※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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第2.5章 昴聖団人造劇 ウーヴァ・フランケンスターイナ ‐想い混じる黒の奇跡は魂を貫き白の魔法に‐

本章のクロスオーバー先:かずみ☆マギカ、DRAGONBALLセル編



第2.5章 昴聖団人造劇 ウーヴァ・フランケンスターイナ ‐想い混じる黒の奇跡は魂を貫き白の魔法に‐
4月24日【ねぇ待って悪魔! 私も一緒にお風呂入るー!】由比鶴乃


 

 黒江が来てから五日が経った。目覚まし時計が鳴る中、それぞれの朝の支度が始まる。

 

 みかづき荘・本邸の二階では、悪魔・百江なぎさ・環いろは・環うい・万年桜・リリス・暁美ほむら・七海やちよが起床。

 みかづき荘・裏庭の倉庫では、黒江・フゥ太・イーピン・ジュリー凪が起床。

 

 七海やちよは扉をコンコンとノックする。

「なぎさ、起きたらゴミだし手伝ってね」

「う~ん……まだ眠いのです……」

「学校にも行ってない赤の他人の小学生は穀潰しと変わらないわ。オトナだと言い張るなら、このくらいは手伝ってもらわないとね」

「むにゃ……やちよはうるさいのです……わかったのです……」

 

 倉庫の中は最初薄暗闇でホコリが溜まる場所だった。七海やちよは「こんな場所で本当にいいの?」と困惑していたが、黒江は「掃除してもいいと許してくれるなら大丈夫です。そこそこの豪邸に変えるので」と言った。有言実行。まず倉庫の荷物を全て外に出し、床のみならず壁や天井まで完全清掃。その後、あらかじめ集めておいた木屑や鉄屑、廃墟街に不法投棄されている残り物などを合成して寝台やソファといった家具を軒並み合成。今や倉庫は薄暗闇の名残などなく、豪奢なシャンデリアがオレンジ色に照らすカントリーな内装に様変わりしていた。

 

 黒江は年少組の布団をめくり起こし、朝食の準備に取り掛かるため合成ツボの前に座る。

「ほら起きて、フゥ太。イーピンも。顔洗ってうがいして歯磨きしたら朝ごはんだよ」

「ふわぁ……おはよう黒江姉……」

「むにゃむにゃ……」

 

 目をこするフゥ太とイーピンは寝台のそばに置いてある靴を履いて、ログハウスのような倉庫を出る。裏庭の石畳を歩いていると桜風。環姉妹の寝室の窓が開かれており、万年桜が外の風景を眺めている。

 

「おはよう、万年桜さん」

「……フゥ太。イーピン。おはよう」

 

 みかづき荘の本邸に通用口からフゥ太とイーピンは洗面所に向かう。

 そこでバッタリと百江なぎさ・環ういと鉢合わせた。

 

「はよっすなのです」

「あ、おはようフゥ太くん。イーピンちゃん」

「おはよう。なぎさ、ういちゃん」

 

 二階の洗面所は早く起きた年上組が先に使っている。必然、早く起きれなかった年少組は一階の洗面所を使うしかない。

 大きな鏡の前で揃って手洗い・うがい・洗顔・歯磨き。その間、雑談の花が咲く。

 

「そういえば、なぎさちゃんとフゥ太くんは学校に通ってないんだよね? 学校、行きたくならない?」

「友達と会えるから行きたくないといえば嘘になるのです。でも今は行っている暇がないのです」

「僕は一度でもいいから行ってみたいなぁ。勉強は凪姉が教えてくれるけど、やっぱり学校ってあ(・)こ(・)が(・)れ(・)があるや」

「じゃあ、なんとかならないのかなぁ……」

「どういうことです?」

「?」

「あ、えっとね。三人で学校に通えたら楽しいかなって思って。二人は神浜市に滞在する理由があって故郷に帰れないから……せめて学校くらいは行きたいよねって思って……やちよさんに頼んだらやってくれるかなぁ……?」

「さすがのやちよも書類偽造は無理なのです。マミレベルの多彩な魔法が必要なのです」

「ツナ兄ならやってくれるよ。ちょっとお願いしてみようかな? イーピンも学校がどういうところか見てみたいよね?」

「イーピン、おでかけだいすき!」

 

