アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
日を跨いだ深夜未明頃。月下、四つの影が黒曜ランドに忍び寄る。仮面で素顔を隠し、忍び衣装に身を包む姿は、さながらくノ一のそれ。腰に武器となる鉄扇を提げて、胸元にはソウルジェムを隠し持ち、指には同色の死炎系リングを嵌めている。
(────秘匿物捜索隊第七班。
念話で状況を報告した四人の忍は黒曜ランドに踏み入る。
(────! 待ってください班長。近くに魔法少女の反応があります!)
(気配からして無属性……戦闘能力は低いと予想)
(避けて進みますか?)
(……それは難しいだろう。魔力パターンは地下から感じる。我らが狙いも地下にある。それに……ここの家主も、こちらに気付いたようだ)
夜闇の霧に紛れてジュリー凪が姿を現す。
「何者……? ここは私たちの居場所。荒らしに来たのなら許さない」
「申し訳ないが今は緊急事態。本来なら対話による交渉を始めるが、秘匿事項ゆえ明かせない」
「それなら……ここから先は、通せない」
「────是非もなし。第七班、戦闘態勢ッ!!」
四対一。通常なら凪に勝ち目はない。
しかし今宵の黒曜ランドは、恐れによるものか寒さによるものか、地下深くの龍脈が躍るように震え動いていた。
一度殺されたせいか敵意に敏感となり、飛び起きた少女は杖と短剣を持って走り、山林をかき分ける。小動物には小動物の戦い方がある。堂々と姿を現して争う実力は未だ持っていない。そのため隠れ潜み不意打ちする。戦闘とは如何に先制し背後を取り奇襲できるか。争いが避けられぬなら開幕ぶっぱが正義。それが事実であるが故に、先手必勝という
「殺しはしない。ただしばらく眠ってもらう。お覚悟を!」
四人の忍は干支の印を結ぶ。それは精神統一の役目を果たし、
「水遁・
雨と水の熱量が混ざり合い、水遁チャクラが濃霧を発生させる。
「土遁・
「っ!?」
濃霧に紛れて、いつの間に地面に潜っていたのか。直前に大きな魔力反応を感じたため、固有魔法の合わせ技で凪の足元の地中に現れたとしか思えない。足首を掴まれて地中に引きずり込まれた凪は、首から上だけ大地に残される。
「幻術・
篠笛から奏でられる音色が対象者を深き眠りへと誘う。対象者の肉体が束縛されているほど効果が高まるため、束縛系忍術との相性が良い。凪のまぶたが重くなり意識が微睡む。
「……我らの術から逃れられる者などいない。敵性体、沈黙を確認────」
その判断は早かった。高台に走り高所を取った
「────《
騒然たる烈風は広域を支配し、敵となる愚か者を竜巻に呑み込む。
「なにぃ────!?」
「風遁・風斬り!」
それは襲い来る烈風を切り裂き、攻撃半径から逃れる忍術。地を転がって烈風範囲から離脱した忍者は鉄扇を取り出して跳躍。
「っ……! イーピン!」
「一気通貫!」
「なっ!? ぐはぁ!」
突如、晴の炎に身を包んで突貫してきた赤ん坊の弾丸に忍者は突き飛ばされる。
『────ッっっっ!?』
次の瞬間、烈風は幻覚を剥ぎ取り、夜空が日光照らす青空に移り変わった。
四人の忍者は背中合わせで後退。何がどうなっているのかと狂乱しつつ周囲を観察する。
「……その杖の風、すごいね。私の幻術が解けちゃった」
「あ……凪さん、ごめんなさい!」
まさか凪の幻術で朝を夜に見せかけていたというのか。
「ということは、我らが黒曜ランドに足を踏み入れる前から、貴様の幻術の術中に落ちていたと? そんなことあるはずが……!」
「でもこれが現実。今は朝の八時。──骸様が教えてくれたの。
「なっ────! なぜ我々の素性を……!?」
「いかなる者であろうと縄張りを荒らす者は許さない。この私が排除する」
凪は三叉槍を構える。
それに黒江が──口の箸にご飯粒をひと粒付けながら──答えた。
「私も助太刀します! 知らないうちに朝食の場から居なくなっていたから驚いたんですよ!」
「イーピン、ともだち、まもる!」
四人の忍者は歯噛みする。もう残された時間は少ない。一気呵成に決着をつけて例の物を封神しなければ、この辺り一帯がどうなるか知れたものではない。
(────どうします、班長!?)
