否定しないけど、ボクはいたずらに反論しているわけではなく、君のわずかばかりの有意義そうな会話に耳を貸しているに過ぎないんだけれど」
会話は平行線。流れに流れる話。されど論調は波風立たず。いつものことである。
そして悪魔はこういう時、いつも決まりきった締めの言葉を使うようにしている。
「そうか。まぁ友達同士で会話するのに理由なんて要らないからな」
「────はぁ……またそれか。君はいつも話の着地点を友情に固定しようとするね」
「苦肉の策だ。許せ。いずれそれらしい劇的な展開が来たら、いい台詞を決めて感動させてやるさ」
「期待しないでおくよ。でも感情を教えられるのならぜひ教えてほしいね。魔法少女システムと魔女化サイクルをボクらにも適用できるようになれば、エネルギーの回収ノルマがほんの少し楽になるからさ」
その言葉を聞いて悪魔は想像する。
(もしインキュベーターに感情が生まれたら、きっとオレたちみたいに魔女化サイクルを忌み嫌い始めると思うんだが……さて)
そんな未来を妄想するより、悪魔は現在の対話を優先した。
「それでも第二次性徴期前の女の子の方がエネルギーの回収効率は高いから、地球から離れる気はないんだろ?」
「もちろんさ。彼女たちの感情エネルギーには目を見張るものがある。ほかの知的惑星でもこうは行かないかもね」
会話が一段落する。そこで悪魔は周囲の乗客から奇異の目で見つめられていることに気が付いた。それは無理もない。なぜなら一般人の目にキュゥべえの姿は映らないからだ。キュゥべえは自身の姿を消す能力を持っており、また条件に合致した対象のみ自身の姿を知覚させる能力を持っている。前者は姿を隠す時に使用するが、後者は魔法少女の素質がある少女を探索する時に使用する。
そのため一般人の目からしたら、悪魔の姿は
そして悪魔が乗車する車両の中には、キュゥべえを目視できる存在はいないようだった。ならばと悪魔は視線を窓の外に移し、姿勢を楽にした。
†