 ガラガラガラ、ペッ。

 洗面所での仕事を終えた年少組は廊下でまたねと手を振る。フゥ太は裏庭を通って倉庫に戻る。食卓にはカレーライス。黒江が合成した料理である。

 

「すごいや黒江姉。もう料理の合成に慣れてきたんだね!」

「かれーらいす!」

「料理っていうか、合成カレーライス限定だけどね、こんな短時間で作れるようになったのは。レパートリーを増やしたいけど、それにはまだまだ訓練が必要そう……」

 

 食卓には既に凪が座っている。その両隣にフゥ太とイーピンが座り、対角線に黒江が座る。

 

『いただきます!』

 

 黒江の料理に感謝して、三人は朝食を取る。

 

「それじゃあ行ってきます」

 

 今日も黒江は調整屋に向かう。朝食は軽いおにぎりで済ませた。

 

 

 

 一方、本邸のリビングの食卓では、続々と朝食の香りに釣られて人が集まってくる。

 台所に立つ七海やちよは朝食を作り、既に食卓には百江なぎさと環ういがスタンバイ。二階から降りてきた環いろはと暁美ほむら、万年桜とリリスが食卓に着く。

 

「おはようございます、やちよさん」

「いろは。みんなもおはよう」

 

 そこで奥の廊下から黒江が歩いてきた。

 

「みなさんおはようございます。やちよさん、これ、家賃と五日分の食費です」

「あら、どうも。……倉庫に住んでいるのに家賃なんか貰っても……って感じだけどね? 食費だって別に良かったのに」

「これは私なりの筋みたいなものなので……もらってくれると嬉しいです」

「今日も調整屋に?」

「はい。なんとか生計が立てられそうで……今後とも、よろしくお願いします」

「こちらこそ。そんなに遠慮しなくていいのよ。好きなだけ居てちょうだい」

 

 会釈した黒江は食卓に目を向ける。そこには環いろはの顔があった。

 

「おはよう、黒江さん」

「おはよう、環さん」

「なんだか夢みたい。まさかこうして一緒にみかづき荘で暮らすことになるなんて」

「あ……たしか今日は、環さん……」

「うん。正式にここへ引っ越してくる日なんだ。しばらくしたら業者さんが荷物を届けに来る予定なの」

「そうなんだ。その……お互い、がんばろうね」

「うん!」

 

 お互い控えめに手を振る。そして黒江は玄関を開けて、みかづき荘を後にした。

 

(この穏やかな喧騒……なんだか、おばあちゃんが居た頃のみかづき荘に戻ったみたい……)

 

 無意識に笑みをこぼす七海やちよは料理を並べ、席に着く。

 

『いただきます!』「│いただきます│」「モキュ!」

 

 一斉に箸を取る中、ご飯にスライスチーズを載せて、味噌汁にパルメザンチーズをぶっかける百江なぎさ。

 そこで環いろはと七海やちよが雑談する。

 

「そういえば、フゥ太くんやイーピンちゃん、凪さんは、いま倉庫でご飯中なんですよね? ここで一緒に食べられたら、もっと楽しそうなんだけどな……」

「残念ながら環さん。それにはもっと大きなテーブルを買わなきゃいけないわ」

 

 階段から足音。あくびしつつ悪魔が降りてきた。

 

「あら、一番のお寝坊さんが降りてきたわね」

「昨日の今日で疲れてたんだ。知ってるだろ」

 

 悪魔はやちよと軽口を叩き合いながら洗面所に向かう。

 

 

 

 食後。皆が食器をカウンターに置き、環いろはや暁美ほむらが皿洗いを手伝う中、フゥ太とイーピン、凪が遊びに来た。

 

「ツナ兄おはよー!」

「ボス、おはよう」

 

 居間の端にある背の低いテーブル。その周囲にソファや椅子がある。だが悪魔は壁に腰掛けて腕を組み瞑想していた。声を掛けられた悪魔は片目を開いて返事をする。

 

「おはよう。今日も元気がいいな」

「ねぇツナ兄。僕、学校に行ってみたいんだけど……いいかな?」

「別にオレがダメという理由はないが……なるほど方法か。術士の凪なら、簡単な暗示程度の幻術は使える。それなら通うことも可能だろう。好きにすればいい」

「ほんと!? ねぇ凪姉、やってくれる?」

「うん……ボスの命令なら。……あと……フゥ太が、行きたいなら」

「やったー! あ、じゃあ、なぎさの分も頼むよ! ういちゃんと同じクラスがいいな!」

 