(上忍ならなんとかしてよ!)
(得体の知れない敵と遭遇……これは本気でやらねば負けてしまいます)
(っ……是非もなし。もはや生死は問わない。確実に任務を遂行する!)
黒江は殺気を感じ取ると冬狼剣を振るい、氷で出来た一匹の凍狼を召喚する。冬狼剣のエネルギー源はマイナスエネルギー。瘴気が充満する黒曜ランドであれば最大の力を行使できる。さらに匣兵器を取り出して泥夜鷹を開匣。烈風の杖を構えて腰を落とす。
「凪さん! こっちは一人だけなら引きつけておけます!」
「分かった。残り三人は任せて」
刹那、上忍のくノ一が動いた。標的は謎めいた力を持つ黒江。音速で跳躍し、まばたきより早く黒江の背後に降り立った上忍は、すれ違いざまに黒江の胴体を鉄扇で叩いていた。が、不思議と手応えがない。鉄扇を見下ろすと黒い泥がこびり付いている。
「これは……」
黒江の足元に夜鷹が倒れ伏す。この中で魔法少女の身体能力に追い付けるのは匣兵器の夜鷹しかいなかった。泥の炎による鈍化性質を前方にばらまくことで、上忍の音速移動を高速レベルまで低下させることにより、黒江を庇うことに間に合ったのだ。
「イチゾー! っ……!」
泥夜鷹をイチゾーと呼んだ黒江は振り返り、冬狼剣を振るって刀身から吹雪を巻き起こす。それは雪狼への攻撃命令でもあり、上忍の腕に噛み付いた。
「凍てつかせて! 《
吹雪を喰らった上忍の総身がみるみると凍結して氷の結晶の中に閉じ込められる。が、ボフンと音を立てた上忍は、いつの間にか丸太に変わっていた。
「変わり身の術……続けて風遁・大突破!」
木の陰から現れた上忍は印を結び、口から強力な突風を吹き出す。それは木々を薙ぎ倒すほどの威力。咄嗟に霧の炎で障害物を構築した黒江だが、まとめてイーピンたちと共に吹き飛ばされてしまう。
「きゃあああ!?」
凍狼はダメージを受けて形を保てず消滅。木の葉が乱舞する倒木の上で仰向けと倒れる黒江は、すぐに立ち上がらなければ殺されると戦慄。恐怖に襲われる。
「これでトドメだ!」
鉄扇に風のチャクラを纏って上忍が疾走する。
そこに衣服が切り刻まれてボロボロなイーピンが飛び込んだ。
「ハイヤー!」
「邪魔だっ!」
赤ん坊といえど容赦はない。上忍の鉄扇殴打で地面に叩きつけられたイーピンは気絶する。
「イーピン!」
黒江の視界端でイチゾーがむくりと起き上がる。ならばと雨雲霧・三色の炎を灯した黒江は、木々に体をぶつけたせいで全身打撲、激痛で身動きが取れないが、ここで一か八かの行動に打って出た。
(普通のやり方じゃ敵わない! こっちも全力で行かなきゃ殺られるッ!)
