アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
水平線の直上に浮かぶ太陽。夕暮れの南凪区。波打ち際の手すりに身を乗り出した昴かずみは夕焼けに燃える海を瞳に映す。
「海だ!」
「あぁ」
「海といえば焼きそば……でも潮の香りしかしない……」
「ここは埠頭近くだからな。海水浴場はもっと先だ」
見わたす場所に砂色は一つもなく、鉛色の道が左右に延々と続く。
「ならまた今度来よう! 遠くに見える観覧車も、あれ遊園地でしょ!? いっぱい美味しいものがあるはず!」
「はは。……結局今日は一日中、遊び回っただけになったな」
何か記憶回復のヒントになるようなものはなかったのかと悪魔は問いかける。
「う~ん……やっぱり何も思い出せない……というか、思い出せる気がしない……」
「……それは
「え? あ……そう、なのかな……?」
「少なくともかずみの無意識ではそう思っているようだと、オレは直感したが」
悪魔は事の真相に近付いている。薄々とだが気付きつつある。昴かずみと名乗る少女の在り方が、どうしても
「────ん? んん?」
「どうした?」
「私のアホ毛センサーが反応してる……魔法少女が超高速で接近してるよ」
「敵か?」
「ううん。でも、なんだか……懐かしい気分……?」
昴かずみは振り返る。望むは高層ビルの屋上。そこから二つの影が飛び降りてきた。
「かずみ! ようやく見つけた!!」
「今までどこに行ってたんだよ!?」
青髪青目の少女と、橙髪橙眼の少女が、心配の面持ちで駆け寄る。
しかし昴かずみは困惑気味。
「えっと……どちら様ですか?」
『────っ!?』
まさか、と二人は顔を見合わせる。そこで悪魔が事情を説明した。
「昴かずみは名前以外、記憶喪失の状態にある。あるいは彼女は昴かずみではないのかもしれない。何か思い当たる節があるようだが……聞かせてもらえるか?」
「────あなたは……」青髪の少女が警戒して問う。
「悪魔だ。困り事があるなら協力は惜しまない。そちらのことを教えてほしい」
「え……悪魔って、あの悪魔ぁ!?」橙髪の少女が驚く。
まずは自己紹介。ブルーの魔法少女は御崎海香。オレンジの魔法少女は牧カオル。二人は昴かずみの友人。先週から行方不明になっていた昴かずみを探しに、はるばるあすなろ市から来たという。どうやって探し当てたのか二人は語らなかったが、悪魔は御崎海香の固有魔法《解析》によるものだと直感した。
悪魔も今日一日の出来事をかいつまんで語る。そこで御崎海香と牧カオルの心中から“かずみシリーズ”なる言葉を直感。そこから推理を重ねる。(やはり何かあるのか……?)そして暗に
「とりあえず、
「瓜二つよ。でも……そう言われると……」解析魔法を使った御崎海香は眉をひそめる。
「あぁ。なんか変な感じがする。いつものかずみはもっと……なんていうか、キラキラって感じだ!」牧カオルは両手を大きく広げた。
「その感覚は魔法少女にしか分からないものだな。とにかく
御崎海香と牧カオルは頷く。
「? それってどういうこと?」
対する昴かずみは首をかしげる。
そこで悪魔は長らく思っていたことを口にした。
「なぁ、かずみ。お前はもしかしたら────生体構造的には、普通の人間じゃないのかもしれない」
「……!」
ポイズンクッキングも普通に食べていたし。と悪魔は付け加える。
そして昴かずみの心中に動揺が走ったことを直感。と同時に頭上から謎の声が響き渡った。
「それは当然だよ。彼女は
『────っ!!!?』
傘に浮かんでふわふわと。赤と緑の魔法少女がたおやかに降り立つ。
その容姿に悪魔は見覚えがあった。口寄せ神社のウワサで環いろはと環ういが絵馬に書いた名前。それにより複製体として姿を現した、里見灯花と柊ねむ。その二人と外見がそっくりであることを。
(だがなんだ……この二人からも、かずみと同じ“新しい”という感じがする……!)