 そこで悪魔は片眉を上げる。百江なぎさは自称年齢不詳だから深くは考えないものとして、環ういは小学五年生、フゥ太は小学四年生の年齢だ。

 

「一学年上の勉強についていけるのか?」

「当然! これでも僕、頭はいいほうだよ?」

 

 その時、暁美ほむらの頭上に青い閃光がまたたいてランボが降ってきた。

 

「ガハハのハー! 魔王ランボさん登場だもんねー!」

「きゃ!? び、びっくりした……もうランボちゃん……」

「おどろいた? しんぢょう、とびでそうだった?」

「心臓が飛び出るほどではなかったけど……」

「あ! フゥ太とイーピン! おーい、あ・そ・ぼー!」

 

 暁美ほむらの頭を蹴って飛んだランボは、逃げ回るイーピンを追い掛け回す。

 

「子供は元気で微笑ましいね」

「いろはちゃん……そうだね。元気すぎるのも、ちょっと考えものだけど……」

「別に毎日元気なのは子供に限った話じゃないわ」

 

 七海やちよがそう言うと、玄関扉が開かれて二人の人物が入ってきた。

 

「最強の魔法少女! 由比鶴乃が来たよー! みんな~おっはようー! ほら、まどかちゃんも元気出して!」

「お、おはようございますっ!」

「鶴乃ちゃん!」

「まどか!」

「いやぁー偶然そこでバッタリ会ってね!」

「遅くなってたらごめんなさい……」

 

 七海やちよが出迎える。

 

「問題ないわ。こっちも朝食が終わったばかりだし……そっちも大丈夫なの?」

「はい。ちょっと早起きしましたけど、今日は大事な会議なので。あ、ちゃんと食べてきたので大丈夫ですっ」

「もうワクワクしてるよ! 今日の会議に呼ばれたってことは、これで私もチームみかづき荘の仲間入りってことだからね!」

「調子に乗らないで、鶴乃。今回の会議はあくまで現状の確認と模索。あなたにも神浜市の現状を知ってもらうことで、色々と気をつけることがあると伝えたくて呼んだだけよ。別に仲間なんかじゃないわ」

 

 その冷たい言葉に由比鶴乃は「ぶー!」と不貞腐れる。

 

 かくして全員が揃い、各々の作業も一旦落ち着いて、居間の座席に役者が揃う。

 悪魔は目を開き、開口一番。今までの出来事を振り返り、今後の方針を立てる旨を語った。

 

「全員揃ったな。ペルソナカード、ドッペル、マギウスとマギウスの翼……話し合うことはいくらでもある。まずはペルソナカードからだ。それを所持している者は取り出してくれ」

 

 悪魔は五枚のペルソナカードを取り出して机に並べる。

 環いろは、暁美ほむら、七海やちよも一枚ずつ取り出した。

 

「なんか全部、絵柄が違うね」鶴乃が言う。

「何か意味があるのですか?」なぎさが問う。

 

「おそらくペルソナカードはタロットを参考にしている。オレの五枚のカードは“オレンジ色の背景を持つ丸い輪”“赤色の背景を持つ断頭台の囚人”“青色の背景を持つ鎌を持った黒装束の亡霊”“緑色の背景を持つ胸にハートが描かれた男女”“赤色の背景を持つ女性の教皇”……環いろはは“黄色い背景を持つ燦々とした太陽”……暁美ほむらは“紫色の背景を持つ傾いた天秤”……七海やちよは“オレンジ色の背景を持つ騎士”……あと一枚あるはずだが……」悪魔が語る。

「あ、えっと……それは織莉子さんが持って行ってしまって……たしか絵柄は、うろ覚えですけど……“藍色の背景をした杖を持つフードの人物”だったと思います……」まどかが補足する。

 

「色と絵柄……まさか、色は魔力属性に対応していて、絵柄はタロットに関係があると……?」やちよが気付いた。

「あの、そもそも……タロットってなんですか?」いろはが首をかしげる。

 

「タロット占いって聞いたことないか? 要は占いに使うカードのことだ。トランプの魔術版だと思えばいい。数字と絵柄があり、それぞれに多くの意味が宿っている」悪魔が説明する。

