※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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【みんなありがとう】スライス秋山〔実はボンゴレ十代目候補(ブラッド・オブ・ボンゴレ持ち)〕

 

 朝方。新西区の中央広場にて。なにやらイベント会場のようなものが敷設されており、テレビの生放送が執り行われているようだった。大勢の観客がテープの前に集まり、多くの野次馬が遠巻きに見守る。

 

「さぁ始まりましたー! スライス秋山の超直感料理教室ぅうううううっ!! 今日は神浜市に主張して料理大会を開いちゃうぞ☆ 料理もゲストも超直感で決めちゃういつも通りの番組だ!」

 

 ありえない長さのコック帽をかぶった上半身裸の男が両手に包丁とマイクを持って調理担当と司会を兼任している。

 

「まずはゲストのご紹介! 神浜市といえば創立百年を誇る老舗洋食店ウォールナッツ! 電話一本で登板を頼んだら『いや一時間後に生放送は無理でしょ』ということで、オーナーシェフの娘さんがピィックアァップッ! いずれウォールナッツを引き継ぐ覚悟で日夜修行に励むプロの卵! 胡桃まなかぁあああ!」

「よ、よろしくお願いします……っ!!」

 

 洋食風調理服に身を包んだ橙髪橙眼の女の子。胡桃まなか。突然の生放送で緊張しているのか体が硬い。だがしかし最近閑古鳥が鳴くウォールナッツの名を広めるチャンスだと、その目には火が宿っている。

 

「お次はスタッフさんが土下座して連れてきたらしい、さっきまで観客席にいたグルメな女の子! 僕たちの料理のレシピを作成してくれるぅ────若菜つむぎぃいいいいい!」

「イェーイ! かのスライス秋山さんとウォールナッツの料理を同時に味わえるなんて最高ですっ! 趣味も特技も食べる事なので、食レポと味の審査は任せてください! 自信ありますっ!」

 

 翠髪碧眼のツーサイドアップな女の子。既に両手にわたあめとチョコバナナを持って食べている。百メートル先の移動販売車で買ってきたようだ。口直しのたくあんを懐から取り出して味見の準備はバッチリ。

 

「でも二人だけじゃいきなり決勝戦だよね? それじゃあトーナメントにならない。というわけでチャレンジャーをピックアップだ! ん~~~~~~~~~~ヘイッ! そこのカップル! あるいはボーイミーツガール! 舞台に上がってきな! 来ないならこっちから行っちゃうぞ!」

 

 スライス秋山が満面の笑顔で指さした先には、悪魔と昴かずみが立っていた。

 

(これまた面倒なことに巻き込まれた……もうカメラこっちに向けられてるし……)

 

 悪魔はため息をついて、傍らに立つ少女に問いかける。

 

「かずみ、どうする? 好きにしていいぞ」

「……でも……」

「オレに遠慮するな。食い意地は直感してるし、腹の音も聴こえてる。面白そうだからやってみようぜ」

 

 刺激を受けることで何か思い出すかも知れない。

 悪魔は歩き出し、昴かずみは内心ワクワクとしていた。

 

「ありがとうありがとう! 名前をどうぞ!」

「……悪魔です」

「昴かずみです」

「いい名前だ! ところで君たち、料理の経験はあるかい?」

「いえまったく」

「わたしも……知識はあるんですけど」

「いいともいいとも! なんせ直感に頼れば料理は出来るッ! それが超直感料理というものさ!」

 

 悪魔は理解を拒む顔で佇み、腕を組んで視線は遠く。

 昴かずみはさっそく冷蔵庫の中を確認して作れそうな料理を思い浮かべる。

 

「……え? なに? カンペさんが『さすがに初心者に料理は勝負があやしくなる?』って? それもそうかな! じゃあ君たちはペアで協力してもらおう! というわけで、あともうひと組のチャレンジャーを待つ! 料理の腕を試したい者は手を挙げよ!」

 

 次の瞬間、二本の手が上がった。

 

「おぉっと強気なグーパンが天を突く! さぁ上がってらっしゃい! ……え? ふた組も出たらトーナメントにならない? そんなの腕っ節で勝ち上がればいいじゃないか! トーナメントも超直感で行っちゃうぜ!」

 

 この意味不明な言動で、本当に番組は成り立つのかと悪魔は呆れるが、どうも観客の反応を見るに平常運転らしい。

 