霧の炎を圧縮して塊を作成。塊に雲の炎を纏わせて、その上に雨の炎をコーティングし、さらに霧の炎で球体を作成。球体の中に二重コーティングの塊を隠す。作れたのはその一発のみ。黒江は差し迫る敵に烈風の杖を向けると、その一発を緊急発射した。
「そんな丸分かりの攻撃、受けるものか!」
上忍は最小限の動きで前方と側面から来る弾丸を躱そうとする。が、それは対象を貫くための弾丸ではない。
「目くらましだ!」
「!?」
雨の炎のコーティングは、打ち出してから一秒と掛からず消え去るほどかぼそい炎で覆っていた。それより鎮静効果を失った雲の炎のコーティングが、霧の炎の塊を爆発的に増殖させる。内部密度は霧の炎で作った外殻球体の耐久度を超えて破裂。爆発的な霧の炎が散布された。イメージするは姿くらまし。羽音が遠ざかる。
「風遁・突破!」
上忍は口から風を吹いて燃え上がる霧を払う。すると前方に倒れていたはずの黒江の姿がない。ふと羽音がする方向を見やれば、そこには泥夜鷹の鉤爪によって体を持ち運ばれる黒江とイーピンの姿があった。
「今のは攻撃ではなく逃げるための……! 一か八かの顔をしておきながら、それが逃げることとは……!」
戦闘能力で人間と魔法少女を比べるなら、それはまさに蟻と象の関係性。人間と怪物と言っても良い。正面対決で勝てるはずもない。だが騙し合いなら光明はある。さすがの魔法少女も空は飛べまい。一度空に逃げてしまえば、しばらくは作戦を練る時間を稼げる。
「イチゾー、ボロボロだけど大丈夫?」
「キシッ!」
それはお互い様だと言うようにイチゾーは鳴く。
しかし黒江の悪運も、そう長くは続かなかった。
地表から五歳児の笑い声がこだまする。
「ガハハのハ! ランボさん凪んとこに遊びに来たんだもんね! 玄関にチャイムがないから代わりにバズーカ撃っちゃうんだもね! 凪ー! あーそーぼっ!」
花火を打ち上げるように発射されたバズーカ。そのミサイルはまっすぐと────黒江の方向に飛んでいた。
「えっ────うそでしょ!?」
「キシッ!!」
イチゾーは一生懸命に翼をはためかせるが、ミサイルは追尾性なのかイチゾーの背後に追いすがる。イチゾーは匣兵器ゆえ膂力はあるが、その体は五十センチにも満たない。人ひとりと赤ん坊を抱えていれば、ミサイルを振り払うほどの速度を出せるはずもなく、命中するのは必然だった。
「ちょっとまって! イーピンに当たる! イチゾー!?」
「キ……キシッ!?」
激突と爆発。そして悲鳴。
「あららのら。なんか当たったけどランボさん知らないもんね」
ランボは鼻くそをほじって花火を見上げる。
その花火の中では、ミサイルの衝撃に驚いたイチゾーが鉤爪を離しており、黒江が自由落下していた。
「きゃあああ────……って、あれ? そこまで痛くない……ミサイルがぶつかったのに……」
地表まで残り十数秒。黒江は自由落下している現実から目を背けていた。
「あら? なんで? なんで出前の途中のはずなのに、空から落ちてんのかな?」
「…………」
黒江の目の前には、白衣の調理服を着たおさげの少女が落ちていた。手元には“楽々軒”と書かれた岡持ちを提げており、腕時計を見やる。
「いけない、ラーメン伸びちゃう。川平のおじさんに怒られちゃうわ」
「…………あの、どちら様ですか?」
黒江が呼び掛けると、おさげの少女は懐から古ぼけたモノクルを取り出して目に掛けた。
「────え? わぁ! 黒江さんのお化け!?」
「いや死んでませんよ!? まだ死んでません! これから落ちて死にますけどぉっ!!?」
地表まで残り一秒。刹那、白衣の少女はキリッとした目付きで岡持ちを放り捨て、黒江をお姫様抱っこして華麗に着地した。
「ハイッ!」
「────なんで魔法少女でもないのに高所から落下して無事で居られるのかは一切突っ込まない……突っ込まない……」
「危なかったですね黒江さん!」
「うん……助けてくれてありがとう……でも本当に誰なの……? イーピンはどこ……?」
黒江は危うく地面に叩きつけられて死にそうだった恐怖が頭を混濁させ、膝がガクブルと震えて青ざめる。
「やだな黒江さん、なに言ってるんですか! 私ですよ、私がイーピンです!」
「────はぃい?」
もう現実が受け入れられないと苦い顔で見上げる黒江は、どこにもイーピンの面影が見えないことに突っ込まない。
そして黒江の真横には、鼻をほじる五歳児。ランボが見つめていた。