「タロットは大アルカナの22枚に絞れば、0番目から21番目まであって、愚者・魔術師・女教皇・女帝・皇帝・教皇・恋人・戦車・正義・隠者・円環・剛毅・死刑囚・死神・節制・悪魔・塔・星・月・太陽・審判・世界……というものがあるんだよ」ほむらの補足。

 

 それに鹿目まどかは「ほむらちゃん詳しいね?」と知識の高さに感心し、暁美ほむらは「本ばかり読んでたから……」ともじもじ照れる。

 

「それで言うなら、オレの五枚は“魔属性の円環”“火属性の死刑囚”“水属性の死神”“木属性の恋人”“火属性の女教皇”となるわけだ。環いろはは“光属性の太陽”で、暁美ほむらは“闇属性の正義”となり、七海やちよは“魔属性の節制”となる。おそらく天秤は正義の女神アストライアを意味し、騎士は節制を重んじることから、節制タロットの絵柄は騎士なんだろう」悪魔はあごをさすりながら言う。

「タロットは作り手によってバリエーションがありますけど、節制の絵柄は大抵、天使が描かれているんですけどね」ほむらは首をかしげる。

「それも含めてのマ(・)ギ(・)ウ(・)ス(・)版(・)タ(・)ロ(・)ッ(・)ト(・)ということなんだろう。そして織莉子が持っていったというペルソナカードは、おそらく“無属性の魔術師”だ。加えてこれはオレの憶測だが……そのカードは八雲みたまに渡ったと見ていい。理由は知らないが」悪魔が言う。

 

 そして悪魔は「実験してみよう」と言い、火属性の女教皇を環いろはに手渡した。

 

「いろは、試しにこれでスタンドを出してみろ」

「え……はい。分かりました。危険だから、ちょっと離れますね」

 

 環いろはは広い空間に立つと「ペルソナ!」と叫んでカードをかざす。が、何も起こらない。ちょっとだけ恥ずかしくなって縮こまる環いろはをよそに、悪魔は推測を述べる。

 

「おそらく使用者の波動とカードの対応属性が合致していなければ使えないんだろう。厳密には出力不足といったところか。全ての生物には七つの波動が流れているが、大抵いくつかは微弱なんだ。しかし必ず一つの波動は強力になる。そして今のでペルソナカードは微弱な波動では反応しないということが分かった。いろはは光属性の波動が一番強い。反対に火属性の波動は微弱だからな」

「それじゃあ私の“魔属性の節制”は宝の持ち腐れというわけね。私は水属性がメインで、サブに木属性と闇属性を有しているから。魔属性のペルソナカードは使えないわ」やちよが言う。

「それならういに渡すってのはどうだ? ういからは魔属性の波動を感じる。マギウスがういを奪い返しに来ないとも限らない。身を守る術として持っていても構わないと思うが」悪魔が問う。

「え? わたしが……?」ういは目を見開く。

「でもスタンドは急速的に穢れが溜まるんでしょう? それは環さんと暁美さんが検証済みよ。下手に使えば魔女化……することは神浜市ではないみたいだけど、ドッペルが暴走する危険性が高いわ」やちよが危惧を呈する。

「それも含めて訓練すればいい。経験者のいろはとほむらが付いてやれ」悪魔は二人を見やる。

 

 環いろはと暁美ほむらは頷き、ういも「やってみる」と意気込む。やちよはしばらく考えたあと「気をつけて使ってね」と手渡した。

 

「やちよ。受け取れ」悪魔が水属性の死神カードを投げ渡す。

「……私のペルソナカードが“死神”ね……随分な因果(皮肉)を感じるわ」七海やちよは辛そうに目を細めた。

 

「ところでクマ吉は、ペルソナカードの使用にデメリットはないのですか?」なぎさが聞く。

「特にない。あとで大きな代償を支払う……という気配もない。ではなぜ一般人と魔法少女で、これほど代償が異なるのか。おそらくだが、スタンドの使用は精神力を必要とすることに原因があると見た。一般人はスタンドの使用で精神力が疲弊するだけだ。長時間の使用は精神を削るが、しばらく休めばどうということはない。しかし魔法少女はソウルジェムを形にしており、その肉体維持だけで微小な魔力を消費している。魔力の消費や穢れの蓄積が、精神力の疲弊を意味するなら────つまり魔法少女は生きているだけで精神力を削るような機構・構造・システムになっている」