臨戦態勢。御崎海香と牧カオルも、昴かずみを庇うように身を挺する。
「あなたたちは……わたしを黒いトランクに閉じ込めた……!」
「ううん。違うよ。わたくしたちはあなたを参考にして造り出された、里見灯花と柊ねむのクローン魔法少女。今さっき培養基から出てきて、あなたを回収するように命令されたんだ」
「鏡の魔女の製品である複製魔法少女と区別を付けるため、仮に名付けるとしたら人造魔法少女と言ったところか。僕たちは」
「人、造……? 青椒肉絲じゃなくて?」
「は?」
「君は何をどうすれば、
食欲旺盛にもほどがある。そう言いたげに里見灯花と柊ねむに似た人造魔法少女は、昴かずみを見下した。
「いやしかし、反抗心を奪うため記憶処理を施そうと捕らえたつもりが、まさか脱走して、あまつさえ七海やちよの所に逃げ込むなんてね」
「そう報告してきた黒羽根の報告も怪しいものだけど。まぁそんなことは今どうでもいいの」
「とにかく帰るよ。人造魔法少女1号、スバミ」
「ちなみにわたくしたちは、人造魔法少女2号サトカと、3号ヒーム!」
「個体識別名は番号だけで充分なんだけど、僕たちは
「どう特別なのかっていうと、初めての人造魔法少女の成功を記念してっていうのと、わたくしたちがマギウスのクローンだから!」
「というわけで、おとなしく僕たちに付いてきてくれるかな? 面倒事は避けたいんだ」
「記憶探しの旅なんてしても意味ないよ。だってわたくしたちは生後一日にも満たない存在なんだから」
サトカとヒームは手を差し伸べる。そこで昴かずみ────否、スバミは頭を抱えた。
「ぐっ……! 頭が……痛い……ッ!」
「かずみ!?」
「おい、しっかりしろ!」
悪魔は直感する。昴かずみ、もといスバミは、魂の奥底から何かを思い起こそうとしている。だが先ほどサトカとヒームは記憶が無いのは当然だと言った。クローン人間として新たに生を受けた存在なのだから。では今スバミが苦しんでいるのは何故なのか。
悪魔は鋭い目つきでサトカとヒームに問いかける。
「おい。人造魔法少女と言ったが……その製法は、まさか“魂”を材料にしてはいないだろうな……?」
「へぇ……巴マミの言う通り、やっぱり鋭いんだね。厄介な能力っ!」
「ならば取り立てて口にするほどでもないだろう。どうぞ読むだけ読んで気を済ませるといい」
悪魔は直感する。
(だがそれなら魔女と同じように、呪いを振りまく怪物が出来上がるだけのはずだ)
魔女とは、絶望した魂のかたまり。具現化した魂の
それは半魔女であっても変わらない。半分希望を残す魂であっても、残り半分の絶望が魂を覆い尽くす。加えて人間の願望は獣の形を取る事が多い。人型の魔女が少ない理由からもそれが分かる。魔女も半魔女も抽象的な姿になりやすいのだ。しかし半魔女の血肉から造られた人造魔法少女は、見た目も中身も非常に人間的である。これはいったいどうしたことか。
「────ウワサか」
「ご名答ー!」
「物語とは万能の同義語だ。有るはずがない
「
「わたくしたちを下等な人間扱いしないでくれる!?」
「僕としては微笑ましいけどね。こんなゲテモノに対して、まだ
半魔女とウワサの合一。それと似た存在に魔女ガタリなるモノがあったはずだが……それとはまた別の在り方なのか。
「ぐぅうう……!!」
「かずみ、どうしたの? どこか痛いの?」
「……! おい、なんか魔力が激増してるぞ! かずみの中で!」
四つん這いになって苦しむスバミ。その傍らに寄り添う御崎海香と牧カオルは危険を感じて後ずさる。
一方、サトカとヒームも、なぜスバミが苦しんでいるのか見当がつかない様子。
その中で悪魔は事態の深刻さを直感していた。
「────かずみの中で“何かが飢えている”……サトカ、ヒーム。かずみの元になった“昴かずみ”のドッペルの性質は、なんだ?」
「────! まさか!」
「そんなことはありえない。人造魔法少女は完璧のはずだ。たしかにドッペルの性質によって能力は千変万化と変わるだろう。そこに機能的な汎用性を見出したからこそ、人造魔法少女の作成に着手したのは事実だ。しかしそれが暴走するなんてことは────」
