※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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第2.2章 不良王壮月譚 フィニッシュ・プロローグ ‐神浜の不良王‐

短編〔略叙〕



第2.2章 不良王壮月譚 フィニッシュ・プロローグ ‐神浜の不良王‐
4月21日【落書きは“何”に至るのだろうか?】紅谷慶志郎〔王助〕


 

 ────我が不良王の記録。

 

 4月14日。“壮月ファミリー”は、神浜市の暗部に値を張らんと暗躍していた“ネオ蜘蛛”を壊滅に追い込んだ。

 

 “ネオ蜘蛛”とは東京の古豪勢力であり、最凶の称号で知られている。

 それを倒したという噂は一夜のうちに広まり、神浜市の不良界に激震が走った。

 

 不良とは揃いも揃って最強に手を伸ばす馬鹿ばかり。

 ダークホースとして不良界に台頭した馬の骨を危険視し、手を抜かず潰しに来る不良たちは少なくない。

 

 4月15日。大東区を縄張りとする不良たちは壮月ファミリーに襲撃を仕掛けてきた。これを和泉壮月は降りかかる火の粉を払うように撃退する。だが多勢に無勢となる戦局があり、壮月ファミリーは逃走を開始。そこで仲間を守るため囮役を引き受けた和泉壮月は、とある廃工場に転がり込む。そこは“孤高の電撃娘”古崎香苗(こざき かなえ)の縄張りだった。青い電流が流される有刺鉄線に縛り上げられて拷問を受ける和泉壮月は、死ぬ気の炎を灯して拷問を受けながら無茶なタイマンを張り、死闘の末、これに勝利。大東区の中で最も恐れられる彼女を倒したことにより、全ての不良チームは萎縮して牙をしまい尻尾を巻き、壮月ファミリーの参加に入りたがる不良たちが続出した。これを断った和泉壮月は、ただ一言。「二度と人様に迷惑かけるな。さもなくば潰す」と、焼け焦げた息を吐きながら、王の風格にふさわしい眼光を放った。

 その後、他地区の不良も襲ってくる可能性が高いことから、紅谷慶志郎の勧めで“壮月ファミリー”は南凪区の“多賀ペンション”を拠点とすることに。そこは多賀麻希乃(たが まきの)という元ヤンキーの女性が営んでおり、紅谷慶志郎の大金によって雇われたアジトの提供者。かくして多賀ペンションを活動拠点とした和泉壮月は、明日から神浜中の不良を相手することと相成った。

 

 4月16日。和泉壮月は工匠区におつかいに出かけた。そこで工匠区の一角に根を張る凶暴チーム“赤堀ファミリー”が突然の襲撃を仕掛けてくる。著名な不良は、ヘッドの赤堀俊平(あかほり しゅんぺい)、ヘッド兼参謀の烏丸宗滋郎(からすま そうじろう)、鉄砲玉の綾瀬藤二郎(あやせ とうじろう)、藤岡芽武(ふじおか めぐむ)、大河原継夫(おおがわら つぐお)、磯角覇王(いそずみ はおう)、新顔の尾浪菊千代(おなみ きくちよ)。これを迎え撃つ“壮月ファミリー”により抗争が勃発。死人が出かかる激戦の末に“壮月ファミリー”が勝利を収めた。

 その直後、まさかの展開が巻き起こる。“孤高ゆえに最強を謳う益荒男”黒菱廉王(くろひし れんおう)が姿を現した。たった一人で“壮月ファミリー”を壊滅に追い込むが、そこに新西区と水名区の不良連合が“壮月ファミリー”の助太刀に馳せ参じてくれる。

 新西区の治安を守るヘッド・先嶋友成(さきじま ともなり)率いる“先嶋グループ”と、先嶋では管理できない地域に陣取り結果的に治安を守る、あえて先嶋から放置されている必要悪の熱い男(バンカラヤンキー)・番場磐治朗(ばんば ばんじろう)、そして水名区の自警団として猛威を振るう“影狼”の副ヘッド・瀧城萃香(たきじょう すいき)の共闘があり、なんとか和泉壮月は黒菱廉王を打ち倒した。

 

 4月17日。和泉壮月は、神浜市の全体の平和を考えて、先嶋友成・瀧城萃香のチームと同盟を組む。和泉壮月と瀧城萃香は最初のパトロールで参京区を回っていると、そこを縄張りとする破戒僧・“参京最恐の僧侶”薬王寺涼玄(やくおうじ りょうげん)と遭遇。暴力と破壊こそが腐りきったこの世を浄化する思想を持ち、そのために覇道を進む強かな男との殴り合いの末、これに勝利。参京区の不良チームは全て薬王寺涼玄によって潰されていたため、これで実質的に参京区は“影狼”の支配下に置かれる運びとなった。