「つまりスタンドと魔法少女は、燃費の相性が悪い、ということなのです?」

「そういうことになる。まぁ魔法とスタンドを組み合わせたら普通に強すぎるからな……何事も森羅万象には等価交換の原則が働く。強い力には相応の代償を。魔法少女は魔法少女であるだけで強いのに、そこにスタンドが加わったらエネルギーの法則的に一般人より大きな代償を支払うことになるのは当然だ。簡単に言えば、なぎさが言ったように“精神力の疲弊で穢れが溜まる魔法少女と、精神力を削って使うスタンドは、併用すればそれだけの精神摩耗が発生する”ということで話がつく。だから急速的に穢れが溜まるのだと」

 

 ただし神浜市限定の危険戦法としては、魔法少女がスタンドを使用しつつ、穢れが満タンになればドッペルを使うことで、魔法とスタンドとドッペルの三重苦を精神に背負いつつも、圧倒的なパワーを出せるだろう。無論そのような無茶はソウルジェムが耐え切れず砕かれる恐れがある。ドッペルの暴走も確実にあり得るだろう。そうした死亡と暴走のデメリットを考えると、この危険戦法を極めるレベルで訓練した者でないと、死を前提にした戦法になる。裏を返せばマギウスの中に、そういった戦法を訓練している者がいないとも限らない。そういった魔法少女は相当……いや、極めて攻略しがたい強敵になることだろう。

 

 そこで悪魔が「そういえば」と思い出す。

 

「口寄せ神社のウワサでは、八人のスタンド使いが襲ってきた。オレは四人を相手にし、いろは、ほむら、やちよが三人を相手した。では残る一人は誰が相手したんだ?」

「あ……それは私が説明できます……」まどかが手を挙げる。

 

「私は織莉子さんとウワサ空間に入った時、悪魔さんが四人のスタンド使いと戦っているのを目撃したんです。さらに物陰にもう一人スタンド使いが隠れていて……明らかに悪魔さんを奇襲しようとしていました。織莉子さんは「彼女を止めなければ悪魔はハメ技で殺される」と言っていたので、私たちでそのスタンド使いを相手したんです」

「そうだったのか……それで? そいつの能力は?」

「スタンド名は《ムジカデントロ(体内音色)》……殴った物を開閉して内部のレコードボックスをプログラムに見立てて操作する……という能力でした。人間を開閉した場合は、レコードを早回ししたり巻き戻したりすることで、直前の行動を再現させたり、将来的にやろうとしていた事を実行させたりするんです。──でも織莉子さんは未来予知で、早回しや巻き戻しによる行動がどうなるのか分かっていたので、敵スタンドの能力を逆手にとって自滅に追い込み、戦いは一瞬で決着がつきました。そして黒藍羽根から摘出されたカードは、織莉子さんが回収したんです」

「これが俗に言うナレ死なのです」なぎさはうすら笑みを浮かべつつ「やれやれ、予知者と戦ってしまったのが出番の運の尽きなのです」と肩をすくめて呟いた。

 

 

 

 ペルソナカードについての話はこの程度で良いだろうと済ませ、一同は次の話題に移る。

 

「半魔女。またの名をドッペル。これについてはまばらな情報だが、なんとなく全貌が見えてきたところだ。神浜市には謎の皮膜が張られている。そして魔法少女になる前の環うい・里見灯花・柊ねむが計画した“自動浄化システム”は、環ういの魔力係数が足りないことで失敗に終わったが、多くの要因が重なって今の状況に落ち着いた」

「灯火ちゃんとねむちゃんは、ういのドッペルを使って自動浄化システムを完成させた。謎の皮膜のせいかおかげか、自動浄化システムは神浜市に限定された。そして二人はマギウスを立ち上げて、ウワサを作り、多くの一般市民を犠牲にして、何かを為そうとしている」いろはが神妙に語る。

「マギウスの目的は依然として不明な点が多い。憶測を立てるなら“自動浄化システムの拡大”だろうが、それにしてはやり方が残酷すぎる。これは考えても仕方がない。これから突き止めていこう」悪魔は次の話題に移る。

 