想定していないようだ。悪魔の一言により暴走の可能性を指摘された天才少女二人のクローンは、そんな可能性はありえないと驚き認めない。
「全ての科学は肯定から始まると聞いた。感情に揺さぶられて“もしも”を認めない奴は科学者たりえないぜ」
悪魔は暴走の原因を直感する。スバミの中から飢えを感じることから、おそらく昴かずみのドッペルの性質は飢餓・空腹といったものだろう。では何を食せば飢えは消えるのか。
「機能的な汎用性か……」
サトカとヒームからは“白昼夢”と“遺言”という言葉を直感。どちらも自らの身命を賭して願いを叶える自己犠牲型。
「奇跡的な化学反応……」
喰うものと喰われるものが、ひとつの場所に揃った。
「グゥ……! にげて……おねがい……!」
「かずみ!?」
「どういう意味だ!?」
悪魔は二人を庇うように立つ。
「かずみ────喰うのはいいが、自分の欲望には喰われるな」
「……っ! 悪魔、さん……!!」
悪魔の言葉に反応して、うつ伏せるスバミが顔を上げた途端、一同は息を飲んだ。爛々と光る赤黒い眼。獣のように膨れ上がった口は頭部を呑み込み、舌は大きく伸びて地に横たわってマフラーのようにとぐろを巻く。黒い髪はコック帽のように固まり、背中からは翼のようなレンガが生えて、その体が異形のものへと変化していく。
そして────狩りが始まった。
激突。一直線にヒームの頭にかぶりつこうと四足歩行で飛び込んだスバミは、悪魔の拳と頭突きを合わせる。
「グゥゥ……!」
「っ! 魔法少女とはいえ、なんてパワーだ……!」
超直感が激しく明滅する。
しかし悪魔の視界は一気に回転した。巨大な舌で薙ぎ払われた悪魔は吹き飛ばされる。炎の逆噴射で急静止、爆発的な噴射で戦線に戻る。
「危ない、ヒーム!」サトカが叫ぶ。
悪魔は間に合わなかった。
ヒームを庇って体当りしたサトカ。
その体を巨大な舌が巻き上げて、巨大な口の中に引きずり込む。
『なっ……!!?』
一人の少女を丸呑みにした。その驚愕の光景に震える御崎海香と牧カオル、そしてヒーム。
悪魔は大炎の一撃を叩き込む。が、それは硬質化した肉体に阻まれた。
(硬い……ッ!!)
そして直感する。スバミの中で躍動するエネルギー。それは閃光となって爆発した。同時に空腹と食欲、力を欲する心を直感する。光の熱波を躱した悪魔は刀剣とホバーシールドを開匣。ヒームの足元から一気に上昇させてスバミから距離を取る。
「かずみのドッペルの狙いは人造魔法少女だ! 今の閃光でかずみとサトカは一体化した! 人格も能力も混ざって更にパワーアップしている……! マギウスはとんでもない食べ合わせの三体を造ってくれたな……!」
「────っ!?」
地表から二足歩行の黒い物体が跳躍する。それは一足で音速突破し、衝撃波を伴いながら悪魔を舌で弾き飛ばした。さらに頭突きでホバーシールドの装甲をやすやすと貫くが、不意にホバーシールドとその先に佇むヒームの姿が忽然と消え去る。
「グゥグゥ……?」
空中で急停止した悪魔の傍ら。そこには雨刀と共に助太刀魔法で瞬間移動したヒームがホバーシールドの上に座っていた。
「っ────食べ合わせ……まさか、そんな化学反応があるなんて……」
「とんだマッチポンプだ。暴食の人造魔法少女は白昼夢を見るか? クローンのお前らは伝えられていないだけで、まさかオリジナルの里見灯花と柊ねむは、最初からコレが狙いだったんじゃないか……?」
「────その可能性は高い。オリジナルの僕たちなら、きっとそうする」
「恐ろしい子供たちだ」
事態の状況が呑み込めない御崎海香と牧カオルは呆然と立ち尽くす。
「な、なに……? まさか、かずみは魔女化してしまったの……?」
「そ、そんなわけあるか! あれはかずみのようで、かずみじゃない……でもなんでだ……わけがわからない……!」
自由落下するスバミはアスファルトを割って着地し、再び音速突破の跳躍を試みる。
迎撃する悪魔の死炎放出とヒームの具現魔法。なんとか突進を押し返した二人は更に上空へ後退する。