 

 4月18日。和泉壮月は先嶋友成とのパトロールで栄区に足を運ぶと、かのアリナ・グレイに並ぶ稀代のマッドアーティスト・調律愧崹那(つぐり はてな)と遭遇する。栄区には不良らしい不良は少ないが、芸術家志望で頭のイカれた若者が多い街として不良界隈から恐れられている。危うくアート作品にされかかった先嶋友成を救うため和泉壮月はタイマンを張り、調律愧崹那を撃破。もとより栄区は芸術の街として自由であるため支配する必要がなく、先嶋友成は栄区を“無法地帯”として放置することに決めた。今までもよその不良チームが“空白地帯”として侵攻を仕掛けても、その全てがマッドアーティストたちによってアート作品に変えられて二度と戻ってこなかった噂がある。つまり栄区は空白地帯なんかではなく“怪物の巣穴”……狂人以外が立ち入ってはいけない“無秩序の平和地帯”であったのだ。それが分かれば「守(・)っ(・)て(・)や(・)る(・)必(・)要(・)も(・)な(・)い(・)」として“先嶋グループ”は手を引いた。

 

 4月19日。和泉壮月は先嶋友成と瀧城萃香と共に中央区の視察に来た。そこでタバコを蒸し高周波ブレードの日本刀と黄金製の拳銃をぶっぱなす時代錯誤のSF冒険野郎・葛葉乱空(くずのは らんくう)と遭遇。彼は世界の闇を知る者で、六道翁のことを調べにアメリカから帰ってきた。六道翁のことを調べようとした者は皆、見るも無残な挽肉に変えられたという。ここから先は不良の世界ではない。腐敗した警察と繋がる極道の世界。一度踏み込めば二度と元の日常には生きて帰れない闇の世界。

 それでも悪を見過ごすことはできない和泉壮月と瀧城萃香は、六道翁のことを知るため葛葉乱空を追う。先嶋友成は余りにもヤバイ世界に首を突っ込みたくはないためここで降りた。和泉壮月と瀧城萃香は南凪区に向かい、莫大な財産によって不良や極道を従える六道翁のパトロン・今別府小桃(いまべっぷ こもも)と邂逅。激しい銃撃戦の末、戦いは痛み分けに終わり、今別府小桃は姿をくらました。が、その際に意味深な言葉を残す。「わたくしよりも、倒すべき悪はほかにもいる────」

 これを葛葉乱空は「北養区に隠れ棲む非合法武闘組織 7th(セブンス)》のことだろう」と推測。それは悪を裁く“正義”の組織《断罪者》に対する必要悪として、永遠なる悪の華を象徴とす(咲かせ)る暗黒組織である。

 

 4月20日。和泉壮月・瀧城萃香・葛葉乱空は、結局心配で手助けに来てくれた先嶋友成の手引きによって北養区の山脈地下に侵入する。その先には恐ろしい世界が待っていた。野生のヒグマと池波孝宏(いけない たかひろ)と遭遇し、これを退く。そして山林にひっそりと佇む荘厳な教会に足を踏み入れると、いきなり古御堂紫雲(ふるみどう しうん)という7th(セブンス)の副ヘッドが奇襲を仕掛けてきた。彼女は死ぬ気の炎を灯すリングと、魔(・)法(・)少(・)女(・)か(・)ら(・)奪(・)っ(・)た(・)魔法の宝石(ソウルジェム)によって圧倒的な力を示す。なんとかこれを倒すと、悪の親玉“罪悪に彩られし毒華の女王”九条円華(くじょう まどか)が姿を現した。

 彼女はどう見てもただの人間の少女。しかし彼女はある日、知ってしまったのだ。「この世の中には人間のフリをした宇宙人がたくさんいる。魔(・)法(・)少(・)女(・)だ」死炎界と魔法界、双方の存在を知った少女は、ある可能性に目覚めた。それは宇宙の意思に叛逆できる、ただひとつの方法────“悪”────堕天使は神を愛するが故に堕ちた。神とは概念を意味する。救済の概念。悪の可能性に目覚めた少女は髪は白く眼は緋く、魔道を歩むことで全ての理を破壊しようと動いていた。

 何を言っているのか全く分からない和泉壮月たちは、彼女を此処で叩き潰さねばならない悪と判断して決死の勝負を挑んだ。しかし必要悪を倒すということは、この世から善が消失することに直結する。無知なる不良は選択を誤った。悪を倒す選択は正しいが、悪を根絶する選択は正しくはあれど間違ってもいた。