 

 

 マギウス。それについて七海やちよが語る。

 

「まず“マギウス”という三巨頭があり、その傘下に“マギウスの翼”という組織が構成されている。マギウスの三巨頭を支える翼は、大まかに分けて三つの階級があり、マギウスと羽根たちを繋げる“幹部”……上級兵の“白羽根”……下級兵の“黒羽根”がある」

「なぜそれを今まで黙っていた?」悪魔が問う。

「正確な情報では無かったから。私もウワサ調査に乗り出してマギウスの翼と衝突したのは先月末あたりから。あなたたちが持つ情報量とそう大差はないのよ。確証がないことを言いふらして混乱を招くのは避けたかった。それに……」

「なんだ?」

「当初はウワサで人死が出て頭に血が昇っていたから、黒羽根の子を痛めつけてさっきの情報を無理やり引き出したのよ。でも拷問で吐かせた情報の信ぴょう性は低いでしょう? 適当に答えれば逃がしてくれると考えて嘘をつく子もい(・)た(・)の。ソウルジェムのまたたきを見れば判別できたことだけど、どこまでが本当のことで嘘なのかまでは判別が難しい。つまりこれは私の情報の集め方が悪かったの。だから不確定な情報は言い出せなかった……」

「なるほどな。だが絶交ルールのウワサや口寄せ神社のウワサでマギウスの翼と二度にわたり対決したことで、自分の情報に確信が持てた。だから今ここで明かした。そういうわけか」

「ご明察の通りよ」

 

 一同は納得する。

 

「ではマギウスとマギウスの翼には誰が所属しているのか。……里見灯花・柊ねむは十中八九マギウスの一人だろう。それとやちよ、お前さっき“三巨頭”と口にしたな? ということは灯火とねむのほかに、もう一人いるわけだ」

「そんな……いったい誰なんでしょう?」いろはは不安がる。

「そしてマギウスの翼には、梓みふゆと巴マミが加入している、または囚われていることが確定した。口寄せ神社であれほどの高性能な複製体を用意できたんだ。加入しているなら幹部クラス、囚われているなら利用されている。今のところはそう考えてもいいだろう。あくまで直感だが」

 

 

 

 話に一区切りが付いたところで環いろはが手を挙げる。

 

「あの……ひとつ私からも報告があって……」

 

 懐から取り出したるはピンク色の髪飾り。魔法少女はひと目で、それに莫大な魔力が込められていると見て分かる。

 

「口寄せ神社でスタンド使いと戦闘した時……私のピンチを、この髪飾りが救ってくれたんです」

 

 それは“昂ぶるモルガナイトの髪飾り(バレッタ)”なる代物。

 それを目にした環ういは、どこか他人事ではないような感覚を覚える。

 

「複製体の偽(・)ね(・)む(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)によると、幸福の魔女のカケラ? というものらしくて……なんでも“キモチ”と言うそうです。この髪留めを身に付けた途端、体の底から力があふれてきて……さらに“ういを守れ”っていう思いも流れ込んできて……とにかく凄かったんです」

「正体不明のパワーアップアイテムというわけか。出処は推測できるが……使っていて大丈夫なのか、それ?」悪魔が問う。

「使用後は疲れすぎて、しばらく身動きが取れませんでした。鶴乃ちゃんが助けてくれなかったら流れ弾でやられるくらいには何もできなくて……だからこれは一か八かの切り札として温存しておくつもりです」

「私は反対よ。使い続けることで何かしら副作用があるかもしれない。その辺りもよくよく考えてちょうだい」やちよの忠告。

 

 それに環いろははしっかりと頷いた。

 

 

 

 そこで悪魔は昨日の一件を思い出し「耳に入れておく情報がある」と口にする。

 

「マギウスの敵対勢力が東側にいる。常闇騎士団という組織だ。リーダーは和泉十七夜。今の彼女は危険だ。接近は禁止とする」

「えっ……十七夜がどうかしたの?」鶴乃が問いかける。

「悪魔によれば、十七夜のご両親がウワサの餌食になったそうよ。昨日から十七夜と連絡が取れないし、みたまとも連絡が付かない。さっき黒江さんは調整屋に向かったから、それで今の状況が分かればいいんだけど……」

 

 噂をすれば影がさす。玄関が開かれると黒江が帰ってきた。

 