「さぁ二人のチャレンジャー! お名前をどうぞ! カメラはあっちだよ!」

「百江なぎさなのです! この世界の料理はチーズ以外に認めないのですっ!!」

「ビアンキよ。イタリアから観光に来たわ。特技はポイズンクッキング。愛ある料理に打ち震えて死になさい」

「かなり強烈なキャラクターの登場だぁ! そういうわけで全員台所(位置)に着いて! さぁ────スライス秋山の超直感料理教室大会、堂々たる開幕だァー!」

「せめて教室なのか大会なのかハッキリしろ!」

 

 なぜ百江なぎさがここにいるのか。理解の範疇を超えた悪魔は思わずツッコミを入れてしまう。しかし観客席からは笑い声。反応は上場。諦めたような顔をしたスタッフはカンペで『もう行っちゃってください』とゴーサインを出す。

 

「ヘイつむぎちゃん! 僕のマイクを受け取って! 今から君がこの番組の司会者だ! やり方が分からなくても超直感で行っちゃって!」

「受け取りました! 今世紀最大のおバカな料理大会が始まる予感がします! スライス秋山氏の超直感料理に太刀打ちするは、超(ハイパー)初心者の悪魔&かずみペア! そしてチーズクッキング以外のクッキングを認めない過激派・百江なぎさ! 最後はボウルの中が既に毒々しいポイズンクッキングのビアンキ! さぁこの超直感料理教室大会、はたしていかなる運命を辿るのかぁー!」

「めっちゃ司会うまいし……」

 

 ボソリとつぶやいた悪魔のツッコミで観客席がくすりと盛り上がる。

 

「悪魔さん! この野菜を縦と横、二つに切って!」

「……」

 

 昴かずみが用意したまな板と包丁と野菜。悪魔は指示通りに淡々と作業を進めていく。

 そこで司会の若菜つむぎがカメラマンと共に調理風景を覗きに来た。

 

「悪魔&かずみペアは、最低限の包丁の使い方を知っているなら初心者でも出来る、簡単な調理法で料理を作るようですね! 無骨な少年と可憐な少女の合作は、もうそれだけでラブラブしいですっ!」

「悪いがオレたちはそういうのじゃない」

「じゃあこれからなんですねっ!?」

「なんなんだお前は……」

 

 なぜそこまでグイグイ来るのかと悪魔は呆れ返る。眉間にシワを寄せた強面少年が一番の常識人でツッコミを入れる光景は、観客席のウケが良さそうだ。

 

「フランベファイヤー!」

「おぉっとスライス秋山氏はいきなり何もない中華鍋に火を起こしたー! これはいったいどういうワケがあるのでしょうかぁ!?」

「まずはフライパンを温めようと思って!」

「なるほど豪快ですね!? ですが早く具材を入れてください! もう番組は始まっているんですよ!?」

 

 笑いが起きる。

 

「この淀んだ料理界に辛酸を注ぐのですっ! 茶にブチ込むは豪華絢爛のゴルゴンゾーラ! 最速の料理をお見せするのです! へいお待ちぃ! ギリシャ怪物的お茶漬けゾーラの完成なのです!」

「おおっっと百江なぎさ氏はタイヤのようなチーズを取り出したかと思えばお茶漬けの入った皿ごと割ってぶち込んだァー!」

「皿つぶ残す奴に食わす飯はねぇのですっ!」

「おぉこれはなんという料理人の信念! 米粒一つに神様が宿るとは言いますが、まさか皿粒ひとつにも神様────宿るわけねぇだろぉ!?」

 

 爆笑が上がる。

 

「フッ。甘いわね。真の料理とはすなわち愛よ! この一年で磨かれた私のポイズンクッキングは、愛する人(リボーン)を守るために進化したわ! 喰らえヴァリアー! XANXUSが青ざめた顔で立ったまま気絶した料理よ! 《千紫毒万紅(せんしどくばんこう)》ォッ!!」

「なんか台所が溶け始めたァ!? 大変危険です! 毒々しい紫色の液体がドロリと垂れて、それに触れたモノは全て溶解していきます! これはいったいどういうトリックなのかぁー!?」

「トリックじゃないわ。愛(・)よ」

「愛だったー!? 愛の力ってスゲェー! でもなぜそこで愛!? これはまさか料理テロリストなのか! 飯テロという言葉はありますが、まさかマジの飯を使ったテロなのかコレはー!?」