「つまるところ僕らはスバミの餌だ。空腹の人造魔法少女は、おそらく完全な個体になるべく
悪魔とスバミ、三度目の激突。サトカを呑み込んで吸収した影響か肉体は逞しく輝き、髪の毛の先がマッチのように変化しており、そこから希望の火を灯している。
「最初は人造魔法少女を造れればそれでよかったはずだ。しかし偶然にも誘拐した昴かずみのドッペル、その性質が“空腹”であったために……僕らのオリジナルは思いついたんだ。“究極に至る方法”を……」
空腹のドッペル。その姿は黒いコック。本来はあらゆるものを体内に取り込む願望を持つが、それはウワサによって書き換えられた。────それは特定の人造魔法少女を前にした時、その本性をあらわにして取り込むことで自己のパワーアップを図る無限の成長生命体。名は同様に空腹のドッペル。ただしその姿は緑の母。ミトコンドリア・イブ。特定の人造魔法少女とは“進化”の概念を有する二名の個体の事である。
「里見灯花のドッペルは、白昼夢。その姿はマッチ売り……Qの契約者として願いを叶えた後も、さらなる願いを成就するため無限の力を欲している……その在り方は“あくなき進化の欲望”そのものだ。そして────
柊ねむのドッペルは、遺言。その姿は死番虫……人生の全てを捧げて他の者が宇宙に召し上がることを望む在り方は“自己犠牲による進化”そのものだ……」
花火が散る。幾度もの激突でスバミが学んだことはパワー不足。悪魔の背後で悠長に怯える獲物に食らいつくためには、さらなるパワーが必要だ。
「────っ! まさか!?」悪魔の超直感が間に合わない。
「グルグル……」
悪魔の体を蹴り飛ばしたスバミは急降下。御崎海香と牧カオルの眼前に降り立つ。
「……っ!?」
「おい、かず────」
目にも留まらぬ速さで二人の体を舌で巻き取り、噛み砕くことなく丸呑みにしたスバミは────閃光、爆発。第2.5段階の形態に移行する。先ほどサトカを吸収したことで四足歩行から二足歩行に変形したスバミは、今度は二人の魔法少女を吸収したことで二足歩行から空中歩行に変形した。もはや背中の羽根は飾りではなく、ジェット機の
「そんな……人造魔法少女以外を食べただと……!? 僕のオリジナルがそのような設定をするはずがない……まさか自己進化で、調整による初期条件もクリアしたのか!」
「ッ……たしか里見灯花の固有魔法は《変換》だったな……サトカを吸収したことで、その魔法能力も身につけたってことだろう……」
スバミは解析魔法を行使して悪魔の弱点を探る。手足を硬質化させ、魔弾を生成し蹴り飛ばす。
「────」
それは決して見過ごせない魔弾だった。魔弾の向かう先は悪魔でもヒームでもない。今もまだ誰かが働いているビルに向けられて放たれていた。音速突破の逆噴射でビルと魔弾を挟む位置に飛びついた悪魔は雨刀を振るい魔弾と接触、助太刀魔法を行使して遥か上空に転移させる。
その間、一秒未満。
刹那の間隙を突いて音速飛行したスバミは、とうとうヒースの体に食らいつき、大きな舌で巻き取って丸呑みにした。
閃光と爆発。第三形態────否、究極の天才たる里見灯花と柊ねむの計画通り、究極に至れる人工生命体の中に究極の複製天才が二名取り込まれて、それは“完全体”と相成った。
「────グルグル……グル……グ……変換・解析・硬質・具現……摂取完了。パーフェクトだ。魔法少女至上主義? そんなつまらん思想のために、このわたしが貢献すると本気で思っているのか……? 馬鹿も休み休み言え」
「……かずみ……」
上昇した悪魔は、外見も中身も変わり果てたスバミと対面する。
「あぁ……悪魔さん……乱暴してごめんね。なぜかサトカとヒームを見たら、ゾンビになったみたいに理性が吹き飛んで飢えちゃったんだ。だからつい食べちゃったよ……御崎海香と牧カオルは、オリジナルのわたしの親友みたいだったけど……それはクローンであるわたしにとって、なぁんら関係のないことだ……」
「──
「そんなもの最初から無い……わたしは全てを取り込んで究極の個体になるため造られた存在らしい……なら、それがわたしの目的になる。生きる目的になる」