「黒江さん! あの、調整屋は……!」いろはが焦ったように質問する。

「環さん? 調整屋は……お休みだったよ。なんでも開業日が減るんだって」

「みたまとは会った? 様子はどうだった?」やちよが聞く。

「えっと……目の下にクマができてて、理由を聞いたら一睡もできなかったみたいで……あと、廃墟街には魔女や使い魔が寄り付かないはずなのに、私が行った時にはかなり数が多くてびっくりしました……チームももこという方たちが助けてくれたので怪我はしませんでしたが……」

 

 黒江も危険な目に遭ったことで動揺している。一旦落ち着いて思考をまとめると、調整屋の今後について説明した。

 

「ともかく調整屋が営む廃墟街に使い魔が増えてきたので、複数の魔法少女がボランティアの交代制で調整屋の警護に当たるそうです。なんか商売どころでは無くなったようで……でも出来るだけみたまさんは、いつでも調整屋を開けるように心懸けると言っていました。なんだか戦い続きで疲れきっていましたけど、大丈夫なんでしょうか……」

「……やちよさん」

「そうね。私たちも出来る限り警護に協力しましょう。今の神浜市では調整屋が魔法少女の生命線よ。それをマギウスに潰されてたまるもんですか」

 

 そこで百江なぎさが問いかける。

 

「? つまりマギウスは調整屋を攻撃したのですか?」

「いや、それは違う。マギウスは和泉十七夜を攻撃したんだ。しかし十七夜と友人だったみたまは、その脅威から十七夜を守ろうとしたが流れ弾で呪的負傷し、調整屋の開業が難しくなった。これはマギウスも想定外の事態だろう。想定して然るべき事態だったとは思うがな」

「そもそもマギウスはなんで十七夜を狙ったんだろ?」鶴乃は首をかしげる。

「邪魔者だと思ったんじゃないか?」悪魔の憶測。

 

 それは間違っていないと七海やちよは口を開く。

 

「十七夜は数ヶ月前にマギウスから勧誘されたそうなの。そしてそれを断った。西の代表者である私はウワサを狩り、東の代表者である十七夜は取り込めない。一般人を犠牲にするウワサを作る以上、マギウスが血も涙もない組織であることはもはや自他ともに認めるところ。となれば命くらい狙われたっておかしくないわ。実際、私も何度か正体不明の敵にちょっかいかけられて狙われたこともあるわけだし」

「そんな……」いろはは動揺する。

 

 そこで悪魔は黒江に依頼した。

 

「なぁ黒江。使い魔が増えたと言っていたな? なら魔女避けのアーティファクトを……」

「あ、はい。私もそのつもりでした。すぐに大量の護石を作って届けに行くつもりです」

「助かる。黒江は仕事が早いな」

「そんな……当然のことをしているだけです。では、私はしばらく倉庫(アトリエ)にこもるので……」

 

 頭を下げた黒江は裏庭の倉庫に向かう。そこで数時間かけて合成を繰り返すのだろう。

 

 

 

 かくしてあらかたの話は終わった。悪魔は一息つく。

 

「今後の方針としては、マギウスのアジトを見つけないことには話にならない。これで各々の知る限りの情報は明かしたことだし、報告会は終了とする。もっと詳しく知りたい者は各々ここで深く掘り下げるように話し合えばいい。──オレは風呂に入る」

「クマ吉が入るならなぎさも入るのですー!」

「やめろ。……誰かなぎさを捕まえておいてくれ」

 

 悪魔は風呂場に向かう。百江なぎさの首根っこを掴む七海やちよ。

 そこで由比鶴乃がピーンと閃いた。

 

「お風呂……それは裸の付き合い。つまり親睦を深めるには最適な環境……! ねぇ待って悪魔! 私も一緒にお風呂入るー!」

『────えぇっ!?』

 

 急にこの娘(こ)は何を言っているのかと一同は驚く。

 

「ちょ、鶴乃、あなた何を言って……?」七海やちよは手を伸ばすが、百江なぎさを捕まえておくのに精一杯で、由比鶴乃の肩に届かない。

 

 由比鶴乃は洗面所の引き戸を開けて、カゴの中に入っている悪魔の私服なぞ目もくれず、シャワーの音が鳴る風呂場の扉を開け放った。

 