 

 観客席から悲鳴が上がる。舞台から垂れた毒が観客席の足元まで及んだのだ。会場の最前席は大混乱に陥るが、それ以外の観客は固唾を呑んで料理大会の行方を見守っていた。

 

「……ほっ! とぁ! てやぁ!」

「そしてウォールナッツの看板に偽りなし! 胡桃まなか氏は非常に非常に常識的な料理を作っておられます! 見てくださいこの美味しそうなつやめくオムレツを! くるんと返して焦げ目なし! 光り輝くオムレツはケチャップライスにふわりとかぶさってキャー日輪城! お旗も差して、至極美麗なオムライスの完成ですっ!」

「これが料理です。皆さんは勘違いなされないように」

 

 かくして調理タイムは終了。完成品が出揃い、司会役兼味見役の若菜つむぎが美食判定を行う。

 

「まずは悪魔&かずみペア! 料理名は“さくっと出来上がるビーフストロガノフ”です! 名前はラスボスみたいに重々しいですが、意外と簡単に作れる可愛いところがあるこのビーフストロガノフ! さてさてお味はいかがかなぁ~?」

 

 若菜つむぎはスプーンの上に、コクのあるルーとライスを半々に乗っけて口に運ぶ。とろける頬を抑えるように至福の笑み。

 

「美味い! 70点! 悪魔さんかずみさん、こちらはどうやって作ったんですか?」

「オレは切っただけだ」

「わたしが煮込んだだけです」

「エクセレント! 二人の共同作業は平均以上の料理を完成させました! これは期待のダークホースですよぉ!」

 

 美味しそうに食べる若菜つむぎ。それを目にした観客は知らず知らずヨダレを垂らす者がいて、それは昴かずみも同様だった。

 

「……おい、つむぎ。次、次!」

「……まなかさん? おっと! 失礼しました! 全部一気に平らげてしまうところでした! えへへ……!」

 

 お茶目な味見役に対して和やかな笑いが漏れ出る。

 

「お次はスライス秋山氏! 料理名は“超直感チョコチャーハン”です!」

「自信作だ! たんと召し上がれ!」

「料理風景を見ていましたが、分量も何もない作り方でしたが……というかなぜにチョコとチャーハンの掛け合わせ!?」

「君が食べていたチョコバナナから直感してね! 苦味が混ざらないようサラッと一瞬の灼熱で炙ったからまぁきっとそれなりに絶対美味しいと思うよ!」

「なんか若干不安が残る説明でしたが、見た目は悪くないので勇気出して、いただきまーす!」

 

 茶色いチャーハンを口に含む。途端、若菜つむぎの両眼が開ききった。

 

「────100点、満点……っ!? だと……!!」

 

 観客席から不安期待交々(こもごも)の歓声が上がる。

 

「な、なんだこのコクのあるジューシーさは! 食べた瞬間、パラパラとした食感の直後、口の中の上すなわち鼻につくコクゥンとした深いカカオの匂い! 噛んだ瞬間、具材の濃厚さが歯茎に染み渡って旨味成分の液体がのどごし……クルッ……!! しかもそこに香ばしいチョコの旨味も……のどごしクルッ……!? こ、これをレシピなしで作ったというのか……!? しかも超直感で……!!」

「そうとも! なんせ僕はスライス秋山! 開いている教室の名前は────超直感だぜ☆」

 

 上半身半裸のコック帽をかぶった男性は包丁を持った手で両腕を組み、白い歯をキラリと見せてグッジョブとキメ顔。そのイケメンさをカメラに映した途端、観客席は盛り上がりを見せた。

 

「お、おどろきの料理です! これは初心者では太刀打ちできない! 悪魔&かずみペアはよく健闘しましたが、さすがにこれは次元が違う! 次に移りますが、これを超えうる料理は現れるのか!?」

 

 若菜つむぎは、割れた茶碗から散らばるお茶漬けと、その上に乗っかる座布団のようなチーズの円盤。そして台所を溶かす毒の沼地を見て────

 

「ある意味超えてる料理あった! これがホントの別次元!」

 

 両腕でバッテンマークを作り試食を拒否した。

 これには観客席も『だよね……』『無理しないで!』と同情の声が上がる。

 