「たしかに食べることは生きることって言うけどな……こんな額面通りのやり方は違うだろう」
「何が違う? 悪魔さんも家畜を食べて生きてきたでしょう? でも特別にあなたは食べないであげる。わたしはマギウスにとって都合のいい進化はしない……それがわたしにとって、せめてもの本心……だから────《願いを灯せ、うたかたの
「────ッ!?」
完全体スバミの中に混じる四人の声。そのせいで超直感の反応が遅れた。スバミは何を願ったのか。
「莫大な魔力反応を感知した場所は……ここだ!」
「アスファルトが砕けているわ……でも魔力反応の正体が見えない。どこにいるの?」
「……っ! 二人とも、上を見るネ!」
地上から三人の魔法少女の声が響く。そのうち二人は悪魔にも覚えがあった。桐野紗枝と由貴真里愛。最後の一人はカタコトの日本語を話す中華風の青い少女。
「────まさか」
「邪魔したいならすればいいさ……どうせ悪魔さんは、わたしに勝てない」
全く同時に音速突破の逆噴射で地表に迫る。スピードを出しすぎれば止まりきれずアスファルトに激突するチキンレース。マッハ2で激突すれば悪魔の五体は粉々に砕け散る。だが完全体スバミならかすり傷ひとつ付かないだろう。そもそもの生命の土台が違う。さらにスバミは加速してマッハ5を叩き出した。追い抜かれた悪魔は
激突。アスファルトを豪快に砕いて二つの足を打ち抜いたスバミは、前方三者の獲物を捉える。巨大な舌で三人を巻き取り呑み込む。直後、吹き飛ばされていた悪魔はビルの壁面に激突した。
「グルグル……成り上がり・慈愛の精神・情緒的合理性……摂取完了。性格的特性の傾向割合は桐野紗枝・由貴真里愛・純美雨を7割……能力的特性の割合傾向はサトカ・御崎海香・牧カオル・ヒームを7割とする……設定完了。
そう、わたしは人類に優しい究極人工生命体になる。人類を家畜とするマギウスの思惑に、わたしは逆らうぞ。だって悪魔さんが言っていた。《喰うのはいいが、自分の欲望には喰われるな》と……良い助言だ。素晴らしい言葉だと思う。もし《そんなひどいことはやめろ》とか《自制心こそ人間の素晴らしさ》とか綺麗事を述べられていたら、きっとわたしは聞く耳を持たず、この惑星の生命を全て吸収しようとしていたかもしれない……飢えに苦しむわたしに掛けてくれた言葉が
ビルの壁面に五体の痕跡。「っ……!」アスファルトから呻いて起き上がる悪魔に対し、完全体スバミは声をかける。
「そして宣言しよう。我が目的は“究極に至る”こと……そのためには、もっと多くの希望を糧としなければならない……つまり魔法少女を喰わねばならない……だが欲望のままに喰らうことはよそう……悪魔さんの言葉だ……つまり手段を問う……何をどうすれば《理性に従って喰える》のかを……わたしは閃いたぞ……魂の腐敗細胞から生まれた者が覇を懸けて挑戦者を待つ催しを……」
海岸沿いの道路に呵々大笑が響き渡る。
「わたしは親孝行者であることを望む……故に敢えて魔法少女至上主義に則ってやろう……だが穏健派としてだ……つまり! わたしは自己の究極を証明するため、全世界の魔法少女に問いかける!
“我を倒した者がナンバーワンだ!”
“我が勝利した暁には、全世界の魔法少女を吸収してやるッ!”
故にわたしは《ソウルセルゲーム》の開催を、
雄叫びを上げるだけ上げて、完全体スバミは飛び去った。悪魔は痛みのあまり気を失う。
しばらくして万年桜のウワサの端末体が到着した。
「│悪魔。起きて。わたしの
「────、…………万年、桜……?」
「│その侵入者は万年桜のウワサ空間を武闘会場として、ソウルセルゲームの開催を宣言した│」
「…………」
「│悪魔、重傷? でもこの程度の傷は日常茶飯事だからすぐに治ると判断する│
│そして一人で動けないのなら仕方がない。おんぶしてみかづき荘に連れて行く│」
そうして万年桜は、悪魔を回収して帰路に着いた。
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