「我が名は円華(まどか)……偶然にも遥かなる宇宙に接続し、究極(アルティメット)と邂逅した何の意味もない第三者……それでも私は我慢ならなかったのよ。彼女の結末が。一人が犠牲になって全てが救われる? それなら一人の手で全てが台無しになるのは当然よね。世界は助け愛で生きている。それなのに世界を独りの犠牲で救っちゃったら……それ、脆くない? 私、そんな不安定な世界に生きたくないわ。だから滅ぼすの。きっとあなたたちのようにお互いを助け愛して悪を討ち滅ぼしてくれると信じているから……」

 和泉壮月は最後まで、彼女が何を言っているのか理解できなかった。葛葉乱空がトドメを刺そうとし、それを和泉壮月が止めようとする。が、残酷にも銃弾は九条円華を庇った古御堂紫雲に命中した。続けて葛葉乱空は連射し、九条円華は古御堂紫雲の死体を庇って額を撃ち抜かれた。彼女たちは助け愛の末に息絶えた。「俺は断罪者だ。悪を裁く者だ。いかなる理由であれ悪は制裁する」それは正しくないと和泉壮月は直感した。確かに殺さねば彼女たちの悪によって世界は大変なことになっていたかもしれない。だがそれでも、ほかに道があったはずだ。「そういうことを考える奴は、大抵弱いのさ。弱いからほかの道が見つからない。それは俺もおんなじだ」

 

 4月21日。神浜市に存在する全ての不良チームを倒したことにより、神浜市の不良界は“壮月ファミリー”が覇権を握った。“影狼”と“先嶋グループ”は、和泉壮月の人格を信頼し、その活躍を称える必要があるとして、彼をトップに据えることにした。それはつまり傘下に入るという事である。かくして和泉壮月は“不良界の王”となった。深夜の中央区・何十万人と集まることができる広大な敷地にて、神浜中の不良が集い、王の言葉を待つ。困り果てた和泉壮月は、全ての不良にこう宣言した。

「みんな仲良く! そして困ってる人が居たら助けること! それでも暴れてぇ奴がいるなら、よそに迷惑かけない方法で勝手に殴り合ってろバカ野郎ども! そんでもし人様に迷惑かけちまうと判断したなら、こっちに掛かってこい! オレは面倒なのは断るけど、喧嘩好きの鶴岡や大迫、稲尾や間宮が相手してくれっから!」

 不良たちにどよめきが走る。要は「みんな仲良く」ということは、もう無法は許されない。集会は終わり、不良たちは家路に着く。

 

 かくして不良道壮月譚は華々しく締め括られる。この宇宙は魔法の物語を主題としており、それとは関係のない不良の物語は外伝として語り納めるに尽きる。九条円華……外宇宙と繋がり円環の理を目にした異端の少女。和泉壮月は彼女と交わったからこそ、この物語はギリギリの形を保って宇宙の書物(マギアレコード)に記録された。実際に記録されるのは、マギアレコードが完成するもう少し未来(さき)の話だが。

 

          †

 

 紅谷慶志郎は日記を書き終えて一息つく。

 

「なんたって僕は“王助”紅谷慶志郎。しかして紅く輝く彗星“先触れなるもの”の手先。先触れとは、あらかじめ触れ知らせる予告を意味する。それに意味があるかどうかはさして重要じゃない。問題は“先触れなるもの”が、円(・)環(・)の(・)理(・)が(・)あ(・)る(・)数(・)多(・)の(・)宇(・)宙(・)か(・)ら(・)、(・)円(・)環(・)の(・)理(・)が(・)届(・)か(・)な(・)い(・)二(・)つ(・)目(・)の(・)宇(・)宙(・)に(・)移(・)動(・)し(・)て(・)き(・)た(・)という事実だ。“先触れなるもの”は美しい歌を口ずさみ、眠りし破滅を呼び起こす終末の鐘を役目とする。御身は物語の本筋には関わってこない。僕らはただのキッカケ……僕はただ、眠れる奴隷(和泉壮月)を呼び起こしたに過ぎない。その結果この宇宙がどうなるのかについては“先触れなるもの”にとって至極どうでもいいことだ」

 

 紅谷慶志郎は役目を果たした。

 和泉壮月を神浜市の不良王にする(やらなければならない)事を。

 

 神に憤りは無い。罰も与える気は無い。義憤は駆り立てるが、往々にして凡人はそれを復讐心と誤解する。

 

「原典は“究極”に至り、続編は“悪魔”が愛を実行した。そして、

 外伝は“無限”に至り、外伝は“エミュレート”された。ならば、

 落書きは“何”に至るのだろうか? 僕はそれを見守るだけさ……

 チラシの裏に潜みし宇宙、その遥かなる銀河の片隅、辺境の碧き星にて」

 

          †

 





“エタり”に至りました。


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