「悪魔ー! わたしは君のことが知りたいな! 同(・)じ(・)魔(・)法(・)少(・)女(・)同(・)士(・)、親睦を深め────」

「…………」

 

 悪魔は突然のできごとに驚いて硬直する。

 由比鶴乃も視線を下げた所にある一物を見て、困惑後に真理を得て驚愕、しかし理解が追いつかず目がぐるぐると回る。

 

 ────バタン。扉が閉まる音。

 ダダダダダダダッ。廊下を全速力で駆け抜ける足音。

 

「うわーん! ししょー!」

 

 七海やちよに泣きつく由比鶴乃は、とんだ恥ずかしめを受けたと抗議する。

 

「どうして悪魔が男だって教えてくれなかったのやちよー!?」

「そんなこと言われたって、まさかそんな勘違いするなんて誰も思わないわよ……!」

「だってぇ! 魔女やウワサと戦えるのは魔法少女だけだと思うじゃんフツー! 先入観だよ! 先入観が邪魔したんだよ! ちょっとボーイッシュな女の子なのかなって思っちゃったんだよー!!」

「あーはいはい。とんだ勘違いをしちゃって恥ずかしいわね。まったく……」

「それにさー! 魔力パターンだってあるんだよ!? しかも七つも! これはもうめっちゃ強い魔法少女なんだって思うじゃん! あの巴マミって人との戦いを見て、悪魔はすごい魔法少女なんだって納得しちゃったんだよー!」

「別に魔力パターンが複数あるからって強い証拠にはならないでしょ。それに複数の魔力は、悪魔が七個のソウルジェムを持っているだけって話で……というか、そもそもフツー見た目で気付くでしょうに……」

「だから先入観だって! 言われてみれば確かにそうなんだけど……うわーん! 見ちゃったよー! 悪魔のすごいの見ちゃったよー! なんか百戦錬磨って感じだったよ! いや私も見たのお父さんのだけだからよくわかんないだけどさー!」

「そんなコメント要らないし言わなくていい! もうどいてちょうだい……悪いけど環さん。この子の相手してやってくれない?」

 

「あ、はい……」

「うわーんいろはちゃーん!」

 

 それから環いろはは泣き喚く由比鶴乃をあやして慰める。

 やがてシャワーを浴び終えた悪魔がバスローブ姿で戻ってきた。

 

「うわっ! たしかに水も滴るいい男って感じ!」泣き腫らす由比鶴乃。

「……なるほど。とんだ誤解をされたもんだな」

 

 悪魔は直感で、なぜ由比鶴乃が風呂場に押し掛けてきたのか勘付く。

 

「なぁいろは。オレそんなに女に見えるか?」

「いえ、まったく……」

「だから先入観だよ! 思い込んじゃったんだよ! うわーんっ!!」

 

 とんだ間違いを晒してしまったと由比鶴乃は泣き叫ぶ。

 それを苦笑いしつつ、悪いとは思いながらも、互いに目を合わせてくすりと微笑む鹿目まどかと暁美ほむら。

 百江なぎさはやれやれと失笑し、環ういは由比鶴乃の頭を撫でる。

 万年桜とリリスは依然として真顔のまま佇立。人間の会話や暮らしというものを観察している。

 フゥ太とイーピン、ランボは相変わらず、会議している時から本邸と裏庭を駆け回って遊んでいた。

 

「ところでやちよ。オレのパーカーが見当たらないんだが」

「洗濯機に放り込んだわ。また血まみれだったから。構築効果で隠していても汚いのは変わりないんだから、ちゃんと洗濯してよね」

「だが替えの服がない。また黒スーツはゴメンだ」

「うちに男物の服なんてないわよ。バスローブ姿で我慢するのね」

「マジかよ」

 

 悪魔は裏庭に出て倉庫に向かい、黒江に服装一式を打診する。もちろんなけなしだがお金は払う。黒江は合成屋として商売を始めたのだ。しかし黒江は悪魔なら無料で提供すると言い、布切れから適当にシャツとパーカーとズボンを合成してくれた。

 

「ありがとう、黒江」

「いえ。また必要なものがあったら言ってください」

 

 バスローブから緑色のパーカーに着替えた悪魔は本邸のリビングに向かう。

 そこで屋敷中にインターホンが鳴り響いた。

 

          †

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