「ねぇねぇ。お空って飛ぶとやっぱ気持ちいい? ランボさんもお空をじゆうに飛びたいなぁ~」
「ぎゃああ! ブロッコリーの化物!!」
「ガーン!」
ブロッコリーの化け物呼ばわりされたランボはショックを受けて涙目となる。
そしてイーピンと名乗る少女の額に麻雀牌の九筒模様が出現。それは刻一刻と時を刻むように八筒、七筒と変わっていく。
「あ゛あ゛! 頭が……ッ!! 黒江さんっ! 逃げて、くだ、さ……」
「え? な、なに……?」
黒江は満身創痍で動けない。そもそも腰が抜けて動けない。そこに危険を察知したイチゾーが翻り、黒江の衣服を掴んでかっさらっていった。
「イチゾー!?」
「キシーッ!!!」
野性の本能が何かがヤバイと告げている。
「う……ブロッコリーのお化けじゃないもん……わーん! おでこ麻雀おばけー! おさげー! ばかー! あほー!」
泣き喚くランボは罵倒するが、佇立する少女の額は五筒、四筒と変わっていく。
一方、黒曜ランドの正門近くでは、凪が三人の忍者を相手に互角の戦いを繰り広げていた。
「黒江姉! 僕も連れてって!」
「フゥ太!」
イチゾーは滑空し、黒江はフゥ太の体を抱き締めて空に飛び上がる。
「どうしたの?」
「あれはイーピンの《
「────いやちょっと何を言っているのか全然わからな────」
一筒。
────ある科学者は言った。世界中でどのような争いが起き、いかなる局地戦が展開されても、それはたった一発の大きな一撃によって、全てが死に絶える定めにあるのだと……。
十年後イーピンの額から“ピキ……”と音が鳴る。
刹那、黒曜ランド一帯を吹き飛ばす大爆発が解き放たれた。強烈的な爆風によってイチゾーの体が持っていかれる。もう二度と自由落下はゴメンだと目をつむった黒江は、リングに炎を灯してイチゾーを強化。フゥ太の体が飛ばされないよう強く強く抱き締める。
「きゃあああああ!?」
「うわぁああああ!!」
かくして戦いは終息した。たった一発のドデカイ爆弾によって────
†
轟々と吹きすさぶ爆風を背に受け続ける黒江は、ただ静かに広大な青空を仰いでいた。
(あぁ……私、死ぬんだ……このまま大地に落ちて……魔法少女なら、無事に着地できるんだけど……)
イチゾーは爆発の衝撃波で吹き飛ばされ、炎が尽きたことで匣兵器に収納された。黒江は気絶したフゥ太を抱いたまま空中に放り出された。爆風により落下速度が弱まっているが、それは死の秒読みが先延ばしにされているだけ。背中に取り付けている烈風の杖を取り出して振るえば、なんとか風の力で着地できるかもしれないが、それはフゥ太を手放すことを意味している。自分ひとりで助かっても後味が悪い。
(せめて私がクッションになれば、フゥ太だけでも助かるかも……あぁ……やっぱり死ぬのは怖いなぁ……でも、これで楽になれるのかも……)
黒江は生存を諦めて目を閉じる。目尻からは涙がポロポロと昇り、地表まで残り一秒。
刹那、青い閃光がまたたいた。少女と子供、二人の体を抱きかかえた茶髪の少年は、ふたり分の重さを受けて驚き膝を落とし、地を陥没させる。
「ぐっ……! っ……また間一髪だったな、黒江……」
「────、……え……?」
聞き覚えのある声。涙ぐむ瞼を開けると、視界が滲んでよく見えない。目をゴシゴシとこすって大空を仰げば、そこには悪魔の顔があった。
「何度死にかけるつもりだ。あまり手を煩わせないでくれ」
「────悪魔、さん……」
「というのは半ば冗談だ。生きてて良かった。本当に……」
悪魔は穏やかな表情で微笑む。が、視線の先を変えた瞬間、その眉間にはシワが寄って、いつもの険しい表情に戻った。
「骸の気配がする……あいつ、今回は何をするつもりなんだ……」
悪魔はホバーシールドを開匣。それに乗って空中を移動する。眼下には爆風を受けて倒壊した建物と、倒木だらけの山林。その中で凪が倒木を押しのけて立ち上がる。
「っ……いったい、何が……」
「────凪!」
降下した悪魔は、倒れ掛かった凪の体をホバーシールドのヘリで支える。
「……! ボス……どうしてここに……?」
「それより状況を説明してくれ。────侵入者の撃退だけでこうなるものか?」
超直感で心を読んだ悪魔は、不意に遥か前方を見やる。倒木の下に埋まっている三人の忍者が脱出し、そこに上忍が駆けつけてきた。
「お前たち、無事か!?」
「は、はい……」