「となると最後は……神浜市を代表するウォールナッツの胡桃まなか氏! 料理名は“ナッツオムライス”ですっ!」

「渾身の作です! いくらスライス秋山さんが相手といえども、百点満点以外ありえませんね!」

「スライス秋山と胡桃まなかの間に視線の火花が散るぅっ! ではいざ実食をばぁ!!」

 

 ナッツの香り漂うオムライスをパクリ。絶頂するようなふっくら頬で微笑む若菜つむぎはスプーンが進む進む。

 

「なんと……なんということでしょう! スプーンが止まりません! オムライスの膜、スプーンで封を切った瞬間、もわっと浮かび上がるナッツの匂い香ばしい嵐! 口の中でじゅわぁと広がるとろけるタマゴ! 熟した熱さ厚みどれを取っても最・高・潮っ! それとは対照的にご飯がパラパラ! タマゴのトロトロとご飯のパラパラを塩梅良く食べるわたしは、この噛み合い・噛み心地がたまりませんっ! オーソドックスにしてシンプルイズベスト! 基本を極めればここまで満足できるのか!? ううぅ~ん────百・点・満・点ッッ!!」

 

 観客席が驚きの歓声を上げる。

 

「えぇ、百点満点ですっ! しかし、しかし、これは大会! 優勝者は二人も要らない! 引き分けで終わってもいい……私の心の中で、そんな天使の声が聴こえてきます……でも! 白黒はっきりつけなきゃあ先に進めない時だってあるッ!! 勝者は栄光を! 敗者は悔しさから更なる挑戦を! 故に勝者は負けざると精進を重ねる! 私はこの料理界をもっともっと押し上げるために平和的解決法は無視します! むしろ戦争じゃあ! ではどうやって白黒つけるか────そんなもの、この若菜つむぎ独自の採点法を使うほかあるまいっ!!」

 

 若菜つむぎはスマホを取り出すと、自分の食レポブログを見せつける。

 

「私は趣味でネットに食レポを書いていますが、あらゆる料理を独自の採点基準で評価しております! 評価項目は全六種・評価段階は全五段階、例外付き! これで白黒、つけさせていただきやしょう! ランクが高いほどポイントが高い! ただし難度系に関してはランクが低いほどポイントが高くなります! つまり、ご家庭に良心的な採点基準でお送りさせていただきますっ!」

 

 観客席が謎の盛り上がりを見せる。もはや全員、理解が追いつかなくても雰囲気で楽しんでいた。それがスライス秋山の超直感料理教室の醍醐味なのだろう。

 

「まずはスライス秋山氏の“超直感チョコチャーハン”は!

 素材品質C(3点) 調理難度EX(0点) 節約難度C(3点) 味見栄えA(5点) 超独創性A(5点) 後味濃度A(5点)────合計《21点+α》です! αとはレシピ化できない意味です! みんなが作れるような再現性がなければ、それはご家庭に優しいとは言えません!」

「むぅっ……ごもっともだ! ここで超直感料理教室の弱点が出たか……!」

 

 スライス秋山は悔しそうに歯噛みする。

 

「そして胡桃まなか氏の“ナッツオムライス”は!

 素材品質C(3点) 調理難度A(1点) 節約難度E(5点) 味見栄えA(5点) 超独創性D(2点) 後味濃度A(5点)────合計《21点》です! つまり、この勝負! プラスアルファの分で────スライス秋山氏の勝利ですぅー!」

「くっ……! まだまだ修行が足りなかったか……!」

 

 胡桃まなかは悔しそうに歯噛みする。同時に歓声が上がり、スライス秋山コールが上がる。

 

「みんなありがとう」二本指を額からハジケさせるスライス秋山。

「フン……」両腕を組んで不機嫌そうに佇むが、良い勝負が出来たおかげで改良点が見つかったと喜んでいる胡桃まなか。

「神に感謝だよ……」若菜つむぎが独自採点して皆が注目している隙に、ビーフストロガノフもチョコチャーハンもナッツオムライスもお茶漬け皿割りゴルゴンゾーラもポイズンクッキングも平らげていた昴かずみは、お腹を膨らませてゲップする。

「くっ……チーズ以外に負けた……」膝から崩れ落ちて絶望する百江なぎさ。

「順当な順位ね」自信しかない不敵な笑み。それはどういう意味で言っているのかビアンキ。

 

 そんなこんなでアホらしい世界に取り残された悪魔は、最後に一言。

 