「班長、今の爆発は?」
「とんでもない威力だった……」
悪魔は直感する。遠くでランボが泣いている。相変わらずボロボロみたいだが命に別条はない。頑丈なのがランボの取り柄だ。
「────ッ!!?」
次の瞬間、悪魔の超直感が激しく明滅した。同時に笹川京子のソウルジェムも激しい反応を示す。ここまでの巨大な反応は今までにない。超大型魔女に匹敵する魔女反応だ。まさに息つく暇もない。取り付く島もない。大地が躍動する。大規模な地震が発生して黒曜ランドに地割れが起きる。
「ッ……! 頭と目が……ッ!」
「悪魔さん!?」
「ボス!」
「凪、乗れ……! すぐにここから離脱する……!」
悪魔はナッツとチーズを開匣。魔属性の噴射力で四人の忍者の前に高速移動したナッツは、その背に乗るチーズにバトンタッチ。球針態を作ることで四人の忍者を中に閉じ込め、その球体をナッツが黒曜ランドの外まで運ぶ。その間に悪魔のホバーシールドは、黒江とフゥ太、凪を乗せて空を移動。
その後方では、恐ろしい惨事が起きていた。黒曜ランドが崩落していく。大地に向かって崩れているのではない。まさか黒曜ランドの真下に大空洞でも存在していたのか、地下に向かって大地が陥没し、建物が、森林が、山々が、次々と崩落していく。
「……そんな……私たちの居場所が……」
完全に崩壊していく黒曜ランド。それを茫然自失と見つめる凪の目には大粒の涙が溜まっていた。
「────ッ! 来るぞ! しっかり捕まっていろ!!」
刹那、崩落する建物や倒木、土砂を跳ね除けて、巨大な影が地下深くから大気圏まで飛び上がった。一瞬、カブトムシのような羽音が響く。それは猛烈な暴風となって悪魔たちに襲いかかった。
(まずい────黒江を抱きかかえて両手が塞がっている! 防御手段がない……!)
その時、悪魔の青いハーフソウルリングが光り輝いた。
「助太刀するぜ! 時雨蒼燕流 守式・七の型────《
「むく!」
刀で水を回転するように巻き上げ、時雨蒼燕流の剣技に宿らせた鎮静魔力を発散。圧殺するほどの超大爆風を防御奥義で受け止める。
「なっ……! なんつー威力だ!? やっべ! これ防げねぇわ! 破られる!」
「っ……!?」
冷や汗を流す水野むくは(これ死ぬかも)と苦笑う。
直後、遥か遠方の並盛町から赤色の魔力ビームが飛来した。それは死炎放射器による《
『隼人!!』
「私が念話で嵐の人に伝えた……すぐに晴の人も撃ってくる……」
「ナイスだぜ、凪!」
直後、同じく並盛町から黄色い魔力ビームが飛来した。それは笹川了子による《
それら三色の魔力防御と遠隔攻撃により、圧殺爆風は消滅した。
「ただの爆風でこれとか……とんでもない魔女がいたもんだな……なぁ悪魔?」
「あぁ……そうだな」
遥か上空に小粒の影が見える。離れているため小さく見えるが、その体躯はビルのように巨大。
なんとか難を逃れた悪魔たちは黒曜ランドの正門前に着地。黒江を下ろした悪魔は、泣き喚くランボと倒れている十年後イーピンの下に駆け寄る。
「ランボ! 大丈夫か? ……この子は誰だ?」
「ぶわぁあああ! 爆発したぁああ! ランボさんの方がいっぱい爆弾持ってるから負けないもんねぇえええ!」
「やめろ。手榴弾を取り出すな」
ナッツとチーズも命からがら正門前に到着。球針態を解いて忍者たちを解放する。
「な、なんだ……!?」
「っ! 班長、見てください! 凍季集落跡地が……!」
(────凍季集落……?)
悪魔の眉間がピクリと反応する。
「班長、上空を!」
「どうやら悪鬼の
「なっ……! くっ、遅きに失したか……! こうなったらば是非もなし。撤退するぞ!」
四人の忍者は悪魔たちに見向きもせず即時退却する。
「……な、なんだったの……?」
黒江は狼狽する。くノ一たちは“尾獣”と口にしていた。まさかそれは黒曜ランドの地下に眠っていた超大型魔女のことなのか。
「……凪、どういうことか分かるか? 骸はなんと言っていた」
「……そろそろ時女一族が動き出す……って」
「────そうか。どうやら太助さんの読み通りになってきたようだな……」
悪魔は神妙な顔で未来を案じる。
やがてサイレンの音が鳴り響く。爆発音を聞いて近隣住民が通報したのだろう。
「ひとまずここから離れよう」
悪魔の提案に従って一同は場所を移す。超直感で危険も感じ取れないため、調査を兼ねて向かう先は大穴。尾獣とやらが飛び出してきた大空洞に降り立った。
†