「……トーナメントは、どこいった?」

 

 ドッと湧き上がる会場。そこで若菜つむぎからスライス秋山にマイクが渡り締めに入る。

 

「というところで今回のスライス秋山料理教室大会は終了とさせていただきます! みんな今日から超直感で料理を楽しもうぜ! まずはチャレンジだ! レッツエンジョイクッキング! ハイパーな包丁さばきで電子レンジがエクスプロージョンしてもめげずにやる気出していこう! そういうわけでタレント料理人・スライス秋山とぉー?」

「ウォールナッツの胡桃まなか!」

「こちらレシピです! 詳細は公式サイトにて! 若菜つむぎでーす!」

「百江なぎさ」

「ビアンキよ」

「昴かずみです! チャオ!」

「……悪魔」

「────以上のゲストでお送りしました! みんな、また会おう! 次は見滝原市にでも行ってみようかな!? まったねー!」

 

 ドローンカメラが引いて空に昇り広場全体を映しながら暗転。

 かくしてスライス秋山の料理教室大会の生放送はめでたく終了を記念した。

 

          †

 

 一方その頃。

 ホテルの一室。ベッドの上では、自堕落に座る佐倉杏子と、その膝の上に座る千歳ゆまが、仲良くテレビを鑑賞していた。

 

「キョーコ、面白かったね!」

「……悪魔(あいつ)、何やってんだ?」

 

 見ていた番組は、スライス秋山の超直感料理教室。今回は生放送特番でトーナメント大会をやる予定だったが、司会が直感で進行を切り替えるため、やはり予定通りに行かなかった。

 

 しかしスライス秋山による独創的な料理は、どれもいつか一度は食べてみたいと思わせるものばかりだ。それゆえに佐倉杏子も、好きというほどではないが、番組が流れていれば目を留めて見てみる程度には気に入っている。

 

 今日も偶さか点けたテレビでその番組がやっていた。それに知り合いが出演していたとあらば、いつにも増して目は留まる。

 

「ねぇキョーコ! あの悪魔って人、芸能人なの? だってテレビ出てたよ!」

「さてね。また変なことにでも巻き込まれてんじゃないの?」

 

          †

 

 イベントが終了し、群衆がまばらに散っていく。

 

「とんだイベントに巻き込まれたな」

「でも楽しかったね! あと美味しかった!」

 

 悪魔と昴かずみは気を取り直して散策を再開する。なお百江なぎさはどこへなりと去っていった。どこまでも自由な魔法少女である。

 

「あなたね。ボ(・)ン(・)ゴ(・)レ(・)十(・)代(・)目(・)ボ(・)ス(・)候(・)補(・)は……」

「──!」

 

 不意の別名で呼ばれた悪魔は身が硬直する。背後にはビアンキ。

 

「隼人が世話になっているようね。残念だけど私はもう本国(イタリア)に帰るわ。あなたのお姉さんが暴れまわってくれたおかげでね……」

「……!?」

「じゃあね。また会う日まで!」

 

 ゴーグルとヘルメットを身につけたビアンキは「あぁそれ僕の原付!」と人から盗んだバイクで走り出す。

 

「……今の人、知り合い?」

「…………いや。知らない」

 

 だがボンゴレ関係者であることは確かだろう。しかし死炎系マフィア界とは関わりたくない。それより今は自分の目的を優先したい。故に悪魔は歩き出す。

 

(今は神浜市だ……いずれ向き合わなきゃいけなくなるとしても……まずは三人を生き返らせて、インキュベーターをどうにかする。話はそれからだ……)

 

 悪魔は霧の炎で迷彩効果を得ると、バスの屋根に飛び乗る。

 

「えっ!? あ、ちょ、待ってよ!」

 

 昴かずみの全身にも霧の構築を掛けておいた。昴かずみもバスの屋根に飛び乗る。

 

「金欠なんでな。金も余力もない時は、今までこうやって旅してきた」

「そうなんだ」

 

 そこで昴かずみは気になる。悪魔とはいったい何者なのかと。

 

「ねぇ。悪魔は魔法少女じゃないのに、なんで魔法少女と一緒にいるの?」

「……関わってしまったから。それ以外に理由があるか?」

 

 そこで昴かずみは、運命という言葉を思い浮かべる。

 かくしてバスは東方面に向かい、一昔前の時代を思わせる古き町並みに入っていった。

 

          †

 

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